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株価急落が買い好機に!?〜「旅行」「イベント」関連に動意の兆しも?

2022/4/27
投資情報部 鈴木 英之

日経平均株価は引き続き不安定な展開になっています。米国では、FRB(米連邦準備制度理事会)が市場想定よりも、早期かつ大規模な金融引き締め姿勢を示しており、市場は、景気にブレーキが効き過ぎることを警戒しているようです。また、中国の上海・北京でのロックダウン強化も気がかりな材料です。

こうした中、東証マザーズ指数が4/14(木)〜4/25(月)に8営業日続落し、下落率は11.6%でした。米国で金利上昇懸念が強まっており、日米市場ともにグロース株への売り圧力が強まっています。

しかし、こうした大幅株安の中においても、投資環境が大幅に改善してきたセクターがあると「新興株ウィークリー」では考えています。それは、イベント、旅行等の「経済再開銘柄」です。

新興株ウィークリー新しいウィンドウで開きます。※YouTubeに遷移します。

執筆者のプロフィール
SBI証券 投資情報部長 鈴木 英之
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロ(牧野真莉愛推し)の応援と旅行(のりテツ)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
・よくいくところ 京都
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。

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1グロース株への逆風が続き、東証マザーズ指数の下落基調も継続

日米で株価が急落しています。その理由は、おもに以下の4点であると考えられます。

(1)スタグフレーションへの懸念・・・先物市場においては、6月FOMCでの0.75%の利上げ可能性も織り込まれている。市場は急激な引き締めによる景気悪化を懸念か。
(2)北京・上海でロックダウン強化の動き・・・中国の景気減速や、グローバル企業の業績悪化、供給減少を懸念。
(3)下げ止まらないハイテク株、企業業績への不安・・・ネットフリックス株が4/20(水)の米国市場で35%も急落。
(4)ウクライナ・ロシア間の戦争が長期化、激化する不安・・・対独戦勝記念日(5/9)に向けてロシアが攻勢を強める可能性。

報道等を見る限り、足元の株価急落については、直接的には(1)と(2)が要因との印象です。ただ、外部環境の急変を企業が読み切れないため、業績予想は慎重にならざるをえず、今週以降本格化している日米の決算発表に対し、投資家の警戒心は強まるとみられます。

東証グロース市場も軟調です。金利上昇懸念を背景に、米国でもグロース銘柄が多いナスダック指数が4/26(火)に年初来安値更新となっています。こうした局面では時価総額上位銘柄に売りが出やすく、時価総額トップのメルカリ(4385)もなかなか下げ止まらないのが現状です。

一方、再生医療のセルソース(4880)が4/19(火)〜4/27(水)に7連騰と気を吐いています。著名YouTuber・ヒカルとコラボした高機能美容クリームを発売すると発表(4/19)し、上昇に弾みが付いた形です。

図表1 日経平均株価と東証マザーズ指数の推移

  • ※SBI証券チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※2021/9/30終値を1として指数化。 期間:2021/9/30〜2022/4/26

図表2 主なグロース市場銘柄の値動き

コード 銘柄名 株価(4/26) 週間(4/19〜4/26) 年初来
4385 メルカリ 2,278 -13.1% -61.1%
4194 ビジョナル 7,510 1.1% -22.7%
4478 フリー 3,955 -2.2% -37.8%
4485 JTOWER 6,210 -7.6% -35.6%
4565 そーせいグループ 1,267 -3.5% -33.5%
4180 Appier Group 952 -4.1% -28.6%
4071 プラスアルファ・コンサルティング 2,271 -7.0% -28.6%
7342 ウェルスナビ 1,842 -10.3% -9.8%
4480 メドレー 2,564 -6.7% 8.1%
6027 弁護士ドットコム 3,670 -2.9% -39.7%
【ご参考】 日経平均株価 26,700.11 -1.1% -7.3%
  TOPIX 1,878.51 -0.9% -5.7%
  東証マザーズ指数 711.44 -4.4% -28.0%
  • ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
  • ※グロース市場の時価総額上位10銘柄について、4/26時点での各種騰落率を掲載。
  • ※「週間」は2022/4/19〜2022/4/26の騰落率。
  • ※個別銘柄の「年初来」は昨年末株価と4/26時点の株価比較。
  • ※指数の「年初来」は株価による単純計算。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

図表3 4/19(火)〜4/26(火)で株価上昇が大きかったグロース市場銘柄

コード 銘柄名 株価(4/26) 週間(4/19〜4/26) 年初来
4880 セルソース 3,945 26.8% -27.3%
4054 日本情報クリエイト 1,277 13.0% 18.5%
3990 UUUM 1,218 12.6% 51.9%
3628 データホライゾン 2,128 10.3% 15.1%
4933 I−ne 3,330 7.8% -1.3%
6612 バルミューダ 3,300 7.3% -21.1%
7339 アイペットホールディングス 2,150 4.9% -1.2%
4772 ストリームメディアコーポレーション 146 4.3% 0.0%
6521 オキサイド 5,590 4.1% -23.7%
4074 ラキール 2,300 3.9% -1.0%
  • ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
  • ※グロース市場(前月末時価総額100億円以上)において、週間の株価上昇率が大きい上位10銘柄を掲載。
  • ※「週間」は2022/4/19〜2022/4/26の騰落率。
  • ※個別銘柄の「年初来」は昨年末株価と4/26時点の株価比較。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

2株価急落が買い好機に!?〜「旅行」「イベント」関連に動意の兆しも?

前項で説明したように4/27(水)の東京株式市場も波乱となっています。しかし、前向きな動きとしては、この日の取引で、JR東海(9022)の会社業績予想が市場予想を大きく下回ったにもかかわらず、売り一巡後、上昇に転じたことが指摘されます。

JR東海(9022)は4/26(火)に決算発表を実施し、2023年3月期の営業利益は2,900億円になるとの見通しを発表しました。前期の営業利益が17億円と予想を大きく下回る低水準だったため、大幅増益予想にみえますが、事前の市場コンセンサスは4,100億円であり、これを大幅に下回る数字でした。4/27(水)の取引では一時、前日比210円安の水準まで下げましたが、売り一巡後は買い直されました。

JR東海(9022)は現在、株式市場では「経済再開銘柄」と捉えられています。株式市場全般の波乱に加え、業績悪にも係わらず、同社株が上昇したことで、「経済再開銘柄」への流れが前向きな方向に変わる可能性がありそうです。

確かに、「経済再開銘柄」を取り巻く環境は変わりつつあります。ひとつは、新型コロナウイルスの新規感染者数の増加がピークアウトしつつあることです。日本の新型コロナウイルス新規感染者数(日経集計)は2/8(火)に10万人を超えたあたりでピークとなり、足元は4万人近辺まで減速しています。2/25(金)に278人まで増えていた死者数も、足元は50人前後まで減っています。

すでに政府は東京都などに適用してきた「まん延防止等重点措置」を3/21(月)で解除し、経済再開に向けて軸足を移し始めています。一時はぶり返しが心配されましたが、新規感染者数の増加ペースも落ち着き、人々の動きも復活しつつあります。

そうした中、日本はゴールデンウィークの長期休暇シーズンを迎えようとしています。土日休みの方であれば、5/2(月)と5/6(金)だけ休みを取れれば10連休が実現するなど、今年は日並びが良く、観光が盛り上がりをみせそうです。4月上旬にJTBが公表した「2022年ゴールデンウィーク期間(4/25〜5/5)の国内旅行者(1泊以上)」は前年同期比68.4%増の1,600万人が予想されています。2019年比では43.4%低い数字ですが、急速な回復ではあります。

また、大手航空各社が4月下旬に公表したゴールデンウィーク期間(4/29〜5/8 注:上述したJTB調査の期間とは異なります)の予約状況(前年比)は、JALの国内線が2倍、国際線が4.2倍で、特にハワイは約9倍となっています。さらに、ANAについても、国内線1.4倍、国際線5.6倍になっているようです。

新型コロナウイルス感染者数増加のピークアウトと新型コロナウイルスとの共生を目指した政策により、上記のような旅行需要の高まりに加え、イベント需要についても回復が予想されます。

今回の「新興株ウィークリー」では、以下の条件により「経済再開銘柄」のうち、特に「旅行」と「イベント」に関連する銘柄をピックアップしてみました。

(1)東証グロース市場、または同スタンダード市場に上場。
(2)業務内容から「旅行」や「イベント」に関連しているとみられること。
(3)直近20日間の1日当たり平均出来高が2万株以上あること。
(4)直近四半期(3ヵ月)決算で営業黒字を確保していること。

図表4の銘柄は、上記の条件をすべて満たしています。また、掲載はコード番号順になっています。なお、市場再編により、旧ジャスダック銘柄は原則、東証スタンダード市場上場に変更となっています。「新興株ウィークリー」では今後改めて、「東証スタンダード市場上場銘柄」も分析対象にしたいと思っております。

図表4 株価急落が買い好機になりそうな「旅行」「イベント」関連銘柄

取引 チャート ポート
フォリオ
コード 銘柄 株価(4/26) 平均出来高(千株) 旅行・イベントに関連する事項
1418 1418 1418 1418 インターライフホールディングス(S) 175 198 子会社が「イベント提案」に展開。
2438 2438 2438 2438 アスカネット 1,107 706 旅行の他、結婚式、葬儀等に関する写真サービス。
3479 3479 3479 3479 ティーケーピー 1,868 540 貸会議室大手。イベント回復は追い風。
4487 4487 4487 4487 スペースマーケット 534 29 空きスペースの時間貸し。
6030 6030 6030 6030 アドベンチャー 9,320 107 オンライン旅行サービス会社。
6063 6063 6063 6063 日本エマージェンシーアシスタンス(S) 1,074 66 損保に代わり海外で医療機関手配。
7050 7050 7050 7050 フロンティアインターナショナル 2,819 57 イベントプロモーション他。
7838 7838 7838 7838 共立印刷(S) 134 127 子会社で旅行情報誌。
9625 9625 9625 9625 セレスポ(S) 1,365 254 イベント企画。地鎮祭、スポーツに強い。
  • ※各種報道、会社資料等をもとにSBI証券が作成。コード番号順に掲載。
  • ※銘柄名右に(S)とあるのは、東証スタンダード市場銘柄で、無印は東証グロース市場銘柄。
  • ※「平均出来高」の期間は過去20日間で、単位は千株。4/26(火)現在のBloombergデータ。

以下、一部の銘柄について、ポイントをご紹介します。

アスカネット(2438)〜経済再開で「主力フォトブック事業」改善に期待

  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
  • 期間:2021/11/1〜2022/4/27 13:30

■遺影や個人向け写真集など写真関連事業を展開

遺影や個人向け写真集などの写真関連事業を展開しています。売上構成比は、フューネラル事業(葬儀社向けに遺影写真のデジタル加工や配信を行う)が43.2%、フォトブック事業(本格的な写真集をネットで受注)が54.7%、空中結像技術を用いた「空中ディスプレイ事業」が2.1%となっています。

3/7(月)に発表された2022/4期・第3四半期業績(累計)は売上高46.88億円(前年同期比11.9%増)、営業利益3.69億円(同162.6%増)でした。主力のフォトブック事業が増益となり、「空中ディスプレイ事業」の広告宣伝費増を吸収しました。

会社側は好決算を受けて、通期(2022/4期)業績予想を上方修正し、売上高62.7億円→63.2億円(前期比9.6%増)、営業利益2.85億円→4.41億円(同59.0%増)としています。

■イベント、旅行の回復は写真集市場の追い風に?

前項でもご説明したように、2022/4期・第3四半期はフォトブック事業の増益が、業績予想の上方修正に貢献しました。写真集市場が新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けてきましたが、経済正常化で想定より悪化しなかったようです。

イベント、旅行など非日常的な活動が再び増えることで、写真集市場の業績はいっそうの改善が期待できそうです。

株価は上記した業績予想上方修正を経て、3/22(火)に1,758円の高値を付けた後、東証マザーズ指数に連れる形で下落基調に転じました。ただ、足元は業績予想上方修正を発表した3/7(月)終値1,250円を下回っており、「下げ過ぎ」感が強くなりつつあります。なお、当社は4月決算銘柄であり、4/27(水)が配当落ち日になっております。

アドベンチャー(6030)〜旅行需要の回復で業績改善に期待

  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
  • 期間:2021/11/1〜2022/4/27 13:30

■旅行商品の比較・予約ができるサイトを運営

当社はインターネットで旅行商品の比較や予約を行うことができるオンライン旅行会社です。当社が運営するサイトである「skyticket」では、航空券などの旅行商品や、ホテル、レンタカー、海外Wi-Fiレンタル等の比較や予約を行うことができます。
こうしたサイトの運営を主力とする「コンシューマ事業」を基幹に、ビジネスや企業などへの投資事業も手掛けています。

当社サイトは42ヵ国語に対応しているため、海外ユーザーが多数利用していることも強みになっています。2021年11月現在でサイトのダウンロード数は1,700万件に達しています。

業績は改善傾向です。2022/6期・第2四半期(累計)は、売上高が192億円(前年同期比5.0%増)、営業利益10.5億円(同105.5%増)となりました。通期では、売上高370億円(前期比2.1%増)、営業利益17億円(同72.9%増)が会社予想です。昨年10月以降は緊急事態宣言が明けたこともあり、閑散期にもかかわらず、各サービスで予約が増加しました。
 
■旅行需要の構造変化に対応

旅行予約市場では、予約方法の主流が、対面からオンラインに変わりつつあります。さらに、パッケージや団体中心の旅行から近年は、手軽にオーダーメイドが可能な旅行や個人旅行の比率が高まっています。

新型コロナウイルスの感染状況や、各種行動規制の導入・解除等で、旅行関連企業の業績は大きく変動してきましたが、当社は黒字を確保し続け、業績は改善どころか、最高益更新をうかがう状況となっています。

今後、インバウンド需要の回復等を取り込めれば、業績はさらに拡大する余地もありそうです。

  • ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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