好業績で割安感もあり、株主優待も楽しめる「8月優待」銘柄は?
今回の「日本株投資戦略」では、8月末に権利が確定する銘柄(2月決算または8月決算)の「株主優待」について、考えてみたいと思います。8月末に株主優待の権利が確定する銘柄は全部で93社ありますが、そのうちから何社かをピックアップしてご紹介したいと思います。
一般的に、株式投資から投資家が得られる収益は、値上がり益にとどまらず、配当収益や、今回ご紹介する株主優待で得られるサービスや品物もあります。このうち、株価は日々変動しますが、配当や株主優待は、会社の方針・計画が変わらなければ、比較的変動が少ないため、投資家にとっては計算しやすい収益と言えるでしょう。このため、株主優待は、特に投資の初心者にとり、株式投資の大きな魅力のひとつとなっています。
ただ、株主優待に期待した投資であっても、日々価格が変動する株式を投資対象とする以上、値下がりリスクはなるべく回避したい所です。そこで、「8月優待銘柄」にふるいにかけ、まず6銘柄(表1の「平和堂」まで)を選んでみました。条件は以下の通りです。
(1)最低投資単位での投資金額が20万円未満(100万円あれば5銘柄に分散投資できる計算です)
(2)東証一部企業(中長期投資を支える一定の信用度があるとみられます)
(3)PBR1倍未満(株価が一株当たりの「解散価値」を割り込んでいるという意味で、割安感があります)
(4)配当計画があり、一定の配当収益が期待できる。
(5)今期会社予想の営業利益(本業のもうけ)が増益予想。過去3期に赤字がない。
こうしたスクリーニングは、当社WEBサイト内の『株主優待検索』で条件を指定して導き出すことができます。スクリーニング条件のポイントは、業績に安定感があり、株価に割安感がある銘柄から、優待銘柄を選んでいることです。そうした銘柄を選ぶことで、優待銘柄から中長期投資にふさわしい銘柄を選び出すことが可能であると考えました。
なお、エコス(7520)とカスミ(8196)は、優待の金額的な価値等を勘案した場合、魅力度が大きいとみられたので、追加しました。理由は、後述させて頂きます。
表1:好業績で割安感があり、株主優待も楽しめる「8月優待」銘柄及び優待価値の大きな「8月優待」銘柄
取引 | チャート | コード | 銘柄名 | 最低投資 金額(円) |
予想配当 (100株当たり) |
最低投資単位での 株主優待概要 |
|
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2014年8月 | 2015年2月 | ||||||
8267 | イオン | 116,100 | 1,400 | 1,400 | 3%返金優待カード | ||
9946 | ミニストップ | 163,400 | 2,250 | 2,250 | 「ソフトクリーム無料」5枚 | ||
8251 | パルコ | 89,100 | 900 | 900 | 優待クレジットカード(5%割引) | ||
9993 | ヤマザワ | 164,500 | 1,650 | 1,650 | 1000円分の全国共通ギフト他 | ||
3607 | クラウディア | 125,300 | 2,000 | 0 | 株主優待券(5〜10%割引)・お米券 | ||
8276 | 平和堂 | 165,700 | 1,300 | 1,400 | 1000円分の優待券 | ||
7520 | エコス | 75,800 | 0 | 1,000 | 3000円分の優待券またはコシヒカリ2kg | ||
8196 | カスミ | 78,400 | 700 | 700 | 3000円分の優待券またはコシヒカリ2kg |
- ※会社公表データ、当社WEBサイトをもとに、SBI証券が作成。予想配当は会社計画ベース。最低投資単位での株主優待概要は、主な株主優待内容を表示。最低投資金額は2014年7月17日終値基準。平和堂(8276)までの銘柄の順番は、弊社株主優待検索の閲覧回数順。
株主優待の魅力
表2は、株主優待の一例で、日本最大の流通グループであるイオン(8267)の優待内容を示しています。イオンの8月末配当・優待の権利を確保するためには、8月26日時点で買い付け、保有している必要があります。
表1にもありました通り、イオン株は最低売買単位100株を、7月17日の株価で買い付けると約11.6万円の購入額となります。配当は、2014年8月末に一株14円、2015年2月末に同14円の計画(変更されることもあります)ですので、年間28円の予定です。従って100株の予想配当金額は年間2,800円であり、それを投資金額11.6万円で割った2.4%が「予想配当利回り」となります。
イオンの株主には、このような配当金の支払いがあるのみならず、下記のような株主優待もあります。仮に100株の投資家であれば、半期で100万円の買い物金額まで、3%のキャッシュバックを受けられることになります。仮に100万円フルに使用すれば、3万円のキャッシュバックが得られます。この場合、投資金額11.6万円に対する比率は相当大きめになります。もっとも、イオンだけで半期100万円を使うのは、かなりの消費です。現実には、より小さいキャッシュバックになる投資家が多いとみられる点は注意が必要です。
イオン株を100株11.6万円保有する場合は、上記した2.4%の予想配当利回りと、最大3万円程度のキャッシュバックが期待できることになり、その魅力は大きいと言えます。イオン株は、株主優待に関心のある投資家にとっては「人気」の銘柄であり、株主優待検索の閲覧数では上位になるケースが多くなっています。
表2:株主優待の例(8267 イオン)
権利確定月 | 2月、8月 |
---|---|
権利付最終日 | 今回;2014/8/26 前回;2014/2/25 |
優待内容名 | 備考 | ||
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優待カード (オーナーズカード) |
3% | 100株以上 | ※新規株主に対して案内書を送付し、カード発行 ※半期100万円を限度とする買い物金額に対し、保有株数に応じた割合で返金 |
4% | 500株以上 | ||
5% | 1,000株以上 | ||
7% | 3,000株以上 |
- ※当社WEBサイトをもとにSBI証券が作成。
株主優待を活用することにより、投資金額との比較で魅力が大きい銘柄は、イオンにとどまりません。関東地方を中心に展開するスーパーマーケットのエコス(7520)もその一例です。最低投資単位100株での投資金額は7.6万円弱ですが、年間配当1,000円が予定されている他、3,000円分の株主優待券も付加されます。「近くに使用できる店舗がない」という投資家であれば、優待券を返送し、2キログラムのコシヒカリ米と交換することも可能です。最低投資金額7.8万円のカスミ(8196)も、3,000円分の株主優待券が付加されます。
キャッシュバックや割引の良い所は、有効期限内であれば、好きなものを買え、腐らない所です。食品など、物品で優待を受ける場合は、消費しきれなかったり、腐ってしまったりというケースも出てきますので、注意が必要です。
株主優待が目的でも、株価変動には十分注意を
図1:イオン(日足 2014年2〜3月頃)
図2:イオン(日足 2014年6〜7月頃)
イオン(8267)は、魅力的な株主優待の存在で知られていますが、一方で、この約数か月の株価推移は、優待目的の株式投資でも、株価変動リスクを避けることができない現実を示しています。
図1は、本年2月から3月にかけての、株主の権利確定までの動きや、権利落ち後の動きを示しています。配当や株主優待が魅力的な企業ほど、株主の権利を確定するまでの期間、買いが入りやすく、株価が上昇しやすくなります。しかし、権利落ち後は一転、株価が下落しやすくなります。これは、イオンに限った話ではありません。株主優待の権利を確保する場合、買いタイミングには注意する必要があります。チャート分析を試みることができれば良いですが、少なくとも、投資を検討する際は「目先の株価は上がり過ぎてはいないか」チェックするだけでも、リスクは減らせると考えられます。
図2は、こうした季節的な動きではなく「悪材料」により株価が下げた7月上旬の動きを示しています。7月4日にイオンが発表した決算で本業のスーパーマーケット部門の不調が明らかになり、7月7日以降、株価は急落してしまいました。こうした、業績の動向を先読みできる投資家は少ないとみられ、多くの投資家が、株価下落の影響を受けたとみられます。冒頭の表1では、業績に安定感、株価に割安感が強い銘柄をご紹介していますが、これは、株価にはこうした変動リスクがあることを理解した上で、なるべく、リスクを小さくする方法を取っていると考えて頂ければ幸いです。イオンについても、悪材料は出ましたが、PBR0.87倍(7月18日)という割安感は下支え材料になっていると考えられます。
ちなみに、「8月優待」銘柄の多くは、2月・8月決算の小売・外食企業となっています。アベノミクスによる脱デフレへ向けた動きが強まっており、単価の引き上げが可能な専門店や外食は業績回復の傾向がありますが、低価格を武器とする企業には苦戦する所も多くなっているようです。こうした傾向も頭の片隅に入れて置かれるといいかもしれません。