2014年3月期は25%営業増益へ
2013年4〜9月期決算の発表が一巡しました。SBI証券投資調査部が時価総額1千億円以上(決算発表開始直前の2013年10月10日現在)の3月決算・東証一部上場企業(金融・電力を除く)について調べた所では、11月8日現在、4〜9月の営業利益は前年同期比30%増となりました。会社予想を公表している企業だけで調べると、2014年3月期(通期)の予想営業利益は25%増となっています。企業業績は順調に回復していると言えましょう。
上場企業全体(金融・電力は除く)のメディア等の分析も加味して述べると、今期は、これまでのピークであった2008年3月期の9割程度の利益水準まで回復する見込みです。市場コンセンサスでみると、今期の予想営業増益率は3割を超しているので、上場企業全体(金融・電力は除く)の半分弱が2008年3月期の利益水準を上回り、6分の1程度の企業が最高益を更新できるようです。
ちなみに、2013年4〜9月期決算発表を経て、企業の予想増益率は加速したのでしょうか、減速したのでしょうか。その意味で、11月8日現在の日経平均の予想一株を計算してみると923円となる。5月以降、大よそ900〜910円で推移してきたことを考えると、やはり、業績見通しを上方修正する企業の方が優勢だったことが伺えます。
このように、上振れ気味の企業業績が株価をさらに押し上げるには、為替市場のさらなる安定や、消費税率上昇以降の企業業績に対する投資家の自信の維持というものが必要となるでしょう。その意味で、11月8日に発表された米雇用統計の強さは、為替市場の安定に大いに寄与すると期待されます。あとは、成長戦略の中で、設備投資減税や法人減税にどこまで本格的に踏み切れるかにかかっていると言えましょう。
図1:日経平均株価と予想一株利益(EPS)の推移
日経平均株価公表データをもとにSBI証券が作成。2013年11月8日現在。
決算発表シーズン中の株価は会社予想が「上振れる」か「下振れるか」で明暗
2013年4〜9月期決算の発表は、10月下旬以降、本格化しました。この決算発表シーズン中、一体どういうタイプの銘柄の株価が上昇したのでしょうか。表1は、決算発表後から11月11日までの株価上昇率上位を示したものです。
決算発表シーズンですので、会社側が2013年4〜9月期決算を発表する際に、同時に公表される2014年3月期(通期)の会社側業績見通し(ここでは営業利益)が、それまでの見通しから上方修正されたものになる、あるいは市場コンセンサスを上回るような銘柄が多く、上昇率上位にランクインされています。このうち、KDDI(9433)などは、2014年3月期予想営業利益が据え置かれている上、市場見通しをも下回っており、一見すると、株価上昇の理由がわかりにくくなっています。ただ、2013年4〜9月の営業利益は実績ベースで、事前の市場予想を上回っていましたので、株式市場はKDDI(9433)の決算を、総じて、好意的にとらえたとみることが出来ます。
逆に、この時期に株価が大きく下落した銘柄が表2の銘柄になります。会社側が2013年4〜9月期決算を発表する際に、同時に公表される2014年3月期の会社側業績見通し(ここでは営業利益)が、それまでの見通しから下方修正されたものになる、あるいは市場コンセンサスを下回るような銘柄が多くなっており、まさに「上昇銘柄」の逆パターンになっています。ちなみに、NTN(6472)などは、2014年3月期の予想営業利益が前期比312%増の予想を維持しているにもかかわらず、株価は下落しています。
決算発表時期の株価は、決算数字に敏感に反応するケースが増えます。最近は、業績予想が市場コンセンサスを上回れば買われ、下回れば売られるというケースが多くなっています。メディアの多くも、それにより「星取表」などを作成していますので、株価の変動は一層加速しやすくなります。ただ、決算発表のシーズンが終われば、とりあえず「おもに数字だけで判断する」期間も終わると考えられます。決算発表後のアナリストの会社訪問が本格化し、次第に企業の決算数値の裏にある中身にスポットが当たり始めます。従って、銘柄選別の仕方も変わってくると考えられます。
表1:2013年4〜9月期決算発表で、決算発表をはさみ株価が上昇した銘柄「ベスト10」
銘柄 |
銘柄名 |
決算発表日 |
決算発表前営業日株価(円) |
株価(円) |
騰落率(%) |
通期会社予想営業利益 |
||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
(A) |
(B) |
(A)→(B) |
(百万円) |
市場予想比増減(%) |
修正前会社 |
|||
6724 |
2013/10/31 |
1,630 |
2,336 |
43.3 |
58,000 |
25.1 |
56.8 |
|
6479 |
2013/11/01 |
542 |
666 |
22.9 |
27,000 |
15.4 |
40.6 |
|
9433 |
2013/10/28 |
4,960 |
5,940 |
19.8 |
630,000 |
-3.6 |
0.0 |
|
9831 |
2013/11/07 |
280 |
333 |
18.9 |
27,400 |
-15.6 |
0.0 |
|
5803 |
2013/10/28 |
376 |
445 |
18.4 |
17,000 |
8.9 |
6.3 |
|
7248 |
2013/11/06 |
446 |
525 |
17.7 |
24,000 |
7.9 |
20.0 |
|
8586 |
2013/10/25 |
2,326 |
2,701 |
16.1 |
31,000 |
5.7 |
13.1 |
|
5333 |
2013/10/30 |
1,508 |
1,750 |
16.0 |
34,000 |
4.2 |
21.4 |
|
7278 |
2013/10/29 |
2,557 |
2,964 |
15.9 |
16,000 |
-8.6 |
-5.9 |
|
6361 |
2013/11/08 |
517 |
590 |
14.1 |
29,000 |
-1.2 |
0.0 |
Bloombergデータ、会社公表データ等をもとにSBI証券が作成。時価総額1千億円以上(決算発表開始直前の2013年10月10日現在)の3月決算・東証一部上場企業(金融・電力を除く)で、決算発表日前営業日終値〜2013年11月11日までの株価上昇率が大きい順に表示。「市場予想」は、Bloomberg集計の市場コンセンサス(10月23日現在)。騰落率等のデータは過去の実績であり、将来の運用成果等を保証するものではありません。
表2:2013年4〜9月期決算発表で、決算発表をはさみ株価が下落した銘柄「ワースト10」
銘柄 |
銘柄名 |
決算発表日 |
決算発表前営業日株価(円) |
株価(円) |
騰落率(%) |
通期会社予想営業利益 |
||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
(A) |
(B) |
(A)→(B) |
(百万円) |
市場予想比増減(%) |
修正前会社 |
|||
2432 |
2013/11/07 |
2,195 |
1,783 |
-18.8 |
- |
- |
- |
|
6472 |
2013/11/01 |
469 |
390 |
-16.8 |
30,000 |
-2.5 |
0.0 |
|
6727 |
2013/10/25 |
826 |
700 |
-15.3 |
9,830 |
-13.6 |
0.0 |
|
6758 |
2013/10/31 |
1,910 |
1,641 |
-14.1 |
170,000 |
-22.7 |
-26.1 |
|
4183 |
2013/11/01 |
260 |
225 |
-13.5 |
25,000 |
-21.1 |
-10.7 |
|
8136 |
2013/10/31 |
5,400 |
4,700 |
-13.0 |
22,100 |
-7.3 |
2.8 |
|
4307 |
2013/10/25 |
3,625 |
3,195 |
-11.9 |
49,000 |
-4.7 |
0.0 |
|
8589 |
2013/10/31 |
162 |
143 |
-11.7 |
9,900 |
- |
0.0 |
|
8840 |
2013/10/31 |
308 |
272 |
-11.7 |
16,000 |
-3.2 |
0.0 |
|
5471 |
2013/10/31 |
599 |
531 |
-11.4 |
21,000 |
-11.3 |
-2.3 |
Bloombergデータ、会社公表データ等をもとにSBI証券が作成。時価総額1千億円以上(決算発表開始直前の2013年10月10日現在)の3月決算・東証一部上場企業(金融・電力を除く)で、決算発表日前営業日終値〜2013年11月11日までの株価下落率が大きい順に表示。「市場予想」は、Bloomberg集計の市場コンセンサス(10月23日現在)。騰落率等のデータは過去の実績であり、将来の運用成果等を保証するものではありません。
2013年4〜9月期決算発表後、市場が「過小評価」した可能性のある銘柄に投資妙味?
多くのアナリストは、調査対象企業の業績を年間単位だけで予想するのでなく、半期単位、場合によっては四半期単位で予想しています。即ち、2014年3月期(通期)の予想とともに、その「折り返し地点」にあたる2013年9月までの上半期についても、業績予想が行われています。
話をマラソンに例えた場合、折り返し地点で予想タイムから大きく出遅れたランナーと、予想タイムを大きく上回って折り返すランナーでは、どちらが期待を集め、また、実際にゴール地点で予想タイムを上回る可能性が大きいでしょうか。オーバーペースを考えなければ、後者の予想タイムを上回るペースで、折り返し地点を過ぎたランナーの方が有望とみるのが自然です。企業業績も似ています。2013年4〜9月期・上半期の業績が期待以上である会社は、2014年3月期(通期)も期待通りの業績をあげてくれる可能性が大きいと考えられます。
しかし、期待以上の上半期を終えた企業でも、通期予想は「とりあえず堅く発表しておき、下方修正は免れたい」と考える企業も少なくありません。この時、会社側の通期予想が市場予想を下回り、決算発表後の株価が下落する銘柄もあります。こうした銘柄は、株価調整一巡後、上昇するケースも想定されます。表3の銘柄は、そうした銘柄の発掘に一歩でも近づくべく、スクリーニングを行ったものです。会社側の通期予想が市場予想を下回るケースは、市場予想が強すぎた場合や、会社側が下期の減速を予想している場合もあります。前者ならば、調整後に株価が戻るケースが増えますが、後者の場合は、本当に業績がピークアウトするタイミングを示唆していることもあります。
ただ、これらの内容的な差異を分析するには、さらに綿密な調査・分析が必要であり、単純に数字だけからは判断できません。しかし、表3にあげた銘柄が、条件的には評価不足になっている可能性が大きいことに変わりはないと言えます。
表3:2013年4〜9月期決算発表で、好内容の決算を発表したものの株価が冴えない銘柄
銘柄 |
銘柄名 |
決算発表日 |
決算発表前営業日株価(円) |
株価(円) |
騰落率(%) |
上期営業利益 |
通期会社予想営業利益 |
|||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
(A) |
(B) |
(A)→(B) |
(百万円) |
市場予想比増減(%) |
(百万円) |
市場予想比増減(%) |
修正前会社予想比増減(%) |
|||
5444 |
2013/10/30 |
3,670 |
3,405 |
-7.2 |
4,123 |
19.4 |
6,000 |
-21.7 |
20.0 |
|
7313 |
2013/10/30 |
3,745 |
3,540 |
-5.5 |
20,485 |
16.7 |
34,500 |
-2.1 |
21.1 |
|
4062 |
2013/11/01 |
1,696 |
1,608 |
-5.2 |
10,912 |
14.0 |
21,000 |
3.6 |
16.7 |
|
7013 |
2013/11/01 |
414 |
397 |
-4.1 |
19,755 |
19.7 |
50,000 |
-10.3 |
4.2 |
|
9107 |
2013/10/31 |
232 |
223 |
-3.9 |
19,763 |
64.4 |
31,000 |
0.5 |
10.7 |
|
5802 |
2013/10/31 |
1,496 |
1,444 |
-3.5 |
47,038 |
10.2 |
110,000 |
-8.0 |
10.0 |
|
5332 |
2013/10/31 |
1,383 |
1,344 |
-2.8 |
15,215 |
13.4 |
39,000 |
12.6 |
17.1 |
|
6473 |
2013/10/31 |
1,288 |
1,259 |
-2.3 |
24,412 |
11.0 |
49,000 |
-0.7 |
24.1 |
|
9006 |
2013/11/06 |
903 |
886 |
-1.9 |
15,201 |
11.8 |
22,300 |
4.2 |
7.7 |
|
7251 |
2013/10/31 |
1,616 |
1,590 |
-1.6 |
8,474 |
17.2 |
17,700 |
-6.6 |
10.6 |
|
1881 |
2013/11/01 |
1,837 |
1,813 |
-1.3 |
8,648 |
23.5 |
26,000 |
11.8 |
23.8 |
|
6756 |
2013/10/28 |
1,261 |
1,247 |
-1.1 |
1,771 |
12.4 |
12,500 |
8.1 |
45.3 |
Bloombergデータ、会社公表データをもとにSBI証券が作成。「時価総額1千億円以上(決算発表開始直前の2013年10月10日現在)の3月決算・東証一部上場企業(金融・電力を除く)の中から、下記3つの条件をすべて満たす銘柄について、株価下落率の大きい順に表示。
1.決算発表日前営業日から、2013年11月11日までに株価が下落
2.2013年4〜9月期の営業利益が、事前の市場コンセンサスを10%超上回る
3.会社側が2014年3月期の予想営業利益を上方修正
騰落率等のデータは過去の実績であり、将来の運用成果等を保証するものではありません。
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