チャンス到来?「狙い目」の中小型株を抽出
日本銀行が2014年10月31日に、大規模な追加金融緩和を発表しました。長期国債等の買い入れを増やすことで、マネタリーベースを年間約80兆円ペース(約10〜20兆円追加)で増加させることになります。当面、金融セクターや不動産、建設セクターを中心とした大型株市場においてその恩恵を受ける可能性がありそうです。
しかし、大型株市場の上昇は、中小型株の出遅れ感をより顕著にするという側面を持っています。仮に大型株の上昇ピッチに過熱感が出てくれば、中小型株の人気が相対的に高まってくる可能性も十分あります。
今回の「日本株投資戦略」では、新興市場を含む中小型株市場に投資チャンスが到来している可能性が大きいと考え、投資対象として有望な銘柄をピックアップしてみました。3月決算の中間決算発表時期が本格化しますので、決算発表タイミングや業績面への配慮を行っているのが特徴です。さらに、投資テーマや、掲載企業が展開する市場などを検討し、定性的な分析も付加してみました。まずは抽出した銘柄をご紹介したいと思います。
そして、なぜ今を「買い場」と考えるのかについては、後段でご説明します。
銘柄選択(表1)のスクリーニング条件
- (A)東証一・二部上場銘柄で時価総額1千億円未満、またはジャスダック、東証マザーズ上場銘柄。
- (B)決算発表が2014年11月以降の銘柄であること。
- (C)3月期決算企業で、2014年4〜9月期の市場予想営業利益が会社予想を上回っていること。
(弊社業績分析ツールで経常利益ベースでも「上振れ」が確認できること。) - (D)「投資ポイント」から、十分成長が可能な領域とみられること。
- (E)市場予想営業利益が、会社計画を上振れる比率が高い順に掲載。
表1:堅調な業績が期待でき、成長可能な市場で展開する中小型銘柄
取引 | チャート | コード | 銘柄名 | 株価 (10月27日) |
市場予想 中間営業益 |
対会社計画 上振れ率 |
---|---|---|---|---|---|---|
7915 | 日本写真印刷 | 1,665 | 1,842 | 163.1% | ||
7999 | MUTOHホールディングス | 513 | 991 | 98.1% | ||
1822 | 大豊建設 | 514 | 700 | 75.0% | ||
1813 | 不動テトラ | 275 | 1,900 | 58.3% | ||
6306 | 日工 | 402 | 1,246 | 31.2% | ||
6908 | イリソ電子工業 | 7,510 | 3,475 | 24.1% | ||
9413 | テレビ東京ホールディングス | 2,215 | 2,095 | 19.7% | ||
4246 | ダイキョーニシカワ | 2,586 | 4,365 | 14.9% |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。データは2014年10月27日現在。
- ※市場予想中間営業益の単位は百万円。
- ※電気機器の重複が目立ったため、市場予想が会社計画よりも上振れている能美防災、日本ケミコン、タムラ製作所、建設関連の重複をある程度避けるため、ライト工業、日本コンクリート等は掲載しませんでした。
表2:「表1」の銘柄の投資ポイント
コード | 銘柄名 | ポイント |
---|---|---|
7915 | 日本写真印刷 | タブレット端末やPC向けのタッチパネルを生産し、市場拡大余地。 |
7999 | MUTOHホールディングス | 大型プリンタが収益柱。3Dプリンタにも展開。 |
1822 | 大豊建設 | シールド工法に強い。マンション受注残豊富。Q1受注前年比74%増。 |
1813 | 不動テトラ | 高速道路や港湾に強い。土木・地盤改良中心にQ1受注前年比20%増。 |
6306 | 日工 | 今期は15%超営業減益計画もQ1は57%増益でスタート。 |
6908 | イリソ電子工業 | コネクターが、自動操縦装置や追突防止装置などに市場を拡大。 |
9413 | テレビ東京ホールディングス | タイム、スポットともに広告収入拡大傾向。妖怪ウォッチヒットが追い風。 |
4246 | ダイキョーニシカワ | 業績好調のマツダ向け比率が高い。西川ゴムとも親密。 |
- ※報道等各種資料をもとにSBI証券が作成。
なぜ今、中小型株の投資チャンスなのか?
ジャスダック、東証マザーズ、東証二部を今、中小型の趨勢を示す「中小型三市場」とした場合、中小型株が相対的に人気を集めるには、市場が「リスクオン」に転じていることが必要と考えます。その意味で象徴的なのは、野田前首相が解散・総選挙を表明する前の「アベノミクス前夜」の時代でしょう。中小型三市場の売買代金は東証一部売買代金の概ね5%以下で推移する時代が長く続き、今と比べると、市場ではいかにリスク回避姿勢が強かったのかがうかがわれます。
しかし、2012年11月14日に、野田前首相が解散・総選挙を表明し、2013年から「アベノミクス」がスタートすると、市場のリスク許容度は大きく高まることになりました。それ以降、中小型三市場の売買代金は概ね5%以上、20数%以下のレンジで推移するようになりました。その意味で、2014年10月14日に中小型三市場の売買代金が東証一部の6%まで低下したことは、中小型株の相対的人気が概ねボトム圏に達したことを示していると考えられます。
10月下旬段階で、この比率は若干上昇傾向ですが、今後、中小型株の人気が回復する過程で、過去の経験則から考えれば、この比率はさらに高まると期待されます。
図1:中小型三市場の売買代金が東証一部売買代金の5〜6%がボトム圏
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
図2は、アベノミクス開始以降で、「中小型三市場の売買代金が東証一部の売買代金に対し、何%を占めるか」を示す比率が、ボトムから当面のピークまで増えた3つの期間、すなわち、(1)2013年5月23日〜同年10月16日、(2)2013年12月13日〜2014年1月20日、(3)2014年4月9日〜6月18日において、東証一部と中小型三市場のパフォーマンスの差を示したものです。東証一部のパフォーマンスはTOPIX(東証株価指数)、中小型三市場のパフォーマンスは日経ジャスダック平均、東証マザーズ指数、東証二部指数の平均としました。
この図からお分かりいただける通り、中小型株市場の人気(売買代金)が回復する過程では、中小型株のパフォーマンスが相対的に優位となる傾向が続いています。従って、これから迎える11月相場は、中小型株の「仕込み場」となる可能性が十分ありそうです。
図2:売買代金がボトムからピークに達する間の市場別騰落率(%)
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。