東京株式市場は新年度相場入りとなり、4/4(月)からは「東証再編」により、「新市場」での取引も開始されました。ジャスダック・スタンダード市場の銘柄は「スタンダード」に、同グロース市場の銘柄は「グロース」に、東証マザーズ市場の銘柄は1銘柄(インタースペース)を除き「グロース」市場に「再編」されました。
「新興株ウィークリー」はこれまで、東証マザーズ市場またはジャスダック市場(スタンダード及びグロース)上場の銘柄を対象としてきましたが、今後は当面、新市場区分における「グロース」市場の銘柄を対象に、投資情報をお伝えしたいと思います。
年度替わり直後ということもあり、今回は2021年3月末以降の約1年間で大きく下がった「グロース」銘柄の中から、リバウンドが狙えそうな銘柄をピックアップしてみました。
新興株ウィークリー※YouTubeに遷移します。
■執筆者のプロフィール
SBI証券 投資情報部長 鈴木 英之
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロ(牧野真莉愛推し)の応援と旅行(のりテツ)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
・よくいくところ 京都
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
東京株式市場は新年度相場入りとなり、4/4(月)からは再編された「新市場」での取引も開始されました。「新興株ウィークリー」は、新市場区分における「グロース」銘柄を対象に、投資情報をお伝えしてまいります。
ちなみに、指数ベースでは、どのような変化があるのでしょうか。「新興株ウィークリー」では、日経ジャスダック平均と東証マザーズ指数を比較しながらご紹介してきましたが、ジャスダック市場の廃止により「日経ジャスダック平均」や「ジャスダックインデックス」は廃止になりました。
一方、東証マザース指数は継続されます。4/1(金)時点で東証マザーズ市場に上場していた銘柄が、「グロース」移行後もそのまま算出に採用されることになります。ちなみに、東証マザーズ市場から「スタンダード」に移行したインタースペース(2122)も算出対象として継続されます。なお、毎年10月最終日(基準日は8月最終営業日)に見直しが行われ、「グロース」の時価総額上位250銘柄が構成銘柄となり、除外銘柄はウェイト逓減を経て、指数から除外されます。
ということで、「新興株ウィークリー」は今後、「グロース」市場中心に投資情報をお伝えし、指数としては東証マザーズ指数を中心に解説していきたいと思います。
その東証マザーズ指数ですが、2/24(木)および3/15(火)の取引時間中安値をWボトムとし、チャート的には底値圏からの上放れが確立した形状となっています。このためか、3/29(火)〜4/5(火)についても、主力の時価総額上位銘柄が、特に目立った材料もない中、大幅高するケースが目立っています。
こうした中、JTOWER(4485)の動きが目立ちました、3/25(金)にNTTドコモが保有する通信鉄塔を最大6,002基取得し、NTTドコモが利用を継続する契約締結を発表しました。事業規模拡大への期待から、株価は3/28(月)〜3/30(水)だけで74.8%上昇しました。
図表1 日経平均株価と東証マザーズ指数の推移
- ※SBI証券チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※2021/9/30終値を1として指数化。 期間:2021/9/30〜2022/4/5
図表2 主なグロース市場銘柄の値動き
コード | 銘柄名 | 株価(4/5) | 週間(3/29〜4/5) | 年初来 |
4385 | メルカリ | 3,495 | 8.2% | -40.4% |
4194 | ビジョナル | 8,820 | 22.3% | -9.2% |
4478 | フリー | 4,790 | 10.5% | -24.7% |
4485 | JTOWER | 7,510 | 24.5% | -22.2% |
7342 | ウェルスナビ | 2,582 | 31.7% | 26.4% |
4565 | そーせいグループ | 1,463 | 0.6% | -23.2% |
4071 | プラスアルファ・コンサルティング | 2,852 | 9.9% | -10.3% |
4180 | Appier Group | 1,076 | 17.0% | -19.3% |
6027 | 弁護士ドットコム | 4,440 | 17.6% | -27.1% |
4480 | メドレー | 3,005 | 30.7% | 26.7% |
【ご参考】 | 日経平均株価 | 27,787.98 | -1.6% | -3.5% |
TOPIX | 1,949.12 | -2.1% | -2.2% | |
東証マザーズ指数 | 842.01 | 10.8% | -14.8% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
- ※グロース市場の時価総額上位10銘柄について、4/5時点での各種騰落率を掲載。
- ※「週間」は2022/3/29〜2022/4/5の騰落率。
- ※個別銘柄の「年初来」は昨年末株価と4/5時点の株価比較。
- ※指数の「年初来」は株価による単純計算。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
図表3 3/29(火)〜4/5(火)で株価上昇が大きかったグロース市場銘柄
コード | 銘柄名 | 株価(4/5) | 週間(3/29〜4/5) | 年初来 |
4475 | HENNGE | 1,290 | 44.1% | -33.4% |
4479 | マクアケ | 2,781 | 38.6% | -35.9% |
4880 | セルソース | 3,640 | 36.2% | -33.0% |
4192 | スパイダープラス | 846 | 34.7% | -36.2% |
7342 | ウェルスナビ | 2,582 | 31.7% | 26.4% |
4480 | メドレー | 3,005 | 30.7% | 26.7% |
4493 | サイバーセキュリティクラウド | 2,691 | 29.0% | 58.4% |
6580 | ライトアップ | 3,110 | 28.7% | 3.8% |
4448 | Chatwork | 617 | 25.9% | -35.2% |
4377 | ワンキャリア | 3,245 | 25.6% | 10.9% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
- ※グロース市場銘柄(時価総額100億円以上)において、週間の株価上昇率が大きい上位10銘柄を掲載。
- ※「週間」は2022/3/29〜2022/4/5の騰落率。
- ※個別銘柄の「年初来」は昨年末株価と4/5時点の株価比較。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
冒頭でもご説明したように、東京株式市場は新年度相場入りとなりました。現在の「グロース」銘柄の値動きに近いとみられる東証マザーズ指数は、2021年3月末から本年4/5(火)までに約30%も下落しました。
チャート的に、東証マザーズ指数はWボトムを形成し、底値圏からの上放れが確立した形状となっています。仮に今後反発相場が本格化した場合、これまでに株価が大きく下げた銘柄ほど、大きな反発となる可能性が大きいと考えられます。今回の「新興株ウィークリー」では、大きなリバウンドが狙えそうな銘柄をピックアップすべく、以下のスクリーニングを行ってみました。
(1)「グロース市場」に上場(4/5現在)する銘柄であること。
(2)時価総額100億円以上の銘柄であること。
(3)2021年3月末に株式を上場している銘柄であること。
(4)2021年3月末から本年4/5(火)までの株価下落率が30%超。
(5)4/5(火)まで20日間の平均出来高が2万株以上。
(6)直近四半期の営業損益が黒字であること。
(7)直近四半期(累計)営業利益の通期会社予想営業利益(ない場合は市場予想)に対する進捗率が、「標準」以上。
※「標準」の進捗率は第3四半期累計では75%、第1四半期のみでは25%となります。
図表4の銘柄は、(1)〜(7)のすべての条件を満たしており、掲載の順番は(4)の株価下落率順になっています。これらの銘柄は株価が大きく下落しているものの、四半期営業利益の進捗率が高く、業績予想下方修正のリスクは小さいとみられ、その分、株価反発への逆風は弱いと考えられます。
図表4 過去約1年(2021年3月末〜2022/4/5)で株価が大幅下落も、営業利益の進捗率が良好な「グロース」銘柄
取引 | チャート | ポート フォリオ |
コード | 銘柄 | 株価(4/5) | 騰落率(2021/3末〜4/5) | 四半期累計営業利益進捗率 |
4475 | 4475 | 4475 | 4475 | HENNGE | 1,290 | -65.1% | (Q1)44.7% |
4308 | 4308 | 4308 | 4308 | Jストリーム | 870 | -63.7% | (Q3)83.8% |
4376 | 4376 | 4376 | 4376 | くふうカンパニー | 375 | -55.9% | (Q1)28.4% |
6027 | 6027 | 6027 | 6027 | 弁護士ドットコム | 4,440 | -49.0% | (Q3)81.9% |
4431 | 4431 | 4431 | 4431 | スマレジ | 1,546 | -45.7% | (Q3)118.9% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。 「四半期累計営業利益進捗率」の欄において、たとえばJストリームの場合、直近四半期が第3四半期で、そこまでの累計営業利益が、通期会社予想営業利益に対し83.8%であることを示しています。
以下、一部の銘柄について、ポイントをご紹介します。
Jストリーム(4308)〜ネット上で各種コンテンツを配信
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
- 期間:2021/4/12〜2022/4/6(日足)
■映像・音声等のコンテンツ配信を行う
当社は各種インターネット動画配信用ソフトウエアを用いて、映像や音声などのコンテンツ配信サービスを行う会社で、トランスコスモス(持株比率44.5%)の傘下企業となっています。
「配信事業」では、企業の説明会、広告、教育映像、イベント映像や音楽、映画など、あらゆる映像・音声コンテンツを配信しています。
また、「制作・システム事業」では、映画・音声などをネットワーク配信するためのデジタル圧縮変換(エンコード)作業や、ライブイベント会場での映像コンテンツの作成、製薬や金融などの業界で多く利用されるインターネット上でのプロモーション用の映像制作などのプロフェッショナル・サービスを提供しています。
■業績予想を下方修正も
当社は3/24(木)に業績予想を下方修正し、今期予想営業利益を24億円から19.8億円に引き下げました。新型コロナウイルス感染拡大の影響もあるようです。
株価はこれを受けて3/25(金)に13.9%下落しました。しかし、これで悪材料出尽くしの形となり、その後は切り返す展開になりました。株価下落が長期かつ大幅になったこともあり、PERも16倍台(会社予想ベース)まで低下し、割安感が強まっています。
弁護士ドットコム(6027)〜DX関連銘柄のコア的存在?
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
- 期間:2021/4/12〜2022/4/6(日足)
■弁護士へのマーケティング支援サービスを中心に提供
インターネットを通じた弁護士へのマーケティング支援サービスを中心に提供しています。主力サイト「弁護士ドットコム」は21,412人(2021年末)の弁護士が登録し、有料でプロフィールや得意分野の登録を行うことができます。
弁護士が監修した電子契約サービスである「クラウドサイン」の成長がけん引し、2021/10〜12期は売上高18.2億円(前年同期比32.8%増)と順調に拡大しました。同四半期の営業利益は3.8億円(同3.3倍)と過去最高益(四半期ベース)を更新しました。
株価は決算発表(1/27)翌日に4,020円の安値を付けましたが、2/2(水)には5,420円まで戻り、いったんは底入れの形になりました。ただ、高PERの典型的なグロース銘柄とみなされるだけに、3/15(火)にかけては再び下落基調となりました。
■DX関連銘柄のコア的存在?
弁護士が監修した電子契約サービスである「クラウドサイン」は紙と印鑑をクラウドに置き換えるサービスで、DX事業の中核であり、当社の成長のけん引役の1つと言えるでしょう。
昨年8/30(月)に富士キメラ総研が発表したレポートでは、同社の電子契約サービス(有償プラン)が導入企業数において、市場占有率トップとなりました。
NTTドコモが提供し、DX推進に必要なサービスをWeb上から購入できる「ビジネスdxストア」でも「クラウドサイン」の取り扱いが決定(2021/11/29発表)しており、販路の拡大がさらに、この製品の成長を助ける可能性もありそうです。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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