米インフレは財やエネルギー中心に減速も、サービス部門によって長期化へ
下図は、米CPI(消費者物価指数、前年同月比)の推移です。財やエネルギー価格の伸びが大きく減速していることで、全体のCPI総合や食品・エネルギーを除いたコアCPIも減速しています。しかし、水準を見ると、コアCPIでも1月時点で前年同月比+5.6%と高く、FRB(米連邦準備制度理事会)が目途としている+2%からはほど遠い状況です。
全体のインフレ率を高止まりさせているのは、全体の6割以上を占めるサービス(除く食品・エネルギー)が未だに上昇ピッチを緩めていないためで、1月は前年同月比で+7.2%に達しています。そのサービスを押し上げているのが住居費(家賃)や旅行などの一般サービスで、特に、旅行などの一般サービスは、経済活動再開のど真ん中業種であるためか、人手不足を理由に価格高騰に減速の兆しが見られないようです。このような状況下、米インフレ動向は減速しつつあるものの、その水準は高止まりが続き、長期化が予想されています。
米CPIの推移(全体と分野別)
期間:2018年1月〜2023年1月、月次
(出所)Bloombergを基に野村アセットマネジメント作成
米消費者のセンチメントは堅調な雇用が支える形で底堅く推移
下図は、米民間調査会社コンファレンスボードによる消費者信頼感指数と雇用センチメントです。消費者信頼感指数とは、景気・雇用情勢・所得などの見通しを家計に聞くアンケート調査の結果を指数化したものです。消費者信頼感指数は、コロナショックから鋭角的に回復した後、2021年央からインフレ加速や2022年に入ってからの急ピッチかつ大幅な米利上げを受けて急反落していましたが、昨夏を底に再び回復基調にあります。
また、消費者信頼感指数の構成要素である雇用センチメントは、コロナショックからの回復後に消費者信頼感指数のような大きな減速を見せず、かなりの高水準を維持しています。米国の家計は雇用に関してはほとんど心配していないようで、米雇用統計に表れるような雇用の堅調さを裏付ける内容と言えます。
このような良好な雇用環境が続けば、米景気が大きく悪化するリスクは低く、メディア等で報道されている年後半の景気後退の可能性は高くないと考えられます。米景気が大きく悪化しないのであれば、FRBが慌てて利下げに転じる必要もないため、米金融政策は現状の緩やかな利上げが継続し、その高い政策金利水準がしばらく維持されるのではないかという見方が次第に増えていくでしょう。
米消費者センチメントの推移
期間:2011年1月〜2023年1月、月次
(出所)Bloombergを基に野村アセットマネジメント作成
米ドル円レートは様々な要素で決定されるが、金利差動向などからはレンジ相場が予想される
下図は、米ドル円レートと日米金利差(10年国債、2年国債)の推移です。米ドル円レートは、購買力平価(PPP)、国際収支(貿易収支など)、そして、金利差(国債利回り格差)など、様々な要因で動きますが、購買力平価や国際収支は指標特性から長期的な動きや水準に影響を及ぼす一方、金利差は短期的な動きへ影響を及ぼしやすい傾向があります。表記のグラフ期間を見ても、日米金利差が動く方向と米ドル円レートが動く方向が似ている様子が確認でき、特に2021年頃以降の動きは顕著です。
前述の通り、昨秋頃から米インフレにピークアウト感が見られ始めたことで、米政策金利の引き上げが続く中でも、米国債利回りが急低下し(特に10年国債などの長期金利)、それ以前は拡大の一途だった日米金利差が縮小に転じ、一時は米10年国債利回りの日米金利差が3.0%を割り込んだ影響で、米ドル円レートも一気に円高米ドル安に動きました。
但し、今後に米政策金利が5%超に引き上げられそうな状況を考えると、米長短金利差(米10年国債利回りー米政策金利)が▲1%前後の大幅なマイナスとなっている現状では(2月20日時点)、これ以上の更なる米10年国債利回りの低下を期待することは難しそうです。米債券利回りの低下に制限がかかり、日米金利差の縮小も限定的となれば、円高米ドル安の流れも一旦は止まり、日米金利差が現状程度(10年国債の金利差で3%程度)である間は米ドル円レートはレンジ相場になると見ています。
米ドル円レートと日米金利差の推移
期間:2014年12月31日〜2023年2月20日、日次
※日米金利差は米国債利回りー日本国債利回り、国債利回りはBloomberg Generic
(出所)Bloombergを基に野村アセットマネジメント作成
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