「上期」上振れ&「通期」上方修正なら、株価上昇の期待大
10月20日頃から、いよいよ3月期決算銘柄の中間決算が本格的に発表されます。今回の「日本株投資戦略」では、それらの銘柄の中から、中間決算(2014年4〜9月期)で本業の利益を示す営業利益が、会社計画を上回り、最終的に通期(2014年4月〜2015年3月期)の予想営業利益が上方修正される可能性の大きい銘柄を探ることにしました。改めて述べるまでもなく、こうした銘柄は株価が上昇する可能性が大きいためです。
スクリーニング条件(2014年10月3日現在)
- (1)東証一部上場銘柄(1,811銘柄)
- (2)3月決算銘柄(上記の約4分の3)
- (3)時価総額1,000億円以上。
- (4)銀行、証券・商品先物、保険、電力を除く(会社計画未公表の企業が多いため)。
- (5)仮に第2四半期の営業利益が昨年並みでも、中間期営業利益が会社計画を5%以上超過する計算の企業。
⇒第1四半期の実績が好調なため、中間決算の利益が大きくなりやすい企業です。 - (6)中間期の市場予想営業利益が、会社計画を5%以上上回る見込みの企業。
⇒アナリストは、中間決算で営業利益が会社計画を5%以上、上回ると予想していることを示します。 - (7)通期の市場予想営業利益が会社予想を10%以上上回る見込みの企業。
⇒アナリストは、通期で営業利益が会社計画を10%以上、上回ると予想していることを示します。 - (8)市場予想EPSが4週前比で上昇している企業。
⇒予想EPS(一株利益)ベースで、アナリストの見方が約1ヵ月前に比べ強くなっていることを示します。
上記の全条件を満たす銘柄を、ご紹介したのが表1です。表中の「予想」はすべて市場予想(Bloombergが集計した市場コンセンサス)になります。市場予想営業利益が会社計画を大きく上回るほど上位になるように並べております。
表1:3月決算企業のうち、中間決算で予想営業利益の上方修正期待が大きい企業
取引 | チャート | コード | 銘柄 | 第1四半期 営業利益 |
上期予想 営業利益 |
対会社予想 上振れ率 |
今期予想 営業利益 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
6963 | ローム | 9,276 399.0% |
20,458 97.9% |
49.30% | 34,035 44.0% |
||
4506 | 大日本住友製薬 | 8,694 -3.7% |
16,994 -2.5% |
41.60% | 24,689 -41.4% |
||
7832 | バンダイナムコホールディングス | 16,847 26.2% |
32,528 23.3% |
30.10% | 57,146 27.9% |
||
1812 | 鹿島建設 | 6,612 142.8% |
14,256 81.7% |
29.60% | 33,058 43.7% |
||
9962 | ミスミグループ本社 | 6,520 26.3% |
12,095 23.1% |
22.80% | 22,800 20.1% |
||
6473 | ジェイテクト | 16,514 58.8% |
34,639 41.9% |
21.50% | 73,800 26.8% |
||
6302 | 住友重機械工業 | 6,089 354.1% |
13,945 66.6% |
16.20% | 40,725 18.6% |
||
9107 | 川崎汽船 | 9,685 32.1% |
20,793 5.2% |
15.50% | 39,785 37.9% |
||
4202 | ダイセル | 12,501 60.6% |
23,100 31.3% |
15.50% | 45,700 20.5% |
- ※Bloomberg、会社公表数値をもとにSBI証券投資調査部が作成。
- ※営業利益の上段は金額(百万円)で、下段は前年同期比・増減率(%)。
- ※予想はBloomberg集計の市場コンセンサス。
上方修正の可能性を多角的に分析
今回の「日本株投資戦略」の特徴は、通期のアナリスト予想(市場コンセンサス)を前提に据えるにとどまらず、中間期のアナリスト予想を吟味し、さらに第1四半期の実績を加味して分析することにより、上方修正銘柄の「予想の精度」を上げようとしていることに大きな特徴があります。
例えばローム(6963)の場合、第1四半期の営業利益は「前年同期比4倍」の93億円弱と好調なスタートでした。従って、今期・第2四半期の営業利益前提を「前年並み」の85億円と考えることは本来、利益成長の減速を予想することになってしまいます。しかし、仮にそう考えても、93億円+85億円=178億円と計算されますので、中間期・会社予想営業利益137億円(前年同期比37.5%増)は相当「保守的」な予想であることがわかります。したがって、実際の数字はこれを上回る可能性が大きいと考えることができます。
ちなみに、アナリストは企業分析の結果を踏まえ、ロームの上期の営業利益を205億円弱(表1)と予想しています。個人投資家は、自ら企業調査をすることは難しいですが、実績数値やアナリスト予想を手掛かりに、業績予想の上方修正を「予想」することが十分できる訳です。
なお、ミスミグループ(9962)のように、月次売上高を発表している企業は、それもチェックすると分析の精度が上がることになるでしょう。ちなみに、同社が発表した4〜8月累計売上高は前年同期比16.2%増でした。同社の予想中間売上高(会社計画)は、前年比13.6%増ですので、売上が計画を上回るペースになっています。営業利益ベースで第1四半期が大幅増益だったことは表1の示す通りです。ロームと同様の分析をすれば、ミスミの業績予想も上方修正される可能性が大きいと考えられます。
2015年3月期決算は全体としても上方修正含み
最後に、東証一部・主力企業の業績トレンドについて確認しておきたいと思います。東証一部・3月期決算の主力企業(時価総額1千億円以上・金融・電力除く)で、連続データが取れ、業績予想に会社予想・市場コンセンサスがともにある308社について、調べたのが図1及び図2になります。
これらの主力銘柄については、2014年7〜9月期の営業利益は、前年同期比3.7%の増益を確保しそうです(※1)。4〜6月期の同5.9%増からは減速しそうですが(※2)、消費税増税後のこの期間を増益で通過する見込みであることは、それ相応の評価ができそうです。2015年3月期は、会社予想ベースでは3%増益の予想ですが(※3)、市場コンセンサスでは9%増益の見込みです(※4)。
市場コンセンサスが、会社予想を上回る見通しである背景には、円安の加速で自動車や電機の業績が上振れしそうなことが指摘されます。また、ゲーム関連企業の業績も、会社予想を上回るケースが増えそうです。
図3は、ドル・円相場の四半期ごとの平均レートを、前年同期と比較し、その変動率をみたものです。2013年7〜9月期に、前年同期比・変化率でみた場合、円安・ドル高が最も急速に進んだ四半期となりました。図1の四半期別営業利益でみると、この時期の営業利益が最も大きく膨らんでおり、円安の追い風を受けていたことがうかがわれます。図3では、足元で再び、円安・ドル高の効果が回復しそうなことを示しています。したがって、2014年7〜9月期の業績は輸出企業を中心に上振れする可能性がありそうです。
なお、1ドル110円前後で10〜12月期が推移した場合、2013年10〜12月の平均レートは100円台半ばですので、前年同期比10%前後の円安・ドル高となる計算で、輸出企業への追い風が強まりそうです。
図1:主力銘柄の四半期別営業利益(暦年・兆円)
- ※会社発表資料、Bloomberg等をもとにSBI証券が作成。
- ※横軸は暦年で、例えば2011Q1は2011年第1四半期(1〜3月)。
- ※2014年第2四半期は市場コンセンサス。
図2:主力銘柄の年度別営業利益(兆円)
- ※会社発表資料、Bloomberg等をもとにSBI証券が作成。
- ※横軸はその年の3月に終る年度。「2013」は2013年3月期。
- ※「会社」は会社予想、「市場」は市場コンセンサス。
図3:ドル・円四半期別平均レートの前年同期比増減率
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
- ※各四半期の平均為替レートを前年同期比と比較し、変化率を表したもの。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。