東京株式市場は上値の重い展開です。
日経平均株価29,000円〜29,500円あたりはテクニカル的に数多くの節目が集中しており、この前後では株価の動きが変動しやすい傾向にあるとみられます。市場参加者は衆議院選挙や決算発表の動向に神経質となり、先物主導の動きに振り回されやすくなってもいるようです。
こうした中、新興市場でも決算発表がスタートしています。
東証マザーズ市場の弁護士ドットコム(6027)は10/26(火)に、市場予想を上回る好業績となり、10/27(水)にはストップ高水準まで買われました。そこで、今回はアナリストが当面利益成長を予想している銘柄の中から、好業績が期待できる銘柄を抽出しました。
なお、当ページにつきましてはSBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください。
新興株ウィークリー※YouTubeに遷移します。
■執筆者のプロフィール
SBI証券 投資情報部長 鈴木 英之
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロ(牧野真莉愛推し)の応援と旅行(のりテツ)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
・好きな場所 秋葉原(末広町)
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
東京株式市場は上値の重い展開ですが、新興市場も同様の動きになっています。
衆議院選挙や決算発表を控えているという点では、新興市場も大型株の市場と投資環境に違いはなく、当面は明暗が分かれる決算発表に一喜一憂する展開になるものと思われます。
新興市場で時価総額トップのメルカリ(4385)は反落しました。
10/19(火)に6,980円の上場来高値を付けましたが、特に悪材料が出た訳ではなく、10/20(水)以降は利益確定売りに押される形になりました。なお、10/22(金)にアナリストが目標株価を引き上げています。
今期(2022/6期)、市場では100億円超の営業利益を予想。第1四半期(10/29発表予定)については5億円弱の同黒字になると予想しています。
また、ジャスダック市場時価総額トップの東映アニメーション(4816)は急落しました。
特に10/26(火)は前日比2,110円(10.3%)安となりました。10/25(月)に決算発表を実施し、2022/3期の業績予想を上方修正。営業利益については35億円増額の145億円に修正しました。しかし、市場では約162億円を予想していたことから、逆に失望売りとなった格好です。
この他にも、決算発表や業績予想の上方修正によって大幅高する銘柄が散見されました。
中小企業向けに、法人営業支援サービスを手掛けるアイドマ・ホールディングス(7373)は10/15(金)に好決算と強い業績見通しを発表して、週明け10/18(月)はストップ高まで買われ、その後も買い基調が続きました。
図表1 日経ジャスダック平均と東証マザーズ指数の推移
- ※SBI証券チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※2020/12/30終値を1として指数化。
- 期間:2020/12/30〜2021/10/26
図表2 主な新興市場銘柄の値動き
コード | 銘柄名 | 市場 | 株価(10/26) | 週間 | 年初来 |
4385 | メルカリ | 東証マザーズ | 6,500 | -6.5% | 42.08% |
4816 | 東映アニメーション | ジャスダックS | 18,330 | -12.3% | 127.97% |
2702 | 日本マクドナルドホールディングス | ジャスダックS | 5,020 | -2.0% | 0.40% |
6324 | ハーモニック・ドライブ・システムズ | ジャスダックS | 5,410 | 1.1% | -41.14% |
7564 | ワークマン | ジャスダックS | 6,160 | -1.1% | -29.42% |
4483 | JMDC | 東証マザーズ | 8,560 | 4.1% | 46.58% |
4478 | フリー | 東証マザーズ | 8,160 | -0.5% | -19.21% |
4194 | ビジョナル | 東証マザーズ | 8,500 | -1.6% | - |
2782 | セリア | ジャスダックS | 3,680 | -4.5% | -1.15% |
1407 | ウエストホールディングス | ジャスダックS | 6,240 | -1.1% | 72.81% |
【ご参考】 | 日経平均株価 | - | 29,106.01 | -0.4% | 6.1% |
TOPIX | - | 2,018.40 | -0.4% | 11.8% | |
日経ジャスダック平均 | - | 4,001.49 | -0.8% | 7.6% | |
東証マザーズ指数 | - | 1,120.55 | -1.8% | -6.3% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
- ※新興市場(マザーズおよびジャスダック)の前月末時価総額上位10銘柄について、10/26時点での各種騰落率を掲載。
- ※「週間」は10/19〜10/26の騰落率。
- ※個別銘柄の「年初来」は昨年末時価総額と10/26時点の時価総額の比較。「-」は昨年末時点で上場していない銘柄。
- ※指数の「年初来」は株価による単純計算。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
図表3 10/19(火)〜10/26(火)で株価上昇が大きかった新興市場銘柄
コード | 銘柄名 | 市場 | 株価(10/26) | 週間 | 年初来 |
7373 | アイドマ・ホールディングス | 東証マザーズ | 8,730 | 30.3% | - |
7036 | イーエムネットジャパン | 東証マザーズ | 3,635 | 25.2% | 224.05% |
3936 | グローバルウェイ | 東証マザーズ | 6,590 | 24.1% | 2330.3% |
2315 | CAICA | ジャスダックS | 205 | 23.5% | 28.13% |
7095 | Macbee Planet | 東証マザーズ | 10,560 | 20.8% | 146.44% |
2158 | FRONTEO | 東証マザーズ | 2,553 | 20.2% | 313.78% |
4075 | ブレインズテクノロジー | 東証マザーズ | 2,519 | 16.9% | - |
3498 | 霞ヶ関キャピタル | 東証マザーズ | 3,730 | 16.6% | 112.19% |
4397 | チームスピリット | 東証マザーズ | 1,040 | 15.7% | -46.88% |
5381 | Mipox | ジャスダックS | 1,350 | 14.4% | 254.33% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
- ※新興市場(マザーズおよびジャスダック・前月末時価総額100億円以上)において、週間の株価上昇率が大きい上位10銘柄を掲載。
- ※「週間」は10/19〜10/26の騰落率
- ※「年初来」は昨年末時価総額と10/26時点の時価総額の比較。「-」は昨年末時点で上場していない銘柄。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
決算発表シーズンを迎えた今、アナリストが中期的に高めの成長を予想し、足元も好業績が見込めそうな新興銘柄を抽出します。なお、今回はDXや半導体等、新興市場の主力テーマを意識し、それに関わりが深いとされる4業種の銘柄に絞りました。
以下、すべての条件を満たし、四半期累計増益率の高い順に掲載したものが図表4です。
(1)ジャスダック市場または東証マザーズ市場に上場している銘柄。
(2)時価総額100億円以上。
(3)情報・通信、サービス、電気機器、化学に属している銘柄。
(4)アナリスト2名以上が予想EPSを公表している銘柄。
(5)今期の市場予想EPSが過去4週間で横ばい、または上昇。
(6)四半期増益率が今期市場予想増益率を上回っている。
(7)今期・来期市場予想営業利益がともに、10%以上の増益予想。
なお、前週も好業績銘柄という意味で共通項があり、重複している銘柄がありますので、それらは除外しました。
図表4 アナリストが成長を予想する好業績期待銘柄とは
取引 | チャート | ポートフォリオ | コード | 銘柄 | 株価(10/26) | 決算発表予定日 | 今期増益率 | 来期増益率 | 四半期累計増益率 |
6890 | 6890 | 6890 | 6890 | フェローテックホールディングス | 3,715 | 11/12 | 125.1% | 15.8% | 208.7% |
4293 | 4293 | 4293 | 4293 | セプテーニ・ホールディングス | 444 | 10/28 | 83.2% | 13.6% | 153.1% |
6957 | 6957 | 6957 | 6957 | 芝浦電子 | 6,350 | 11/8 | 54.1% | 11.7% | 210.7% |
4800 | 4800 | 4800 | 4800 | オリコン | 978 | 11/5 | 27.2% | 11.5% | 69.3% |
4496 | 4496 | 4496 | 4496 | コマースOneホールディングス | 1,540 | 11/12 | 18.0% | 21.5% | 29.6% |
9467 | 9467 | 9467 | 9467 | アルファポリス | 3,170 | 11/11 | 11.0% | 27.1% | 17.2% |
6027 | 6027 | 6027 | 6027 | 【ご参考】弁護士ドットコム | 5,740 | 10/26※発表済み | 263.4% | 92.8% | 318.4% |
- ※Bloombergデータ、会社公表データをもとにSBI証券が作成。
- ※「今期増益率」、「来期増益率」共に、Bloomberg集計の市場コンセンサスベースの予想営業増益率。
- ※「四半期累計増益率」は第1四半期までの累計営業増益率。ただし、セプテーニ・ホールディングスは第3四半期までの累計営業増益率、弁護士ドットコムは第2四半期までの累計営業増益率。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
以下、一部の銘柄について、ポイントをご紹介します。
フェローテックホールディングス(6890) 新興市場の有力半導体関連銘柄
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
- 期間:2021/5/6〜2021/10/27(日足)
■コア技術で高シェア
1980年に米国企業の子会社として、コンピュータシール、真空シール、磁性流体の輸入販売を目的として設立。
現在は、アポロ計画から誕生した磁性流体と、冷熱素子サーモモジュールをコア技術とし、前者では65%、後者では36%の世界シェア(会社公表値)を有しています。当社の製品は電子機器や自動車、医療機器など幅広い分野で用いられています。
日本にとどまらず、中国、米国、欧州など世界に46の製造販売拠点を有し、約7,000人の社員を擁するグローバル企業です。海外売上高比率は約8割に達しています。
真空シールや石英製品など、当社の製品や技術は、半導体の幅広い分野で用いられています。8インチ以下の小口径シリコンウェハについては、原材料から製品まで一貫して生産できる体制にあります。
■8月に業績予想を上方修正
当社は期初、2022/3期は売上高1,050億円(前期比15.0%増)、営業利益150億円(同55.6%増)への拡大を見込んでいました。しかし、8/13(金)に上方修正を発表し、営業利益は200億円の見通しになりました。
市場コンセンサスでは、2023/3期、2024/3期ともに10%以上の売上高増、営業増益が予想されています。これに対して予想PERは7倍超(会社予想ベース・10/27現在)と、成長期待への評価は十分でないように感じられます。
このように利益水準も高い上、時価総額は1,458億円(10/27現在)あります。特定株主が占める比率も低いことから、再編後の東証では「プライム市場」上場への期待が高まり、株式市場での話題になっているようです。
オリコン(4800) 音楽だけにとどまらず、提供ランキングは191種類にも及ぶ
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
- 期間:2021/5/6〜2021/10/27(日足)
■コミュニケーション事業が主力
顧客満足度調査事業とニュース配信・PV(ページビュー)事業を行う「コミュニケーション事業」が主力で、売上高構成比(2022/3期・第1四半期)は74.8%です。その他に「データサービス事業」や「モバイル事業」を手掛けています。
2022/3期・第1四半期の業績は好調。売上高11億円(前年同期比14.3%)、営業利益3.6億円(同69.3%増)と増収増益でした。顧客満足度調査が前年同期比31%増、ニュース配信・PV(ページビュー)事業が同20.7%と、共に拡大しました。 通期では売上高44.6億円(前期比10.7%増)、営業利益12.3億円(同16.3%増)が会社予想。市場では今期13億円台半ば、来期は15億円前後の営業利益を見込んでいるようです。
■着実な業績拡大。ROE上昇にも努力
「コミュニケーション事業」で提供するオリコン顧客満足度調査は保険、金融、塾、スクール、生活、通信、住宅、小売、トラベル、美容、スポーツ&ヘルス、ウエディング、人材、レジャー、ビジネスなど幅広いランキングを提供しています。提供ランキング数は第1四半期末で191種類で、前年同期比では10種類増加しました。
2017/3期から2021/3期にかけ、自己資本比率は63.0%から82.7%、ROE(株主資本利益率)は17.6%から25.9%と、共に強化。財務体質改善と資本効率強化を同時に実現していることは評価に値されます。足元でのROEは、2020/3期から2021/3期にかけて1.2ポイント低下していましたが、8月には自己株式の取得を発表しています。
好業績や経営努力を踏まえると、株価は割安感が強いと考えられます。なお、市場コンセンサスでみた予想PERは10/27(水)現在で14倍前後にとどまっています。
【ご参考】弁護士ドットコム(6027) 10/26(火)に決算発表。業績拡大シナリオは維持か
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
- 期間:2021/5/6〜2021/10/27(日足)
■弁護士へのマーケティング支援サービスを中心に提供
インターネットを通じた弁護士へのマーケティング支援サービスを中心に提供しています。
主力サイト「弁護士ドットコム」は2.1万人の弁護士が登録し、有料でプロフィールや得意分野の登録を行うことができます。
弁護士が監修した電子契約サービスであるクラウドサインも着実に成長。8/30(月)に富士キメラ総研が発表したレポートでは、同社の電子契約サービス(有償プラン)が導入企業数において、市場占有率トップとなりました。紙と印鑑をクラウドに置き換える同サービスは、DX事業の中核であり、同社の魅力の1つと言えるでしょう。
■決算発表後にストップ高。その後をどう予想するか。
10/26(火)に2022/3期・第2四半期決算(累計)を発表。売上高は31.8億円(前年同期比30.6%増)、営業利益は4.5億円(同318.4%増)となりました。
通期予想は引き続き売上高予想のみ公表し、これまでと同様に前期比31.6%増の70億円の予想です。
弁護士へのマーケティング支援サービスとなるメディア事業、クラウドサインを含むIT・ソリューション事業とも増収・増益でした。
決算発表を受け、10/27(水)の同社株価はストップ高となりました。
なお、好決算が一回織り込まれた上に、予想PER等は同社の成長を織り込んだ高い水準となっているため、今回は「ご参考」銘柄として紹介いたしました。
一方、同社株については(1)チャート上でW底確認へ前進、(2)1営業日当たりの出来高が10数万株のことが多く、信用売り残が41.4万株(10/22終了週)ある現状は、取り組み妙味が意識されやすくなっている等、好材料も多くあります。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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