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日本株投資戦略 〜小売りセクターに注目 日経消費DI大幅改善 景気回復・消費税増税駆け込み

2013/7/26
投資調査部 藤本 誠之

改善傾向にある日経消費DI

7月22日(月)日本経済新聞 経済 7面に、「日経消費DI 7月7ポイント上昇」との記事が掲載されています。日経消費DIは、日本経済新聞社が消費関連企業に景況感を四半期ごとに聞くものです。「良い」と答えた企業の割合(%の数値)から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値などをDIとして算出しています。「良い」と「悪い」が同数であれば、ゼロとなります。

この業況判断指数が、前回の4月調査から7ポイント改善しマイナス1ポイントに、3ヵ月後の業況見通しは、 9ポイント上回り、プラス8まで回復しているようです。 図1にリーマンショック後の日経消費DIの推移を示します。消費関連企業の業況は着実に改善しているようです。

図1:リーマンショック後の日経消費DI
  • ※日本経済新聞社公表データよりSBI証券投資調査部作成。

しかしながら、昨年野田首相(当時)の解散宣言(2012年11月14日終値)からのアベノミクス相場において、日経平均株価と小売業種指数とのパフォーマンスを比較(図2)すると、アンダーパフォームしており、相対的に小売業種指数の出遅れ感がある状況と言えるでしょう。

図2:アベノミクス相場以後の日経平均株価と小売業種指数の推移
  • ※Bloombergデータより、SBI証券投資調査部作成。
  • ※2012年11月14日終値を1として指数化。

小売復活に期待

2013年7月21日に投開票された参議院選挙にて政府与党が安定多数を確保したことにより、突発的な事象がなければ今後3年間は政権与党(自民+公明)の政権が続くと考えられます。インフレ目標(年2%)を掲げるアベノミクスの進展によって、デフレからインフレの世界に変わると小売業の復活が期待されます。

その理由は、以下の2つが考えられます。
(1)景気回復(資産効果)
(2)消費税増税駆け込み需要

景気回復(資産効果)
まず、アベノミクスによる景気回復により、消費の回復が期待されます。ただし、景気回復で即、給料上昇とはならず、給料の上昇は遅行すると考えられるので、まずは資産価格上昇の資産効果による個人消費回復が期待されます。
表1の全国百貨店協会の2013年6月売上高速報の商品別売上動向によれば、貴金属・宝飾が10ヶ月連続のプラスで前年同月比+16.3%と非常に好調です。これは、株式保有者の資産価格上昇による消費促進がひとつの要因として考えられます。

消費税増税の駆け込み需要
消費税は1989年4月に税率3%で導入され、1997年4月に5%に引き上げられています。これが2014年4月には8%、2015年10月には10%になることが予定されています。消費税増税前には駆け込み需要が発生することが想定されます。1989年4月の導入時には、自動車など多くの物品税の廃止とともに、消費税増税が実施されたため、大きな駆け込み需要の発生は見られませんでした。1997年4月の5%に引き上げ時には、大きな駆け込み需要が見られました。
税率引き上げ前の1996年度後半から駆け込み需要が発生し、1997年度前半には反動減が生じました。当時の個人消費は1996年10〜12月期に前期比+1.0%、1997年1〜3月期に前期比+2.2%と増加した後、1997年4〜6月期に前期比-3.5%と落ち込んでいます。1996年10〜12月期に約4,500億円、1997年1〜3月期に約1兆7,600億円、合計で2兆2,100億円程度の駆け込み需要が発生していたと推定されます。今回も同様に2013年10月以降、大きな駆け込み需要の発生が期待されます。

表1:全国百貨店 商品別売上高速報(2013年6月)

前年同期比(%)

総額

7.2

紳士服・洋品

7.5

婦人服・洋品

11.5

子供服・洋品

15.2

その他衣料品

7.1

衣料品

10.5

身のまわり品

14.0

化粧品

6.0

美術・宝飾・貴金属

16.3

その他雑貨

3.6

雑貨

9.1

家具

0.7

家電

5.8

その他家庭用品

8.6

家庭用品

6.3

生鮮食品

-0.1

菓子

1.5

惣菜

2.2

その他食料品

1.6

食料品

1.3

食堂 喫茶

6.8

サービス

0.0

その他

-2.2

商品券

-2.0

  • ※全国百貨店協会公表データより、SBI証券投資調査部作成。

2013年8月株主優待権利確定日がくる小売業に注目

こうした中、小売業への投資を検討する際に、どのような点に注意して臨めばよいのでしょうか。また、どのような銘柄に投資すべきなのでしょうか。
注意点としては、消費税増税の駆け込み需要については、「需要の先食い」であって、逆の「反動減」も想定されるということです。それゆえ、2013年10月以降に駆け込み需要が発生した局面から小売業に投資するのではなく、増税の駆け込み需要で個人消費の数字が伸びて、小売業に人気が集まったときに、利食いできるように、半歩先読みの投資法に妙味がありそうです。
そのひとつの投資アイディアとして、2013年8月に株主優待の権利が得られる銘柄の小売業の銘柄への投資が考えられます。
下記の表2が、2013年8月に株主優待の権利が得られる小売業の時価総額TOP20です。

表2:2013年8月に株主優待の権利が得られる小売業の時価総額TOP20

銘柄
コード

銘柄名

優待獲得最低金額
(円)

時価総額
(億円)

予想配当
利回り

カテゴリ

8267

140,300

11,337

1.85%

スーパー

3086

880,000

4,718

1.13%

百貨店

8233

1,058,000

3,500

0.94%

百貨店

8273

315,500

2,488

1.26%

スーパー

8244

330,000

1,334

-%

百貨店

8184

2,593,000

1,332

1.92%

家具・HC

3046

451,000

1,081

0.88%

眼鏡

8251

106,200

1,077

1.69%

ファッションビル

8185

248,000

1,031

2.41%

8276

173,300

1,014

1.44%

スーパー

3141

535,000

993

0.93%

ドラックストア

3048

49,050

845

2.03%

家電量販店

9861

117,000

775

1.70%

外食

7581

139,200

727

1.29%

外食

8237

133,000

708

-%

外食

7545

93,200

648

2.03%

子供服

8278

182,000

642

0.82%

スーパー

9946

166,900

490

2.69%

コンビニ

8263

17,950

440

-%

スーパー

3333

159,900

419

0.75%

自転車

  • ※Bloombergデータより、SBI証券投資調査部作成。
  • ※優待獲得最低金額(円)、時価総額(億円)、予想配当利回りは、2013/7/24終値をもとに算出。

同じカテゴリに分類される銘柄(高島屋、イズミ,近鉄百貨店)を省いて時価総額上位5銘柄(イオン、J.フロントリテイリング、島忠、ジェイアイエヌ、パルコ)について、ご紹介いたします。

イオン(8267)

銘柄コード

8267

銘柄名

市場

東証1部

株価

1,403円

単元株数

100株

予想PER(連)

15.12

実績PBR(連)

1.07倍

予想配当利回り

1.85%

時価総額

約1兆1,337億円

銘柄概要

千葉市美浜区中瀬に本社を構える営業収益日本小売業NO.1の流通業界の雄・イオン。総合スーパーを中心としつつ、金融など様々な分野でビジネスを展開している。社名であるイオン(AEON)は、ラテン語の「永遠」を意味しています。

株価の推移

2012年10月15日に直近安値を付けてから右肩上がりの堅調相場で2013年4月8日には1,441円の年初来高値を付けました。その後は、反落局面となり、2013年6月3日に1,105円の安値を付けるなど急落しています。その後反発局面となり、2013年7月10日には高値1,431円を付けており高値圏水準にあります。

ポイント

日本最大の小売り業であるため、アベノミクスによる景気回復で個人消費が回復すれば、大きなフォローの風となりそうです。 これまで郊外型の大型ショッピングセンター運営で成長してきましたが、今後は(1)アジアマーケット(2)大都市マーケット(3)シニアマーケット(4)デジタルマーケットの4つの成長市場に、事業機会を拡大していくようです。
「買い上げ金額に応じて3%以上をキャッシュバック」という株主優待があるため、普段からイオンで買い物をする個人投資家には大人気です。半年ごとに期間中のお買物状況を記した明細書と「株主ご優待返金引換証」が送られ、店舗で現金でキャッシュバックされる仕組みです。例えば、100株の保有者(投資金額約14万円)が、月に5万円ずつ半年間イオンで買物をした場合、30万円の3%の9,000円がキャッシュバックされることになります。

J.フロント リテイリング(3086)

銘柄コード

3086

銘柄名

市場

東証1部

株価

880円

単元株数

1,000株

予想PER(連)

16.27

実績PBR(連)

1.36倍

予想配当利回り

1.14%

時価総額

約4,718億円

銘柄概要

大丸と松坂屋が経営統合して生まれた持ち株会社。子会社のファッションビル大手のパルコを保有しています。

株価の推移

2013年4月24日に855円の高値をつけてから調整局面に入り、2013年6月13日の直近安値665円をつけてからは反発、2013年7月18日に前回高値855円を抜けて高値圏にあります。

ポイント

2013年6月の連結売上高が前年同月比30%増になるなど、足元の業績は好調です。前回高値を抜けており、上値に大きな抵抗帯もないため、堅調な株価展開が期待されそうです。

島忠(8184)

銘柄コード

8184

銘柄名

市場

東証1部

株価

2,593円

単元株数

100株

予想PER(連)

14.02

実績PBR(連)

0.70倍

予想配当利回り

1.93%

時価総額

約1,332億円

銘柄概要

埼玉県西区に本社がある家具・ホームセンター大手の島忠。

株価の推移

2012年10月11日の安値1,531円から、2013円5月16日高値2,790円まで、押し目らしい押し目も付けづに、大幅高。その後、6月7日の2,190円の安値をつけた後は反発。2013年7月19日に2,707円の高値をつけるなど、前回の高値圏の水準にあります。

ポイント

「いい物イロイロ、探シマホ」のCMが人気です。大型店舗を中心に出店しており、様々な商品を取り扱っており、商品ラインアップの豊富さが人気のもとのようです。無借金経営と財務内容がよく、業績に安定感があります。株主優待は、10%割引券なので、同社の家具・ホームセンターの利用者には、魅力的な株主優待です。
テクニカル分析では、前回の2013年6月7日高値の2,790円を抜ければ一段高の期待が膨らむ可能性もあります。

3046(ジェイアイエヌ)

銘柄コード

3046

銘柄名

市場

東証1部

株価

4,510円

単元株数

100株

予想PER(連)

24.73

実績PBR(連)

9.55倍

予想配当利回り

0.92%

時価総額

約1,081億円

銘柄概要

東京都渋谷区神宮前に本社があり、メガネ専門店「JINS」を運営しているジェイアイエヌ 。¥4,990〜という「市場最低・最適価格」でメガネ市場に革新をもたらしました。企画・生産・流通・販売までの自社で一貫して行う独自のSPA方式を採用しています。いわば、メガネの「ユニクロ」とも言うべき企業です。

株価の推移

大きく復活・上昇を遂げた銘柄です。2009年には39円の上場来安値を付けておりそこから2013年5月13日の上場来高値6,020円まで、株価が150倍以上になっています。その後は、反落局面となっています。2013年5月30日に東証1部に上場、2013年6月21日には4,000円、2013年7月19日には4,105円の安値を付けています。

ポイント

好業績を背景に株価は急騰してきましたが、さすがに極端な割安感はなくなったので、ここからは、落ち着いた株価展開が予想されます。目先、4,000円から6,000円のレンジ相場が想定されそうです。

パルコ(8251)

銘柄コード

8251

銘柄名

市場

東証1部

株価

1,062円

単元株数

100株

予想PER(連)

17.97

実績PBR(連)

1.04倍

予想配当利回り

1.69%

時価総額

約1,077億円

銘柄概要

渋谷区神泉町に本社があるファッションビル大手のパルコ。大丸・松坂屋を擁するJ.フロントリテイリング傘下。、「訪れる人々を楽しませ、テナントを成功に導く、先見的、独創的、かつホスピタリティあふれる商業空間の創造」を経営理念としており、都市生活者へのファッションを軸とした文化事業や新しいライフスタイルを提案しています。

株価の推移

2013年4月23日に1,298円の年初来高値をつけてから反落、2013年6月17日に917円の直近安値をつけてから反発局面に入ったと言えそうです。

ポイント

売り場面積の15%を改装するなど、常に変化を求め「新しい何かがある」驚きを顧客に与えて、既存の商業施設の陳腐化を防いでいます。親会社であるJ.フロントとの共同事業も進展しており、今後の成長が期待されそうです。
株主優待は買い物の割引やギャラリーの利用が無料になるパルコ株主優待カードが発行されます。また、パルコ内外の映画館への招待券が100株保有(投資金額約11万円)で年4枚貰えるのも魅力です。

  • ※当社ホームページよりSBI証券投資調査部作成。2013年8月に株主優待の権利が得られる小売業の時価総額TOP20から同カテゴリに分類される銘柄を除いた上位5銘柄を表示。株価、予想PER(連)、実績PBR(連)、予想配当利回り、時価総額は、2013年7月24日終値をもとに算出。
  • ※株主優待の内容は変更される場合がありますので、必ず当該企業のホームページ等をご確認ください。
  • ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

免責事項・注意事項

  • 本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客様が損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。
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