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2024-12-14 09:24:37

マーケット > レポート >  日本株投資戦略 〜受注増加企業を狙え!市場は企業業績の「中身」に注目へ〜

日本株投資戦略 〜受注増加企業を狙え!市場は企業業績の「中身」に注目へ〜

2014/6/20
投資調査部 鈴木英之

受注が堅調に増え、増収増益の確度が高い銘柄は?

日経平均が底入れした2014年5月21日以降6月16日までの株価騰落率をみますと、「今期大幅増益予想銘柄」が相対的に好パフォーマンスになっています。東証一部の主力企業(時価総額1千億円以上&会社予想業績を公表している企業)で値上がり率トップ20の平均予想営業増益率は26%でした。そして、その平均値上がり率は23%になっています。このようにみると、企業公表ベースで好業績「予想」は、株価に織り込まれつつあるようです。

このように企業が予想し、公表した今期業績見通しをいったん織り込んだ後、市場は「本当に会社予想は妥当なのか」と、吟味してくる可能性が強まりそうです。そこで今回の『日本株投資戦略』で注目したのが、企業の受注データです。受注の増えている銘柄は一般的に、好業績となる可能性が大きいためです。

表1は、主要受注産業(東証一部・時価総額1千億円以上)において、前期の受注高が前期比で大幅に増加した上位15社をその増加率の大きい順に並べたものです。受注高の増加は将来の売上高増加につながり、売上高が増えれば、利益が増える可能性が大きくなります。特に上位の銘柄は、受注が増加しているのみならず、売上高と比べた受注残も豊富で、将来業績拡大する確度が高まっています。今後、市場が企業業績の「中身」への着目度を上げてきた時、受注増加企業は株価上昇の可能性が膨らんでくる可能性もありそうです。

表1:受注が増大しており、収益の拡大が期待できる企業

取引

チャート

コード

銘柄名

業種

受注
増減

受注残/売上高

今期
予想
増収率

今期予想営業増益率

現買信買

チャート

7003

輸送用機器

+ 67.2%

2.30倍

+ 13.4%

+ 5.2%

現買信買

チャート

6366

プラント

+ 46.4%

2.40倍

+ 4.2%

- 9.9%

現買信買

チャート

1963

プラント

+ 37.7%

2.55倍

+ 15.4%

- 19.4%

現買信買

チャート

6113

機械

+ 33.9%

0.14倍

+ 7.2%

+ 72.6%

現買信買

チャート

6383

機械

+ 31.2%

0.55倍

+ 11.7%

+ 11.5%

現買信買

チャート

1983

プラント

+ 30.2%

1.28倍

+ 9.7%

+ 2.6%

現買信買

チャート

1808

建設業

+ 26.7%

0.59倍

+ 10.6%

+ 14.4%

現買信買

チャート

1833

奥村組(単)

建設業

+ 26.5%

1.14倍

+ 5.3%

+ 16.5%

現買信買

チャート

1820

西松建設(単)

建設業

+ 22.2%

1.09倍

- 0.8%

+ 26.6%

現買信買

チャート

6371

機械

+ 21.1%

0.16倍

+ 4.5%

+ 7.2%

現買信買

チャート

6412

機械

+ 21.0%

0.08倍

+ 13.5%

+ 20.3%

現買信買

チャート

6103

機械

+ 20.4%

0.33倍

+ 11.6%

+ 55.2%

現買信買

チャート

6268

機械

+ 20.3%

0.39倍

+ 6.8%

+ 7.5%

現買信買

チャート

1803

清水建設(単)

建設業

+ 20.1%

0.89倍

+ 0.2%

+ 49.7%

現買信買

チャート

6302

機械

+ 19.5%

0.51倍

+ 5.6%

+ 7.8%

  • ※会社公表データをもとにSBI証券が作成。銘柄名に(単)のある銘柄は、受注データが単独ベースでの公表。受注増減は前年度比。受注残売上対比は、受注残をその年度の売上高で割ったもの。今期予想増収率・営業増益率ともに会社予想ベース。受注増加率の大きい順にランキングした。表2〜4も同様。なお、業種は必ずしも東証業種分類にこだわらず、実態を示しているとみられる産業名を使用。

なお、受注データで銘柄間の比較を行う時には、後述するように、業種間の相違に注意を払う必要があります。表2は、大型設備やプラントの構築が主業務の企業ですが、受注残が年間売上高よりも多くあるのが普通です。なお、シェール革命の追い風や、世界的なインフラ需要の高まりを背景に、各社とも順調に受注を積み上げているようです。(表2参照)

表2:プラント・大型設備構築に関する企業の受注増加率

取引

チャート

コード

銘柄名

業種

受注
増減

受注残/売上高

今期
予想
増収率

今期予想営業増益率

現買信買

チャート

7003

輸送用機器

+ 67.2%

2.30倍

+ 13.4%

+ 5.2%

現買信買

チャート

6366

プラント

+ 46.4%

2.40倍

+ 4.2%

- 9.9%

現買信買

チャート

1963

プラント

+ 37.7%

2.55倍

+ 15.4%

- 19.4%

現買信買

チャート

1983

プラント

+ 30.2%

1.28倍

+ 9.7%

+ 2.6%

  • ※会社公表データをもとにSBI証券が作成。

復興需要に続き、首都圏の強靭化など、公共投資の増加が期待される建設業界も受注が拡大傾向です。ただ、実際に受注を取っているか否かは別問題です。表3の建設会社は、そうした中でも受注額の伸びが大きい企業です。なお、受注データが単独ベースで開示されている銘柄もありますが、連単倍率(連結売上高/単独売上高)は、奥村組1.01倍、西松建設1.05倍、清水建設1.19倍であり、単独ベースの受注データも十分参考になると考えます。(表3参照)

表3:受注増加率が大きい大手建設会社(住宅系を除く)

取引

チャート

コード

銘柄名

業種

受注
増減

受注残/売上高

今期
予想
増収率

今期予想営業増益率

現買信買

チャート

1833

奥村組(単)

建設業

+ 26.5%

1.14倍

+ 5.3%

+ 16.5%

現買信買

チャート

1820

西松建設(単)

建設業

+ 22.2%

1.09倍

- 0.8%

+ 26.6%

現買信買

チャート

1803

清水建設(単)

建設業

+ 20.1%

0.89倍

+ 0.2%

+ 49.7%

現買信買

チャート

1801

建設業

+ 17.2%

1.15倍

+ 1.1%

- 12.6%

  • ※会社公表データをもとにSBI証券が作成。

設備投資の動向が鍵となる機械関連で、受注の伸びが大きいのは表4の企業です。このタイプの企業は、期末の受注残が相対的に少ないことでご理解頂ける通り、受注から納期までの期間は短めです。従って、今期新たに獲得する受注の多寡が、今期の業績に大きく影響してくるとみられます。その意味では、月次の「機械受注」も併せてチェックしたい所です。

表4:受注増加率が大きい機械株

取引

チャート

コード

銘柄名

業種

受注
増減

受注残/売上高

今期
予想
増収率

今期予想営業増益率

現買信買

チャート

6113

機械

+ 33.9%

0.14倍

+ 7.2%

+ 72.6%

現買信買

チャート

6383

機械

+ 31.2%

0.55倍

+ 11.7%

+ 11.5%

現買信買

チャート

6371

機械

+ 21.1%

0.16倍

+ 4.5%

+ 7.2%

現買信買

チャート

6412

機械

+ 21.0%

0.08倍

+ 13.5%

+ 20.3%

現買信買

チャート

6103

機械

+ 20.4%

0.33倍

+ 11.6%

+ 55.2%

  • ※会社公表データをもとにSBI証券が作成。

受注高や受注残とは何か?なぜ重要なのか??

(1)受注高や受注残の増加が将来の売上高増加につながる

顧客から注文を受けることを「受注」と言います。生産者が、需要先から注文を受けて後に、初めて生産を始める産業を「受注産業」と言います。

おもに「受注産業」は、下記の産業が該当します。

  • 建設業
  • プラント
  • 産業機械産業
  • 電子部品産業
  • システム開発業

など

注文主の要求する「仕様」の個別性が高く、標準品を見込み生産しても売れないのが特徴です。標準品に比べて完成までに多くの時間を必要とする反面、1件当たりの販売価格は高くなるのが普通です。(電子部品等は例外)

図1:受注・売上・受注残の概念図
図1:受注・売上・受注残の概念図

受注産業に属す企業が、一定期間に受け付けた注文の量(通常は数量や金額で表示)が受注高です。また、受注高のうち、まだ販売(売上高に計上)されず、顧客に渡っていない部分を受注残と言います。期末の受注残は来年度の受注高と合わせ、来年度の売上高の素になります。(図1参照)

受注産業の決算資料には、貸借対照表や損益計算書などに加え、こうした受注高・受注残の動向が記載されていることが普通です。ただ、個人投資家でこうした受注動向までチェックしている向きは少数派でしょう。従って、いくつかの銘柄について、受注高・受注残をチェックし、業績予想の方向感を自ら持つことができれば、他の投資家に大きな差を付けられるかもしれません。今回、受注高・受注残に注目する理由はここにあるのです。

(2)受注データをみるポイント〜業種による相違にも注意

表5は、主要受注産業の主要企業について、今期(2014年3月期)の前期の売上・受注高・受注残および今期予想売上高について示したものです。ここに掲げた企業はすべて、前期に売上高が増加しているのみならず、受注高も前年比2ケタ以上の増加になっています。その結果、期末の受注残もすべて2ケタ以上の伸びになっています。前述したように、受注残は次の年度の売上高の素になります。各社とも次年度の2015年3月期は売上高の増加を見込んでいますが、受注・受注残の順調な増加を見る限り、その確度は比較的高いと言えそうです。

なお、受注残を売上高で割った数値は、大きい順に、日揮2.6、三菱重1.6、清水建設1.1、NTTデータ1.0、村田製作所0.12となっています。単位は「年分」です。例えば日揮は、2.6年分の売上高に相当する受注残を抱えているということになります。このように、豊富な受注残を抱えていることは、売上高の先行きが見通しやすいことを示していると考えられます。同時に、日揮ではプラント、三菱重工ならば、飛行機や発電施設など、受注から販売(納入)まで長期間を要するビジネスを展開している企業ほど、受注残が大きくなりがちです。逆に短納期が可能な村田製作所の受注残は小さくなりがちです。受注残の大小には、業種による差もあることを理解しておくことが必要です。

ちなみに、豊富な受注残を持つ日揮ですが、年初来株価は下落基調で、特に5月14日の決算発表以降は急落しました。今期売上計上が見込まる案件の利益率が低いため、減益が見込まれると発表したことが要因です。何年も先の仕事まで取っている分、コスト管理も重要であることを示しています。もっとも、同社は今後は想定されるコストに手数料を上乗せした分を受注額にしてゆくとのことで、損益変動のリスクは低減しそうです。受注残が豊富なことを勘案すれば、過小評価は禁物との評価もあるようです。

表5:主要受注産業の2014年3月期受注データ・売上高と2015年3月期予想売上高

コード

会社名

業種

受注高
(前期比)

売上高
(前期比)

受注残
(前期比)

今期売上高
(前期比)

7011

機械

34,200
+12.8%

33,495
+18.9%

53,738
+17.2%

40,000
+19.4%

6981

電気機器

8,673
+25.5%

8,467
+24.3%

983
+38.3%

9,200
+8.7%

1803

清水建設(注)

建設

13,929
+20.1%

12,530
+2.9%

13,382
+11.7%

13,000
+3.8%

1963

プラント

8,181
+37.7%

6,758
+8.2%

17,293
+14.2%

7,800
+15.4%

9613

システム開発

14,002
+17.0%

13,437
+3.2%

13,414
+17.6%

14,600
+8.7%

  • ※各社決算資料をもとにSBI証券が作成。受注高・受注残・売上高の単位は億円。今期売上高は会社予想数値。
  • ※受注高・受注残・売上高の下段は前期比増減率(%)
  • ※(注)清水建設は受注データが単独ベースのため、売上も単独ベース。参考までに同社の前期連結売上高は単独の1.2倍。

受注高と株価〜受注が増加すれば株価も上昇傾向

図2は、電子部品大手の村田製作所(6981)と同社の四半期受注高の推移をみたものです。受注産業である当社の株価は受注高との相関が比較的強いことがご理解いただけると思います。一般的に、受注データの公表されている企業は、株価と受注高の間に強い関係があるとみられます。

図2:村田製作所(6981)の受注高と株価
図2:村田製作所(6981)の受注高と株価
  • ※Bloombergデータ、会社公表資料をもとにSBI証券が作成。
  • ※株価は各四半期間の株価を単純平均した値を表示。

図2は、同時に、村田製作所の投資タイミングの難しさも示しています。

なぜならば、中長期的にみた時に、投資家は同社の受注が悪い時に低い株価で投資し、受注が回復した後に高株価で売却した方が高い投資パフォーマンスになりやすいためです。

しかし、受注が悪い時に投資を判断することはなかなか難しいことです。

投資家は単に業績が良いか悪いか現状判断のみならず、その会社の受注サイクルも見なければならないことになります。その意味で、納期までのサイクルが短く、受注が四半期単位で大きく変動する電子部品セクターは、中〜上級者向けの銘柄と言えるかもしれません。同じ傾向は半導体製造装置業界などでも認められます。そのため、これらの産業は、今回、表1における受注増加銘柄の分析から除外させていただきました。

  • ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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  • 本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客様が損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。
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