南アフリカで新たな変異ウイルス オミクロン株が発見されたことで警戒が広まり、11月末は前月末比で東証マザーズ指数が3.3%下落、日経ジャスダック平均が2.5%下落となりました。
12月相場はどうなるのでしょうか。
オミクロン株については感染力など依然として不明な点が多く、警戒感は強まる一方、株式市場の織り込みが進んでいることから新興市場は総じて堅調な“師走相場”が期待できると考えます。
そこで今回は11月に株価がある程度上昇した銘柄の中から、12月相場の主役候補を探したいと思います。
なお、当ページにつきましてはSBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください。
新興株ウィークリー※YouTubeに遷移します。
■執筆者のプロフィール
SBI証券 投資情報部長 鈴木 英之
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロ(牧野真莉愛推し)の応援と旅行(のりテツ)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
・よくいくところ 京都
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
10 月末から11/17(水)にかけ、東証マザーズ指数は7.4%上昇、日経ジャスダック平均は1.2%上昇しました。
11月は7〜9月期の決算発表が終了し、好業績銘柄等を中心に買い直される場面となりました。しかし、その後は上値が重く、両指数ともに11/24(水)〜11/30(火)にかけて5営業日続落。結局、11月の東証マザーズ指数は前月末比で3.3%下落、日経ジャスダック平均は2.5%下落となりました。ご参考までに日経平均株価の同期間下落率は3.7%でした。
月末の11/26(金)〜11/30(火)にかけては、新たな変異ウイルス オミクロン株が発見されたことで下げが加速。11/30(火)は反発する場面もありましたが、取引時間中にモデルナ社のワクチンが「オミクロン株」に対して有効性が下がるとの同社CEOの所見が伝えられ、再び売り直される展開となりました。
こうした中、新興市場主力株の中では東映アニメーション(4816)の下げが目立ちました。
10/25(月)に好決算と業績予想上方修正を発表した後、11月は特に悪材料が出た訳ではありません。ただ、予想PER等で高水準まで評価されてきたうえ、9月には一時年初来上昇率が3.1倍になるなど、2021年もっとも活躍した銘柄のひとつと考えられます。足元ジャスダック平均が連敗となる中で利益確定売りの対象になりやすくなっているのかもしれません。ただ、今後「オミクロン株」が拡大し、再び巣ごもり消費にスポットが当たれば、追い風となる可能性があります。
その他で値上がり率の大きかった銘柄としては、基幹システムの開発に携わるラキール(4074)の上昇率が目立ちました。11/11(木)の取引時間中に好決算を発表し、同じ日に出来高を伴ってストップ高まで上昇。その後も上昇基調が続く展開になりました。同社は本年7/16(金)に新規上場。2,480円で初値を付けた後、7/19(月)には3,440円まで上昇していました。時価はそうした上場直後の株価レンジに入っている形になっています。
図表1 日経ジャスダック平均と東証マザーズ指数の推移
- ※SBI証券チャートツールを用いてSBI証券が作成。 ※2020/12/30終値を1として指数化。 期間:2020/12/30〜2021/11/30
図表2 主な新興市場銘柄の値動き
コード | 銘柄名 | 市場 | 株価(11/30) | 週間 | 年初来 |
4385 | メルカリ | 東証マザーズ | 6,890 | -1.3% | 53.3% |
4816 | 東映アニメーション | ジャスダックS | 16,390 | -6.6% | 102.6% |
2702 | 日本マクドナルドホールディングス | ジャスダックS | 5,050 | -1.6% | 1.0% |
7564 | ワークマン | ジャスダックS | 5,910 | -4.4% | -32.8% |
6324 | ハーモニック・ドライブ・システムズ | ジャスダックS | 4,685 | -0.4% | -49.2% |
4478 | フリー | 東証マザーズ | 6,860 | -6.5% | -22.9% |
1407 | ウエストホールディングス | ジャスダックS | 6,550 | 1.6% | 79.5% |
4194 | ビジョナル | 東証マザーズ | 8,160 | -0.9% | - |
7071 | アンビスホールディングス | ジャスダックS | 11,040 | 2.7% | 124.6% |
2782 | セリア | ジャスダックS | 3,450 | -3.2% | -9.0% |
【ご参考】 | 日経平均株価 | - | 27,821.76 | -5.1% | 1.4% |
TOPIX | - | 1,928.35 | -4.5% | 6.9% | |
日経ジャスダック平均 | - | 3,885.76 | -2.8% | 4.5% | |
東証マザーズ指数 | - | 1,070.99 | -6.3% | -10.5% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
- ※新興市場(マザーズおよびジャスダック)の前月末時価総額上位10銘柄について、11/30時点での各種騰落率を掲載。
- ※「週間」は11/24〜11/30の騰落率。
- ※個別銘柄の「年初来」は昨年末時価総額と11/30時点の時価総額の比較。「-」は昨年末時点で上場していない銘柄。
- ※指数の「年初来」は株価による単純計算。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
図表3 11/24(水)〜11/30(火)で株価上昇が大きかった新興市場銘柄
コード | 銘柄名 | 市場 | 株価(11/30) | 週間 | 年初来 |
4591 | リボミック | 東証マザーズ | 676 | 31.8% | 87.1% |
4074 | ラキール | 東証マザーズ | 2,544 | 18.9% | - |
7169 | NFCホールディングス | ジャスダックS | 1,359 | 12.6% | -41.2% |
4177 | i−plug | 東証マザーズ | 6,320 | 9.2% | - |
6912 | 菊水電子工業 | ジャスダックS | 1,190 | 8.7% | 47.1% |
6957 | 芝浦電子 | ジャスダックS | 7,700 | 7.5% | 146.8% |
7047 | ポート | 東証マザーズ | 1,361 | 7.5% | 131.1% |
4080 | 田中化学研究所 | ジャスダックS | 2,091 | 5.4% | 76.6% |
7379 | サーキュレーション | 東証マザーズ | 4,335 | 5.1% | - |
2329 | 東北新社 | ジャスダックS | 678 | 4.8% | 8.3% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
- ※新興市場(マザーズおよびジャスダック・前月末時価総額100億円以上)において、週間の株価上昇率が大きい上位10銘柄を掲載。
- ※「週間」は11/24〜11/30の騰落率。
- ※「年初来」は昨年末時価総額と11/30時点の時価総額の比較。「-」は昨年末時点で上場していない銘柄。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
まずは11月の物色動向を振り返ってみます。
11月は多くの銘柄が決算発表を実施し、株価が大きく変動した銘柄は決算発表や業績予想修正が理由となっていることが多い傾向にあります。
上昇率が大きかった銘柄(図表4)では、壽屋(7809)の上昇が目立ちました。
同社は11/12(金)に決算と業績予想の上方修正を発表。株価は週明けの11/15(月)から上昇局面に転じました。
また、田中化学研究所(4080)は決算発表と業績予想上方修正を10/26(火)に行い、以降上昇基調が1ヵ月余り続きました。
12月相場はどうなるのでしょうか。
“オミクロンショック”によって日経平均株価は11/25(木)終値から11/30(火)終値まで5.7%下落していることからある程度、感染拡大に対する懸念への織り込みは進んだ状態であるとも考えられます。
また、12月は中旬に向けて配当金支払いで投資家に資金が還流するなど、市場の需給も悪くないと思われることから新興市場については堅調な“師走相場”を期待したいところです。
ここで注意をしておきたいのが12月に予定されている“IPO(新規上場株)”です。
12月の新規上場社数は33社で、2020年の26社、2019年の21社と比べ、例年よりも大幅に増加する予定です。
なお、昨年の12月は新興市場銘柄からIPO銘柄に資金が大きく動くこともあったので、新規上場銘柄の動向には注意が必要でしょう。
図表6では12月に活躍が期待される銘柄について、 11月に株価が20%以上上昇した銘柄の中からテーマ株を中心に投資ポイントをご紹介したいと思います。
図表4 11月に大きく値上がりした新興市場銘柄
コード | 銘柄名 | 市場 | 株価(11/30) | 騰落率 | 年初来 |
7809 | 壽屋 | ジャスダックS | 5,970 | 101.0% | 216.4% |
4080 | 田中化学研究所 | ジャスダックS | 2,091 | 88.0% | 76.6% |
4591 | リボミック | 東証マザーズ | 676 | 67.3% | 87.1% |
4371 | コアコンセプト・テクノロジー | 東証マザーズ | 7,840 | 61.8% | - |
3680 | ホットリンク | 東証マザーズ | 977 | 50.1% | 95.4% |
2983 | アールプランナー | 東証マザーズ | 9,450 | 45.6% | - |
4074 | ラキール | 東証マザーズ | 2,544 | 45.3% | - |
6522 | アスタリスク | 東証マザーズ | 3,720 | 44.3% | - |
2987 | タスキ | 東証マザーズ | 3,200 | 42.2% | 21.9% |
7079 | WDBココ | 東証マザーズ | 6,530 | 38.6% | 78.2% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
- ※「騰落率」は新興市場(マザーズおよびジャスダック・前月末時価総額100億円以上)において、10/29〜11/30の株価上昇率が大きい上位10銘柄を掲載。
- ※「年初来」は昨年末時価総額と10/29時点の時価総額の比較。「-」は昨年末時点で上場していない銘柄。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
図表5 11月に大きく値下がりした新興市場銘柄
コード | 銘柄名 | 市場 | 株価(11/30) | 騰落率 | 年初来 |
3936 | グローバルウェイ | 東証マザーズ | 1,820 | -45.7% | 1904.5% |
4056 | ニューラルポケット | 東証マザーズ | 1,678 | -42.1% | -71.0% |
6629 | テクノホライゾン | ジャスダックS | 804 | -36.5% | 5.5% |
4167 | ココペリ | 東証マザーズ | 2,195 | -33.1% | -67.5% |
2484 | 出前館 | ジャスダックS | 929 | -31.7% | -54.6% |
7048 | ベルトラ | 東証マザーズ | 461 | -31.2% | 16.6% |
4883 | モダリス | 東証マザーズ | 732 | -31.1% | -66.5% |
4013 | 勤次郎 | 東証マザーズ | 1,173 | -30.7% | -56.7% |
3542 | ベガコーポレーション | 東証マザーズ | 979 | -28.7% | -47.3% |
7298 | 八千代工業 | ジャスダックS | 650 | -27.0% | 11.5% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
- ※「騰落率」は新興市場(マザーズおよびジャスダック・前月末時価総額100億円以上)において、10/29〜11/30の株価下落率が大きい上位10銘柄を掲載。
- ※「年初来」は昨年末時価総額と10/29時点の時価総額の比較。「-」は昨年末時点で上場していない銘柄。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
図表6 12月に活躍が期待される銘柄とは
取引 | チャート | ポートフォリオ | コード | 銘柄 | 株価(11/30) | 騰落率(1ヵ月) |
7809 | 7809 | 7809 | 7809 | 壽屋 | 5,970 | 101.0% |
4080 | 4080 | 4080 | 4080 | 田中化学研究所 | 2,091 | 88.0% |
7047 | 7047 | 7047 | 7047 | ポート | 1,361 | 37.1% |
7094 | 7094 | 7094 | 7094 | NextTone | 4,590 | 24.7% |
7826 | 7826 | 7826 | 7826 | フルヤ金属 | 10,730 | 20.0% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。 ※「騰落率」の期間は10/29〜11/30。 ※掲載の銘柄は11月に株価が20%以上上昇した銘柄かつ、過去に「新興株ウィークリー」で取り上げたテーマ株から抽出。 ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
以下、図表6から一部の銘柄について、投資ポイントをご紹介します。
壽屋(7809) ホビー関連銘柄。先行きはメタバース・NFT関連銘柄としても活躍か
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
- 期間:2021/6/8〜2021/12/1 14:15時点(日足)
■老舗で高品質なフィギュアを提供
アニメやゲーム、映画などのキャラクターについて版権を取得し、フィギュアなどを製造し「KOTOBUKIYA」ブランドで販売しています。卸売業者に需要調査を行い、中国で委託製造を行うビジネスモデルです。
1947年に玩具店として設立され、フィギュアメーカーとしては老舗です。
これまで、「新世紀エヴァンゲリオン」や映画「スター・ウォーズ」の版権を取得し、フィギュアを自社製品化。最近は「鬼滅の刃」に関する製品も展開しています。
自社IP(知的財産)の開発にも注力し、「フレームアーム・ガールズ」は大ヒットし、アニメ化もされています。
■業績予想を上方修正。予想PERは11月末で13.4倍。
2022/6期・第1四半期(2021/7〜9期)の営業利益は前年同期比で7.7倍となる6.25億円と好調なスタート。会社側はこれを受けて通期の営業利益を12億円から17億円(前期比72.2%増)に上方修正しました。
株価は、決算発表・業績予想上方修正を発表した11/12(金)終値3,195円に対し、11/30(火)終値は5,970円と大幅高。月間上昇率も101.0%に達しました。
しかし、上方修正後の今期予想EPS(1株利益)444円53銭に対し、11月末終値のPERは13.4倍と割高感は乏しくなっています。
11/16(火)には製品開発に関するデータやデジタル技術を、AR(仮想現実)やデジタルフィギュアをAR(拡張現実)で連携し、製品・サービスとして提供していく方針を発表しています。
先行きはメタバースやNFT関連銘柄としても注目される可能性がありそうです。
NexTone(7094) 著作権の管理楽曲が増加基調
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
- 期間:2021/6/8〜2021/12/1 14:15時点(日足)
■著作権管理事業とキャスティング事業を展開
音楽等の著作権管理事業が、売上構成比(2021/3期)で88%を占めます。
放送局や音楽配信事業者に利用を許諾し、依頼者に収益を配分しています。権利者が保有するオリジナル動画や音楽原版を利用してYouTubeにアップされた投稿動画を補足し、広告収益の分配を獲得する業務も行っています。
同社は隠れた連続増収・増益銘柄と言えるかもしれません。2021/3期までの3期は3期連続増収で、年平均増収率は39%と高く、営業利益は年平均76.7%の高成長をとげています。
2022/3期も第2四半期(累計)売上高は34.5億円(前年同期比30.4%増)、営業利益2.98億円(同37.4%)と拡大基調を維持。通期会社予想は売上高79.7億円(前期比30.2%)、営業利益7.3億円(同35.3%増)を見込んでいます。
■株価は決算発表後に急騰も、足元では下落
新曲の減少や音楽市場の縮小は国内のイベントの縮小にもつながるため、コロナ禍は同社にとっても逆風であったとみられます。しかし、そうした環境下で権利保有者であるアーティストや音楽事務所等が収益多角化を図ったことで、同社の著作権管理業務に追い風になっていた面もあるようです。
YouTube等の投稿動画の市場は、権利者と投稿者の対立構図から、適切な利益配分体制を構築することで共存の方向も出てきた形であり、今後も同社の著作権管理業務は市場として拡大し、音楽市場を下支えする可能性もありそうです。
株価は11/25(木)に5,300円の高値を付けた後は下落傾向です。ただ、業績的には成長を続けており、今後は押し目買いが増える可能性もありそうです。
その他の銘柄
■田中化学研究所(4080)
住友化学(4005)が50.4%の株式を保有する高性能二次電池向け正極材メーカー。電池やEVに関連する銘柄として注目されてきましたが、業績は赤字続きでした。
しかし、業績は2022/3期に黒字基調に転換。10/26(火)には今期予想営業損益を6.5憶円の赤字から、8億円の黒字に大幅上方修正。その後株価上昇が本格化しました。
足元株価は下落していますが、業績予想上方修正の要因となったニッケルやコバルトの市況は高騰が続いており、さらなる業績の上積みが期待されます。
■ポート(7047)
カードローン情報サイト、就活ノウハウサイト、企業口コミ情報サイトなど、各領域に特化したサイトを展開。
11/12(金)に今期業績予想を上方修正。営業利益の予想レンジを4〜7億円から、5.5〜7億円へと下限を引き上げました。株価はそれを受けて上昇しましたが、足元はやや下落しています。
■フルヤ金属(7826)
プラチナグループ・メタルの中でも加工の難しいイリジウム・ルテニウム等を原材料に使う貴金属製品メーカーです。第1四半期(2021/7〜9期)は売上高118億円(前年同期比142.1%増)、営業利益47.4億円(同385.9%増・進捗率40%)と好調にスタートし、今後は上方修正も期待されます。
有機EL市場で、同社は発光材用のイリジウム化合物で世界シェア90%(同社資料)を有しており、有機EL市場の成長を強く享受できることが期待されます。
11/30(火)付の日経新聞では、韓国のサムスン電子がテレビ向け有機ELパネルの量産を開始したとの報道がありましたが、この市場が活性化すれば、同社の業績に追い風となる可能性がありそうです。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
- ※NISA口座で上場株式等の配当金を非課税で受け取るためには、配当金の受領方法を「株式数比例配分方式」に事前にご登録いただく必要があります。
- ※信用取引において必要となるその他諸費用の詳細は信用取引のサービス概要をご確認ください。