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日本株投資戦略 〜投資環境の潮流変化に着目!「トレンド転換」銘柄を狙う!?〜

2013/9/27
投資調査部 鈴木英之

投資環境の潮流変化に着目

既に明らかになっています通り、2013年9月17〜18日(米国時間)に実施された米国FOMC(連邦公開市場委員会)で、現状の量的緩和政策が維持されました。市場は事前に、量的緩和の縮小を見込んでいましたので、それに反する結果であったと思います。FOMC後の株価は確かに、「上昇」で反応しましたが、次項にもあるように、死角がない訳ではありません。

ただ今回のFOMCで、新興国から資金が急速に引き上げられるリスクが後退したことも確かです。また、欧州や中国など、これまで不調とみられていた国・地域で回復色が強まっていることも確かです。世界的な投資環境の潮流に変化の兆しが見えてきたと考えられます。そこで、今回の日本株投資戦略では、FOMC公開後の株式市場の見通しや、トレンド転換が見られそうな銘柄にターゲットを絞って考察してみましょう。

FOMC後の株価上昇に死角はないのか?

米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は、2012年9月以降、いわゆるQE3(量的金融緩和第3弾)を実施し、特に2012年12月以降は、MBS(不動産担保証券)と財務省証券を合わせて月850億ドルの債券を市場から買い入れ、それに相当する資金を市場に供給してきました。しかし、米国経済の回復色が顕著になってきたため、前述FOMCの実施前は「月850億ドルという買い入れ額が減額される」との見方が、市場では支配的になっていました。従って、FRBが当面は月850億ドルの買い入れを続けると決めたことは、世界の株式市場にとって、予想外の出来事でした。

FOMC直後の株式市場は、FRBの決定を素直に好感し、世界的に株価は上昇しました(図1)。2013年9月18日のニューヨーク株式市場では、ダウ平均が15,676ドルまで上昇し、1ヵ月半ぶりに過去最高値を更新しました。2013年9月8日(日本時間)の東京五輪招致決定もあり、堅調に推移していた日本の株式市場も、改めて前向きな反応を示しました。

もっとも、FRBの量的緩和維持は必ずしも、プラス材料ばかりとは言い切れない面もあります。なぜならば、下記2点の側面があるためです。

(1)現状では、量的緩和縮小を判断できない程に、米国の景気拡大が弱いと理解することができること

(2)そのため、米国の金利は上がりにくく、ドル/円相場でも円安/ドル高になりにくいこと

そこで、今回のFRBの判断については、改めて吟味してみる必要もありそうです。

図1 NYダウ平均株価チャート 日足・3ヶ月(ドル)
図2 NYダウ平均株価チャート 日足・3ヶ月(ドル)

当社チャートを基にSBI証券が作成。

「円安シナリオ」に大きな変化はなく、ユーロは一層の上昇も〜「新興国」「資源」にスポットか

FRBが量的緩和縮小を見送ったのは、確かに米国の経済指標の一部に弱さがあったためです。特に2013年9月6日に発表された雇用統計(8月)では、雇用者数の増加が市場予想を下回る結果となりました。就職活動をあきらめてしまった人が増えてしまったが故に、失業率(失業者数を労働力人口で割って求める)が下がった面も指摘されていますので、決して強いとは言えないでしょう。

ただ、中長期的に見ると、米国では少なくとも月十数万人単位で雇用者数が増加(季節調整後)していますし、失業率も次第に低下しています。このため、FRBはタイミングを計りながら、金融緩和を縮小していくという方向感そのものには変化はないとみられます。図3は、日銀とFRBの総資産を比較したグラフ(細線)と、ドル/円相場のグラフ(太線)を重ねたものです。FRBがMBSに加え、米財務省証券も買い取り始めた2012年12月以降も、2013年8月末まで、細線は緩やかに上昇を継続しています。このことは、現状の日米金融政策が続くとの前提にたっても、日銀の総資産の増加スピードの方が、FRBの総資産の増加スピードを上回る可能性が大きいことを示しています。ちなみに、細線の上昇は、ドル安/円高要因になると考えられます。

すなわち、FRBが量的緩和を縮小すれば、円安/ドル高が「加速」した可能性があったものの、そこまでには至りませんでした。ただし、円安/ドル高の方向感自体は維持されていると考えた方が良いでしょう。

なお、ユーロ/円については、注目すべきポイントがあります。それは、日銀の総資産拡大が続く反面で、ECB(欧州中銀)の総資産は縮小しているということです。具体的には、2012年9月末と2013年8月末を比較すると、日銀の総資産は25%増えましたが、ECBのそれは11%も減りました。欧州はすでに金融危機に対処した過剰流動性の時代を乗り切り、逆に自己資本規制に対応すべく、資産を圧縮している可能性があります。ECBの総資産減少はそれを反映している面もありそうです。

図4において、細線(日銀総資産÷ECB総資産)が急ピッチで上昇しているのは、日・欧の対照的な動きを反映しているといえます。このため、日・欧中央銀行の総資産対比で見る限りでは、ユーロ/円相場はさらにユーロ高/円安になる可能性が大きいと言えそうです。

このように、FRBが量的緩和縮小を見送ったことは、確かに予想外の出来事でしたが、中長期的な「円安」の方向感に変化はないとみられますので、株価の上昇は続くと予想されます。

なお、FOMCが量的緩和縮小を見送ったことで、「新興国からの資金流出が加速する」という懸念が後退したことも重要な変化です。もともと、欧州の景気が底入れから回復の兆しをみせ、それと合わせる様に中国の経済指標も改善を示してきました。その結果、世界(主要地域)で目立った景気減速地域がみられなくなり、資源価格も上昇しやすくなってきたとみられます。即ち、新興国や資源に関連した企業が注目される可能性が膨らんできたのではないかと考えられます。

図3 日米金融緩和とドル/円レート(月足)

Bloomberg、日銀、FRBデータをもとにSBI証券が作成。
「日銀総資産÷FRB総資産」は、日銀総資産(08/7末=1として指数化)をFRB総資産(同)で割った数値であり、数値が大きいほど、相対的に日銀の金融緩和度合いが大きいことを示す。

図4 日欧金融緩和とユーロ/円レート(月足)

Bloomberg、日銀、ECBデータをもとにSBI証券が作成。
「日銀総資産/ECB総資産」は、日銀総資産(08/7末=1として指数化)をECB総資産(同)で割った数値であり、数値が大きいほど、相対的に日銀の金融緩和度合いが大きいことを示す。

世界経済の回復、投資家の「リスク・オン」転換で物色対象となる可能性がある銘柄は

2013年9月以降の東京株式市場では、五輪関連としての建設、不動産、鉄道、セメント他の銘柄や、FOMCでの量的緩和長期化を受けての金融株、素材関連株など、物色対象が広がりました。これらのセクターは今後も折に振れ、物色されていくと期待されますが、短期的には過熱を警戒すべき銘柄も出てくるでしょう。

こうした中、長期チャートからみて大きな節目を抜けたようにみえ、今後、投資家から注目されるであろうセクターについて考えてみました。それは、ここまでで説明して参りましたように、世界経済や新興国の回復、資源価格の上昇等を追い風にできるようなセクターとみられます。このセクターに属する銘柄は、欧州や中国経済の減速が嫌気され、長い間、物色の圏外にあっただけに、今後、本格的な反発・上昇に転じる可能性もあると思います。

具体的には、商社、建設機械、海運、輸送用機器の一角がそれに相当するとみられます。以下の銘柄は、これらのセクターの中から、月足チャートで重要な節目を抜けたとみられる銘柄について、説明したものです。

4527 ロート製薬

同社は大衆目薬のシェア・トップです。2013年3月期を売上高ベースで、目薬などのアイケア部門は全体の21%。全体の61%は、実は「肌研」「メンソレータム」等のスキンケア部門。
またインドネシア等への海外進出にも積極的であり、アジアを中心として海外売上高比率は31%と上がってきています。
アジアなど新興諸国は生活水準が大きく向上しており、「衣・食・住」のみならず「おしゃれ」にも気を使うようになっています。そして「おしゃれ」をするためには、ベースとなる“お肌”の手入れが重要となってきます。アジアにおけるスキンケア需要を同社は上手く取り込んでおり、今後も順調な成長が期待出来そうです。

月足チャートをチェックすると、2011年5月安値820円から上昇トレンドに入っています。株価指標面でも大きな割高感がないので、今後も業績の伸びにつれて中・長期的な堅調相場が期待出来そうです。

ロート製薬 株価チャート 月足(10年)
6301 小松製作所

米キャタピラーについで建設機械では世界第二位。2013年3月期で海外売上高比率が80%と高く、特に中国などのアジアでは、NO.1のシェアを保有しています。また、基幹部品は日本で生産し、組み立ては現地で行う方式を取っています。
株式市場では、同社株は中国関連の主力株と認識されており、中国の景況感の悪化から株価は上値が押さえられてきました。
中国の現状もシャドーバンキング問題など中国も不透明感は残りますが直近の景気指標で良い数字が多いなど好転の兆しも見えており、同社の株価も月足チャートでは三角保ち合いを抜けてきたようです。

小松製作所 株価チャート 月足(10年)
7012 川崎重工業

陸・海・空の輸送システム、エネルギー環境、産業機器の3つの事業分野を持つ総合重機大手です。
大型バイク、航空宇宙、鉄道車両、ガスタービンに強みを持っています。
社長解任によって三井造船との合併が破談になるなど、世間を騒がせましたが、円安の追い風もあり、2輪事業が赤字を脱し、鉄道車両、航空分野などの受注が好調で業績自体は良好のようです。
月足チャートをチェックすると、上値抵抗線を突破しており目先、400円を大きく割り込むことがなければ、今しばらく堅調相場が期待出来そうです。

川崎重工業 株価チャート 月足(10年)
8058 三菱商事

「ラーメンからミサイル」までと揶揄されるほど商材の幅広い総合商社の最大手。単なる商社機能のみでは、口銭ビジネスとなり収益性が低く、絶えず「中抜き」の懸念があるため、川上から川下までを押さえ、企業・案件に投資を行い、収益性を高めている。
資源関連への投資が多いため、資源価格の下落が株価の上値を押さえてきたため、株価指標面では。PER、PBRなどでも割安感が強く、配当利回りも3%弱の水準となっている。
月足チャートでは、長らく続いた三角保ち合いをようやく上抜けてきたところなので、今しばらく堅調相場が期待出来そうです。

三菱商事 株価チャート 月足(10年)
9101 日本郵船

海・陸・空にまたがるグローバルな総合物流企業グループで海運では国内首位企業です。海運業界は依然として船舶の供給過多とそれに起因するマーケットの低迷という厳しい事業環境にあります。運賃は市況によって大きく上下するので、業績も大きくぶれることになります。同社は、市況に左右されない運賃安定型事業の拡大に注力しており、米国のシェールガスの液化プラントの運営の参画したり、中国・タイで自動車の完成車輸送に欠かせない物流網やターミナルを自前で整備し、他社と競合せずに安定的な海上輸送の獲得につなげているようです。
月足チャートをチェックすると、長らく続いた下落トレンドを脱し、ようやく上昇トレンドに入ったようです。今しばらくは、堅調相場が続きそうです。

日本郵船 株価チャート 月足(10年)

銘柄選定の根拠(基準や前提)
月足チャートで上値抵抗線を抜けた銘柄から、各種公表情報をもとにSBI証券投資調査部がピックアップ。
(4527) ロート製薬 (東証1部)
(6301) 小松製作所(東証1部)
(7012) 川崎重工業(東証1部)
(8058) 三菱商事 (東証1部)
(9101) 日本郵船 (東証1部)

  • ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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