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マーケット > レポート >  日本株投資戦略〜新年度相場で上昇期待!大幅増益予想銘柄は?

日本株投資戦略〜新年度相場で上昇期待!大幅増益予想銘柄は?

2015/4/3
投資調査部 鈴木英之

名実ともに新年度入りとなり、国や自治体をはじめ、多くの企業にとって新しい会計年度(2015年度)の幕開けとなります。

昨年度(2015年3月末までの1年間)、日経平均株価は29.5%上昇しましたが、足元3月までの3カ月間だけでも連続上昇し、上昇率は10%に達しています。こうした動きから、短期的に過熱感を指摘する市場参加者が増えつつあることは確かで、株式相場は波乱含みと言えます。

しかし、新年度は企業業績の追い風になる要因が数多くあります。

  • ・円安・ドル高が輸出企業の業績にプラスになるとみられること(ただし、ユーロ安傾向には注意)。
  • ・原油安が、エネルギーを多く消費する企業業績や、家計消費にプラスになるとみられること。
  • ・法人税減税の分、企業の税引き利益が押し上げられると考えられること。
  • ・4月で消費税引き上げから1年を経過したため、「駆け込み需要への反動」や「家計購買力の低下」等による消費の減少というマイナス効果も一巡し、小売や食品等の消費関連にも追い風が吹きそうなこと。
  • ・ベア実施で賃金増加が見込まれ、その分個人消費の押し上げが期待されること。

これらを背景に、新年度の企業業績に関するアナリスト予想では、全体として大幅増益が見込まれており、株価の上昇トレンドは崩れていないとの見方も多くなっています。

以上のように、中長期的な上昇トレンドが崩れていない中で、過熱感から短期的な下落があり得るのであれば、そこで形成された押し目は、買い好機になる可能性があるのではないでしょうか。

今回の「日本株投資戦略」では、新年度に大幅増益が見込まれる銘柄にスポットを当ててみました。株式相場が新年度入りしたことで、業績面でも「新年度」にスポットが当たってくる可能性が大きいとみられます。そうした新年度に大幅増益が予想される銘柄の中から、割高感が強まってきた銘柄やファンダメンタルズ面で不安の残る銘柄を除き、ピックアップしてみました。

1

 新年度相場で上昇期待!大幅増益予想銘柄を探る

早速、新年度(2016年3月期)に大幅増益が見込まれる銘柄をピックアップしてみましょう。
ただし、前年度(2015年3月期)の予想営業利益で下方修正リスクの少ないことや、株価的に割高感の強い銘柄ではないこと等を条件に加えました。
銘柄抽出条件は以下の通りです。

(1)JPX400に採用された3月決算銘柄(利益や資本効率の面で一定以上の条件を満たした銘柄とみなせます。)
(2)2015年3月期の市場予想営業利益が増益で、かつ会社予想を上回っていること(下方修正リスクを下げる狙いです。)
(3)2016年3月期の市場予想営業増益率が20%以上であること
(4)2016年3月期の予想PERが20倍未満(割高感の強い銘柄を除外することが目的です。)

この全条件を満たす銘柄を、2016年3月期の市場予想営業増益率が高い順に10銘柄並べたものが図表1になります。なお、以下の銘柄は、上記の全条件を満たしましたが除外しました。

インターネットイニシアティブ(3774)・・・2015年3月期の会社予想営業利益が下方修正されたため。
横河電機(6841)・・・・会社予想を下回る予想営業利益見通しが観測(日経新聞)されているため。
三井造船(7003)・・・・連結子会社(持株比率50.1%)の三井海洋開発が15年12月期に減益見通しのため。

図表1:新年度に大幅な営業増益が予想されている銘柄

取引 チャート コード 銘柄名 株価 会社予想
営業増益率
市場予想
営業増益率
16/3
予想PER
15/3 16/3
現買信買 チャート 9766 コナミ 2,250 55.9% 93.5% 102.9% 17.9
現買信買 チャート 8848 レオパレス21 629 6.0% 14.5% 42.1% 8.7
現買信買 チャート 5471 大同特殊鋼 538 5.4% 5.8% 32.7% 13.2
現買信買 チャート 6762 TDK 8,540 91.2% 98.4% 31.4% 17.0
現買信買 チャート 6952 カシオ計算機 2,279 37.3% 40.2% 24.8% 19.5
現買信買 チャート 7013 IHI 563 31.4% 35.4% 24.1% 16.2
現買信買 チャート 7270 富士重工業 3,991 25.6% 30.3% 22.6% 9.1
現買信買 チャート 7245 大同メタル工業 1,251 5.9% 8.6% 22.5% 9.7
現買信買 チャート 6502 東芝 504 13.5% 17.3% 22.1% 11.2
現買信買 チャート 5486 日立金属 1,845 29.3% 30.2% 21.6% 11.5
  • ※Bloombergデータ及び会社公表データをもとにSBI証券が作成。データは2015年3月31日現在。
  • ※会社予想営業増益率は2015年3月期が対象。市場予想営業増益率、16/3期予想PERは、Bloombergベースの市場コンセンサス。
2

 市場が大幅増益を予想している銘柄の特徴は?

(A)収益構造の転換が奏功しつつあるコナミ、レオパレス21

図表1で上位1位・2位の2社は、収益構造の転換により、収益力が改善傾向にあるという点で共通しています。大手ゲームソフトメーカーであるコナミ(9766)は、販売本数を絞って採算を高める方針が奏功(図表2)している上、オンラインゲーム向けの売上高増加で、収益性が改善しつつあります。カジノ向け売上高もありますので、我が国でもカジノ設置が濃厚になってくれば、関連ビジネスに参画してくる可能性は十分ありそうです。また、レオパレス21(8848)は、リーマンショック後に、請負建築主体から、ストックビジネス型事業である賃貸事業に軸足を移したことで、収益に安定性が増しつつあります。賃貸ビジネスでは、一括借上方式(サブリース)を採用しており、相続税対策としてビジネス拡大の余地があります。

(B)競争力の強化が利益拡大につながりつつあるTDK、カシオ、東芝、大同メタル

競争力の強化をバネに、利益を拡大させている企業もあります。TDK(6762)は、世界で高シェアを誇る多くの製品群を揃える電子部品メーカーです。スマホ市場の拡大や今後のウェアラブル端末の普及が追い風とみられますが、自動車向けにも強みを持ち、利益構造はバランスが取れていると考えられます。カシオ(6952)は、時計、デジカメ、電卓の世界で他社と競合しにくい独自の高機能分野を進んでいます。また、東芝(6502)は、大きな収益源である半導体フラッシュメモリで、シェアは2割程度と、サムスン電子(3割前後)との寡占化(最近は追い上げ傾向)が進んでいます。さらに大同メタル(7245)は、すべり軸受(メタル)で全産業分野においてトップシェア(売上面では自動車向けが主力)を有しています。

(C)海外売上高の拡大がけん引する富士重、IHI

富士重(7270)は、販売台数の6割が北米です。円安・ドル高に加え、ガソリン価格の下落が北米自動車市場の拡大に追い風になりそうで、当社の業績も追い風を受けそうです。IHI(7013)は、海外売上高が5割超ですが、全地域で拡大傾向にあります。特に北米向けが金額・伸び率ともに大きくなっています。

この他、大同特殊鋼(5471)は、2014年4〜12月に「エネルギーコストの上昇分を吸収しきれず」(会社資料)、前年同期比4.8%の営業減益でしたが、今後はエネルギーコストの低下を期待できそうです。既に2014年10〜12月期だけみると、前年同期比28.1%の営業増益に転じており(図表3)、業績は改善傾向とみられます。また、日立金属(5486)は、株式売却益計上もあり、3月19日付で業績見直しを発表しています。

図表2:コナミの「デジタルエンタテインメント事業」は、
本数・売上減でも利益が増加している。

4月〜12月累計

2015/3期
会社予想

2013年

2014年

デジタルエンタテインメント事業

716
59

679
83

1,050
100

健康サービス事業

575
9

551
5

760
10

カジノ事業

223
55

232
41

300
70

その他・消去

45
-49

97
-32

90
-60

合計

1,559
74

1,559
97

2,200
120


ゲームソフト販売

719

634

-

  • ※各セグメントの上段は売上高、下段は営業利益(単位:億円)。
    ゲームソフト販売の単位は万(本)。
図表3:大同特殊鋼の四半期経常利益は改善傾向
 
図表3:大同特殊鋼の四半期経常利益は改善傾向
  • ※会社資料をもとにSBI証券が作成。
3

 新年度「企業業績」のポイント

今期(本決算発表が終了するまでの当該決算期)の企業業績は、営業利益で6.4%の増益が見込まれています。円安、米国経済の好調等を背景に、輸送用機器や電気機器等の加工業種や、繊維、鉄鋼、化学等の素材産業がけん引してきました。ただ、夏場をピークに原油価格が下がったことを受け、石油・石炭、卸売等で在庫評価損や原油関連権益等の減損計上が増え、当初予想された程(10%超の増益)には、利益が伸びなかったとみられます。

来期は、JPX400採用企業の営業利益で13.4%の増益が見込まれています。ドル・円相場の期中平均レートは、2014年暦年で106円、同年度で110円でしたので、現在の1ドル120円近辺であれば、輸出企業にとって10%前後の円安・ドル高の恩恵が見込めます。輸送用機器や精密機器などの輸出産業には追い風となりそうです。

また、原油価格(WTI先物)の期中平均価格は、2014年暦年で1バレル93ドル、同年度で80ドルでしたので、現在の50ドル程度であれば、40%前後の原油安効果が見込めます。パルプ・紙、鉄鋼、化学、ガラス・土石など、エネルギーを大量に消費する素材産業等には、メリットが大きいと思われます。なお、原油価格低下が販売価格の低下や在庫評価損につながる石油・石炭製品、卸売等では、1バレル50ドル近辺までの下落は織り込んだとみられ、仮に今後、原油価格が落ち着けば、図表4の通り、黒字転換が見込まれます。ただし、原油価格が低下し、1バレル40ドル、30ドルと下落した場合は、下方修正リスクが再燃してきそうですので、その点は注意が必要です。

なお、4月で消費税引き上げから1年を経過したため、駆け込み需要への反動や、家計購買力の低下による消費の減少というマイナス効果も一巡し、小売や食品等の消費関連にも追い風が吹きそうです。ただ、図表5にもあうように、これらの業種の予想PERは、やや高めとの印象を受けます。これらの業種に投資する際は、留意しておくべきデータと言えるでしょう。

図表4:来期業種別営業増益率・PER(JPX400採用銘柄)

<来期予想営業増益率の高い10業種>

業種

市場予想営業増益率

市場予想PER

今期

来期

今期

来期

石油・石炭製品

赤字

黒転

-

10.5

パルプ・紙

-22.7%

46.3%

23.4

16.2

金属製品

-16.0%

36.2%

22.4

17.5

鉄鋼

32.0%

28.4%

13.3

10.3

空運業

36.2%

25.8%

27.5

20.6

精密機器

-15.4%

20.3%

29.2

22.3

化学

15.6%

19.1%

19.1

19.1

輸送用機器

12.7%

15.8%

13.5

11.9

繊維製品

22.9%

14.7%

20.5

18.1

ガラス・土石製品

2.6%

13.9%

18.9

16.9

合計

6.4

13.4

19.1

16.7

図表5:来期業種別PER

<来期予想PERの低い5業種と高い5業種>

★低PER順

今期予想

来期予想

卸売業

11.9

10.0

ゴム製品

10.8

10.2

鉄鋼

13.6

10.5

石油・石炭製品

赤字 

10.6

非鉄金属

10.8

10.7

★高PER順

今期予想

来期予想

医薬品

39.0

32.8

サービス業    

33.9

29.1

食料品

32.9

28.9

不動産業

30.7

28.7

小売業

27.3

24.8

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。データは3月27日現在。
  • ※市場コンセンサスデータのあるJPX400採用銘柄が対象。「今期」は本決算発表が終了するまでの当該決算期で、来期はその次年度。

相場ピックアップ!

直近の株式市場で、注目すべき事柄をピックアップして解説いたします。今回取り上げたのは食品株です。

食品株で上昇する銘柄が目立っています。2014年末から2015年3月末までの上昇率は、山崎パン(2212)46%、森永製菓(2201)34%、明治HD(2269)33%となっています。この結果、食品株の予想PER(市場コンセンサス)は、時価総額上位10銘柄の平均で38倍まで上昇しています。もはや食品株は成長株であり、ディフェンシブ銘柄と表現するのは食品株に「失礼」でしょうか?

食品セクターを理解する時に大切なことがひとつあります。それは、日本たばこ産業(以下JT・2914)の存在が相当に大きいということです。図表6にもあるように、食品セクターの時価総額において、その3割弱はJTが占めているのです。従って、何らかの事情で食品株のポートフォリオを保有しなければならない投資家であれば、JTは欠かせない存在と言えるのです。

ちなみに、このJTの大きな特徴は、売上の6割強、営業利益の4分の3が「海外」というグローバル企業であることです。そして、海外たばこ(販売本数)の3割弱が欧州、4割強がCIS諸国(ロシア中心)となっていることです。このため、ユーロ相場やルーブル相場の影響を受けることが想定されます。ご存知の通り、ルーブル相場は原油価格の下落等を背景に大きく下げましたが、図表7にあるように、JTの株価も影響を受けています。

もし、ルーブル相場の下落が想定され、JTの株価にリスクがあると考えるならば、JTの食品株における保有比率を下げる必要があるかもしれません。もしかすると、最近そうした動きがあった可能性はあります。現実に、食品株の中におけるJTの時価総額構成比は2013年末に35%でしたが、ここにきて30%を割り込んでいます。即ち、食品株の中で時価総額ウェイトの調整があったのかもしれません。

その結果、JTを売って他の食品株を買う動きもあった可能性があります。それが、JT以外の食品株の大幅高をもたらした大きな要因のひとつと言えるかもしれません。ただ、JTの予想PER18倍(市場コンセンサス)に対し、他の食品株の割高感が目立つようになってきました。将来的に、これに対する「巻き返し」の動きが出てくる可能性を否定することはできないでしょう。

図表6:食品セクターの時価総額構成比
 

図表6:食品セクターの時価総額構成比
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
    データは2015年3月末時点。

図表7:ルーブル下落の影響を受けた?
日本たばこ(JT)

図表7:ルーブル下落の影響を受けた?日本たばこ(JT)
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
    データは2015年3月27日現在。
  • ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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