東京株式市場は落ち着きを取り戻しはじめたようです。
一時は米長期金利の上昇を嫌気して急落、警戒感が高まる展開となりましたが、金利上昇に対する株式市場の“耐性”が強まり、3/16(火)のザラ場中は2/25(木)以来およそ3週間ぶりに一時3万円台を回復しました。
新興市場も戻り歩調となり、特に大きく下げていた東証マザーズ市場の反発が目立ちます。
そうした中、日経平均株価や東証マザーズ指数が新型コロナウイルスの感染拡大を嫌気して下げた昨年来安値(2020/3/19)を付けてから1年が経とうとしています。
首都圏1都3県の緊急事態宣言は3/21(日)にも解除との見方が広まる中、今後活躍する銘柄発掘のヒントはどういったところに隠されているのでしょうか。
なお、今回より動画での詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください。
新興株ウィークリー
※YouTubeに遷移します。
日経平均株価は2/16(火)高値から3/5(金)安値まで、7.8%下げました。
米長期金利が上昇ピッチを速めた結果、PERの高いグロース銘柄の比率が多いナスダックは大幅に下落。ナスダックと同じくPERが高く、グロース銘柄が多い東証マザーズ指数でも、2/16(火)高値から3/9(火)安値まで、16.9%下がりました。
大きく下がった結果、東証マザーズ指数は一目均衡表的には“弱気局面”に入った形となり、下落率からみれば“調整局面入り”ということにもなりました。(図表1)
しかし、米長期金利の上昇に対する内外株式市場の“耐性”が強まり、相場全般が落ち着きを取り戻しはじめたことから、これまで大きく下げていた東証マザーズ銘柄の反発力が相対的に大きくなりました。東証マザーズ市場は3/9(火)〜3/16(火)に5.2%上昇し、同期間の日経平均株価の上昇率(2.3%)を上回りました。
おもな新興市場銘柄のうち、東映アニメーション(4816)が堅調に推移しています。上半期(2020/4〜9)までは前年同期比13%でしたが、第3四半期(2020/10〜12)は同23%増と増益に転じており、業績を重視する投資家の買いが影響しました。(図表2)
業績拡大が目立ったところでは、歯愛メディカル(3540)があげられます。2020/12期は第3四半期までは前年同期比82%の営業増益でしたが、第4四半期だけみると、3.9倍の営業増益と、業績拡大が加速しました。2021/12期の予想EPSは300円となっており、予想PERも23.3倍と割安感が強まっているようです。(図表3)
図表1 東証マザーズ指数(日足)・一目均衡表
- ※SBI証券チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2021/3/17(水)現在
図表2 おもな新興市場銘柄(時価総額上位10社)の値動き
コード | 銘柄名 | 市場 | 株価(3/16) | 3/9比 | 昨年末比 |
4385 | メルカリ | 東証マザーズ | 5,300 | 0.4% | 15.8% |
6324 | ハーモニック・ドライブ・システムズ | ジャスダックS | 7,730 | 2.9% | -16.2% |
2702 | 日本マクドナルドホールディングス | ジャスダックS | 5,190 | 1.0% | 3.8% |
7564 | ワークマン | ジャスダックS | 7,960 | 1.5% | -9.5% |
4478 | フリー | 東証マザーズ | 10,140 | 0.5% | 0.4% |
4816 | 東映アニメーション | ジャスダックS | 11,530 | 11.8% | 42.5% |
4483 | JMDC | 東証マザーズ | 5,380 | 9.1% | -7.9% |
2782 | セリア | ジャスダックS | 3,640 | 4.7% | -4.0% |
4477 | BASE | 東証マザーズ | 9,760 | 1.9% | 0.0% |
4488 | AIinside | 東証マザーズ | 40,000 | -0.2% | -45.5% |
【ご参考】 | 日経平均株価 | 29,921.09 | 3.1% | 9.0% |
日経ジャスダック平均 | 3,884.74 | 2.3% | 4.4% | |
東証マザーズ指数 | 1,213.68 | 5.2% | 1.4% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。新興市場(東証マザーズ市場およびジャスダック市場)の時価総額上位10銘柄について、3/16(火)時点での各種騰落率を掲載。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
図表3 株価上昇が大きかったおもな新興市場銘柄
コード | 銘柄名 | 市場 | 株価(3/16) | 3/9比 | 昨年末比 |
3540 | 歯愛メディカル | ジャスダックS | 6,990 | 23.7% | 10.8% |
4934 | プレミアアンチエイジング | 東証マザーズ | 9,410 | 21.3% | 14.1% |
4436 | ミンカブ・ジ・インフォノイド | 東証マザーズ | 4,495 | 21.0% | 12.5% |
6030 | アドベンチャー | 東証マザーズ | 5,640 | 16.8% | 35.7% |
4563 | アンジェス | 東証マザーズ | 1,091 | 16.1% | -12.4% |
2150 | ケアネット | 東証マザーズ | 4,745 | 15.3% | 1.2% |
4582 | シンバイオ製薬 | ジャスダックG | 1,176 | 14.8% | 210.3% |
6787 | メイコー | ジャスダックS | 2,772 | 14.1% | 43.9% |
4565 | そーせいグループ | 東証マザーズ | 1,967 | 13.0% | 9.3% |
8909 | シノケングループ | ジャスダックS | 1,197 | 12.8% | 7.5% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。新興市場(東証マザーズ市場およびジャスダック市場)の時価総額300億円以上の銘柄について、3/9(火)からの騰落率が大きい順に掲載。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
これまで、「ウィズ・コロナ」の局面ではどのような銘柄が大きく上がったのでしょうか。
今後も活躍する銘柄発掘のヒントは隠れているのでしょうか。
図表4は、新型コロナウイルスの感染拡大を嫌気して昨年来安値を付けた2020/3/19(木)から直近2021/3/16(火)までの約1年間の新興市場銘柄のパフォーマンスを調べたものです。株式分割の影響を加味するため、時価総額の増減で示しています。
もっとも時価総額を大きく増やした銘柄がBASE(4477)で、昨年3/19(木)に907円だった株価は現在、9,000円を大きく超えています。
第2位は出前館(2484)で、昨年3/19(木)548円から、直近の3/16(火)には2,700円まで上昇していました。
新興銘柄のパフォーマンスの明暗を分けたのは、やはり新型コロナウイルスのようです。
新型コロナウイルスの影響で人の移動が著しく制限される中、民間部門や政府部門のデジタル化が大きな課題になりました。前述でご紹介したBASE(4477)の他、ライトアップ(6580)、CAICA(2315)、Jストリーム(4308)、すららネット(3998)などが活躍しました。新興市場以外の銘柄でも、DX(デジタルトランスフォーメーション)に関連する銘柄は値上がりが目立ちました。
これに近いテーマでは、医療のデジタル化が市場の注目テーマとなり、東証1部ではエムスリー(2413)が昨年3/19(木)2,860円から直近3/16(火)には7,747円と2.7倍の値上がり率になりました。新興市場ではそれに業態が近いケアネット(2150)が活躍しました。
その他、世界的に半導体市場にスーパーサイクルが到来したとの見方から、半導体関連銘柄で買われる銘柄が目立っていますが、フェローテックホールディグス(6890)や東洋合成工業(4970)は自社製品市場における高いシェアも評価され、業績ともども拡大基調となりました。また、出前館(2484)やベガコーポレーション(3542)には、巣ごもり需要の拡大が追い風になりました。
今後はどうなるのでしょうか。
新型コロナウイルスの感染拡大が追い風になった銘柄、特に予想PERの高いグロース系の銘柄については、利益確定売りの拡大が警戒されます。
下記のご参考として掲載した図表の銘柄については、その銘柄を調べ、企業予想を公表するアナリストがカバーしていない銘柄も多いことから長期投資を難しくしている銘柄も少なくないようです。一方、前述でご紹介した半導体関連銘柄については、アナリストがカバーしている銘柄であり、投資しやすい傾向にあるようです。
なお、SBI証券の企業調査部がカバーしている銘柄としては、BASE(4477)、東洋合成工業(4970)があります。
BASE(4477)については2/22付で目標株価8,500円(3/16終値は9,760円)、東洋合成工業(4970)については2/26付で目標株価15,500円(3/16終値は10,540円)とするレポートを公表しています。
≪ご参考≫時価総額増加率の高い20銘柄(2020/3/19〜2021/3/16)
取引 | チャート | ポートフォリオ | コード | 銘柄 | 株価(円)(3/16) | 騰落(20/3/19〜) | 備考 |
4477 | 4477 | 4477 | 4477 | BASE | 9,760 | 1021.0% | ECサイト制作のシステムを運営 |
2484 | 2484 | 2484 | 2484 | 出前館(J) | 2,700 | 816.2% | ネットで飲食物の出前受付。設備投資拡大 |
2150 | 2150 | 2150 | 2150 | ケアネット | 4,745 | 725.0% | 医薬品情報をネット配信。製薬会社営業支援 |
6580 | 6580 | 6580 | 6580 | ライトアップ | 5,230 | 700.3% | 全国中小企業の黒字化を目指しIT化を支援 |
2315 | 2315 | 2315 | 2315 | CAICA(J) | 52 | 557.0% | フィンテック技術が核。株価は低位 |
4436 | 4436 | 4436 | 4436 | ミンカブ・ジ・インフォノイド | 4,495 | 515.4% | 情報サービスに特需。ロボット投信ツール |
3496 | 3496 | 3496 | 3496 | アズーム | 4,570 | 499.4% | 月極駐車場サブリースサービス等を展開 |
4308 | 4308 | 4308 | 4308 | Jストリーム | 4,875 | 475.1% | 記者会見や説明会のオンライン配信を受託 |
4582 | 4582 | 4582 | 4582 | シンバイオ製薬(JG) | 1,176 | 439.4% | 希少疾患薬に特化 |
2158 | 2158 | 2158 | 2158 | FRONTEO | 784 | 398.5% | リーガルテック主力。コロナの逆風も |
3998 | 3998 | 3998 | 3998 | すららネット | 3,635 | 358.5% | オンライン教材が主力とし納入先増加 |
3491 | 3491 | 3491 | 3491 | GA technologies | 1,974 | 343.9% | 不動産総合プラットフォーム |
6890 | 6890 | 6890 | 6890 | フェローテックホールディング(J) | 2,150 | 330.7% | 半導体向け真空シールでシェア6割 |
3542 | 3542 | 3542 | 3542 | ベガコーポレーション | 1,701 | 319.2% | 家具・雑貨EC「LOWYA」。在宅勤務追い風 |
4389 | 4389 | 4389 | 4389 | プロパティデータバンク | 1,936 | 316.2% | 不動産管理ソフト。REIT向けに強み。 |
3914 | 3914 | 3914 | 3914 | JIG-SAW | 13,570 | 300.6% | サーバー等の自動監視システム |
7049 | 7049 | 7049 | 7049 | 識学 | 2,336 | 286.0% | 独自の組織論「織学」を企業幹部向けに |
6736 | 6736 | 6736 | 6736 | サン電子(J) | 3,575 | 275.1% | 犯罪捜査機関向け主力。スマホ等から証拠 |
3979 | 3979 | 3979 | 3979 | うるる | 3,510 | 267.9% | 官公庁や自治体向け入札情報サイト |
4970 | 4970 | 4970 | 4970 | 東洋合成工業(J) | 10,540 | 263.9% | 半導体微細化でEUV向け感光材に注力 |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。東証マザーズ市場またはジャスダック市場に上場する銘柄のうち、時価総額100億円(3/16現在)の企業の2020/3/19〜2021/3/16における時価総額増加率の高い順に単純に20銘柄並べたものです。この表はあくまでも客観的なデータ(順位)や銘柄の概要を説明する目的で作成されており、将来の株価を示唆したり、銘柄の推奨を意図するものではありません。
- ※銘柄名横に(J)とある銘柄はジャスダック・スタンダード市場上場、(JG)とあるのは、同グロース市場上場の銘柄です。それ以外の銘柄名横が無記載の銘柄は東証マザーズ市場上場の銘柄です。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
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