落ち着きを取り戻したかのように思えた東京株式市場ですが、再び波乱の様相を強めています。
米長期金利上昇への警戒や、日銀によるETF(上場投資信託)買い入れ方針の変更などが要因であると考えられ、日経平均株価は3/19(金)から3/24(水)までの4営業日で、約1,811円も下げました。
こうした状況は、“金融相場”で過剰流動性を背景に大きく上昇した株式相場が、“業績相場”に至る過渡期を迎えているとも考えられます。
そこで今回は、景気や企業の業績拡大が本格化する局面こそ、新興銘柄の活躍が期待できる時期ではないかと考察し、前回の新興株ウィークリーで、“「コロナ1年」で上がった銘柄”でご紹介した銘柄の中から、アナリストの成長期待が高く、昨年1年が「テンバガーへの道」に過ぎなかったと思えるような更なる成長が期待される銘柄に着目します。
なお、当ページにつきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください。
新興株ウィークリー
※YouTubeに遷移します。
■執筆者のプロフィール
SBI証券 投資情報部長 鈴木 英之
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
株式相場全般が波乱局面とみられ、“新興市場”の下げも厳しくなっています。ただ、“新興市場”を指数別にみれば、東証マザーズ指数の下げが厳しく、ジャスダック平均の下げは相対的に緩やかとみられます。
それはなぜでしょうか。
日経平均株価や東証マザーズ指数が新型コロナウイルスの感染拡大を嫌気して下げた昨年来安値(2020/3/19)を付けてから1年が経過しました。
そこでの活躍銘柄を見ると、新型コロナウイルスの感染拡大を背景にDXや巣ごもり関連などの上昇が目立ちます。東証マザーズ指数はDXや巣ごもりなど情報通信関連銘柄のウェイトが高く、製造業、小売・外食等の景気敏感銘柄のウェイトが高いジャスダック市場より、良好なパフォーマンスとなりました。
しかし、物色の流れは変わりつつあるようです。
波乱含みの展開の中で、ジャスダック平均が12営業日連続高(3/5〜3/22)となったことは、株式相場が“業績相場”にシフトしつつあることを示しているとみられます。米国では多少のインフレ高進には目をつぶり、高圧経済により景気回復を優先させる動きをみせていますが、米国の景気回復がより強固になることで、日本の景気回復も期待され、企業業績の本格的な回復が期待できることになります。
そうした中、今回はアナリストが中長期的な成長を予想している銘柄をご紹介します。それらの銘柄の事業素質が、高い成長につながると予想できれば、中長期投資で“テンバガー”になる可能性もゼロではないと思われます。
図表1 東証マザーズ指数(日足)・一目均衡表
- ※SBI証券チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2021/3/24(水)取引
図表2 おもな新興市場銘柄(時価総額上位)の値動き
コード | 銘柄名 | 市場 | 株価(3/23) | 3/16比 | 昨年末比 |
4385 | メルカリ | 東証マザーズ | 5,420 | 2.3% | 18.5% |
6324 | ハーモニック・ドライブ・システムズ | ジャスダックS | 7,440 | -3.8% | -19.3% |
2702 | 日本マクドナルドホールディングス | ジャスダックS | 5,120 | -1.3% | 2.4% |
7564 | ワークマン | ジャスダックS | 8,080 | 1.5% | -8.2% |
4478 | フリー | 東証マザーズ | 9,110 | -10.2% | -9.8% |
4816 | 東映アニメーション | ジャスダックS | 11,050 | -4.2% | 36.6% |
4483 | JMDC | 東証マザーズ | 5,250 | -2.4% | -10.1% |
2782 | セリア | ジャスダックS | 3,760 | 3.3% | -0.8% |
4477 | BASE | 東証マザーズ | 8,400 | -13.9% | -13.9% |
【ご参考】 | 日経平均株価 | - | 28,995.92 | -3.1% | 5.7% |
日経ジャスダック平均 | - | 3,932.83 | 1.2% | 5.7% | |
東証マザーズ指数 | - | 1,202.61 | -0.9% | 0.5% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。新興市場(東証マザーズ市場およびジャスダック市場)の時価総額上位10銘柄について、3/23(火)時点での各種騰落率を掲載。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
図表3 株価上昇が大きかったおもな新興市場銘柄
コード | 銘柄名 | 市場 | 株価(3/23) | 3/16比 | 昨年末比 |
4582 | シンバイオ製薬 | ジャスダックG | 1,663 | 41.4% | 338.8% |
4592 | サンバイオ | 東証マザーズ | 1,959 | 27.0% | 46.5% |
4934 | プレミアアンチエイジング | 東証マザーズ | 11,500 | 22.2% | 39.4% |
4880 | セルソース | 東証マザーズ | 12,290 | 21.2% | 13.2% |
2160 | ジーエヌアイグループ | 東証マザーズ | 2,531 | 17.1% | 40.0% |
3540 | 歯愛メディカル | ジャスダックS | 7,970 | 14.0% | 26.3% |
3491 | GA technologies | 東証マザーズ | 2,160 | 9.4% | -30.9% |
4431 | スマレジ | 東証マザーズ | 5,700 | 7.3% | 2.9% |
6612 | バルミューダ | 東証マザーズ | 7,150 | 6.7% | 45.9% |
3479 | ティーケーピー | 東証マザーズ | 2,904 | 6.6% | 3.1% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。新興市場(東証マザーズ市場およびジャスダック市場)の時価総額上位10銘柄について、3/23(火)時点での各種騰落率を掲載。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
先週の新興株ウィークリーでは、日経平均株価や東証マザーズ指数が新型コロナウイルスの感染拡大を嫌気して下げた昨年来安値(2020/3/19)以降、上昇率の大きかった新興銘柄について調べました。
今週は改めて値上がり率のデータを更新した上で、その中でアナリストが業績を予想し、利益拡大が見込まれる銘柄についてご説明します。
スクリーニング条件は以下の通りです。
(1)ジャスダック市場または東証マザーズ市場に上場している銘柄であること。
(2)時価総額100億円以上の銘柄であること。
(3)2020/3/19(木)〜2021/3/22(月)の時価総額増加率が200%以上の銘柄であること。
(4)アナリスト2名以上が業績予想を公表している銘柄であること。
(5)「再来期」までの業績予想があり、営業増益基調が予想されていること。
上記のすべての条件を満たす銘柄を時価総額増加率の大きい順に並べたものが図表4になります。
なお、図表4でご紹介した銘柄の一部につきましては、投資ポイントもご紹介しておりますので、合わせてご覧ください。
図表4 時価総額増加率が高く、アナリストの成長期待も強い新興銘柄(2020/3/19〜2021/3/22)
取引 | チャート | ポートフォリオ | コード | 銘柄 | 株価(円)(21/3/22) | 上昇率(20/3/19〜) | 市場予想営業利益(百万円)・PER | ||
今期 | 来期 | 再来期 | |||||||
追加 | 4477 | BASE(12) | 8,450 | 901.5% | -761 | 332 | 1,481 | ||
- | 691.3 | 156.7 | |||||||
追加 | 2484 | 出前館(J・8) | 2,604 | 815.1% | -12,009 | -4,084 | 4,697 | ||
- | - | 60.5 | |||||||
追加 | 4308 | Jストリーム(3) | 4,695 | 468.4% | 1,788 | 2,107 | 3,500 | ||
56.8 | 48.2 | 29.0 | |||||||
追加 | 6890 | フェローテックホールディングス(J・3) | 2,266 | 356.0% | 8,921 | 12,516 | 13,936 | ||
13.6 | 9.7 | 8.7 | |||||||
追加 | 3540 | 歯愛メディカル(J・12) | 7,630 | 240.0% | 4,800 | 5,300 | 5,800 | ||
24.4 | 22.3 | 20.2 | |||||||
追加 | 4293 | セプテーニ・ホールディングス(J・9) | 461 | 234.1% | 3,642 | 4,156 | 4,779 | ||
26.4 | 23.1 | 20.5 | |||||||
追加 | 3891 | ニッポン高度紙工業(J・3) | 2,981 | 229.0% | 2,367 | 2,633 | 3,400 | ||
20.4 | 18.3 | 14.5 | |||||||
追加 | 1407 | ウエストホールディングス(J・8) | 3,250 | 227.5% | 9,000 | 10,533 | 13,200 | ||
26.9 | 22.8 | 18.0 |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。東証マザーズ市場またはジャスダック市場に上場する銘柄のうち、時価総額100億円(3/22時点)の企業の2020/3/19〜2021/3/22における時価総額増加率の高い順に単純に並べたものです。
- ※銘柄名横カッコ内にJと記載された銘柄はジャスダック市場上場銘柄で、他は東証マザーズ銘柄です。また、カッコ内の数字は決算月を示しています。3月末決算銘柄の場合、権利付最終日が3/29(月)となりますのでご注意ください。
BASE(4477) 誰でも簡単にネットショップを開業できる
EC(電子商取引)サイト制作システムを提供しています。同社のデザインテンプレートを使うことにより、無料で簡単にデザイン性の高いネットショップを開業できるとして人気を集めています。
販売管理費の増加により、今期(2021/12期)は営業赤字を見込んでいますが、来期(2022/12期)は回復(ただし、アナリストによっては赤字が残ると予想)が予想されます。
2/22(月)にSBI証券 企業調査部が公表したレポートでは、目標株価を8,500円としています。
Jストリーム(4308) 企業向けに動画配信プラットフォームなどの提供を行う
企業向けに動画配信プラットフォームなどのサービス提供を行っています。
新型コロナウイルスの感染拡大を背景とした「巣ごもり」の増加で動画需要が増加したことに加え、リアルイベントの代替・補填に動画を利用する企業側の需要もあり、業績は好調です。
今期第3四半期累計(2020/4〜12期)の売上高は前年同期比で57.2%増、営業利益は452.9%増と好調。通期でも大幅増益が見込まれます。アナリストの予想では、今後2年程度は年間でおよそ20〜30%増程度の営業増益が見込まれるとしています。
フェローテックホールディングス(6890) ニッチ分野で高シェアの半導体関連企業
半導体製造装置関連事業が68%弱を占めます。
半導体ウェーハに薄膜を形成する際の消耗品である石英製品や、微細加工を容易にするセラミック、磁性流体を用いて真空環境を維持する真空シールなどを製造・販売しています。
ニッチ戦略により、真空シール、サーモモジュールは世界トップシェアを有しています。海外売上比率は約8割で、中国の半導体工場の近くに拠点の多くを構えています。
上場した1996年以降の長期チャートでみると、数年に1度2,000円超の株価まで上昇し、押し返される動きを繰り返しています。なお、半導体は再びスーパーサイクルに突入したとする声もあり、利益が過去最高となれば市場の見方も変わるかもしれません。
歯愛メディカル(3540) 歯科通販売上高でトップシェア
社名は「シイアイメディカル」と読みます。
医療業界向けに通販などを展開しています。新型コロナウイルスの感染拡大を背景とするマスク・手袋等の需要拡大や、歯科から介護・福祉・医科等への顧客層の拡大が重なり、短期業績は好調です。
業績数値の訂正等がありましたが、2020/12期は売上高が前期比30%増の37,393百万円、営業利益が同123.9%増の4,702百万円でした。2021/12期は7.3%増収・1%の営業増益となる計画です。
今期営業増益率の増加については主要顧客の歯科医院が厚生労働省の「新型コロナウイルス感染拡大防止等の支援事業」の対象になっていることが寄与したとしています。
なお、「新型コロナウイルス感染拡大防止等の支援事業」は3月末で終わる予定のため、4月以降は反動減に注意する必要がありそうです。
ニッポン高度紙工業(3891) 「土佐和紙」伝来の技術がEV(電気自動車)時代のキー・テクノロジーに?!
アルミ電解コンデンサ用セパレータで世界シェア60%を有するグローバル・ニッチ・トップ企業です。
車載向け・産業向けともに需要が回復し、着実な営業増益が続く見通しになっています。目先は半導体供給問題で車載向けの需要が少し気がかりです。
本社は高知県です。
セパレータには国の伝統工芸品に指定されている高品質の高知県の手漉き和紙「土佐和紙」由来の技術が生きていると言われています。
今後EV(電気自動車)用に市場拡大が期待される電池向けにも、国内80品種のセパレータを用意しており、業績も拡大傾向が期待できそうです。
- ※※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。期間1年(月足)で表示。フェローテックホールディングスのみ、1996年10月〜2021年3月(月足)で表示。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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