新興株式市場も戻り局面です。ロシアがウクライナに侵攻を開始した2/24(木)以降、先週末3/25(金)までに約1ヵ月が経過しました。この間、日経平均株価は8.4%上昇しましたが、日経ジャスダック平均は4.6%、TOPIXは6.7%、東証マザーズ指数は16.7%上昇しました。これまで大きく下落した分、反発局面では東証マザーズ指数の上昇率が大きくなっています。
今週で今年度(2021/4〜2022/3)の株式市場も終了となり、新年度からは再編された東京株式市場での取引も開始されます。これまで新型コロナウイルスの感染拡大や、ウクライナでの紛争激化など、厳しい投資環境が続いてきましたが、新年度はどのような相場になるのでしょうか。
そのような中、前回の「新興株ウィークリー」では、今後「テンバガー」となり得そうな、高成長期待銘柄をスクリーニングにより抽出してみました。前回(3/23掲載)と目的は同じですが、スクリーニング条件を変えてみました。アナリストによる成長期待が強いものの、今年度は大きく下げてしまった銘柄を選んでみました。
なお、当ページにつきましてはSBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください。
新興株ウィークリー※YouTubeに遷移します。
■執筆者のプロフィール
SBI証券 投資情報部長 鈴木 英之
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロ(牧野真莉愛推し)の応援と旅行(のりテツ)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
・よくいくところ 京都
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
日経平均株価は、3/14(月)〜3/25(金)に9営業日続伸となり、2019/9/3(火)〜2019/9/17(火)の10営業日続伸以来の連騰記録になりました。3月第5週(3/28〜4/1)は、3/28(月)は下落となりましたが、3/29(火)には反発となり、上昇ムードは続いています。
株式市場が堅調な理由は以下の通りと考えられます。
(1)ロシア・ウクライナ間での停戦交渉が数度実施され、停戦を期待させる発言が両国から出始めたこと。
(2)米国株をはじめ海外株もおおむね堅調な動きになったこと。
(3)おおむね3/10(木)以降円安・ドル高が加速し、景気・企業業績の底割れ懸念が後退したとみられること。
(4)3/11(金)メジャーSQ、3/16(水)米FOMC、3/18(金)米トリプル・ウィッチング等の重要日程の進捗。
(5)3月末が接近し、配当取りや、配当再投資に絡む先物買い観測、「大学ファンド」買い観測等、需給が好転。
このような中、新興株式市場も戻り局面を迎えています。ロシアがウクライナに侵攻を開始した2/24(木)以降、先週末3/25(金)まで約1ヵ月が経過しました。その間に日経平均株価は8.4%上昇しましたが、日経ジャスダック平均は4.6%、TOPIXは6.7%、東証マザーズ指数は16.7%上昇しました。これまで大きく下落していた分、反発局面では東証マザーズ指数の上昇率が大きくなっています。ちなみに、3月第5週(3/28〜4/1)の新興市場も3/28(月)に下落後、3/29(火)には反発となり、大型株同様に、上昇ムードは続いています。
個別には、東大初バイオベンチャーのリボミック(4591)の値動きが目立ちました。3/23(水)に失明の原因となる症状に対する開発薬の臨床結果を発表し、それを好感する形で3/24(木)・3/25(金)の2日間だけで59.5%も上昇しました。AI(人工知能)を活用した不動産販売で知られるGAtechnologies(3491)も3/23(水)〜3/25(金)に計48.9%上昇しました。3/17(木)に四半期決算を発表し、EBITDA(利払前・税引前・償却前利益)の大幅増が好感され、その後も株価上昇傾向が続いています。
驚いたのはJTOWER(4485)の発表です。3/25(金)にNTTドコモ保有の通信鉄塔を最大6,002基(約1,062億円)を取得し、それらをNTTドコモが利用すると発表したことです。これらの鉄塔は他事業者との共用も可能となり、本取引後売上高やEBITDAは大幅に増える見込みとなりそうです。この発表を受け、同社株は3/28(月)に700円高、3/29(火)に1,000円高と上昇し、3/30(水)も買い気配でスタートとなっています。
図表1 日経ジャスダック平均と東証マザーズ指数の推移
- ※SBI証券チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※2021/6/30終値を1として指数化。 期間:2021/6/30〜2022/3/29
図表2 主な新興市場銘柄の値動き
コード | 銘柄名 | 市場 | 株価(3/29) | 週間 | 年初来 |
2702 | 日本マクドナルドホールディングス | ジャスダックS | 5,110 | 2.4% | 0.4% |
4385 | メルカリ | 東証マザーズ | 3,230 | 3.5% | -44.9% |
4816 | 東映アニメーション | ジャスダックS | 10,750 | 11.3% | -6.1% |
7564 | ワークマン | ジャスダックS | 5,160 | 2.0% | -6.2% |
6324 | ハーモニック・ドライブ・システムズ | ジャスダックS | 4,135 | -0.5% | -14.9% |
4194 | ビジョナル | 東証マザーズ | 7,210 | -1.9% | -25.7% |
4478 | フリー | 東証マザーズ | 4,335 | 14.8% | -31.8% |
7071 | アンビスホールディングス | ジャスダックS | 4,730 | -3.4% | -10.6% |
6425 | ユニバーサルエンターテインメント | ジャスダックS | 2,750 | 7.6% | 12.7% |
1407 | ウエストホールディングス | ジャスダックS | 4,780 | 4.7% | -16.6% |
【ご参考】 | 日経平均株価 | - | 28,252.42 | 3.8% | -1.9% |
TOPIX | - | 1,991.66 | 3.0% | -0.0% | |
日経ジャスダック平均 | - | 3,664.56 | 1.8% | -5.5% | |
東証マザーズ指数 | - | 759.64 | 4.6% | -23.1% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
- ※新興市場(マザーズおよびジャスダック)の時価総額上位10銘柄について、3/29時点での各種騰落率を掲載。
- ※「週間」は2022/3/22〜2022/3/29の騰落率。
- ※個別銘柄の「年初来」は昨年末株価と3/29時点の株価比較。
- ※指数の「年初来」は株価による単純計算。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
図表3 3/22(火)〜3/29(火)で株価上昇が大きかった新興市場銘柄
コード | 銘柄名 | 市場 | 株価(3/29) | 週間 | 年初来 |
4485 | JTOWER | 東証マザーズ | 6,030 | 52.3% | -37.5% |
3936 | グローバルウェイ | 東証マザーズ | 680 | 44.1% | 124.4% |
3491 | GAtechnologies | 東証マザーズ | 1,192 | 35.8% | -8.5% |
4591 | リボミック | 東証マザーズ | 211 | 35.3% | -48.7% |
6522 | アスタリスク | 東証マザーズ | 2,799 | 27.7% | -6.7% |
2934 | ジェイフロンティア | 東証マザーズ | 2,620 | 26.0% | 24.6% |
7342 | ウェルスナビ | 東証マザーズ | 1,961 | 24.9% | -4.0% |
6562 | ジーニー | 東証マザーズ | 1,090 | 21.2% | 39.2% |
7096 | ステムセル研究所 | 東証マザーズ | 3,745 | 20.6% | -21.3% |
4397 | チームスピリット | 東証マザーズ | 538 | 19.0% | -12.1% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
- ※新興市場(マザーズおよびジャスダック・前月末時価総額100億円以上)において、週間の株価上昇率が大きい上位10銘柄を掲載。
- ※「週間」は2022/3/22〜2022/3/29の騰落率。
- ※個別銘柄の「年初来」は昨年末株価と3/29時点の株価比較。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
今週で今年度(2021/4〜2022/3)の株式市場も終了となり、新年度からは再編された市場での取引も開始されます。新型コロナウイルスの感染拡大や、ウクライナでの紛争激化など、厳しい投資環境が続いてきましたが、新年度はどのような相場になるのでしょうか。
そうした中、前回の「新興株ウィークリー」では、今後「テンバガー」の実現に向かって進めそうな、高成長期待銘柄をスクリーニングにより抽出してみました。今回も目的は同じですが、スクリーニング条件を前回(3/23掲載)と少し変えてみました。具体的には以下の通りです。成長期待が強いものの、今年度は株価が大きく下げてしまった銘柄を選んでみました。
(1)新興市場(ジャスダック市場、または東証マザーズ市場)上場銘柄であること。
(2)時価総額100億円以上。
(3)株価下落率(2021/3末〜2022/3/29)が20%超。
(4)市場予想営業増益率が今後3年(今期・来期・再来期)累計で50%以上。
(5)業績予想を公表しているアナリストが2名以上いること。
(6)東証33業種分類で「情報・通信業」に属していること。
図表4の銘柄は、これらの条件をすべて満たしています。掲載の順番は(4)の予想増益率が高い順としました。
図表3でご紹介したJTOWER(4485)は、図表4でも上位銘柄になっています。NTTドコモからの通信鉄塔購入で、事業規模の急速な拡大が予想される一方、財務リスクが拡大するか否か、いかなるビジネスモデルになるのか、今後は注意も必要になりそうです。
その他、メルカリ(4385)やメドレー(4480)の業績・株価動向等の詳細については、下段にてご説明したいと思います。
図表4 アナリストが高い中期成長率を期待しつつも株価が大きく下げた新興銘柄
取引 | チャート | ポートフォリオ | コード | 銘柄 | 株価(3/29) | 騰落率(2021/3末〜) | アナリストの予想営業増益率(3年累計) |
4385 | 4385 | 4385 | 4385 | メルカリ | 3,230 | -35.7% | +429.1% |
4485 | 4485 | 4485 | 4485 | JTOWER | 6,030 | -29.6% | +352.7% |
4475 | 4475 | 4475 | 4475 | HENNGE | 895 | -75.8% | +316.2% |
4165 | 4165 | 4165 | 4165 | プレイド | 1,303 | -64.2% | +262.8% |
4480 | 4480 | 4480 | 4480 | メドレー | 2,299 | -48.0% | +245.4% |
4479 | 4479 | 4479 | 4479 | マクアケ | 2,006 | -71.3% | +222.1% |
4436 | 4436 | 4436 | 4436 | ミンカブ・ジ・インフォノイド | 2,696 | -38.9% | +189.1% |
3990 | 3990 | 3990 | 3990 | UUUM | 1,161 | -36.9% | +145.1% |
4051 | 4051 | 4051 | 4051 | GMOフィナンシャルゲート | 15,190 | -33.6% | +133.4% |
3966 | 3966 | 3966 | 3966 | ユーザベース | 1,029 | -62.9% | +126.7% |
4800 | 4800 | 4800 | 4800 | オリコン | 919 | -20.7% | +69.8% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。 アナリストの予想営業増益率(3年累計)は、再来年度の市場予想(Bloombergコンセンサス)営業利益を前年度実績の営業利益で割った増加率。騰落率は、株式分割等を加味した実質ベースで計算。
以下、一部の銘柄について、ポイントをご紹介します。
メルカリ(4385)〜東証マザーズ市場を代表する情報・通信関連株
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
- 期間:2021/10/4〜2022/3/30(日足)
■フリマサービスを展開。米国にも事業を拡大
当社は、スマートフォン上で不要品等を売買できるフリーマーケット(フリマ)アプリサービス「メルカリ」を運営しています。アプリを使い商品の写真を撮影し、商品説明などを記入するだけで出品が可能で、個人が簡単・手軽に中古品売買をできる仕組みのサービスです。売却代金の10%を出品者から手数料として受け取る仕組みになっています。
2013年7月のフリマアプリサービス開始以降、順調に規模を拡大してきました。2014年には早くも米子会社を設立し、フリマアプリサービスを米国で展開しました。2019年にスマホ決済サービスの「メルペイ」を開始し、同年には鹿島アントラーズの運営会社を子会社化しました。2021年には、1月に新規事業の企画・開発・運営のソウゾウを設立し、4月には暗号資産事業のメルコインを立ち上げました。株式時価総額は5000億円を超え、現状では東証マザーズ市場のトップに位置しています。
■11月以降株価は64%下落
株価は2021/11/22(月)取引時間中高値7,390円から、2022/3/14(月)取引時間中安値2,627円まで64.5%も下落しました。東証マザーズ市場を代表するグロース銘柄とみられ、世界的な金利上昇観測が響いたことに加え、「業績悪化」に伴う不透明感が背景と考えられます。
2/3(木)に発表された2022/6期・第2四半期決算では、営業損益が26億円の赤字(前年同期は10億円の黒字)と7四半期ぶりの営業赤字となりました。広告宣伝費などを中心に国内外での投資がかさんだことが要因です。米国事業の流通総額の成長率はプラスに転じましたが、当社が掲げる年間20%成長の目標に届かなかったことから、株式市場では売り材料とされました。
ただ、株価大幅下落で悪材料は織り込まれつつあります。積極的な投資を実施していく方針は継続しつつも、メルカリJPに加え、メルペイでは定額払いの利用増等による収益力の強化、メルカリUSでは決済手数料の導入によるユニットエコノミクスの改善など徐々に収益基盤が強くなっていることから、増収・増益フェーズへと切り替わっていくものと期待されます。
メドレー(4480)〜医療DXで市場の期待は大きい?
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
- 期間:2021/10/4〜2022/3/30(日足)
■日本最大級の人材採用システムを展開
当社は、日本最大級の人材採用システム「ジョブメドレー」とその周辺事業を運営する会社です。日本最大級のオンライン診療システムである「CLINICSオンライン診療」を中核として、患者のための医療情報サービス「MEDLEY」、市民のための介護情報サービス「介護のほんね」などの医療プラットフォーム事業も手掛けています。
2021/12期の連結業績は、売上高が108.6億円(前期比59.0%増)、営業利益が7.3億円(同85.1%増)でした。
人材プラットフォーム事業(売上構成比72.5%)では、顧客事業所数が前期末18%増の25.5万件に拡大しました。医療プラットフォーム事業(同24.6%)では、利用医療機関数は前期末比89%増の1万611件に達したものの、子会社化に伴うのれん償却費が発生しました。
■昨年来高値から71.3%下落も成長への期待は大きい
株価は昨年1/21(木)の昨年来高値6,030円から、本年3/15(火)昨年来安値1,726円まで71.3%も下落し、高PERを嫌気した売りは一巡した可能性がありそうです。3/30(水)取引時間中には3/3(木)の小天井を突破しつつあり、チャート形状は上昇の可能性が見受けられます。
2022/12期の会社予想営業利益は9億円(前期比22.7%増)です。市場コンセンサスでは2022/12期に12億円、2023/12期18億円の予想です。クラウド歯科業務支援システムへの期待が高まるほか、オンライン診療システムの議論が深まるかが注目点となりそうです。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
- ※NISA口座で上場株式等の配当金を非課税で受け取るためには、配当金の受領方法を「株式数比例配分方式」に事前にご登録いただく必要があります。
- ※信用取引において必要となるその他諸費用の詳細は信用取引のサービス概要をご確認ください。