東京株式市場は反発局面となっています。インフレ・金利上昇懸念が続く中、新興市場銘柄、特に東証マザーズ銘柄の戻りは、これまでの下げの大きさを考えると、鈍いと言えるかもしれません。
そうした中、株式市場の今年度(2021/4〜2022/3)も終わりに近づいています。今年度はどのような銘柄が活躍したのでしょうか。今回の「新興株ウィークリー」では、今年度活躍した銘柄を簡単に振り返るとともに、新年度に活躍し、テンバガーを目指せるような銘柄候補を発掘すべく、スクリーニングを行ってみました。
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■執筆者のプロフィール
SBI証券 投資情報部長 鈴木 英之
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロ(牧野真莉愛推し)の応援と旅行(のりテツ)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
・よくいくところ 京都
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
東京株式市場は反発局面です。3月第3週(3/14〜3/18)の日経平均株価終値は5営業日続伸となり、週足ベースでは前週末比1,664円65銭(6.6%)高と5週ぶりに反発しました。3連休明けの3/22(火)も6営業日続伸の大幅高になりました。
反発局面となった要因は、(1)利上げが確実視されていたFOMC(米連邦公開市場委員会)が予想範囲内である0.25%の利上げで大過なく通過、(2)ロシアとウクライナの間で停戦に向けた動きが強まっているとの観測、(3)中国政府が金融市場の後押しを表明、(4)ロシアから投資家に米ドル建て国債の利払いが米ドルで実行され、ロシアのデフォルトが当面回避されたとみられた、等が要因です。
図表2で示したように、過去1週間(3/15(火)〜3/22(火))の主要株価指数の上昇率は、日経平均株価+7.4%に対し、ジャスダック指数+2.7%、東証マザーズ指数+8.8%でした。さすがに東証マザーズ指数の上昇率が大きくなっていますが、年初来の下落率を考慮すれば、戻りが鈍いと言えるかもしれません。
世界的に長期金利の指標的存在になっている米10年国債利回りは3/1(火)の1.72%から3/21(月)は2.29%と上昇傾向で、グロース銘柄が多い東証マザーズ市場には逆風が続いています。
チャート的には2/24(木)の取引時間中安値648.20ポイント、3/15(火)の同安値653.27ポイントをダブル・ボトムとするチャート形状となっており、3/3(木)の取引時間中高値784.81ポイントを回復できれば「底値形成確認」の形になるため、もうひと踏ん張りの反発が必要な局面と言えそうです。
こうした中、ドリコム(3793)が3/22(火)にストップ高まで買われ、図表3の週間(3/15〜3/22)騰落率でも上位となりました。3/18(金)に取締役会を開催し、「Web3」事業(非中央集権のインターネット)への参入を発表したことを、株式市場が好感しました。
図表1 日経ジャスダック平均と東証マザーズ指数の推移
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
- ※2021/6/30終値を1として指数化。
- 期間:2021/6/30〜2022/3/22
図表2 主な新興市場銘柄の値動き
コード | 銘柄名 | 市場 | 株価(3/22) | 週間 | 年初来 |
2702 | 日本マクドナルドホールディングス | ジャスダックS | 4,990 | 1.3% | -2.0% |
4385 | メルカリ | 東証マザーズ | 3,120 | 13.5% | -46.8% |
7564 | ワークマン | ジャスダックS | 5,060 | -0.8% | -8.0% |
4816 | 東映アニメーション | ジャスダックS | 9,660 | 1.8% | -15.6% |
6324 | ハーモニック・ドライブ・システムズ | ジャスダックS | 4,155 | 9.3% | -14.5% |
4194 | ビジョナル | 東証マザーズ | 7,350 | -2.9% | -24.3% |
7071 | アンビスホールディングス | ジャスダックS | 4,895 | 2.6% | -7.5% |
7716 | ナカニシ | ジャスダックS | 2,262 | 8.4% | 6.8% |
4478 | フリー | 東証マザーズ | 3,775 | 25.2% | -40.6% |
1407 | ウエストホールディングス | ジャスダックS | 4,565 | -2.6% | -20.3% |
【ご参考】 | 日経平均株価 | - | 27,224.11 | 7.4% | -5.4% |
TOPIX | - | 1,933.74 | 5.9% | -2.9% | |
日経ジャスダック平均 | - | 3,600.21 | 2.7% | -7.2% | |
東証マザーズ指数 | - | 725.96 | 8.8% | -26.5% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
- ※新興市場(マザーズおよびジャスダック)の前月末時価総額上位10銘柄について、3/22時点での各種騰落率を掲載。
- ※「週間」は3/15〜3/22の騰落率。
- ※個別銘柄の「年初来」は昨年末〜3/22の騰落率(株式分割等を加味した実質ベース)。
- ※指数の「年初来」は株価による単純計算。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
図表3 3/15(火)〜3/22(火)で株価上昇が大きかった新興市場銘柄
コード | 銘柄名 | 市場 | 株価(3/22) | 週間 | 年初来 |
3936 | グローバルウェイ | 東証マザーズ | 472 | 80.2% | 55.8% |
3491 | GA technologies | 東証マザーズ | 878 | 36.3% | -32.6% |
3793 | ドリコム | 東証マザーズ | 516 | 27.4% | 12.9% |
4478 | フリー | 東証マザーズ | 3,775 | 25.2% | -40.6% |
4475 | HENNGE | 東証マザーズ | 838 | 25.1% | -56.8% |
4055 | ティアンドエス | 東証マザーズ | 1,628 | 23.6% | 6.2% |
4167 | ココペリ | 東証マザーズ | 1,160 | 22.2% | -46.2% |
4479 | マクアケ | 東証マザーズ | 1,823 | 21.5% | -58.0% |
4165 | プレイド | 東証マザーズ | 1,151 | 21.4% | -46.1% |
7809 | 壽屋 | ジャスダックS | 4,955 | 20.9% | -18.1% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
- ※新興市場(マザーズおよびジャスダック・前月末時価総額100億円以上)において、週間の株価上昇率が大きい上位10銘柄を掲載。
- ※「週間」は3/15〜3/22の騰落率
- ※「年初来」は昨年末時価総額と3/22時点の時価総額の比較。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
こうした中、間もなく今年度(2021/4〜2022/3)の株式市場も終了となり、新年度からは再編された市場での取引も開始されます。これまでは新型コロナウイルスの感染拡大や、ウクライナでの紛争激化など、厳しい投資環境が続いてきました。
そうした中、昨年度末(2021/3末)から現在(2022/3/22)までの騰落率をみると、日経平均株価-6.7%、TOPIX-1.0%、日経ジャスダック平均-8.6%、東証マザーズ指数-39.7%でした。世界的にインフレ・金利上昇が懸念される中、グロース銘柄が多い東証マザーズ市場にとっては、総じて厳しい年度になったようです。
図表4は時価総額100億円以上の新興銘柄について、今年度(2021/3末〜2022/3/22)の株価上昇率が大きい順に並べたものです。グローバルウェイ(3936)が実質で約9倍の値上がりとなりましたが、株式分割・減資を繰り返しており、やや例外的な存在になっています。
その他の銘柄に特徴はあるのでしょうか。新興市場の時価総額上位100銘柄でも、アナリストが3期先(再来期)まで予想を公表している銘柄は全体の2割強にとどまっています。しかし、図表4の銘柄はその4割が、アナリストによる3期先までの営業利益予想率が公表となっています。やはり、アナリストが強く成長を期待している銘柄の方が、「テンバガー」になる可能性は大きいかもしれません。
そこで、今回の「新興株ウィークリー」では、今後「テンバガー」の実現に向かって進めそうな、高成長期待銘柄をスクリーニングにより抽出してみました。スクリーニング条件は以下の通りです。成長期待が強いのみならず、ここまで利益成長の実績を作り上げていることも重要であると考えられます。
(1)新興市場(ジャスダック市場、または東証マザーズ市場)上場銘柄であること。
(2)時価総額100億円以上。
(3)株価下落率(2021/3末〜2022/3/22)が10%未満。
(4)市場予想営業増益率が今後3年(今期・来期・再来期)、年10%以上。
(5)過去2年連続営業増益(3期前のデータがない場合は前期のみ増益も可。黒字転換および赤字縮小含む)
図表5の銘柄は、これらの条件をすべて満たしています。
図表4 今年度株価が大きく上昇した新興銘柄ベスト10(時価総額100億円以上)
コード | 銘柄 | 株価(3/22) | 騰落率(2021/3末〜) | アナリストの予想営業増益率(3年累計) |
3936 | グローバルウェイ | 472 | +797.3% | - |
7036 | イーエムネットジャパン | 3,365 | +155.9% | - |
7809 | 壽屋 | 4,955 | +136.7% | - |
2158 | FRONTEO | 1,892 | +132.4% | +708.3% |
6957 | 芝浦電子 | 7,130 | +94.8% | +112.6% |
4235 | ウルトラファブリックス・ホールディングス | 2,734 | +82.4% | +122.8% |
5381 | Mipox | 1,106 | +78.4% | - |
4356 | 応用技術 | 1,959 | +61.2% | - |
8699 | HS ホールディングス | 1,220 | +61.2% | - |
7071 | アンビスホールディングス | 4,895 | +60.8% | +160.0% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。ジャスダック市場・東証マザーズ市場に上昇する銘柄のうち、時価総額100億円以上の銘柄について、2021/3/31〜2022/3/22の株価上昇率が大きい順にランキングしたもの。
図表5 新年度以降「テンバガー」を目指しえる高成長期待銘柄(時価総額100億円以上)
取引 | チャート | ポート フォリオ |
コード | 銘柄 | 株価 (3/22) |
騰落率 (2021/3末〜) |
アナリストの予想営業増益率(3年累計) |
6562 | 6562 | 6562 | 6562 | ジーニー | 899 | -0.4% | +835.2% |
3496 | 3496 | 3496 | 3496 | アズーム | 5,980 | +37.6% | +195.5% |
4499 | 4499 | 4499 | 4499 | Speee | 3,515 | -8.1% | +188.8% |
7071 | 7071 | 7071 | 7071 | アンビスホールディングス | 4,895 | +60.8% | +160.0% |
4293 | 4293 | 4293 | 4293 | セプテーニ・ホールディングス | 685 | +40.7% | +135.9% |
7320 | 7320 | 7320 | 7320 | 日本リビング保証 | 2,100 | +7.3% | +86.8% |
3798 | 3798 | 3798 | 3798 | ULSグループ | 4,045 | +27.4% | +83.5% |
1407 | 1407 | 1407 | 1407 | ウエストホールディングス | 4,565 | +32.5% | +78.6% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。アナリストの予想営業増益率(3年累計)は、再来年度の市場予想(Bloombergコンセンサス)営業利益を前年度実績の営業利益で割った増加率。騰落率は、株式分割等を加味した実質ベースで計算。
以下、一部の銘柄について、ポイントをご紹介します。
Speee(4499)〜DX関連の一角。業績は拡大中
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
- 期間:2021/9/27〜2022/3/23(日足)9:30時点
■不動産DX事業、マーケティングDX事業が2本柱
当社は、不動産DX事業(前期売上構成比47%)、マーケティングDX事業(同53%)を主な2つの事業としています。データを収集・統合・分析し、利用・活用するノウハウを提供する企業で、顧客の状況に合わせ、柔軟に対応できることが強みです。
前者では、ユーザーとサービス加盟業者のマッチングサービスを提供しています。後者では、顧客のDXを推進するコンサルティングサービスを提供しています。
UZOU(人工知能を活用したマーケティングの自動化支援サービス)、ブロックチェーン(暗号技術により分散的に処理・記録するデータベース)技術やトークンエコノミー(代替貨幣を用いた経済圏)を用いるサービス等も展開しています。
■業績は拡大中
当社の営業利益は2019/9期1.98億円を底に、2020/9期7.77億円、2021/9期11.37億円と成長し、今期も第1四半期は4.42億円(単純計算で前年同期比81.1%増)と好調なスタートです。会社予想では、2022/9期(通期)の営業利益を15.01億円(同32.0%増)と想定しており、順調と考えられます。
市場コンセンサスでも、今期16億円、来期24億円、再来期32億円という予想営業利益になっており、当面は高い成長が予想されています。
株価は2021/11/26高値の6,710円から本年3/15の3,250円まで51%超下げた後の底値固めの局面になっているようです。DX関連の一角とみられ、グロース銘柄への売りが一巡すれば、再び上昇する可能性もありそうです。
セプテーニ・ホールディングス(4293)〜電通グループのネット広告代理店に
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
- 期間:2021/9/27〜2022/3/23(日足)9:30時点
■電通グループのネット広告代理店に
当社は電通グループのネット広告代理店大手です。売上高構成比(前期)は「デジタルマーケティング事業」が87%、「メディアプラットフォーム事業」が13%となっています。
「デジタルマーケティング事業」は、企業のDXを総合的に支援する事業セグメントとして位置づけられています。広告市場の中でも成長著しいデジタル運用型広告市場での大型顧客チャネルと広告運用力、そしてデータ・ソリューション領域の開発力等を有しており、それらが強みとなっています。
独立系企業でしたが、2021/10/18に電通グループと資本業務提携し、2022/1/4には第3者割当および株式交換を実施しました。
■決算発表後に株価が急騰
当社は2/10(木)に決算発表を実施しました。2022/9期・第1四半期は売上高65.7億円(前年同期比24.6%増)、営業利益19.4億円(同61.1%増)、Non-GAAP営業利益(IFRSに基づく営業利益から一時的な要因を調整した利益)20.2億円(同66.2%増)となりました。
2022/9期(通期)については新たに会社側は、Non-GAAP営業利益を53億円(前期比39.6%増)とする予想を公表しています。
決算発表後、株価は急騰し、足元はやや落ち着く兆しをみせています。市場コンセンサスでは営業利益が今期60億円、来期74億円、再来期86億円の予想となっています。株価は急騰後であり、調整場面の到来も警戒されますが、成長性が再確認されれば、上昇トレンドが持続する可能性もありそうです。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
- ※NISA口座で上場株式等の配当金を非課税で受け取るためには、配当金の受領方法を「株式数比例配分方式」に事前にご登録いただく必要があります。
- ※信用取引において必要となるその他諸費用の詳細は信用取引のサービス概要をご確認ください。