4月相場は上昇一服となっています。
1〜3月は世界的な景気回復期待を背景に、国内の主要株式相場も総じて上昇してきましたが、4/27(火)時点の月間騰落率(前月末比)は、日経平均株価が0.6%下落、TOPIXが2.6%下落、ジャスダックが0.7%下落となっています。なお、東証マザーズのみ同期間は1.5%上昇していますが、1〜3月期に出遅れていたことを受け、情報通信銘柄を中心に買い直された形です。
そうした中、東京株式市場では3月決算銘柄を中心とする銘柄群の決算発表が本格化してきました。そこで今回は、業績予想の上方修正が期待できる銘柄を発掘し、ご紹介します。
なお、当ページにつきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください。
新興株ウィークリー
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■執筆者のプロフィール
SBI証券 投資情報部長 鈴木 英之
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
新興市場(東証マザーズ市場、ジャスダック市場)でも、決算発表がはじまりました。
この時期に決算発表を行う新興銘柄の決算期末は3月、6月、9月、12月で新興市場全体の79%を占め、投資家にとっては注意を怠れない時期でしょう。
特に今回の決算発表は、国内の新型コロナウイルス感染者数が拡大傾向の中、4都府県で緊急事態宣言が発令されていることもあり、経営サイドから慎重な業績予想が発表されるケースが増えると予想。決算発表後に株価が下げる銘柄も少なくないようです。
とりわけ、3月決算の銘柄(新興銘柄の47.7%)で、会社側から新たに発表される2022/3期の予想については、非常に予想がつきにくいと思われます。
もっとも、決算発表で強気の見通しが発表されれば、例年よりも反響が大きくなりやすいため、株価が急上昇するケースも出てくることが期待されます。4/23(金)に営業利益8.7%の増益予想を発表したニッポン高度紙工業は、EV(電気自動車)関連銘柄として注目度が高く、発表後の4/26(月)、4/27(火)の2日間で株価はおよそ30%も上昇しました。
また、3月末以外の6月、9月、12月を決算期末とする銘柄も新興市場全体の31%を占めます。2021/6期、2021/9期、2021/12期の業績予想については、未公表の銘柄であれば、新たに発表されるケースもありますが、通常は修正のみと考えられます。今回の対象銘柄は、こうした6月、9月、12月決算銘柄を分析の対象としますが、首尾よく業績予想が上方修正されれば、素直に買われる可能性が大きいです。
図表1 ジャスダック平均・東証マザーズ指数の比較
- ※SBI証券チャートツールを用いてSBI証券が作成。期間:2020/12/28〜2021/4/27(日足)
図表2 おもな新興市場銘柄の値動き
コード | 銘柄名 | 市場 | 株価 (4/27) |
4/20比 | 20/12末比 |
4385 | メルカリ | 東証マザーズ | 5,430 | +1.9% | +19.3% |
6324 | ハーモニック・ドライブ・システムズ | ジャスダックS | 7,380 | -0.7% | -20.0% |
2702 | 日本マクドナルドホールディングス | ジャスダックS | 5,000 | -1.0% | +0.0% |
7564 | ワークマン | ジャスダックS | 7,240 | -6.0% | -17.7% |
4816 | 東映アニメーション | ジャスダックS | 12,240 | +1.6% | +51.3% |
4478 | フリー | 東証マザーズ | 9,250 | -2.6% | +2.3% |
2782 | セリア | ジャスダックS | 4,100 | +0.7% | +8.2% |
4483 | JMDC | 東証マザーズ | 5,060 | -2.3% | -11.6% |
3994 | マネーフォワード | 東証マザーズ | 5,590 | +0.9% | +14.4% |
6027 | 弁護士ドットコム | 東証マザーズ | 10,050 | +0.0% | -1.9% |
【ご参考】 | 日経平均株価 | − | 28,991.89 | -0.4% | +5.6% |
TOPIX | − | 1,903.55 | -1.2% | +5.5% | |
日経ジャスダック平均 | − | 3,912.34 | -0.8% | +5.2% | |
東証マザーズ指数 | − | 1,221.65 | -1.9% | +2.1% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。新興市場(東証マザーズ市場およびジャスダック市場)の時価総額上位10銘柄について、4/27時点での各種騰落率を掲載。なお、変化率は株式分割等も加味した時価総額ベースの変化率です。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
図表3 前週4/20(火)と比較し、株価上昇が大きかったおもな新興市場銘柄
コード | 銘柄名 | 市場 | 株価 (4/27) |
4/20比 | 20/12末比 |
3891 | ニッポン高度紙工業 | ジャスダックS | 3,845 | 23.0% | 50.1% |
6030 | アドベンチャー | 東証マザーズ | 6,470 | 14.1% | 55.7% |
4480 | メドレー | 東証マザーズ | 4,780 | 10.6% | 7.3% |
4582 | シンバイオ製薬 | ジャスダックG | 1,274 | 10.2% | 236.7% |
7826 | フルヤ金属 | ジャスダックS | 9,500 | 8.9% | 57.0% |
1407 | ウエストホールディングス | ジャスダックS | 3,710 | 7.4% | 1.6% |
7071 | アンビスホールディングス | ジャスダックS | 6,370 | 7.1% | 28.2% |
4934 | プレミアアンチエイジング | 東証マザーズ | 11,410 | 7.0% | 38.3% |
4599 | ステムリム | 東証マザーズ | 792 | 6.5% | 26.1% |
7326 | SBIインシュアランスグループ | 東証マザーズ | 1,449 | 6.4% | 9.5% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。新興市場(東証マザーズ市場およびジャスダック市場)の時価総額300億円以上の銘柄について、4/27時点での各種騰落率を掲載。なお、変化率は株式分割等を加味した時価総額ベースです。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
今回は6月、9月、12月決算銘柄の新興市場銘柄(時価総額100億円以上)のうち、決算発表前または発表時に通期会社予想営業利益が上方修正されるか、または強気の営業利益予想が発表されると期待される銘柄を抽出しました。
以下、条件を満たす銘柄について、第3四半期累計の決算発表予定日が早い順に並べたものが図表4です。
(1)東証マザーズ市場またはジャスダック市場に上場している銘柄であること。
(2)時価総額100億円以上の銘柄であること。
(3)決算期末が6月、9月、12月の銘柄であること。
(4)決算発表予定日が5/6(木)以降の銘柄であること。
(5)2020/10〜12期の営業利益について
・営業利益額が5億円以上の黒字となっていること。
・前年同期の営業利益に比べ、黒字転換か10%超の増益になっている銘柄であること。
(6)3月以降、業績予想の修正(配当計画のみの修正や観測報道を除く)が発表されていない銘柄であること。
今回、新たに決算発表される四半期は2021/1〜3月期です。
新型コロナウイルスの感染が続き、国内外で多くの経済活動が制限されている時期です。直前の2020/10〜12期で一定の利益をあげ、コロナ以前となる2019/10〜12期に比べ増益になっているということは、当四半期も好業績をあげている可能性が相対的に大きいと考えられます。
図表4 今期予想営業利益の上方修正等が期待される新興市場銘柄(3月決算銘柄)
取引 | チャート | ポート フォリオ |
コード | 銘柄 | 決算発表 予定 |
株価 (4/27) |
10〜12期 増益率 |
今期予想 営業増益率 |
7643 | 7643 | 7643 | 7643 | ダイイチ(9) | 5/6(木) | 858 | 37.8% | -4.0% |
7716 | 7716 | 7716 | 7716 | ナカニシ(12) | 5/7(金) | 2,291 | 25.4% | 0.0% |
2226 | 2226 | 2226 | 2226 | 湖池屋(6) | ※5/11(火) | 5,040 | 101.7% | 38.2% |
3540 | 3540 | 3540 | 3540 | 歯愛メディカル(12) | 5/11(火) | 6,860 | 294.2% | 1.0% |
2385 | 2385 | 2385 | 2385 | 総医研ホールディングス(6) | 5/12(水) | 544 | 10.6% | 24.0% |
4565 | 4565 | 4565 | 4565 | そーせいグループ(12) | 5/12(水) | 1,774 | 黒転 | - |
7071 | 7071 | 7071 | 7071 | アンビスホールディングス(9) | 5/13(木) | 6,370 | 46.8% | 43.4% |
6411 | 6411 | 6411 | 6411 | 中野冷機(12) | 5/14(金) | 5,710 | 24.9% | 5.9% |
9823 | 9823 | 9823 | 9823 | マミーマート(9) | 5/14(金) | 2,295 | 140.6% | -17.8% |
3674 | 3674 | 3674 | 3674 | オークファン(9) | 5/14(金) | 1,752 | 1874.2% | 58.4% |
- ※Bloombergデータ、会社公表データを用いてSBI証券が作成。銘柄名横の数字は決算期。「10〜12期増益率」は2020/10〜12期の営業増益率(前年同期比)。
- ※湖池屋は5/11(火)ザラ場中での決算発表を予定します。
ここでは図表4に掲載した銘柄について、一部解説します。
ナカニシ(7716) 歯科製品で世界トップクラス。2021/12期は下期から回復傾向
歯科医院用各種機器で世界トップクラスです。
売上構成比(2020/12)は歯科製品が87.8%、工業製品が8.3%です。主力の歯科機器の地域別売上高は欧米を中心に、海外が全体の77%を占め、世界シェアはトップクラスです。
新型コロナウイルスの感染拡大初期は販売活動もできない中、業績が悪化。
2020/12期の営業利益は、第1四半期が前年同期比39%減、第2四半期が同42%減と落ち込みました。しかし、感染予防対策需要の高まりを受け、第3四半期は7.6%増、第4四半期は同25.4%増と回復しました。
業績は回復傾向ですが、2021/12期(通期)は8.1%の営業減益に終わっており、本決算発表の2/12(金)終値2,051円に対し、株価上昇は緩やかにとどまっています。2022/12期は引き続き、業績回復に期待ですが、前下期の補助金効果剥落には注意が必要かもしれません。
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。期間1年(週足)で表示。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
歯愛メディカル(3540) 歯科通販売上高でトップシェア
社名は「シーアイメディカル」と読みます。
医療業界向けに通販などを展開しています。
新型コロナウイルスの感染拡大を背景とするマスク・手袋等の需要拡大や、歯科から介護・福祉・医科等への顧客層の拡大が重なり、短期業績は好調です。
2020/12期は売上高が前期比30%増の37,393百万円、営業利益が同123.9%増の4,702百万円でした。特に第4四半期は前年同期比294%の営業増益。2021/12期は7.3%増収・1%の営業増益となる計画です。
前期は主要顧客の歯科医院が厚生労働省の「新型コロナウイルス感染拡大防止等の支援事業」の対象になっていることが寄与したとしています。同支援事業」は3月末で終わったため、4月以降は反動減に注意する必要がありそうです。
新型コロナウイルスの感染が予想外に長期化していることは、同社にとって追い風となりそうです。
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。期間1年(週足)で表示。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
そーせいグループ(4565) 着実な利益体質に転換してきた創薬ベンチャー
藤沢薬品工業(現在はアステラス製薬)出身で、元ジェネンテック社長の田村眞一氏が創設した創薬バイオベンチャーです。2015/2に480億円でバイオベンチャー企業の英ヘプタレス・セラピュティクス社を買収して以降、安定したマイルストーン(医薬品開発の進捗に従い製薬会社から受領する収益)を得られるようになりました。
主な強みとしては、(1)承認済医薬品からに安定したロイヤリティ収入、(2)治験候補薬を多く生み出す独自技術、(3)自社開発、提携、合弁を組み合わせた柔軟な経営スタイル、(4)320の承認済み特許他豊富なIP(知的財産)の蓄積等があげられます。
足元の2020/10〜12期は営業利益が21.5億円となり、前年同期(3.5億円の営業赤字)から黒字転換となっています。
2021/12期の連結業績予想は開示していませんが、既存提携先とのビジネス最大化や新規提携先の模索を強化するとしています。Bloomberg集計の市場コンセンサスでは、2021/12期27億円、2022/12期は36億円程度の営業利益が見込まれています。着実な利益体質定着が期待できる稀有なバイオベンチャーといえそうです。
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。期間1年(週足)で表示。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
湖池屋(2226) 巣ごもり需要の増加でポテトチップスの販売が拡大
日本ではじめてポテトチップスの量産化を行ない、菓子・スナック事業をメインとしています。 昨年11月から日清食品ホールディングスの子会社となりました。
巣ごもり需要の増加により、ポテトチップスの販売が好調。
2/3(水)に2021年6月期の通期連結業績予想の上方修正を発表。売上高395億円(前期比4.5%増)、営業利益14億円(同38.3%増)と増収増益を見込んでいます。
同社は今年1月、埼玉で関東第三工場の稼働を開始。今年の夏にはポテトチップスなど、ポテト系商品を手掛ける新工場を熊本で稼働させる予定です。九州に工場を作ることで、商品移動の大幅削減による物流費の改善、九州地域での販売拡大をめざすとしています。
完全予約制で製造から3日以内に直送されるお取り寄せのポテトチップス“工場直送便”が累計200万食を突破するなど、話題の人気商品も豊富に取りそろえ、積極的な商品戦略が奏功しています。
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。期間1年(週足)で表示。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
オークファン(3674) ネットオークションの比較サイト「aucfan.com(オークファン)」を運営
ネットオークション、ショッピングサイトから商品の価格比較や出品・購入ができる「aucfan.com(オークファン)」を運営。
この他、Amazonに特化した出品ツールや、企業の在庫管理ツールなど、個人から企業まで幅広いサービスを展開しています。
子会社のSynaBizが運営する「NETSEA(ネッシー)」など国内最大規模のBtoB卸モールにおいて、2021年3月の月間流通額が9.1億円となり、過去最高を更新。
昨年はコロナ禍により、「aucfan.com(オークファン)」への新規アカウント数が増加するなど、明るい話題が続いています。
営業利益は2020/9期の8.2億円に対し、2021/9期は13億円(前期比58.5億円)が見込まれています。第1四半期(2020/10〜12期)にすでに営業利益は12.2億円となり、進捗率は94%に達しますが、投資事業での売却益が寄与しており、慎重にみたと考えられます。
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