新興市場も決算発表本格化へ!四半期好業績予想銘柄にスポット
今回の「日本株投資戦略」では、発表が本格化しつつある2014年4〜6月の四半期決算で、好業績が見込めそうな新興市場銘柄にスポットを当ててみました。業績拡大の後、ガンホーやコロプラのように、新興市場から東証一部へ昇格してゆく銘柄は出てくるのでしょうか。まずは、四半期決算がその試金石と言えます。
前回の「日本株投資戦略」では、東証一部の主力企業(時価総額1千億円以上)に着目しましたが、今回は、ジャスダック、東証マザーズに加え、東証二部の銘柄を対象としました。また、7月4日掲載の「日本株投資戦略」でも、新興市場銘柄を取り上げていますが、今回は「四半期決算」の観点から分析している点が特徴です。
東証一部に上場する約1,800銘柄のうち、3月期決算銘柄は77%で、2015年3月期は営業利益が微増益の予想(会社予想)になっています。これに対し、ジャスダック、東証マザーズ、東証二部の上場企業1,600社弱のうち、3月期決算銘柄は61%で、うち会社予想が発表されている銘柄(900社弱)の予想営業利益(2015年3月期・会社予想)は、7月25日現在で7.6%になっています。現段階では、新興市場銘柄の方が、東証一部の主力企業より高い利益成長が見込まれています。
表1は、そうしたジャスダック、東証マザーズ、東証二部の上場企業の中から、アナリストが2014年4〜6月期に高い営業増益率を予想し、かつ2015年3月期・通期でも増益を予想している銘柄をご紹介しています。スクリーニング条件は以下の通りです。2014年4〜6月期の予想営業増益率(アナリスト予想)が高い順(ただし、「黒字転換」は最後)に並べました。
(1)ジャスダック、東証マザーズ、東証二部に上場企業する3月期決算企業。
(2)2014年4〜6月期・決算発表予定日が、8月4日(月)以降。
(3)2015年3月期の営業利益について、会社予想・アナリスト予想(2社以上)ともあること。アナリスト予想で10%増益以上。
(4)2014年4〜6月期の営業利益について、アナリスト予想があり、10%以上の増益または黒字転換見通しであること。
表1:今期増益予想で、かつ4〜6月期も高い営業利益の伸びが期待(市場コンセンサス)されている銘柄
取引 | チャート | コード | 銘柄 | 決算発表 予定日 | Q営業利益 市場予想 |
2015/3通期営業利益 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
会社予想 | 市場予想 | ||||||
2146 | UT ホールディングス | 2014/08/13 | 420 +379.9% |
2,500 +37.1% |
2,585 +41.7% |
||
6957 | 芝浦電子 | 2014/08/08 | 390 +115.7% |
1,500 +9.8% |
1,800 +31.8% |
||
6324 | ハーモニック・ドライブ・システムズ | 2014/08/08 | 1,668 +52.6% |
6,400 +37.1% |
6,808 +45.8% |
||
6908 | イリソ電子工業 | 2014/08/06 | 1,550 +34.2% |
6,230 +10.5% |
6,950 +23.3% |
||
2400 | メッセージ | 2014/08/11 | 1,739 +25.3% |
8,000 +20.2% |
8,199 +23.2% |
||
4368 | 扶桑化学工業 | 2014/08/05 | 900 +17.9% |
4,150 +17.3% |
3,950 +11.6% |
||
2121 | ミクシィ(注) | 2014/08/08 | 2,717 黒字転換 |
10,000 +1983.3% |
12,051 +2410.7% |
||
6890 | フェローテック | 2014/08/12 | 450 黒字転換 |
1,800 +125.5% |
1,983 +148.5% |
||
7722 | 国際計測器 | 2014/08/06 | 250 黒字転換 |
2,700 +27.6% |
2,800 +32.4% |
- ※2014年7月25日現在の会社公表データ、Bloombergデータをもとに、SBI証券が作成。「Q営業利益市場予想」は、2014年4〜6月期の四半期・予想営業利益(市場コンセンサス/上段は金額で「百万円」・下段は前年同月比増減率で単位は「%」)。2015年3月期営業利益は、会社予想、市場予想(市場コンセンサス)ともに、上段は金額で「百万円」・下段は前年度比増減率で単位は「%」。
- ※ミクシィの予想増益率が特に大きくなっているのは、前期(2014年3月期)の営業利益が480百万円と、低水準であったことが影響しています。
- ※「市場コンセンサス」は、アナリストの業績予想をBloombergが集計したものであり、実際の業績を保障するものではありません。
好業績予想銘柄のポイントは?中長期的な観点も
今回の、新興市場銘柄を対象とするスクリーニングでは、(3)におけるアナリスト予想の有無が大きなポイントになっています。機関投資家や海外投資家による保有が多く、アナリスト分析のニーズが多い東証一部の主力銘柄については、多くの銘柄がアナリストによる業績予想の対象になっています。しかし、新興市場の銘柄については、3月期決算の銘柄に限った場合、通期のアナリスト予想が1社でもある企業は110銘柄に過ぎず、まして四半期予想まである会社は40銘柄に過ぎません。
アナリストは、新興市場銘柄の中でも流動性に富むとみられる銘柄、あるいは中長期的に成長期待のある銘柄を中心に、選別的に業績予想をしているとみられます。また、新興市場銘柄のうち、IR(投資家への情報開示)がしっかりしている銘柄も含まれるとみられます。その意味で、アナリスト予想が存在していること自体も、銘柄選別上、一定の重要度があるとみられます。
今後の短期的な株価動向は、東証一部上場企業同様、四半期利益が市場コンセンサスを上回れるか否か、通期業績見通しが上方修正されるか否かに影響されるとみられます。しかし、より中長期的な企業の成長性に注目する考え方も重要かとみられます。こうしたことを踏まえた上で、表1に掲げた銘柄のポイントについて、表2で説明させていただきました。
表2:表1の銘柄の着目ポイント
コード | 銘柄名 | ポイント |
---|---|---|
2146 | UT ホールディングス | 製造請負・派遣事業。業界No.1の定着率が強み。半導体・電子部品業界がほとんどだったが、環境・エネルギーが拡大。改正労働者派遣法施行(15/4)が追い風。 |
6957 | 芝浦電子 | 温度変化に対し電気抵抗が大きく変化するサーミスタ(温度測定センサ用途)の大手企業。電気自動車や燃料電池車の普及は追い風。 |
6324 | ハーモニック・ドライブ・システムズ | 短期的にはi-Phone設備向け、中長期的には小型ロボット向けに市場拡大を期待。2014年4〜6月単体売上高は前年比12.6%増。受注高は同34.7%増と発表。 |
6908 | イリソ電子工業 | コネクタを製造。車載用が約8割を占め、内外の主要自動車メーカーに搭載。電気自動車・ハイブリッド車の普及が追い風。 |
2400 | メッセージ | 高齢者用介護住宅大手。サービス付高齢者向け住宅が前期の赤字から今期以降黒字化の見通し。 |
4368 | 扶桑化学工業 | 三井化学から有機酸事業を承継した上、業績も好調に推移。2015年3月期会社予想は37億円→41.5億円に上方修正済み。 |
2121 | ミクシィ | スマホ向けゲーム「モンスターストライク」(13年10月公開)利用者数が、7月19日で1千万人に。「パズドラ」(1千万獲得に要1年)よりハイペース。この四半期の利益が試金石。 |
6890 | フェローテック | 太陽電池事業の構造改革が進展。半導体製造装置メーカー向け受注増加傾向。サファイヤのカバーガラス関連の受注動向も注目されている。 |
7722 | 国際計測器 | ダイナミックバランシングマシンの専業でトップシェア。売上の62%(今期予想)を占めるアジア向けの拡大に期待。4〜5月に前期末受注残の27.5%の受注。 |
- ※各種報道、各社公表資料等をもとにSBI証券が作成。
新興市場決算は8月8日が集中日/決算日をまたいだ「保有」には要注意
最後に、ジャスダック、東証マザーズ、東証二部の決算発表スケジュール及び主要銘柄の動向に触れておきたいと思います。図にもありますように、新興市場の決算は8月8日が集中日です。全上場銘柄ベースでも、この日が最多になっていますが、東証一部の主要銘柄の発表は7月31日にも分散されています。それに対し、新興市場銘柄は8月8日・1営業日への集中が顕著です。
表3は、これら新興市場に属す銘柄の時価総額上位銘柄で、8月4日以降に四半期・決算発表を予定している銘柄(ただし、表1と重複した銘柄は除外)です。エン・ジャパンや、レーサム、上村工業、SRGタカミヤなどの銘柄が高めの営業増益率を予想(会社予想)しています。これらの銘柄においては、第1四半期の営業増益率も高くないと「波乱」になる可能性があり、注意が必要です。
なお、新興市場の中で時価総額が上位となる表3の銘柄においても、四半期ベースでのアナリスト予想が存在しているのは、第一興商、エスケー、エン・ジャパンの3社しかありません。
新興市場の銘柄は、決算発表の結果を受け、株価が急上昇したり、逆に急落したりする傾向があります。アナリスト予想がなく、業績に関する報道が見当たらない銘柄を保有の投資家は、決算発表スケジュールに注意を払う必要があります。特に決算発表をまたいだ「保有」にはリスクを伴いますので、注意が必要です。
図1:新興市場の決算発表予定社数(8月)
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
表3:新興市場主要銘柄の決算発表予定日(時価総額の大きい順に表示)
コード |
銘柄名 |
決算発表日 |
今期予想 |
---|---|---|---|
7458 |
第一興商 |
2014/08/04 |
1.9% |
4628 |
エスケー化研 |
2014/08/08 |
5.8% |
7287 |
日本精機 |
2014/08/04 |
-27.5% |
8066 |
三谷商事 |
2014/08/11 |
-9.4% |
8850 |
スターツ |
2014/08/06 |
1.6% |
7593 |
VTHD |
2014/08/08 |
2.2% |
4849 |
エン・ジャパン |
2014/08/11 |
14.8% |
8890 |
レーサム |
2014/08/13 |
101.0% |
4966 |
上村工業 |
2014/08/11 |
24.5% |
4781 |
日本ハウズ |
2014/08/06 |
0.3% |
4978 |
リプロセル |
2014/08/12 |
赤字拡大 |
2158 |
UBIC |
2014/08/12 |
黒字転換 |
2445 |
SRGタカミヤ |
2014/08/07 |
25.8% |
4583 |
カイオム |
2014/08/14 |
赤字拡大 |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。「今期予想」は会社予想の今期予想営業増益率。時価総額順に表示。