東京市場では、日経平均株価が急騰・急落する激しい展開となりました。10月31日に日銀が追加金融緩和を発表、同日にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が年金の運用方針見直し・株式組入比率の拡大を発表、各メディアから安倍政権による消費税再増税先送り及び解散・総選挙の可能性を示唆する報道が相次いだこと等が要因です。日経平均株価は10月30日の15,658円から11月14日の17,490円まで約12%も上昇しました。
こうした中、11月17日の取引開始前に、内閣府から発表された2014年7〜9月期の実質GDP(前期比・年率)で、成長率がマイナス1.6%と、事前の市場予想(プラス2%強)から大きく下振れたことを背景に、この日の日経平均株価は前日比517円安と急落しました。翌18日には早速反発に転じた東京株式市場ですが、同日夜に安倍首相が解散(21日)・総選挙と消費税再増税延期を正式に発表するに至っています。日本経済と株式市場は、まさに激動の展開となっています。
さて、上昇・波乱が交錯する株式市場について、投資家は今後どう考えるべきでしょうか?また、銘柄選別についてはどう考えるべきでしょうか?今回の「日本株投資戦略」では、以下のポイントについて、ご説明したいと思います。
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GDPの下振れに過度の懸念は禁物〜企業の業績予想引き上げに注目
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冒頭で触れた通り、11月17日に発表された2014年7〜9月期の実質GDP(前期比・年率)は、2%超拡大するとの市場見通しを裏切り、1.6%のマイナス成長となりました。これを受け、17日の日経平均株価は急落しました。
しかし、過度の懸念は不要であると考えます。GDP悪化で懸念される企業業績ですが、その影響は中間決算として織り込んでいるからです。また、GDP下振れの主な要因も、表1にある通り「在庫調整」とみられますので、それが厳しかった分、10〜12月期のリスクは低下するとみられます。GDP悪化の引き金を引いた消費税の引き上げも、2017年4月まで延期されることとなり、当面は景気の下支え要因になりそうです。
2014年4月の消費税増税の影響で消費や住宅投資が予想以上に落ち、それが4〜6月の在庫増加につながり、天候不順も加わって、7〜9月の在庫調整につながった形です。一方、円安メリットを受ける電気機器や輸送用機器、機械、精密、市況回復と値上げの浸透が追い風の化学、訪日観光客の増加が続く一部の小売・サービス等、業績が拡大する業種も多くみられ、企業業績全般としては拡大が続いています。
表1:GDP項目別寄与度
民間最終消費 |
0.2% |
民間住宅 |
-0.2% |
民間企業設備 |
0.0% |
民間在庫品増加 |
-0.6% |
公的需要 |
0.2% |
輸出 |
0.2% |
輸入 |
-0.2% |
- ※内閣府2014年7〜9月GDP速報をもとにSBI証券が作成。
この式からもご理解頂ける通り、株価に直接影響を与えるのは、日経平均の予想EPS(一株利益)で象徴される企業業績であると考えられます。その企業業績ですが、2015年3月期中間決算が好調のうちに発表を終え、多くの企業が業績見通しを上方修正したことで、日経平均株価の予想EPSも上昇しました。10月28日から11月17日までに日経平均の予想EPSは31円上昇しています。この上昇は、上記の式からもご理解頂ける通り、株価の上昇要因になります。
11月14日にかけて急騰した日経平均株価ですが、その要因として日銀追加緩和の効果や消費税率引き上げ延期への期待だけでなく、企業業績の向上という実態面の株価浮揚効果が大きかったことは重要な観点だと思います。
図1:好調な中間決算を経て日経平均の予想EPSも上昇、株価の押し上げ要因に
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総選挙と株価
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冒頭でも触れましたように、11月18日に安倍首相が記者会見し、衆議院を11月21日に解散し、消費税増税を1年半先送りすることを発表しました。総選挙は12月2日公示され、14日に投開票の予定となります。
図2は、過去の総選挙と日経平均の動きを示したものです。過去22回の解散日から投票日(翌営業日)までの日経平均上昇率は平均で上昇しました。
今回はどうなるでしょうか。留意点としては、既に10月17日から11月18日まで日経平均が19%上昇していることです。さらに、実際の株価は選挙戦の成り行きに左右され、投開票以降は選挙の結果が影響することになるでしょう。衆議院の定数480議席のうち、解散前の議席数は自民党294議席、公明党31議席で与党合計は325議席です。これをどこまで維持できるかがポイントです。
図2:過去の総選挙と日経平均上昇率(%)(解散日〜投票日)
- ※各種資料よりSBI証券が作成。投票日株価は、当日が休日の場合は直後の営業日の株価。なお、第34回は任期満了で総選挙となった戦後唯一の例であり、「解散日」の年月日としては、会期末年月日を記載している。
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増税延期・総選挙決定で注目が集まる業種・銘柄は?
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予想外の日銀による追加緩和、GPIFの運用見直し、GDPの下振れと、激動が続いた株式市場ですが、11月18日にはついに、解散・総選挙と消費税再増税の延期(2017年4月に再増税の予定)が発表されました。そこで、
(1)消費増税延期・需要喚起策の導入で再浮揚が期待される住宅関連株
(2)国土強靭化をにらんだ長期的需要拡大に加え「補正」の後押しも期待される建設関連株
(3)消費税引き上げ(2014年4月)以降、株価が低迷するも、増税延期で業績回復が期待される小売関連株
という3つの視点から、銘柄を抽出してみました。
このうち、表2の住宅関連株については、消費税再増税延期、住宅購入促進策への期待が背景となっているものの、抽出銘柄は、事業環境が厳しかった2014年4〜9月期決算でも、好業績を確保しており、バリュエーション面でも魅力のある銘柄になっています。また、表3の建設関連株は国土強靭化という国策を背景としており、中長期的にも注目されるセクターと言えます。表4の小売関連株ですが、消費セクターの厳しい事業環境を織り込み、株価が大きく下落した銘柄(東証一部)から選んでいます。
- ※表2〜表4:各種報道、会社データをもとにSBI証券が作成。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。