2014年に入り、株価が急落〜その背景は?
日経平均株価は、2013年12月30日に16,320円22銭まで上昇し、アベノミクス相場における高値を付けましたが、2014年に入ってからは下落傾向です。
2014年1月10日に発表された米雇用統計(2013年12月分)で、非農業部門雇用者の増加数(前月比)が、市場予想(+20万人)を大幅に下回る+7.4万人にとどまったことが波乱の幕開けでした。1月23日に発表された中国の製造業PMI(HSBC)が50を下回ったことで、世界経済のけん引役である中国経済に「黄信号」が灯ったことも悪材料でした。同日、南米アルゼンチンが、外貨準備高の減少を背景にペソの買い支えを断念。そのため、アルゼンチンペソがドルに対し、1日で15%も下落したことで、新興国経済・通貨に対する不安が一気に高まり、トルコリラが最安値まで売られるなど、波乱が拡大しました。
図1は2013年11月以降の日経平均株価を示しています。2013年12月30日をピークに、下落率が14%(2014年2月4日時点)に達しています。図2は、マーケットの懸念要因となっている新興国通貨等の騰落率を示しています。新興国通貨の混乱は収まっていません。米国は、2013年12月17〜18日、2014年1月28〜29日開催の2回のFOMC(連邦公開市場委員会)において量的緩和縮小を決めており、それが、新興国からの資金流出懸念を助長する形になっています。この問題が解決しない限り、世界的に株価は不安定のままとの見方が出ています。
図1:日経平均株価 日足(2013年11月以降の推移)
日経平均公表データをもとにSBI証券が作成。
図2:主要通貨の下落率(2013年12月末〜2014年1月末)
BloombergデータよりSBI証券が作成。掲載している主要通貨の円に対する下落率を表示。
それでも、そろそろ「反転」への準備をしておきたい
確かに、新興国の多くは経常収支の赤字という脆弱性を抱えつつも、歴史的な金融緩和状態にある米国など先進国からの資金流入で著しい経済発展を遂げてきました。先進国の金融緩和が転換点を迎えることで、脆弱性が表面化し、危機を迎えていると言えるでしょう。ただ、一国の経済発展が未成熟な段階では経常収支が赤字になりやすいのは、仕方のない面もあります。米国経済の回復が本格化し、欧州経済も底入れした今、金融政策は「非常時」のモードから「通常」モードに切り替えざるを得ず、これはいつか通るべき道ということも言えます。
図3は、日経平均の予想EPS(一株利益)の推移を示したものです。株価が下がっているにも関わらず、日経平均採用銘柄の利益は増加を続けているのです。株価は本来、企業業績の拡大・縮小を織り込むものです。日本企業の業績拡大が続いている以上、日本の株価下落が続くことは、日本株の割安感を強めることになります。ちなみに、日経平均の予想EPSは、2014年1月28日についに、1,000円の大台に乗せました。現在、2013年10〜12月期の決算発表が進捗していますが、予想EPSが上昇しているということは、企業の業績予想が総体として上方修正されていることを示しています。
こうした中、図4にもある通り、日経平均は、テクニカル分析の面で、中長期的に重要な下値支持ラインとされる1年移動平均(2月4日現在13,798円)に接近してきました。悪材料はいったん織り込まれ、株価が反発に転じるタイミングが近づいているかもしれません。
さらに、現在、日経平均株価の予想PERは14.0倍(2月4日)ですが、これは日経平均が当面の安値を付けた2013年6月13日と同水準の予想PERである一方、アベノミクス相場がスタートした2012年11月14日の13.6倍に近い水準となっています。予想PERは、市場の株式市場に対する期待を示すとみられますが、現在の予想PERはその意味で、アベノミクス相場への期待値が「ゼロ」近辺まで低下していることを示しているとみられます。日経平均はさすがに、割安感の強い水準まで下落したと言えましょう。
図3:日経平均予想EPS(一株利益)の推移
日経平均公表データをもとにSBI証券が作成。
図4:日経平均株価とその1年移動平均
日経平均公表データをもとにSBI証券が作成。日足チャート上に「1年移動」を 描くため、260日移動を1年移動としている。
株価反発局面で好パフォーマンスを期待できる銘柄は?
1.「リターン・リバーサル」で株価反発の初期を狙え
一般的に株価は上昇する局面もあれば、下落する局面もあります。「リターン・リバーサル」とは、一般的に「逆張り手法」と言いますが、具体的な投資手法としては、下落相場で大きく下げた銘柄を狙い、相場の反発に備えるやり方です。株価反発局面では、それまでの株価下落局面で大きく下げていた銘柄が、高パフォーマンスになりやすいためです。
図5はそれを示したものです。2013年5月22日から2013年6月13日まで、日経平均株価は約20%も下落しました。その後、相場は反発に転じ、2013年7月19日までに日経平均は17%上昇しました。相場の転換点となった2013年6月13日に我々はどのような銘柄選別をすべきだったのでしょうか。答えは「大きく下げた銘柄を狙え」でした。事実、図5の株価反発局面では、下落局面に大きく下げた銘柄の上昇率が大きくなっています。
図5:株価急落時のリターン・リバーサル検証(2013/5/22〜2013/7/19)
BloombergデータをもとにSBI証券が作成。東証上場時価総額1千億円(2013年6月13日)の銘柄について調べた。日経平均が高値を付けた2013年5月22日から、同安値を付けた6月13日までの下落率を計算。下落率ワースト10銘柄、あまり下げなかったベスト10銘柄をそれぞれ、2013年6月13日終値=1として指数化した。図の2つの折れ線は、それぞれのグループの指数の平均値を示している。
2.今回の相場でスクリーニング
2014年2月4日現在のデータを用い、リターン・リバーサルを狙ってみたらどうなるでしょうか。表1は、それを試みたものになります。表の上位にある銘柄は、この下落相場で大きく下げているので、相場上昇局面では大きく上昇する可能性が大きいと考えられます。表2は、今期・来期に2桁以上の営業増益が予想され、ROEも10%以上の銘柄について、下落率の多い順にあげています。株価が大きく下げた理由の中に、業績不安がある場合、反発力が鈍ると考え、業績面も考慮してみました。
表1:東証主要銘柄の株価下落率(2013年12月30日〜2014年2月4日)ランキング
銘柄 |
銘柄名 |
時価総額 |
騰落率 |
2014/2/4 |
2013/12/30 |
---|---|---|---|---|---|
(百万円) |
|||||
8515 |
154,198 |
-27.3% |
320 |
440 |
|
8804 |
374,163 |
-26.0% |
864 |
1,168 |
|
8303 |
525,316 |
-25.7% |
191 |
257 |
|
3110 |
102,291 |
-25.6% |
413 |
555 |
|
5901 |
371,089 |
-24.6% |
1,704 |
2,259 |
|
8589 |
173,760 |
-24.5% |
114 |
151 |
|
5631 |
166,787 |
-23.6% |
449 |
588 |
|
4612 |
354,843 |
-23.6% |
1,337 |
1,749 |
|
8697 |
627,586 |
-23.5% |
2,286 |
2,989 |
|
8802 |
3,356,419 |
-23.2% |
2,414 |
3,145 |
|
9504 |
466,416 |
-23.2% |
1,257 |
1,636 |
|
7735 |
116,574 |
-23.0% |
459 |
596 |
|
8933 |
307,398 |
-22.7% |
934 |
1,209 |
|
5413 |
106,988 |
-22.6% |
974 |
1,259 |
|
9509 |
201,944 |
-22.4% |
938 |
1,209 |
|
3436 |
185,839 |
-22.3% |
721 |
928 |
|
6857 |
202,760 |
-22.3% |
1,016 |
1,307 |
|
8572 |
443,767 |
-22.1% |
278 |
357 |
|
6103 |
152,405 |
-22.1% |
903 |
1,159 |
|
7222 |
187,744 |
-21.9% |
1,194 |
1,529 |
BloombergデータをもとにSBI証券が作成。2014年2月4日時点で時価総額1千億円以上の東証一部銘柄について、2013年12月30日(日経平均が昨年来高値を記録)から2014年2月4日までの株価下落が大きい順に表示。
表2:東証主要銘柄でリターン・リバーサルを狙いたい銘柄一覧
銘柄 |
銘柄名 |
株価騰落率 | 営業増益率 |
予想ROE |
|
---|---|---|---|---|---|
今期予想 |
来期予想 |
||||
8572 |
-22.1% |
126.9% |
13.2% |
15.3% |
|
7453 |
-21.4% |
16.1% |
11.4% |
16.1% |
|
6506 |
-20.6% |
103.0% |
27.0% |
13.7% |
|
3774 |
-20.5% |
18.1% |
20.5% |
14.4% |
|
6645 |
-19.2% |
50.3% |
12.7% |
11.7% |
|
7272 |
-18.8% |
198.5% |
37.0% |
10.4% |
|
9449 |
-18.3% |
27.0% |
17.1% |
21.4% |
|
7242 |
-17.7% |
86.2% |
23.1% |
10.2% |
|
7267 |
-17.7% |
49.9% |
15.5% |
11.3% |
|
8136 |
-17.6% |
17.3% |
12.8% |
26.5% |
|
7261 |
-17.3% |
240.2% |
20.7% |
20.0% |
|
6756 |
-17.2% |
148.8% |
16.2% |
14.6% |
|
6367 |
-17.1% |
65.3% |
16.8% |
12.5% |
|
9983 |
-17.0% |
16.4% |
13.5% |
16.4% |
|
6471 |
-16.9% |
90.7% |
16.5% |
10.7% |
|
9681 |
-16.5% |
17.1% |
11.8% |
10.4% |
|
7732 |
-16.5% |
123.0% |
18.9% |
10.3% |
|
9962 |
-16.5% |
19.2% |
10.2% |
10.7% |
|
3092 |
-16.1% |
45.0% |
18.6% |
48.3% |
|
9433 |
-16.0% |
30.3% |
12.3% |
14.2% |
日経平均公表データをもとにSBI証券が作成。2014年2月4日時点で時価総額1千億円以上の東証一部銘柄について、2013年12月30日(日経平均が昨年来高値を記録)から2014年2月4日までの株価下落が大きく、下記条件に適合する銘柄を株価騰落率順に表示。
(1)今期予想営業増益率が10%以上
(2)来期予想営業増益率が10%以上
(3)今期予想ROEが10%以上
予想はBloomberg集計による市場コンセンサス。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。