「グロース市場」の銘柄を中心に構成される東証マザーズ指数は、4/5(火)以降は下落局面となりました。FOMC議事要旨の発表(4/6)等を経て、米長期金利の上昇が加速し、グロース銘柄全般が逆風に見舞われました。
そうした中、4月下旬以降、上場企業の決算発表が本格化してきます。今回は、四半期決算が良好且つ、今期(通期)の業績数字も強くなりそうな銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行ってみました。
新興株ウィークリー※YouTubeに遷移します。
■執筆者のプロフィール
SBI証券 投資情報部長 鈴木 英之
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロ(牧野真莉愛推し)の応援と旅行(のりテツ)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
・よくいくところ 京都
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
東証マザーズ指数は、当面の安値となる3/15(火)終値から4/5(火)終値まで、26.1%上昇しました。しかし、その後4/12(火)までは10.4%も下落しています。同期間の日経平均株価(5.2%下落)よりも大きな下げとなりました。
4/6(水)に米国でFOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨が発表され、FRB(米連邦準備制度理事会)がQT(量的引き締め)の早急な開始や、QTの規模拡大、短期間に大幅な政策金利の引き上げ等を検討していることが明確となりました。これを受けて米国では長期金利の上昇が加速し、グロース銘柄の多いナスダック市場を中心に株価が急落しました。それに連れた東京市場でも、グロース銘柄や半導体関連株などを中心に売られる展開となりました。
図表2にもあるように、グロース市場の主要銘柄は全面安に近い状態となりました。特に時価総額トップのメルカリ(4385)は、4/6(水)から4/11(月)まで4営業日続落し、19.5%も下落しました。同社はGMV(流通総額)成長率を今期20%以上にする目標を掲げていますが、アナリストの一部はこれに懐疑的な見方をしているようです。
これに対し、ティーケーピー(3479)は底堅い動きでした。終値レベルでは3/11(金)1,174円を起点に、4/12(火)1,449円まで23.4%上昇し、4/13(水)も上昇を続けました。4/11(月)には業績予想の上方修正を発表し、今期19億円の赤字と予想していた営業損益は8.8億円の赤字に修正されました。新型コロナウイルスの感染拡大により、貸会議室の需要回復を保守的にみていましたが、セミナーや研修等のイベント再開が進んでいるようです。
4/13(水)は日経平均株価、東証マザーズ指数ともに反発しています。
図表1 日経平均株価と東証マザーズ指数の推移
- ※SBI証券チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※2021/9/30終値を1として指数化。 期間:2021/9/30〜2022/4/13
図表2 主な新興市場銘柄の値動き
コード | 銘柄名 | 株価(4/12) | 週間(4/5〜4/12) | 年初来 |
4385 | メルカリ | 2,837 | -18.8% | -51.6% |
4194 | ビジョナル | 7,620 | -13.6% | -21.5% |
4478 | フリー | 4,105 | -14.3% | -35.5% |
4485 | JTOWER | 6,890 | -8.3% | -28.6% |
4565 | そーせいグループ | 1,366 | -6.6% | -28.3% |
4180 | Appier Group | 1,027 | -4.6% | -23.0% |
7342 | ウェルスナビ | 2,198 | -14.9% | 7.6% |
4071 | プラスアルファ・コンサルティング | 2,534 | -11.2% | -20.3% |
6027 | 弁護士ドットコム | 4,050 | -8.8% | -33.5% |
4480 | メドレー | 2,616 | -12.9% | 10.3% |
【ご参考】 | 日経平均株価 | 26,334.98 | -5.2% | -8.5% |
TOPIX | 1,863.63 | -4.4% | -6.5% | |
東証マザーズ指数 | 754.14 | -10.4% | -23.7% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
- ※グロース市場の時価総額上位10銘柄について、4/12時点での各種騰落率を掲載。
- ※「週間」は2022/4/5〜2022/4/12の騰落率。
- ※個別銘柄の「年初来」は昨年末株価と4/12時点の株価比較。
- ※指数の「年初来」は株価による単純計算。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
図表3 4/5(火)〜4/12(火)で株価上昇が大きかった新興市場銘柄
コード | 銘柄名 | 株価(4/12) | 週間(4/5〜4/12) | 年初来 |
3479 | ティーケーピー | 1,449 | 7.5% | 5.2% |
3911 | Aiming | 360 | 5.0% | 28.6% |
7803 | ブシロード | 1,506 | 4.7% | -20.0% |
6094 | フリークアウト・ホールディングス | 2,008 | 4.4% | 18.5% |
3936 | グローバルウェイ | 519 | 3.4% | 71.3% |
3904 | カヤック | 939 | 3.2% | 39.9% |
4176 | ココナラ | 877 | 0.8% | -46.1% |
4933 | I−ne | 3,250 | 0.6% | -3.7% |
7339 | アイペットホールディングス | 2,096 | -0.2% | -3.7% |
2178 | トライステージ | 343 | -0.3% | -4.2% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
- ※新興市場(グロース市場・前月末時価総額100億円以上)において、週間の株価上昇率が大きい上位10銘柄を掲載。
- ※「週間」は2022/4/5〜2022/4/12の騰落率。
- ※個別銘柄の「年初来」は昨年末株価と4/12時点の株価比較。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
上場企業にとっての「好決算」とは、どんな決算でしょうか。一般的には、増収・増益で、なるべくその数字が大きいほど、好決算と言えるでしょう。しかし、株価は業績数字(実績)と業績予想との比較や、業績予想の修正等によって、大きく動く傾向が強いと思われます。また、決算発表で強い業績予想が発表されることも「好決算」と言えるでしょう。
業績予想は、それを公表する主体によって様々なものがあります。もっともオーソドックスなのは上場企業自らが公表する業績予想(ただし、未公表の企業もある程度見受けられます)でしょう。また近年は、アナリストの業績予想や、それを集計し、その平均値を計算した市場コンセンサスも重要な役割を果たしています。さらに、「会社四季報」(東洋経済新報社)や、日本経済新聞社の公表する独自の業績予想も使われています。
ちなみに、東証マザーズ指数を構成する426銘柄のうち、2名以上のアナリストが業績予想を公表し、レポート執筆の対象としている銘柄は146銘柄にとどまっています。今回は、市場コンセンサスのある銘柄に絞らず、会社予想を発表してい幅広い銘柄を対象とし、四半期決算が良好で、今期(通期)の業績数字が強くなりそうな銘柄を抽出すべく、以下のようなスクリーニングを行ってみました。
(1)「グロース市場」に上場(4/13現在)する銘柄であること。
(2)時価総額100億円以上の銘柄で、会社予想業績を公表していること。
(3)3月、6月、9月決算銘柄であること。
(4)4/12(火)まで20日間の1営業日当たり平均出来高が3万株以上。
(5)直近四半期(累計)の営業利益が前年同期比で10%以上の増益、または黒字転換。
(6)今期会社予想営業利益が前期比10%超の増益予想、または黒字転換予想。
(7)直近四半期(累計)の営業増益率が今期会社予想営業増益率を上回っていること。ただし、直近四半期(累計)の営業損益が黒字転換した場合は、この条件を満たしたものとする。
図表4の銘柄は、(1)〜(7)のすべての条件を満たしており、掲載の順番は決算発表予定日の早い順となっています。
図表4 好決算の発表が期待できそうなグロース銘柄
取引 | チャート | ポートフォリオ | コード | 銘柄 | 株価(4/12) | 決算発表予定日 | 四半期累計営業増益率 | 今期会社予想営業増益率 |
4498 | 4498 | 4498 | 4498 | サイバートラスト | 3,660 | 4/27(水) | +75.7% | +21.9% |
3496 | 3496 | 3496 | 3496 | アズーム(9) | 6,630 | 4/28(木) | +74.8% | +67.5% |
7806 | 7806 | 7806 | 7806 | MTG(9) | 1,485 | 5/11(水) | +219.0% | +15.7% |
3773 | 3773 | 3773 | 3773 | アドバンスト・メディア | 583 | 5/12(木) | +90.8% | +32.4% |
4485 | 4485 | 4485 | 4485 | JTOWER | 6,890 | 5/12(木) | +26.3% | +24.2% |
6562 | 6562 | 6562 | 6562 | ジーニー | 1,031 | 5/12(木) | +971.3% | +279.5% |
3936 | 3936 | 3936 | 3936 | グローバルウェイ | 519 | 5/13(金) | 黒字転換 | 黒字転換 |
6030 | 6030 | 6030 | 6030 | アドベンチャー(6) | 8,690 | 5/13(金) | +105.5% | +72.9% |
6580 | 6580 | 6580 | 6580 | ライトアップ | 2,630 | 5/13(金) | +133.5% | +51.0% |
7092 | 7092 | 7092 | 7092 | Fast Fitness Japan | 1,992 | 5/13(金) | +52.0% | +13.3% |
3993 | 3993 | 3993 | 3993 | PKSHA Technology(9) | 1,990 | 5/13(金) | +49.9% | +40.2% |
4167 | 4167 | 4167 | 4167 | ココペリ | 1,309 | 5/16(月) | +118.6% | +43.1% |
2158 | 2158 | 2158 | 2158 | FRONTEO | 1,619 | 5/20(金) | +2043.1% | +254.9% |
- ※Bloombergデータ、会社公表データを用いてSBI証券が作成。決算発表予定日はBloomberg予想。 銘柄右横カッコ内の数字は決算月を示し、数字のない銘柄は3月決算銘柄です。
以下、一部の銘柄について、ポイントをご紹介します。
JTOWER(4485)〜NTTドコモとの提携で事業拡大にはずみも?
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
- 期間:2021/10/18〜2022/4/13 14:30時点(日足)
■移動体電話事業者の投資コストを削減
当社は、移動体通信事業者に対して、屋内電波対策用の共用設備を提供するIBS(In‐Building‐Solution)事業を中核に展開しています。売上構成比(前期)は、国内IBS事業80%、海外IBS事業14%他となっています。
主力のIBS事業では、移動体通信事業者各社が各々独自で実施してきた屋内携帯インフラの構築を、当社が独自開発した共用設備に一本化したソリューションを複数の事業者に提供しています。当社のソリューションを採用することで、移動体通信事業者は設備投資や運用費用の削減を図ることができるのが強みです。
ビジネスモデルとしては、当社が各携帯キャリアから設備負担金を一時金として受け取るほか、長期契約に基づき継続的に使用料を徴収する仕組みになっています。また海外では、ベトナム、ミャンマー、マレーシアで、現地パートナーと連携して事業を展開しています。
■NTTドコモから通信鉄塔を購入
当社は3/25(金)にNTTドコモ保有の通信鉄塔を最大6,002基(約1,062億円)を取得し、それらをNTTドコモが利用すると発表しました。これらの鉄塔は他事業者との共用も可能となり、本取引後の売上高やEBITDAは大幅に増える可能性があります。この発表を受け、当社株は急騰となり、4/7(木)には8,050円まで上昇しました。ただ、足元はやや過熱感も強まっており、注意も必要です。
業績は好調です。2022年3月期・第3四半期累計の営業利益は前年同期比26.3%増の3.6億円となっています。通期では前期比24.4%増の5.2億円が会社予想ですが、2026年3月期までに、営業利益は46億円程度まで拡大というのが市場コンセンサスとなっています。
もっとも、急激な業容の拡大にはリスクも伴いそうです。
FRONTEO(2158)〜独自開発のAIエンジンを活用し、解析支援を展開
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
- 期間:2021/10/18〜2022/4/13 14:30時点(日足)
■言語系AIエンジンを柱にソリューションを提供
当社は、独自開発したAI(人工知能)エンジン「KIBIT(キビット)」や「Concept Encoder(コンセプトエンコーダー)」をベースに、自然言語処理に特化したデータ解析を行う企業です。
医療分野やビジネスインテリジェンス分野をターゲットとしたAIソリューション事業(前期売上構成比20%)と、法的紛争・訴訟などで電子データの証拠保全や調査・分析など手掛けるリーガルテックAI事業(同80%)を展開しています。
■業績は好調に推移
11/15(月)に会社側は、22年3月期(通期)の連結業績予想について、売上高を108億円から112億円(前期比8.0%増)に、営業利益を12億円から18億円(同3.6倍)にそれぞれ上方修正しました。
2022年3月期・第3四半期累計の営業利益は13.9億円です。会計方針の変更があり、厳密には比較はできませんが、単純計算では前年同期比で営業利益は21倍となり、通期計画に対する進捗率は77.4%に達しています。
2/14(月)の決算発表後、期待されていた業績の上方修正がなかったこともあり、株価は底値圏で推移してきました。しかし、5/20(金)の決算発表を通じ、成長期待が回復してくれば、株価は底放れに転じる可能性もありそうです。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
- ※NISA口座で上場株式等の配当金を非課税で受け取るためには、配当金の受領方法を「株式数比例配分方式」に事前にご登録いただく必要があります。
- ※信用取引において必要となるその他諸費用の詳細は信用取引のサービス概要をご確認ください。