2013年5月23日以降、下落局面にあった株式市場ですが、ようやく落ち着きを取り戻しつつあります。株価の下落は、2012年11月以降の株価急上昇の反動が表れた面が強く、アベノミクスによる「脱デフレ」を期待した相場は今後も続くと見るのが妥当と考えられます。ただ、米国で金融緩和の出口を巡る論議が出始め、株価が調整したという経緯を考慮すると、相場の質が変わる可能性があります。すなわち、「金融相場」から「業績相場」へ移行し、株式市場で物色の主役が金利敏感セクターから、景気敏感セクターに変わる可能性があります。「電気機器」は、その候補のひとつとみられます。
一般的にある業種が、株式市場全体の動きと比べ、相対的に強いのか弱いのかをみるには、その業種の時価総額合計が、市場全体に占める比率を時系列推移で見ることが有効です。下の図は、「電気機器」の東証一部における時価総額構成比(週足)をみたものです。足元では、2010年4月以降、この比率が一貫して下落してきました。円高が深刻化したことに加え、デジタル機器分野で、米国のアップルや韓国のサムスン電子等と比較した国際競争力が低下したためです。
しかし、そうした「電気機器」の時価総額構成比は、2013年4月1日週の9.9%が底であった可能性が出てきています。過去10年のレンジが10〜14%で、概ねその下限に到達したことや、外為市場で円高が一巡したことが追い風となります。ちなみに、2013年4月1日週は、日銀の「異次元緩和」が発表された週でした。
折しも、2013年は年末商戦に向け、ソニーやマイクロソフトが次世代ゲーム機を投入してくる予定である上、アップルも刷新されたOSを秋に投入してくる予定となっています。電気機器業界は前向きな話題が増えやすくなるうえ、製品・部品で需要の拡大が見込まれます。「電気機器」は今が狙い目である可能性が大きいと考えられます。
図1:底入れの様相を強める「電気機器」の時価総額構成比
- ※BloombergデータよりSBI証券が作成。「電気機器の時価総額構成比」は、東証業種別指数「電気機器」の時価総額を東証株価指数(TOPIX)の時価総額で割った数値。
下の表1は、電気機器の時価総額構成比が低下を始めた2010年4月30日週以降、逆に時価総額を向上させた電気機器関連企業(時価総額1千億円以上)の一部です。
電気機器関連企業の多くは、特に民生用電子機器の分野で、海外企業との競争に苦しみ、業績悪化に直面しました。しかしながら、時価総額構成比率が低下傾向にある電気機器業種の中でも、時価総額を向上させている銘柄も少なくありません。スマートフォンやタブレット端末に電子ペンを供給するワコム(6727)や、部品の多くを供給する村田製作所(6981)、世界的なインフラ需要拡大が追い風になる日立(6501)などはその一例です。
下の表1は、東証33業種のうち「電気機器」で時価総額を増加させている企業のうち、今期及び来期の営業利益が、ともに10%超増加が予想(市場コンセンサス)されている企業を紹介しています。今後、株式市場における相対的地位の回復が期待される「電気機器」の中で、リード役になる企業が潜んでいる可能性は十分あるとみられます。
表1:「電気機器」低迷期に時価総額を増やし、さらに増益が続くと予想される企業
コード |
銘柄名 |
株価 |
時価総額(億円) |
時価総額(億円) |
時価総額 |
今期予想 |
来期予想 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
6961 |
6,360 |
1,287 |
364 |
253.3 |
119.2 |
15.2 |
|
6727 |
1,060 |
1,792 |
620 |
189.2 |
62.0 |
19.6 |
|
6869 |
6,190 |
6,403 |
2,901 |
120.7 |
43.1 |
15.1 |
|
6501 |
663 |
32,046 |
18,886 |
69.7 |
24.6 |
12.0 |
|
6506 |
1,228 |
3,099 |
2,109 |
46.9 |
97.4 |
19.9 |
|
6841 |
1,138 |
3,057 |
2,165 |
41.2 |
51.6 |
20.3 |
|
6981 |
7,350 |
16,557 |
12,615 |
31.2 |
88.0 |
17.7 |
|
6645 |
2,942 |
6,682 |
5,253 |
27.2 |
34.9 |
12.1 |
|
6588 |
495 |
1,426 |
1,130 |
26.3 |
41.6 |
30.7 |
|
6856 |
3,425 |
1,457 |
1,188 |
22.6 |
18.1 |
16.5 |
|
6504 |
336 |
2,508 |
2,127 |
17.9 |
27.2 |
21.5 |
|
6952 |
857 |
2,391 |
2,070 |
15.5 |
31.9 |
11.9 |
|
7276 |
1,792 |
2,881 |
2,500 |
15.2 |
15.3 |
11.1 |
|
6503 |
961 |
20,635 |
18,101 |
14.0 |
45.4 |
15.0 |
|
6756 |
1,109 |
1,167 |
1,040 |
12.2 |
66.8 |
27.2 |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
- ※2010/4/30から2013/6/18にかけ、時価総額を増加させた電気機器企業で、時価総額(2013/6/18時点)で1千億円以上の銘柄から抽出。そのうち、今期と来期の予想(市場コンセンサス)営業利益がともに10%超の企業に絞り込んだ。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。