決算発表が本格的に始まりました。2013年4月下旬から2013年5月中旬にかけ、2013年3月期本決算企業に加え、2013年6月、9月、12月期決算企業の四半期決算の発表もあわせて行われます。4月〜3月の期間を会計年度とする3月期決算企業が東証一部上場企業の約7割を占めています。1年を締めくくる本決算の発表であり、市場の注目度は非常に高い決算発表シーズンです。
時価総額2,000億円以上の東証一部上場企業のうち、3月期本決算企業(証券・商品先物、銀行、保険を除く)の2013年3月期の営業利益は、前期比6%増というのが、市場関係者の予想となっています。続く2014年3月期の営業利益は、前期比33%増(同市場コンセンサス)の見込みとなっており、企業の業績が上向くと市場関係者は強気の見方をしている意見が多いようです。
主力の3月期決算企業の多くは、2013年3月期の収益実績とともに、2014年3月期の業績会社予想を公表します。 一方、投資家にとって株式投資する企業の2014年3月期の業績予想をすることは難しいと思われます。ただ、ヒントはあります。2013年4月19日に閉幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、日銀の金融緩和と円安に対して表立った批判がなかったことから、株式市場では現状の円安トレンドが続くとみられています。円安トレンド継続により、2013年3月期の決算発表では、「円安で業績が改善しやすい銘柄」ほど、今後も良好な業績が見込める企業と言えるのではないでしょうか。
表1は、ドル・ユーロの年度平均為替レート、及び年度末の為替レートを示したものです。ドルを例にみた場合、2013年3月期は年度の平均レートが82.91円でした。仮に、2014年3月期の平均レートが、2013年3月末水準の94.05円で推移した場合、11.14円の円安効果が企業業績(損益)に影響すると考えます。足元の為替レートは、より円安水準で推移していますので、企業業績へのインパクトはより大きなものになる可能性があります。
表1:ドル・ユーロの対円平均為替相場と前期末相場
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ドル |
ユーロ |
---|---|---|---|
年度平均 |
2012年3月 |
79.08 |
109.02 |
2013年3月(B) |
82.91 |
106.78 |
|
年度末 |
2013年3月(A) |
94.05 |
120.73 |
想定・円安進行幅(A)-(B) |
11.14 |
13.95 |
(単位:円)
- ※三菱UFJ銀行公表の対顧客相場をもとにSBI証券が独自に作成。
- ※「年度平均」は対象年度の4月〜3月末の為替レート(日足・終値)を平均したもの。「年度末」は2013年3月末の為替レート。
- ※「想定・円安進行幅」は、2013年度の円安となった幅が2014年度も同じ水準で円安になったと仮定した円安幅。
表2は、2013年4月30日以降に決算発表を予定している企業で、円安メリットが大きいと想定される企業です。例えば、セイコーエプソン(6724)の場合、1ドル1円の円安変動で2億円の営業利益(年間)が上積みされると試算されていますので、「ドル感応度」を2億円としてあります。(あくまでも参考値であり、実際の為替変動影響額は大きく変わる可能性があります)
2014年3月期の平均為替レートが表1で仮定した水準(ドル円が94.05円、ユーロ円が120.73円)で定着し、各企業の為替感応度が2013年3月期と変わらないと仮定した場合、為替の円安効果は、セイコーエプソンの場合、営業利益が約190億円見込まれます。
(計算方法)※セイコーエプソンの場合
(1)ドル感応度2億円×想定・円安進行幅11.14円=22.28億円
(2)ユーロ感応度12億円×想定・円安進行幅13.95円=167.4億円
(1)+(2)=189.68億円
2013年の予想営業利益は186億円ですので、ほぼそれに匹敵するだけの営業利益が、円安だけで上積みされる「計算」になります。
表2の増益効果率(%)は、円安増益効果が2014年3月期予想営業利益の何%を占めているかを示しています。即ち、円安メリットが企業の営業利益に対してどの程度大きいかを示しています。こうした「感応度」を示している企業は限られますし、これだけで投資判断することは難しい面もあります。しかし、「円安」がこれらの企業に、強い追い風となることに変わりはないと考えられます。
表2:(参考)2014年3月期平均為替レートが前期末レートと同水準と仮定した場合の営業増益効果
(主要企業)
コード |
銘柄 |
決算発表予定日 |
ドル |
ユーロ |
当期予想 |
円安増益 |
増益 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2013年04月30日 |
2 |
12 |
186 |
190 |
102.1 |
||
2013年05月15日 |
25 |
0 |
514 |
279 |
54.2 |
||
2013年05月09日 |
4 |
15 |
471 |
254 |
53.9 |
||
2013年05月09日 |
0 |
60 |
1,814 |
837 |
46.2 |
||
2013年05月10日 |
200 |
0 |
5,422 |
2228 |
41.1 |
||
2013年05月08日 |
350 |
50 |
12,346 |
4597 |
37.2 |
||
2013年05月15日 |
5 |
5 |
352 |
125 |
35.6 |
||
2013年05月10日 |
4 |
8 |
441 |
156 |
35.4 |
||
2013年05月10日 |
23 |
17 |
1,459 |
493 |
33.8 |
||
2013年04月30日 |
14 |
9 |
1,083 |
282 |
26.0 |
||
2013年05月09日 |
17 |
1 |
1,008 |
203 |
20.2 |
- ※各種報道をもとにSBI証券が独自に作成。
- ※当期(2013年3月期)予想営業利益は市場コンセンサス。
- ※感応度は1ドル1円、1ユーロ1円変動時に、営業利益にいくら恩恵があるかを億円単位で示した。
- ※円安増益効果は、2014/3期の平均為替レートが、前期末と同水準の円安幅が進行(1ドル94.05円、1ユーロ120.73円)した場合、各企業の為替感応度から計算される増益効果が何億円になるか示したもの。
- ※増益効果率(%)は、円安増益効果を今期予想営業利益で割ったものをパーセンテージで表したもの。
- ※データは2013年4月24日現在。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。