好パフォーマンスが狙える「バリュー株」は?
このレポートでは、「バリュー株投資とは何か」を改めて確認し、「バリュー株投資」により、パフォーマンスを上げることが可能であることをご説明したいと思います。 そこでまず、表1をご覧ください。
一定の財務安定性(ここでは自己資本比率50%以上)を確保している一方で、予想PER、PBR、ROEなどの投資指標面で市場の平均を下回っており、割安感の強い銘柄を抽出したものです。ただし、銘柄を絞り込むため、予想PERについては、市場平均PER14.8倍の0.9倍である13.3倍未満、PBRについては、市場平均1.22倍の0.9倍である1.1倍未満と、条件をやや厳しめにしています。
用語解説
具体的なスクリーニング条件は、以下の通りになります。
表1:「バリュー株」と分析され、割安感が強い銘柄
- (1)予想PER(表中の「PER」)は、東証一部平均予想PER「14.8倍×0.9」である、13.3倍未満の値を採用。
- (2)PBRは、東証一部平均予想PBR「1.22倍×0.9」である、1.10倍未満の値を採用。
- (3)前期ROEは、昨年度の東証一部・平均ROEである8.6%以上の値を採用。
取引 |
チャート | コード |
銘柄名 |
PER |
PBR |
ROE |
自己資本比率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
9997 |
8.00 |
0.76 |
9.53 |
56.24 |
|||
6995 |
9.10 |
0.88 |
9.69 |
57.85 |
|||
2109 |
10.10 |
0.89 |
8.77 |
61.92 |
|||
3291 |
10.10 |
0.89 |
8.77 |
53.96 |
|||
7279 |
9.80 |
0.94 |
9.57 |
68.31 |
|||
4201 |
7.20 |
0.95 |
13.29 |
59.00 |
|||
5186 |
10.90 |
0.96 |
8.81 |
77.39 |
|||
5423 |
10.90 |
1.00 |
9.17 |
51.35 |
|||
8214 |
11.40 |
1.00 |
8.76 |
61.71 |
|||
6641 |
11.00 |
1.01 |
9.17 |
54.76 |
|||
1928 |
10.60 |
1.01 |
9.56 |
52.63 |
|||
7739 |
11.20 |
1.04 |
9.23 |
76.74 |
|||
9882 |
8.80 |
1.04 |
11.81 |
64.09 |
|||
6407 |
11.40 |
1.08 |
9.53 |
66.56 |
弊社スクリーニング・ツールを用いてSBI証券が作成。2014年6月3日現在。スクリーニング条件のすべてを満たす銘柄を、低PBR順に表示。
「バリュー株」〜本来持っている価値を下回って評価される割安株
一般的に「バリュー株」とは、その銘柄が「本来持っている価値」に対し、株価が低く評価されているとみられる銘柄です。ここで「本来持っている価値」とは、その会社の利益や、資産などを基準に株価を評価した時に、市場の平均ないしは、同業他社の平均並みに評価したならば、当然付くであろう株価水準と言えます。
即ち、その銘柄を市場平均並みのPERやPBR、配当利回りなどの投資指標で評価したならば、もっと株価が高くても良いのに、そこまで評価されていない銘柄を「バリュー株」と言います。時には、その銘柄の時系列データをみて、通常であれば付いていてもよいような株価水準(レンジ)があるものの、現在はそれを下回っている場合も、バリュー株と表現することがあります。
このように、「本来持っている価値」に対し、株価が低く評価されているとみられる「バリュー株」は、中長期的には「本来持っている価値」を回復すると予想し、バリュー株に投資することを「バリュー株投資」と言います。図1は、そうしたバリュー株投資の概念図です。また、バリュー株を抽出すべくスクリーニングをした結果が、冒頭の表1に掲載された銘柄になります。
このスクリーニングの特徴は、特に予想PER、PBRの面でみた割安性を重視している点です。ただ、ROEもスクリーニング条件にしていますので、資本効率もある程度良い銘柄が残っています。なお財務健全性については、自己資本比率でチェックしました。この数字は、業種により健全とされる最低ラインは異なるとみられますが、簡易なスクリーニング条件にするために、今回はこの指標を使うことにしました。
なお、「バリュー株」に対峙する銘柄として「グロース株」があげられます。企業の将来性や成長性に期待して上昇が見込まれる銘柄を言いますが、その詳細については、別の機会に説明したいと思います。
図1:バリュー株投資〜割高・割安の概念図
SBI証券投資調査部が作成。
相対的に良好なパフォーマンスを期待できる「バリュー株」
バリュー株投資は、良好なパフォーマンスを期待できるのでしょうか。そこで、バリュー株投資のインデックスのひとつである「ラッセル/ノムラトータルマーケットバリューインデックス」(主に低PBR銘柄で構成)と、TOPIXの動きを比較したものが、図2です。同インデックスは長期的に市場全体のパフォーマンスを上回る成績になっています。このインデックスをTOPIXで割った数値をグラフ化したものが、図3になります。概ね全期間、どのタイミングで投資しても好パフォーマンスになっています。
なお、バリュー株投資のインデックスとしては他に「MSCI ジャパン バリュー インデックス」(収益、資産、現金収支等からバリュー株を抽出)がありますが、こちらも1995年1月以降の累計上昇率が21%と、TOPIXの▲18%を大きく上回るパフォーマンスを残しています。
「ラッセル/ノムラトータルマーケットバリューインデックス」が相対的にも下落したのは、ITバブルの頃でした。98年10月を目先のピークに、2000年2月まで急低下しています。この時期は、インターネット関連株を中心とする銘柄が、将来性を過度に期待され、PERやPBRを無視する形で上昇してゆきました。しかし、そうした特別な時期を除けば、バリュー株投資は一定の成果を上げているとみられます。
バリュー株投資は、逆の言い方をすれば、「本来持っている価値」以上に割高に買われてしまった銘柄を排除している投資ということが言えるでしょう。即ち、期待先行で買われ、大きく下げてしまうような銘柄には投資しないケースが増えるとみられ、それがパフォーマンスをあげる一因かと思われます。
ただ、個人投資家が、何十銘柄にも分散投資してバリュー株を投資するケースも少ないと思います。その場合、投資した銘柄が「本来持っている価値」を回復する場面が遅くなってしまうケースもあるでしょう。このことは、バリュー株投資の注意点のひとつと言えるかもしれません。また、ある銘柄について、市場が「成熟してしまっていて成長余地が小さい」と評価した場合は低PER状態が長期化するケースが、また財務データ自体が信頼されない場合は低PBR状態が長期化する可能性があることも注意点です。
なお、バリュー株の抽出方法は、今回のようにPERやPBR、配当利回り等でスクリーニングするやり方にとどまらないと思います。その他の有望な考え方についても、是非、機会を改めてご説明したいと思います。
図2:「バリュー株」とTOPIXの推移(月足)
Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。バリュー株は「ラッセル/ノムラトータルマーケットバリューインデックス」。1994年4月末終値を1.0として指数化した。
図3:「バリュー株」の相対パフォーマンス(月足)
Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。バリュー株は「ラッセル/ノムラトータルマーケットバリューインデックス」。図1のバリュー株を指数化した数値を、TOPIXを同様に指数化した数値で割った数値の推移。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。