銘柄の選定範囲を広げ、より高い配当利回りを追求
今回の「日本株投資戦略」では、9月末に配当の実施が予定され、好利回りが期待できる銘柄にスポットを当ててみました。
8月8日に掲載された「日本株投資戦略」でも同様の企画を行いましたが、そこでは東証一部・時価総額1千億円以上の「誰でも社名程度は聞いたことがある」ような主力企業を中心に銘柄を選びました。今回は、さらに対象を広げ、より高い利回りが期待できるような銘柄を選んでみました。条件は以下の通りです。
(1)東証一部、同二部、ジャスダック、東証マザーズ上場の全銘柄が対象。
(2)上記市場に上場し、時価総額が100億円以上。
(3)金融、電力・ガスを除く。
(4)3月決算または9月決算。
(5)四半期累計の経常増益率(実績)が、通期予想経常増益率よりも大きい企業
⇒通期予想経常増益率の達成確度が高いため、予想配当の減額リスクが小さいとみられる企業です。
(6)上記の全条件を満たす企業から、9月末・予想配当の利回りが、高い順に10銘柄を掲載。
スクリーニングの結果、抽出された10銘柄は「表1」の通りです。中小型株を多く含むため、一体どんな業務を展開しているのか良くわからない企業も多いかもしれません。ただ、予想配当の減額リスクを低下させるようなスクリーニングをしていますので、十分投資対象として検討に値する銘柄群になっていると思います。
表1:9月末・予想配当の利回りが高い銘柄(時価総額100億円以上)
取引 | チャート | コード | 銘柄名 | 株価 (9/1) |
一株当たり予想配当 | 決算月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
9月末 | 年間 | ||||||
7839 | SHOEI | 1,874 | 58 3.1% |
58 3.1% |
9月 | ||
8151 | 東陽テクニカ | 1,193 | 25 2.1% |
38 3.2% |
9月 | ||
3571 | ソトー | 978 | 20 2.0% |
40 4.1% |
3月 | ||
6249 | ゲームカード・ジョイコホールディングス | 1,537 | 30 2.0% |
60 3.9% |
3月 | ||
3288 | オープンハウス | 2,052 | 40 1.9% |
40 1.9% |
9月 | ||
4502 | 武田薬品工業 | 4,779.5 | 90 1.9% |
180 3.8% |
3月 | ||
2317 | システナ | 805 | 15 1.9% |
30 3.7% |
3月 | ||
1975 | 朝日工業社 | 405 | 7.5 1.9% |
15 3.7% |
3月 | ||
7455 | 三城ホールディングス | 487 | 9 1.8% |
18 3.7% |
3月 | ||
9639 | 三協フロンテア | 822 | 15 1.8% |
30 3.6% |
3月 |
- ※会社予想数値をもとにSBI証券が作成。
- (1)「一株当たり予想配当/9月末」は、上段が同半期分の一株当たり・予想配当額。下段はそれを株価で割った利回り。
- (2)「一株当たり予想配当/年間」は、上段が年度合計の一株当たり・予想配当額。下段はそれを株価で割った利回り(いわゆる予想配当利回り)。
9月末「好配当利回り」銘柄を狙う時のポイントは?
9月末に株主の権利を確定させ、好配当を狙う際のポイントを3つご紹介したいと思います。
「配当利回り」という表現は、あくまでも年間の配当をすべて受け取った時の利回りであること。 |
この時期、予想配当利回りランキングを参考に、好配当銘柄を狙う投資家も多いと思います。しかし、単純な「配当利回りランキング」で、銘柄を選ぶと、銘柄選定を誤る危険性があります。表1の銘柄を例にご説明したいと思います。
例えば、SHOEI(7839)の場合、この会社は9月決算で、年度末に1回配当を実施する計画の企業です。従って今期も、2014年3月末の第2四半期末には配当を実施せず、2014年9月・年度末に58円をまとめて配当する計画になっています。従って、9月末配当の利回りイコール予想配当利回りになっています。これに対し、ソトー(3571)は3月決算企業です。2014年9月末に20円、2015年3月末に20円という配当計画で、この合計40円を受け取り、株価が動かなければ、予想配当利回り4.1%が実現することになります。
ソトーを「予想配当利回り4.1%」であることを理由に買った場合、下半期の配当も取らなければならないのです。「日本株投資戦略」では、あくまでも9月末・予想配当額を株価で割った利回りでランキングしていますので、こうした誤解に基づく投資行動を回避できるのに役立つと思います。
予想配当利回りは、企業の配当計画の変更や、株価変動により、変動すること。 |
予想配当利回りは、「年間・予想配当額」を「株価」で割った比率です。SHOEI(7839)の場合、次のように計算されます。
58円(年間予想配当)÷1,874円(株価)×100=3.1%(予想配当利回り)
従って、予想配当利回りは、株価または年間予想配当額が変化すれば変わります。ここで、ご説明したいのは「年間予想配当額」は、あくまでも現時点での「計画」であり、計画が変われば変動するという点です。投資家として特に避けたいのは、配当計画の減額です。業績が悪化し、企業が少しでも内部留保を確保しておきたいと考え、配当計画を減額するケースは少なくありません。従って「好配当」を狙う投資でも、企業業績のチェックは欠かせないことになります。
「日本株投資戦略」では、四半期決算の増益率(実績)が、通期の予想増益率よりも高い企業を選ぶことで、業績予想ひいては配当予想が下方修正されるリスクを低くすることを狙っています。
表2:9月末・予想配当の利回りが高い銘柄(表1)の業績チェック
コード | 銘柄名 | 経常利益 | 決算月 | ポイント | |
---|---|---|---|---|---|
四半期累計 | 通期予想 | ||||
7839 | SHOEI | 2,147 124.1% |
2,550 96.2% |
9月 | 主力の二輪車向けヘルメットが好調。 7月30日付で業績・配当予想を上方修正。 |
8151 | 東陽テクニカ | 2,356 42.7% |
2,900 17% |
9月 | 電子計測器の専門メーカー。 東日本大震災の影響を調べる海洋測定機器に展開。 |
3571 | ソトー | 318 15.4% |
850 -28.4% |
3月 | 毛織物染色整理加工大手。通期営業利益は 増益予想だが、投資組合運用益減少へ。 |
6249 | ゲームカード・ジョイコホールディングス | 616 -38.8% |
400 -78.4% |
3月 | パチンコ用プリペイドカードシステム大手。 カードや機器販売、システム利用料が収入。 |
3288 | オープンハウス | 7,766 147.1% |
12,600 37.3% |
9月 | 都心部を中心に戸建てやマンションの分譲を展開。 投資用物件も手掛ける。 |
4502 | 武田薬品工業 | 59,989 7.4% |
140,000 -11.9% |
3月 | ガン関連の新薬開発に注力。外国人社長で話題に。 米国で大うつ病治療剤が伸長。 |
2317 | システナ | 411 38.0% |
2,217 27.0% |
3月 | スマホ・タブレット向け。組み込みソフト開発から サービス・アプリ等の開発・検証へ。 |
1975 | 朝日工業社 | -259 赤字縮小 |
1,450 -28.0% |
3月 | 民間向け空調設備工事が主力。中期計画で省エネ需要取り込む方針 |
7455 | 三城ホールディングス | 532 76.0% |
1,122 8.4% |
3月 | 「パリミキ」「メガネの三城」で有名。不採算点の積極的な閉鎖を継続。 |
9639 | 三協フロンテア | 771 6.3% |
3,300 1.7% |
3月 | 仮設ユニットハウスの大手。国内に工事現場が増えるほど、 需要が高まる傾向。 |
- ※会社予想数値をもとにSBI証券が作成。
- (1)「経常利益/四半期累計」は、3月決算企業の場合、2014年4〜6月期、9月決算企業の場合、2013年10〜2014年6月期を示している。
- (2)「経常利益」は、四半期累計・通期予想ともに、上段が金額(百万円)で、下段が前年同期比・増減率(%)。
権利付最終日になると、駆け込み的な「配当取り」の買い需要が増え、株価が上昇しやすく、「配当落ち」以降は、株価下落リスクが高まる傾向にあること。 |
(2)にでもご説明した通り、株価が変化すれば当然、予想配当利回りも変化します。この場合、株価が上昇すれば、その分予想配当利回りは低下し、株価が下落すれば、予想配当利回りは高くなります。即ち、あまり高い水準で買ってしまうと、せっかくの好配当利回り銘柄投資でも、利益を確保しにくくなってしまいますので、注意が必要です。
ちなみに、今年の場合、9月末配当の権利を確保するためには、9月25日(権利付最終日)までにその銘柄を買っておかなければなりません。9月26日(配当・権利落ち日)以降に買った投資家は、9月末配当を受け取ることはできないのです。逆に、9月25日までに買って、26日にその銘柄を売却しても、配当を受け取ることができます。このため、多くの投資家が、25日直前に買い、26日直後に売るという行動を取るものと想定されます。(※1)
通常、権利付最終日にかけ、買い需要が膨らみやすく、権利落ち日直後は売られやすいという傾向があります。このため、配当取りを目的とした短期投資は、注意が必要です。特に、予想配当金額の魅力が大きい企業ほど、この傾向が増幅される可能性があります。できれば、人気が盛り上がる前に買い、配当落ち後は売り一巡まで待つか、初めから中長期投資と割り切ることも重要です。