新興市場は波乱に巻き込まれています。

米国株式市場では、4月の消費者物価が市場予想を大きく上回る上昇率になったこともあり、グロース銘柄を中心にナスダック市場などが大きく下落する展開となりました。日本でも、大型株より中小型株の下落率が大きい傾向にあり、特に東証マザーズ銘柄の下げが厳しくなっています。

そこで今回は、足元で大きく下げた新興市場銘柄の抽出を行いました。単純に下落した銘柄にとどまらず、テクニカル面や業績面も考慮した銘柄を抜き出しているため、リターンリバーサルに備えた運用の参考にしてはいかがでしょうか。

なお、当ページにつきましては、SBI証券　投資情報部長　鈴木による動画での詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください。新興株ウィークリー
※YouTubeに遷移します。

景気回復期待が高まり、インフレ懸念や金利上昇観測が強まってくると、株式益利回りが低い（PERが高い）グロース銘柄が、バリュー銘柄に比べて売られやすい傾向にあります。
なお、ジャスダック市場は小売・外食・製造業等バリュー銘柄の比率が相対的に高く、東証マザーズ市場は情報通信等グロース銘柄の比率が高くなっています。
米国でインフレ懸念や金利上昇観測が強まってきたこの1ヵ月は、東証マザーズ指数の下げが、ジャスダック市場よりも厳しい状態となっています。（図表１）

そうした中、精密減速機メーカーで半導体関連株でもあるハーモニック・ドライブ・システムズ（6324）の下落が目立ちました。
足元の半導体関連株全般の調整を反映して軟調に推移していましたが、5/14（金）に2021/3期の決算発表を行い、5/17（月）は前週末比720円安と売りが広がりました。
同社の営業利益は2021/3期の8.65億円から、2022/3期は66億円（前期比7.6倍）に増える予想（会社予想）ですが、市場コンセンサス（約89億円）を大きく下回りました。また、同時に発表された中期計画における目標利益も市場の期待と比べると慎重でした。

一方、Ｉ-ne（4933）は5/11（火）3,965円から5/18（火）は5,950円と50.1%の大幅高になりました。化粧品や健康家電、ヘルスケア等を展開する同社は5/14（金）の取引時間中に決算を発表。2021/12期の第1四半期は営業利益が956百万円と、通期計画に対する進捗率が57.9%の好調な決算となりました。なお、決算発表後はそれを好感する動きが続いています。

また、医薬品情報をネット配信し、製薬会社の営業支援を行っているケアネット（2150）も、5/13（木）に決算発表と業績予想の上方修正を発表し、その後の株価は上昇基調となりました。

売られすぎた銘柄を買い戻す「リターンリバーサル」戦略で注目したいのは、下落率の大きい銘柄です。
そこで、今回は足元で株価が大きく下げた新興市場銘柄をランキング形式で掲載します。
ただし、株価が大きく下げた銘柄には、相応の“株価が下げた理由”もあります。特に新興市場銘柄の場合、成長イメージの低下につながる悪材料には注意が必要です。複数の銘柄に分散投資を行うことで、リスク低減を図りたいところです。

銘柄の抽出条件は以下の通りです。
（1）ジャスダック市場または東証マザーズ市場に上場する銘柄であること。
（2）時価総額50億円以上の銘柄であること。
（3）4/22（木）〜5/18（火）の株価下落率が30%を超える銘柄であること。

これらのすべての条件を満たした銘柄を、（3）における株価下落率順に並べたものが図表4です。
参考データとして、52週高値からの下落率も記載しています。

特に、AI　ｉｎｓｉｄｅ（4488）は値下がりが目立ちました。
4/28（水）に「大口販売先ライセンスの不更新見込に関するお知らせ」と題するリリースを発表。業績悪化懸念により株価は、4/30（金）〜5/7（金）の3営業日で56.9%も急落となりました。また、5/12(水）に発表された業績予想では、2022/3期は80.8%の営業減益予想となり、5/13（木）は改めて失望売りとなりました。
なお、5/18（火）時点でも、大きく下げた相場が底入れとなりやすい半値8掛け2割引き（下落率68%）を下回る水準となっています。