12月の東京株式市場は上昇気味でスタートしましたが、12/17(金)、12/20(月)には日経平均株価が2営業日で1,128円超下落。しかし、12/21(火)は一転して579円高と荒っぽい展開です。
不安定な値動きは新興市場にも波及し、東証マザーズ指数は2020/8以来の1,000ポイント割れとなっています。(12/22時点)
なお、東証マザーズ指数は11/17(水)高値から12/21(火)安値まで20.7%も下落しました。
もっとも、新興市場は底入れのタイミングを探る時期かもしれません。国内外の重要経済イベントの一巡に加え、33社が予定されていた12月の新規上場も12/24(金)に山場を迎えます。
そこで今回は、仮に新興市場の反発が本格化した時、反発力の大きそうな銘柄を抽出しました。
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■執筆者のプロフィール
SBI証券 投資情報部長 鈴木 英之
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロ(牧野真莉愛推し)の応援と旅行(のりテツ)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
・よくいくところ 京都
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
日経平均株価の12/21(火)終値は前週火曜日比で0.3%上昇、11月末比で2.5%上昇でした。
途中乱高下する場面もありましたが、結果だけみれば「落ち着いている」と表現することもできそうです。世界的に中央銀行の金融政策が“出口”に向かい始めたものの、市場にとってサプライズになった訳ではないでしょう。
また、オミクロン株についての日本の感染状況は重症者や死亡者数の急増につながっている訳ではなく、ワクチンの3回目接種や飲み薬の確保等による収束が期待されます。
ただ、新興市場については12月は33社の新規上場が予定され、需給の悪化が懸念されていました。特に東証マザーズ市場の新規上場が多く、その影響を受けやすい傾向にあると考えられます。
時価総額上位銘柄の中では東映アニメーション(4816)の下落が目立ちました。同社は12/20(月)に、2022/4以降の市場区分見直しで「スタンダード市場」を選択すると発表しました。ただ、現時点では浮動株に関する基準を満たしていないため、売出等を検討しています。株価は12/21(火)に1,460円(10.7%)下落し、その下げが響いています。
医療製品開発のスリー・ディー・マトリックス(7777)は続伸。12/14(火)〜12/21(火)に6営業日続伸した後、12/22(水)も買い先行の展開です。12/14(火)に決算発表を通過して、いったん悪材料は出尽くしに。さらに12/17(金)には、新型コロナウイルス感染症に対する「中和抗体検査キット」取扱開始についても発表し、株価の支援材料になりました。
図表1 日経ジャスダック平均と東証マザーズ指数の推移
- ※SBI証券チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※2020/12/30終値を1として指数化。 期間:2020/12/30〜2021/12/21
図表2 主な新興市場銘柄の値動き
コード | 銘柄名 | 市場 | 株価(12/21) | 週間 | 年初来 |
4385 | メルカリ | 東証マザーズ | 6,060 | -4.0% | 34.9% |
2702 | 日本マクドナルドホールディングス | ジャスダックS | 5,130 | 0.6% | 2.6% |
4816 | 東映アニメーション | ジャスダックS | 12,230 | -17.4% | 51.2% |
6324 | ハーモニック・ドライブ・システムズ | ジャスダックS | 4,915 | -1.7% | -46.7% |
7564 | ワークマン | ジャスダックS | 5,570 | -4.5% | -36.7% |
4194 | ビジョナル | 東証マザーズ | 9,700 | -4.4% | - |
4478 | フリー | 東証マザーズ | 5,850 | -5.2% | -34.1% |
1407 | ウエストホールディングス | ジャスダックS | 5,810 | -7.5% | 59.2% |
7071 | アンビスホールディングス | ジャスダックS | 10,640 | -11.0% | 116.4% |
2782 | セリア | ジャスダックS | 3,285 | 0.5% | -13.3% |
【ご参考】 | 日経平均株価 | - | 28,517.59 | 0.3% | 3.9% |
TOPIX | - | 1,969.79 | -0.2% | 9.1% | |
日経ジャスダック平均 | - | 3,792.69 | -2.3% | 2.0% | |
東証マザーズ指数 | - | 965.08 | -2.9% | -19.3% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
- ※新興市場(マザーズおよびジャスダック)の前月末時価総額上位10銘柄について、12/21時点での各種騰落率を掲載。
- ※「週間」は12/7〜12/21の騰落率。
- ※個別銘柄の「年初来」は昨年末時価総額と12/21時点の時価総額の比較。「-」は昨年末時点で上場していない銘柄。
- ※指数の「年初来」は株価による単純計算。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
図表3 12/14(火)〜12/21(火)で株価上昇が大きかった新興市場銘柄
コード | 銘柄名 | 市場 | 株価(12/21) | 週間 | 年初来 |
7777 | スリー・ディー・マトリックス | ジャスダックG | 435 | 39.4% | 96.1% |
4599 | ステムリム | 東証マザーズ | 785 | 38.0% | 25.5% |
4592 | サンバイオ | 東証マザーズ | 1,158 | 21.3% | -13.4% |
4080 | 田中化学研究所 | ジャスダックS | 1,900 | 18.8% | 60.5% |
2986 | LAホールディングス | ジャスダックG | 2,155 | 16.1% | 158.5% |
7047 | ポート | 東証マザーズ | 1,464 | 15.6% | 148.5% |
4936 | アクシージア | 東証マザーズ | 1,087 | 15.4% | - |
4579 | ラクオリア創薬 | ジャスダックG | 1,017 | 15.3% | 1.7% |
4075 | ブレインズテクノロジー | 東証マザーズ | 1,731 | 13.5% | - |
4771 | エフアンドエム | ジャスダックS | 2,119 | 13.1% | 26.7% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
- ※新興市場(マザーズおよびジャスダック・前月末時価総額100億円以上)において、週間の株価上昇率が大きい上位10銘柄を掲載。
- ※「週間」は12/7〜12/21騰落率
- ※「年初来」は昨年末時価総額と12/21時点の時価総額の比較。「-」は昨年末時点で上場していない銘柄。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
12/22(水)の新興市場では、リターン・リバーサル(相場が上昇しているときに売り、下落しているときに買う逆張り)の手法に基づいた売買が増えているように思われます。
そこで今回は、リターン・リバーサルの考え方に基づき、明確に業績や需給の悪化につながる材料が見当たらないのにも関わらず、大きく下げた銘柄を抽出しました。
以下の抽出条件を全て満たした銘柄が図表4です。
(1)東証マザーズ市場、またはジャスダック市場に上場する銘柄。
(2)時価総額100億円以上。
(3)直近で高値を付けた11/17(水)以降に業績予想の下方修正を行っていないこと。
(4)直近決算が四半期の場合、以下のいずれかの条件を満たし、営業利益予想の未達リスクが小さいこと。
・四半期累計営業損益が黒字転換していること。
・四半期累計営業増益率が通期会社予想営業増益率を上回っていること。
・四半期累計営業利益の進捗率が標準以上であること。(※)
(5)直近決算が本決算の場合、今期予想営業利益が10%超の増益予想。または黒字転換予想となっていること。
(6)11/17(水)以降、経営体制の変更等、短期的に判断することが難しい材料が出ていないこと。
(7)株価下落率(11/17〜12/21)が30%超。
※例えば、プロジェクトカンパニー(9246)は2021/12期・第3四半期累計(9ヵ月)の営業利益が3.62億円で通期計画の77%に相当します。この場合、進捗率の「標準」は「9(ヵ月)/12(ヵ月)=75%」となるため、条件クリアとなります。
図表4 2021年の新興市場新規上場銘柄で高値からの下落率が大きい銘柄
取引 | チャート | ポートフォリオ | コード | 銘柄 | 株価(12/21) | 騰落率(11/17比) |
6522 | 6522 | 6522 | 6522 | アスタリスク | 2,197 | -59.8% |
2158 | 2158 | 2158 | 2158 | FRONTEO | 2,430 | -41.4% |
4880 | 4880 | 4880 | 4880 | セルソース | 4,440 | -41.3% |
9246 | 9246 | 9246 | 9246 | プロジェクトカンパニー | 3,655 | -40.2% |
7373 | 7373 | 7373 | 7373 | アイドマ・ホールディングス | 3,140 | -38.4% |
4493 | 4493 | 4493 | 4493 | サイバーセキュリティクラウド | 1,726 | -36.9% |
4431 | 4431 | 4431 | 4431 | スマレジ | 2,264 | -34.9% |
4582 | 4582 | 4582 | 4582 | シンバイオ製薬(J) | 1,116 | -34.4% |
4053 | 4053 | 4053 | 4053 | Sun Asterisk | 2,208 | -32.9% |
- ※各社株価データ、報道等をもとにSBI証券が作成。
- ※「銘柄名」の横に“(J)”と付くものはジャスダック市場、何も付かないものはマザーズ市場です。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
以下、一部の銘柄について、ポイントをご紹介します。
FRONTEO(2158)〜独自開発のAIエンジンを柱にソリューション
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
- 期間:2021/9/28〜2021/12/22(日足)
■言語系AIエンジンを柱にソリューションを提供
独自開発したAI(人工知能)エンジン「KIBIT(キビット)」や「Concept Encoder(コンセプトエンコーダー)」をベースに、自然言語処理に特化したデータ解析を行う企業です。
医療分野やビジネスインテリジェンス分野をターゲットとしたAIソリューション事業(前期売上構成比20%)と、法的紛争・訴訟などで電子データの証拠保全や調査・分析など手掛けるリーガルテックAI事業(同80%)を展開しています。
■業績予想を上方修正
2022年3月期第2四半期累計(21年4〜9月)の連結業績は、売上高59.2億円(前年同期比17.4%増)、営業損益12億円の黒字(前年同期は2億円の赤字)でした。
11/15(月)会社側は22年3月期(通期)の連結業績予想について、売上高を108億円から112億円(前期比8.0%増)に、営業利益を12億円から18億円(同3.6倍)にそれぞれ上方修正しました。
業績的には堅調に推移しており、自律調整一巡後は押し目買いも期待できそうです。
Sun Asterisk(4053) 企業のデジタライゼーションを支援
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
- 期間:2021/9/28〜2021/12/22(日足)
■事業開発支援で成長
2020年7月に東証マザーズに上場。デジタルを活用した新たな事業開発を行うクリエイティブ&エンジニアリングサービスと、人材紹介のタレントプラットフォームサービスが両輪です。
クリエイティブ&エンジニアリングサービスでは、専門チームが顧客の事業アイデア創出からプロダクト開発までを支援。ベトナムのハノイ、ダナン、ホーチミンに拠点を持つ子会社を活用したグローバルITチームが顧客のニーズに合わせた素早いプロダクト改善を実施し、成長プロセスを高速で実行することで事業価値の最大化を目指します。
また、タレントプラットフォームサービスでは、デジタライゼーションを促進する人材の育成と、就職の支援を手掛けます。
■市場では中期的に大幅増益継続を予想
2021/12期・第2四半期累計の営業利益は前年同期比42.6%増。さらに第3四半期(2021/7〜9期)の営業利益は3.47億円(前年同期比137.7%増)と加速。これにより、通期の会社予想営業利益は11億円から12.39億円に上方修正(11/10)されました。主力の事業開発支援への引き合いは活発なようです。
市場コンセンサスでは2021/12期に前期比43%の営業増益後、2022/12期に33%増、2023/12期に23%増の営業増益が予想されています。
株価は第3四半期の決算発表(11/10)を経て、急騰局面となりました。ただ、11/26(金)には株式売出の発表等があり、12/20(月)まで下落しました。なお、売出の受け渡し日は12/13(月)に通過しています。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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