10月初旬に安値を付けた日本株市場ですが、まだまだ不安定な値動きが続いています。それを受けて新興株市場も上値の重い展開が続いており、日経ジャスダック平均、東証マザーズ指数ともに、9月末終値から低迷しています。
株価の上値が重い理由の1つに、インフレ懸念が挙げられます。
米国の長期金利が上昇し、世界的に株高がストップしている一方、こうした投資環境を逆手に、ある投資テーマに注目が高まっています。
その投資テーマとは!?
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■執筆者のプロフィール
SBI証券 投資情報部長 鈴木 英之
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロ(牧野真莉愛推し)の応援と旅行(のりテツ)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
・よくいくところ 京都
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
10/5(火)〜10/12(火)の東京株式市場は、日経平均株価が+1.5%、TOPIXが+1.8%、日経ジャスダック平均が+1.3%、東証マザーズ指数が+2.0%と、いずれも上昇を維持しました。
ただ、10/6(水)は日経ジャスダック平均、東証マザーズ指数が共におよそ1ヵ月半ぶりの安値水準となるなど、依然として不安定な展開が続いています。
こうした中、新興市場の時価総額上位企業の中では、会員制転職サービスのビズリーチを展開するビジョナル(4194)が堅調で、10/11(月)に8,000円の年初来高値を更新しました。前期の業績が予想を上回って着地したことに加え、今期も12.8%の営業増益を予想しており、好業績が評価されているようです。
新興市場(時価総額100億円以上)で値上がり率トップは、不動産開発の霞ヶ関キャピタル(3498)でした。
10/6(水)に決算発表を行い、前期大幅増益に続き、今期も39.3%の営業増益を見込むとしました。これを受けて株価は10/7(木)・10/8(金)に合わせておよそ31%も上昇しました。
図表1 日経ジャスダック平均と東証マザーズ指数の推移
- ※SBI証券チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※2020/12/30終値を1として指数化。
- 期間:2020/12/30〜2021/10/12
図表2 主な新興市場銘柄の値動き
コード | 銘柄名 | 市場 | 株価(10/12) | 週間 | 年初来 |
4385 | メルカリ | 東証マザーズ | 6,410 | 3.4% | 42.5% |
4816 | 東映アニメーション | ジャスダックS | 20,250 | 0.8% | 150.3% |
2702 | 日本マクドナルドホールディングス | ジャスダックS | 5,170 | -0.6% | 3.4% |
7564 | ワークマン | ジャスダックS | 6,230 | 2.3% | -29.2% |
6324 | ハーモニック・ドライブ・システムズ | ジャスダックS | 4,740 | -7.6% | -48.6% |
4478 | フリー | 東証マザーズ | 7,890 | 0.6% | -11.7% |
4483 | JMDC | 東証マザーズ | 6,940 | 3.3% | 21.9% |
2782 | セリア | ジャスダックS | 3,935 | 0.0% | 3.8% |
4194 | ビジョナル | 東証マザーズ | 7,830 | 6.2% | - |
1407 | ウエストホールディングス | ジャスダックS | 5,020 | 4.7% | 37.5% |
【ご参考】 | 日経平均株価 | - | 28,230.61 | 1.5% | 2.9% |
TOPIX | - | 1,982.68 | 1.8% | 9.9% | |
日経ジャスダック平均 | - | 3,975.34 | 1.3% | 6.9% | |
東証マザーズ指数 | - | 1,100.00 | 2.0% | -8.1% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
- ※新興市場(マザーズおよびジャスダック)の前月末時価総額上位10銘柄について、10/12時点での各種騰落率を掲載。
- ※「週間」は10/5〜10/12の騰落率。
- ※個別銘柄の「年初来」は昨年末時価総額と10/12時点の時価総額の比較。「-」は昨年末時点で上場していない銘柄。
- ※指数の「年初来」は株価による単純計算。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
図表3 10/5(火)〜10/12(火)で株価上昇が大きかった新興市場銘柄
コード | 銘柄名 | 市場 | 株価(10/12) | 週間 | 年初来 |
3498 | 霞ヶ関キャピタル | 東証マザーズ | 3,070 | 34.5% | 75.1% |
4169 | ENECHANGE | 東証マザーズ | 4,775 | 26.8% | 132.3% |
6580 | ライトアップ | 東証マザーズ | 3,795 | 24.6% | 102.4% |
7082 | ジモティー | 東証マザーズ | 3,930 | 18.7% | 42.0% |
3542 | ベガコーポレーション | 東証マザーズ | 1,342 | 17.9% | -27.7% |
4490 | ビザスク | 東証マザーズ | 6,470 | 17.6% | 46.6% |
7379 | サーキュレーション | 東証マザーズ | 3,505 | 16.9% | - |
7228 | デイトナ | ジャスダックS | 4,195 | 14.9% | 103.8% |
7036 | イーエムネットジャパン | 東証マザーズ | 2,950 | 12.9% | 166.4% |
7320 | 日本リビング保証 | 東証マザーズ | 3,400 | 12.0% | 65.0% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
- ※新興市場(マザーズおよびジャスダック・前月末時価総額100億円以上)において、週間の株価上昇率が大きい上位10銘柄を掲載。
- ※「週間」は10/5〜10/12の騰落率
- ※「年初来」は昨年末時価総額と10/12時点の時価総額の比較。「-」は昨年末時点で上場していない銘柄。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
新型コロナウイルスの感染拡大がピークアウトする中、世界の株式市場では欧米を中心に経済再開の動きが本格化して、株価も上昇してきました。ただ、新型コロナウイルスの1日当たりの新規感染者数は、米国で10万人前後、英国で数万人程度と高水準にあり、景況感の回復に水を差しかねない状態です。
一方、エネルギー価格の上昇など、複数の要因からインフレ圧力の高まりがみられます。株式市場の一部では、景気停滞と物価上昇が並立する“スタグフレーション”を警戒する声も出ています。こうした中、株式市場ではインフレ率の上昇に強い銘柄へ資金を向ける動きが強まり、米国などではエネルギー株などの上昇が目立っています。
そこで今回は、株式市場で注目が強まっている“3R”について、関連する企業の好業績銘柄を抽出しました。
≪“3R”とは≫
Reduce(減量)・・・・資源をなるべく使わない
Reuse(再使用)・・・・資源を何回も使う
Recycle(再生)・・・・原料に再生して何回も使う
上記3つを含めた概念で、基本的には環境保全を目的とした循環型社会の提唱を示しています。しかし、エネルギーや素材の価格が上昇するインフレ局面では、企業業績の悪化を防ぐ役割も期待できそうです。10/10(日)付の日経ヴェリタスでは、機関投資家の見方として、“金属リサイクル”関連企業が紹介されていました。
以下、全ての条件を満たした銘柄が図表4です。
(1)ジャスダック市場または東証マザーズ市場に上場。
(2)各種報道、SBI証券WEBサイト・検索ウインドウ等を用い、「リユース」または「リサイクル」で抽出。
(3)直近の四半期(3ヵ月)営業利益が前年同期比で増益。
(4)直近10営業日で、最も売買高が少ない日でも1万株以上あること。
図表4 “インフレ”警戒の中、注目が高まる「リユース」・「リサイクル」関連銘柄
取引 | チャート | ポート フォリオ |
コード | 銘柄 | 株価(10/12) | 決算発表 予定日 |
企業概要 |
5699 | 5699 | 5699 | 5699 | イボキン | 6390 | 11/12(金) | 総合リサイクル企業として解体、環境、金属など、各事業を展開 |
5724 | 5724 | 5724 | 5724 | アサカ理研 | 1,490 | 11/12(金) | 廃棄された電子部品など「都市鉱山」から貴金属のリサイクルを行う |
7082 | 7082 | 7082 | 7082 | ジモティー | 3,930 | 11/15(月) | 地域の情報掲示板「ジモティー」を運営 |
7610 | 7610 | 7610 | 7610 | テイツー | 84 | 10/15(金) | 書籍・ゲームなどの中古品や新品の販売、リユース事業を展開 |
7826 | 7826 | 7826 | 7826 | フルヤ金属 | 7,650 | 11/5(金) | 希少な貴金属(PGM)の開発・製造・販売を手掛ける |
9270 | 9270 | 9270 | 9270 | バリュエンスホールディングス | 3,100 | 10/14(木) | ブランド品・貴金属等を買い取り、オークションなどで販売 |
- ※報道、会社資料等をもとにSBI証券が作成。
- ※「決算発表予定日」は、当社Webサイトに掲載の日付を参照。
決算発表予定日が接近している銘柄があります。決算発表前後に株価が大きく変動する場合がありますので、十分ご注意ください。
以下、一部の銘柄について、投資ポイントをご紹介します。
イボキン(5699) 資源循環型社会形成のための総合リサイクル事業を手掛ける
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
- 期間:2021/7/19〜2021/10/13(日足)
■廃棄物リサイクル専門企業
資源循環型社会形成のための総合リサイクル事業として、解体事業、環境事業、金属事業を手掛けています。
主要セグメントは以下の通りです。
・解体事業(上半期売上構成比28.4%)
あらゆる建築構造物を解体・撤去。発生した産業廃棄物をリサイクル。
・環境事業(同22.3%)
産業廃棄物を収集・運搬し、自社工場で選別・加工した後、再生資源として販売。
・金属事業(同49.3%)
各種産業活動から発生する鉄や非鉄を自社工場で選別・加工した後、鉄鋼メーカーに出荷。
■2021/12期・上半期は売上高・利益とも急拡大
2021/12期・上半期は売上高42.4億円(前年同期比67.7%増)、営業利益5.9億円(同208.2%増)と急拡大。解体事業や工事現場から発生するスクラップの買い取り、産業廃棄物収集運搬、中間処理サービスを一括して提供する「ワンストップ・サービス」の貢献に加え、スクラップ価格の高止まりが寄与しました。
2021/12期は売上高84.7億円(前期比55.4%増)、営業利益7.1億円(同73.7%増)、EPS274.02円が会社計画です。足元の好業績を好感して、10/12(火)取引時間中に、6,520円の年初来高値を付けました。
アサカ理研(5724) 都市鉱山から貴金属を回収する“SDGs企業”
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
- 期間:2021/7/19〜2021/10/13(日足)
■不良品や基板くず等の「都市鉱山」から貴金属を回収し再資源化
パソコンや携帯電話などの製造工程で発生する不良品や、基板くず等の中には有用な金属資源が含まれています。当社はそんな「都市鉱山」から、貴金属を分離・回収し、分析・精製処理し、再び地金や材料に再生し、商社(三菱商事系が中心)を経由して、世の中に還流する事業を展開しています。
2015年9月に、国連サミットで人類が持続するための国際的な開発目標として“SDGs”が採択されましたが、同社の事業は“SDGs”に貢献するとみられます。
また、かつて日本は希少金属であるレアメタルが、生産国である中国による禁輸措置で、調達できなくなるリスクにさらされましたが、都市鉱山の活用は、経済安保の側面でも重要と言えそうです。
■今期業績予想を上方修正
業績は好調。8/13(金)に会社側は、2021/9期・通期業績予想について、売上高76億円から80.4億円(前期比8.5%増)、営業利益2.5億円から4.0億円(同376.5%増)と上方修正しました。
貴金属市況が上昇してきたことが好業績の要因とみられます。
2022/9期も高水準の利益が期待できそうですが、伸び鈍化には注意が必要でしょう。
フルヤ金属(7826) 工業用貴金属(プラチナグループ・メタル)に特化。有機EL発光材料でシェア90%
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
- 期間:2021/7/19〜2021/10/13(日足)
■プラチナグループ・メタルに特化
プラチナグループ・メタルの中でも加工の難しいイリジウム・ルテニウム等を原材料に使う貴金属製品メーカーです。
主要セグメントは以下の通りです。
・電子(2021/6期売上構成比17.7%)
ルツボ、ガラス向け溶解装置。
・薄膜(同27.8%)
HDDや半導体の薄膜形成に使うターゲット材。
・センサー(同10.8%)
半導体製造装置に付属する温度計として。
・ケミカル(同35.3%)
貴金属化合物。回収・リサイクルも。
2021/6期は、売上高338億円(前期比48.3%増)、営業利益104.5億円(同184.1%増)と急拡大。全分野増収・増益で、特にケミカルの増加が顕著でした。海外売上高は2016/6期21.3%から、2021/6期には62.0%と伸びています。
2022/6期も増収・増益の見込み。会社側は売上高423億円(前期比25%増)、営業利益118億円(同12.9%)、EPS1,162円41銭の計画です。ただ、市場コンセンサスを見る限り、2023/3期は一時的に停滞する可能性もあります。
■有機EL用イリジウム化合物で世界シェア90%
同社はプラチナグループ・メタルを南アフリカから安定調達し、製品に加工しています。さらに顧客が使用し摩耗した使用済み製品を回収し、再び再資源化できるのが大きな強みで、地球環境へも貢献できているといえそうです。
2021年上半期から2025年下半期にかけて、約2倍に市場が拡大すると予想(フルヤ金属調べ)される有機EL市場で、同社は発光材用のイリジウム化合物で世界シェア90%(同社資料)を有しており、有機EL市場の成長を強く享受できることが期待されます。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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