米国での長期金利の急上昇や債務上限問題を受けて、9/29(水)の東京市場は波乱でした。
こうした中、第27代自民党総裁に岸田文雄氏が決定。市場の関心は総選挙に移るものとみられます。
今後の新興市場はどうなるのでしょうか。
当面は波乱が続く可能性もありそうですが、新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が解除され、日本の企業活動が本格的に再開することを織り込む展開になるのではないでしょうか。
なお、当ページにつきましてはSBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください。
新興株ウィークリー※YouTubeに遷移します。
■執筆者のプロフィール
SBI証券 投資情報部長 鈴木 英之
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロ(牧野真莉愛推し)の応援と旅行(のりテツ)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
・好きな場所 秋葉原
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
9/21(火)〜9/28(火)の主要株価指数騰落率は、日経平均株価+1.2%、TOPIX+0.8%、日経ジャスダック平均+0.0%、東証マザーズ指数-1.0%でした。
9/21(火)、9/22(水)の株式市場は中国の不動産開発大手、恒大集団の経営危機が懸念され、波乱の展開となりました。米FOMC(米連邦公開市場委員会)を無難に終えると、9/24(金)の東京株式市場は急反発。東証マザーズ市場もそれに連動した動きとなりましたが、翌営業日以降は再び下落に転じています。
9/29(水)の東京株式市場は波乱となり、新興市場も下落しました。ただ、東証マザーズ市場の下落率は日経平均株価よりも少なく、下げは限定的ともみられます。
ただ、今後も米国長期金利の上昇が続いた場合は、日米株式市場でグロース銘柄が売られやすい投資環境になる可能性があるため、注意が必要です。
時価総額上位銘柄の中では、東映アニメーション(4816)やハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)の下げが目立ちました。東映アニメーション(4816)は、新型コロナウイルスの感染者数の減少などを背景に、巣ごもり関連株が売られやすい環境となったことが影響している様子です。一方、ハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)は中国の恒大集団問題で、中国経済と関係が深いロボット関連株が下げた影響を受けました。
また、ウエストホールディングス(1407)の株価下落も目立ちました。総裁選関連銘柄として、再生エネルギー関連銘柄である同社にも注目が集まりましたが、足元では利益確定売りが優勢に。自民党総裁選挙は岸田氏が勝利したことから、当面は逆風が強まるかもしれません。
図表1 日経ジャスダック平均と東証マザーズ指数の推移
- ※SBI証券チャートツールを用いてSBI証券が作成。 ※2020/12/30終値を1として指数化。 期間:2020/12/30〜2021/9/28
図表2 主な新興市場銘柄の値動き
コード | 銘柄名 | 市場 | 株価(9/28) | 週間 | 年初来 |
4385 | メルカリ | 東証マザーズ | 5,980 | -0.2% | 32.9% |
4816 | 東映アニメーション | ジャスダックS | 21,010 | -11.7% | 159.7% |
2702 | 日本マクドナルドホールディングス | ジャスダックS | 5,240 | -0.6% | 4.8% |
6324 | ハーモニック・ドライブ・システムズ | ジャスダックS | 5,760 | -10.0% | -37.5% |
7564 | ワークマン | ジャスダックS | 6,710 | -0.1% | -23.7% |
4478 | フリー | 東証マザーズ | 8,220 | -1.7% | -8.0% |
4483 | JMDC | 東証マザーズ | 7,560 | -0.4% | 32.8% |
2782 | セリア | ジャスダックS | 3,980 | -3.4% | 5.0% |
4194 | ビジョナル | 東証マザーズ | 7,100 | 1.6% | - |
1407 | ウエストホールディングス | ジャスダックS | 5,220 | -10.5% | 43.0% |
【ご参考】 | 日経平均株価 | - | 30,183.96 | 1.2% | 10.0% |
TOPIX | - | 2,081.77 | 0.8% | 15.4% | |
日経ジャスダック平均 | - | 4,065.65 | 0.0% | 9.3% | |
東証マザーズ指数 | - | 1,127.36 | -1.0% | -5.8% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
- ※新興市場(マザーズおよびジャスダック)の前月末時価総額上位10銘柄について、9/28時点での各種騰落率を掲載。
- ※「週間」は9/21〜9/28の騰落率。
- ※個別銘柄の「年初来」は昨年末時価総額と9/28時点の時価総額の比較。「-」は昨年末時点で上場していない銘柄。
- ※指数の「年初来」は株価による単純計算。 ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
図表3 9/21(火)〜9/28(火)で株価上昇が大きかった新興市場銘柄
コード | 銘柄名 | 市場 | 株価(9/28) | 週間 | 年初来 |
4051 | GMOフィナンシャルゲート | 東証マザーズ | 31,050 | 26.7% | 88.6% |
5381 | Mipox | ジャスダックS | 1,280 | 23.1% | 236.0% |
7320 | 日本リビング保証 | 東証マザーズ | 3,295 | 21.2% | 59.9% |
6626 | SEMITEC | ジャスダックS | 11,280 | 16.9% | 119.5% |
4487 | スペースマーケット | 東証マザーズ | 1,048 | 16.7% | 37.8% |
7379 | 株式会社サーキュレーション | 東証マザーズ | 3,685 | 15.2% | - |
4837 | シダックス | ジャスダックS | 520 | 14.8% | 108.0% |
4490 | ビザスク | 東証マザーズ | 6,910 | 13.7% | 56.6% |
4175 | coly | 東証マザーズ | 4,130 | 13.2% | - |
4178 | Sharing Innovations | 東証マザーズ | 3,385 | 12.9% | - |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
- ※新興市場(マザーズおよびジャスダック・前月末時価総額100億円以上)において、週間の株価上昇率が大きい上位10銘柄を掲載。
- ※「週間」は9/21〜9/28の騰落率
- ※「年初来」は昨年末時価総額と9/28時点の時価総額の比較。「-」は昨年末時点で上場していない銘柄。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
10月相場はどうなるのでしょうか。
米国での長期金利の急上昇や債務上限問題や、中国の恒大集団問題など、不透明な要因は少なくありません。そこで、9月に大きく上昇、下落した銘柄に注目し、10月に活躍が期待される銘柄をご紹介します。
図表4は、9月(8/31〜9/28)の新興市場で上昇した銘柄(時価総額100億円以上)、図表5は同下落した銘柄の、各々上位10銘柄を掲載しました。また、この中から足元の四半期営業利益が増益の銘柄を図表6として取り上げました。
これらの銘柄の中には、新型コロナウイルスの感染収束後の企業活動再開で注目されそうな銘柄や、岸田新総裁の政策で注目されそうな銘柄も見受けられます。
なお、10月下旬からは多くの企業で2021/7〜9期の四半期決算が発表される予定で、好業績銘柄が見直される可能性が期待されます。
図表4 新興市場の9月(8/31〜9/28)値上がり率上位
コード | 銘柄名 | 市場 | 株価(9/28) | 8/31との比較 | 年初来 |
7298 | 八千代工業 | ジャスダックS | 989 | 62.1% | 69.6% |
4051 | GMOフィナンシャルゲート | 東証マザーズ | 31,050 | 53.6% | 88.6% |
4490 | ビザスク | 東証マザーズ | 6,910 | 52.4% | 56.6% |
4169 | ENECHANGE | 東証マザーズ | 3,440 | 44.2% | 67.4% |
6626 | SEMITEC | ジャスダックS | 11,280 | 32.7% | 119.5% |
4475 | HENNGE | 東証マザーズ | 6,430 | 32.6% | -21.6% |
7089 | フォースタートアップス | 東証マザーズ | 4,315 | 30.6% | 254.8% |
3628 | データホライゾン | 東証マザーズ | 2,003 | 27.9% | 59.4% |
6957 | 芝浦電子 | ジャスダックS | 6,340 | 27.6% | 103.2% |
5381 | Mipox | ジャスダックS | 1,280 | 26.4% | 236.0% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
- ※新興市場(マザーズおよびジャスダック・前月末時価総額100億円以上)において、株価上昇率が大きい上位10銘柄を掲載。
- ※「8/31との比較」は8/31〜9/28の騰落率。
- ※「年初来」は昨年末時価総額と9/28時点の時価総額の比較。「-」は昨年末時点で上場していない銘柄。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
図表5 新興市場の9月(8/31〜9/28)値下がり率上位
コード | 銘柄名 | 市場 | 株価(9/28) | 8/31との比較 | 年初来 |
3491 | GAtechnologies | 東証マザーズ | 1,028 | -47.3% | -60.9% |
2978 | ツクルバ | 東証マザーズ | 1,001 | -28.4% | 51.2% |
4584 | キッズウェル・バイオ | 東証マザーズ | 605 | -24.8% | 31.7% |
4177 | i−plug | 東証マザーズ | 5,180 | -21.8% | - |
6034 | MRT | 東証マザーズ | 1,895 | -21.7% | 29.8% |
8256 | プロルート丸光 | ジャスダックS | 290 | -21.4% | 50.5% |
4699 | ウチダエスコ | ジャスダックS | 2,527 | -19.5% | -14.5% |
4167 | ココペリ | 東証マザーズ | 3,410 | -19.1% | -49.6% |
2315 | CAICA | ジャスダックS | 167 | -18.1% | 86.0% |
3914 | JIG-SAW | 東証マザーズ | 8,120 | -17.0% | -27.2% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
- ※新興市場(マザーズおよびジャスダック・前月末時価総額100億円以上)において、株価下落率が大きい上位10銘柄を掲載。
- ※「8/31との比較」は8/31〜9/28の騰落率。
- ※「年初来」は昨年末時価総額と9/28時点の時価総額の比較。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
図表6 10月に活躍が期待される銘柄とは
取引 | チャート | ポート フォリオ |
コード | 銘柄 | 株価(9/28) | 直近決算期 | 営業増益率 |
3914 | 3914 | 3914 | 3914 | JIG-SAW(12) | 8,120 | 2021/4〜6期 | 31.8% |
4051 | 4051 | 4051 | 4051 | GMOフィナンシャルゲート(9) | 31,050 | 2021/4〜6期 | 108.5% |
4167 | 4167 | 4167 | 4167 | ココペリ(3) | 3,410 | 2021/4〜6期 | - |
4490 | 4490 | 4490 | 4490 | ビザスク(2) | 6,910 | 2021/3〜5期 | 1600.0% |
5381 | 5381 | 5381 | 5381 | Mipox(3) | 1,280 | 2021/4〜6期 | 黒字転換 |
6034 | 6034 | 6034 | 6034 | MRT(12) | 1,895 | 2021/4〜6期 | 203.8% |
6626 | 6626 | 6626 | 6626 | SEMITEC(3) | 11,280 | 2021/4〜6期 | 60.9% |
- ※Bloombergデータ、会社公表データを用いてSBI証券が作成。
- ※銘柄名の右側カッコ内の数字は決算月。
- ※「直近決算期」は本決算の場合は通期、四半期の場合は直近四半期(3ヵ月)。
- ※ココペリの直近四半期営業利益は、前年同期の数字がないため、「-」で表示。通期予想営業利益(会社予想)に対する進捗率は40.8%。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
以下、図表6から一部の銘柄について、その投資ポイントをご紹介します。
ココペリ(4167) 格差是正を主張する岸田新総裁の政策と親和性も
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
- 期間:2021/4/2〜2021/9/29(日足)
■中小企業を支援
中小企業向け経営支援プラットフォーム「Big Advance」を中心に、企業のビッグデータを活用したAIモジュール「FAI」、中小企業および個人事業主向け経営支援サービス「ITサポートサービス」などの提供を手掛けています。
「Big Advance」はSaaS型の中小企業向け経営支援プラットフォームで、日本全国の地域金融機関に対して提供しています。また、「FAI」は企業のビッグデータを分析、予測するAIモジュールです。
「ITサポートサービス」では、士業が効率的に企業を支援できるよう、税理士の業務・顧問先管理ツールや、士業事務所などのホームページの作成などを行っています。
このうち、経営支援プラットフォーム「Big Advance」は、新型コロナウイルスにより深刻な影響を受けている中小企業に対し、地域を超えて全国の企業とオンラインでビジネスマッチングが可能な点、取引金融機関とチャットでのコミュニケーションが可能な点などにおいて優位性を発揮しています。
■業績好調。岸田新総裁の政策にも関連か
2022/3期・第1四半期の営業利益は1.47億円でした。前年同期との比較はできませんが、通期会社予想営業利益3.6億円に対し、進捗率は約40%で、好調なスタートと言えそうです。
岸田新総裁は格差是正や地方再生を重視しているとみられ、当社の事業はそれに寄与すると考えられます。また、主要顧客の業績が新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けているとみられるため、収束後の業績が期待されます。
SEMITEC(6626) サーミスタ市場の拡大に期待
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
- 期間:2021/4/2〜2021/9/29(日足)
■EV向けに拡大が予想されるサーミスタの大手
サーミスタとは、温度の変化によって電気の抵抗が変化する温度センサ(半導体)の一種です。自動車や空調など幅広い用途に用いられています。サーミスタの市場規模は世界で1,500億円程度とみられていますが、環境保全や5Gの整備等で今後サーミスタが用いられる場面は増加することが見込まれており、着実な成長が期待されます。同社はサーミスタの専業メーカーの一社です。競合他社は芝浦電子(6957)や、大泉製作所(6618)などがあります。
8/12(木)に2022/3期・第1四半期決算を発表。通期の予想営業利益を21億円から30億円に上方修正し、株価は8/12(木)の5,500円から9/27(月)には12,070円(年初来高値)まで2.2倍に上昇しました。
なお、8月の値上がり率上位に入っている芝浦電子(6957)はライバル企業です。
■成長性への評価が継続する可能性も
2022/3期は同社に限らず、競合他社も大幅営業増益が期待され、サーミスタ市場が拡大傾向にあることを示唆しています。なお、EV(電気自動車)の拡大で、車載市場のサーミスタ需要は2019年から2030年にかけて、数量ベースで7割程度増えると分析されています。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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