日経平均株価が再び2万円の大台を回復してきました。上場企業の決算発表が終わり、企業業績の好調が確認されたことが大きな要因です。事前に警戒されたほど企業業績が悪化しなかった米国市場で、NYダウやS&P500などの主要株価指数が史上最高値を更新したことも追い風になりました。
こうした中、決算発表では好業績を背景に株価が急騰する銘柄も少なくありませんでした。特に、新年度の会社予想業績が市場の予想を上回り、「ポジティブ・サプライズ」となった銘柄の急騰が目立ち、それらがけん引する形で日経平均株価も上昇しました。それゆえ、日経平均株価が再び2万円の大台を回復する中、次にどんな銘柄に投資すべきか、頭を悩ませている投資家も多いのではないでしょうか。
しかし、ここからの上昇余地が大きいと考えられる銘柄は少なくないと思います。会社の業績予想が、アナリスト予想に達していなくても、会社予想が慎重過ぎるケースもあり、着実に増益が見込めるのであれば必ずしも否定的に考える必要はないからです。今回の「日本株投資戦略」では、利益面で大幅増益が見込め、極端な割高感もなく株価上昇余地の大きそうな銘柄を探ることを目的に分析を進めました。
ここからでも上昇余地大!?出遅れ・大幅増益銘柄を探る! |
今回の「日本株投資戦略」では、日経平均株価が2万円を回復した現状でも出遅れ感の強い大幅増益予想銘柄を選び出してみました。抽出条件は以下の通りです。
- (1)東証一部上場で時価総額1千億円以上(銀行・証券・保険を除く)の3月決算企業(主力企業を対象としました)。
- (2)アナリスト・カバレッジが2社以上あること(有効な市場コンセンサスのデータを取るために最低限の条件と考えました)。
- (3)今期・来期ともに市場コンセンサスで10%超の営業増益予想。特に今期は、会社予想以上の増益率が予想されていること。
- (4)今期・来期の予想PERが20倍(市場コンセンサス)未満(割高感の強い銘柄を除くためです)。
- (5)ROE(前期基準)が8%より大きいこと(一定以上の資本効率を求めました)。
- (6)アナリストが今期10%以上の増配を予想していること(株主還元強化への市場の関心が高いためです)。
- (7)前回、日経平均株価が2万円を付けていた4月23日からの上昇率が10%未満。
これらの全条件を満たす銘柄を、今期予想増益率の高い順番に並べた(業種重複は避けました)のが、図表1の銘柄です。大幅増益予想銘柄であっても、アナリスト予想を下回る会社予想を出した銘柄のパフォーマンスは相対的に低くなる傾向があります。決算発表シーズン中は、アナリスト予想を上回るような強気な予想を出した会社に人気が集まりやすいためです。しかし、決算発表シーズンのこうした物色傾向が、逆に投資チャンスを作り出しているように思われます。
図表1:上昇余地が大きいとみられる「出遅れ・大幅増益銘柄」
取引 | チャート | コード | 銘柄名 | 株価 (5/19) |
株価 騰落率 (4/23以降) |
今期市場予想 | ROE (前期) |
|
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PER | 営業 増益率 |
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7599 | ガリバーインターナショナル | 1,026 | 4.7% | 19.4 | 71.2% | 9.74% | ||
7272 | ヤマハ発動機 | 2,957 | 2.2% | 12.0 | 45.8% | 16.23% | ||
4631 | DIC | 357 | -4.0% | 9.1 | 25.5% | 11.32% | ||
6770 | アルプス電気 | 3,130 | 4.9% | 14.3 | 21.2% | 21.92% | ||
6136 | オーエスジー | 2,549 | 1.0% | 19.4 | 20.6% | 11.65% | ||
2181 | テンプホールディングス | 4,275 | 5.9% | 19.8 | 12.5% | 14.47% |
- ※Bloombergデータおよび会社公表データをもとにSBI証券が作成。「市場予想」は、Bloombergベースの市場コンセンサス。
抽出条件(1)を満たす銘柄は533銘柄ありますが、そのうち65銘柄が10%を超える上昇率となりました。図表2は、そのうちの上位10銘柄を表にしたものです。
このうち、三井金属、フジクラ、トヨタ紡織は、新年度の会社予想営業利益が市場コンセンサスを10%超上回る強気な会社見通しを公表し、株価はそれを好感した形になりました。上位10銘柄は平均で、会社予想が市場コンセンサスを平均3%上回る営業利益見通しになりました。また、国際会計基準への移行で単純には前期と比較できないコニカミノルタを除く図表2の全社で、会社予想営業利益が増益見通しになっています。
逆に、同じ期間で株価下落率の大きかった10銘柄は、会社予想が市場コンセンサスを下回るケースが多く、平均で6.9%下回っていました。
このように、市場コンセンサスを上回る利益見通しを発表した会社の株価が大きく上がるのは、決算発表の時期に特徴的な傾向と考えられます。ただ、これらの銘柄は強気見通しを一旦株価に織り込んだ可能性があります。図表1では、一定以上の株価上昇率の銘柄を除きました。
なお、会社予想営業利益が、市場コンセンサスを下回っていても、会社予想が慎重なだけに過ぎない場合もあり、必ずしも否定的にとらえる必要はありません。むしろ、それゆえに株価が割安に放置されているケースもあると考えられます。
ピックアップされた銘柄の投資ポイント |
図表1でご紹介した銘柄は本当に好業績が期待できるのでしょうか。ここでは、掲載銘柄の投資ポイントを考察したいと思います。
銘柄コード |
7599 |
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銘柄名 |
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ポイント |
中古車買い取りの最大手チェーンです。2015年2月期は前期比24%の営業減益に終わりましたが、消費税増税(14年4月)の影響で、それ以降の販売低迷に苦しみました。しかし、増税から1年が経過し、販売は急回復しつつあります。 |
銘柄コード |
7272 |
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銘柄名 |
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ポイント |
二輪車とマリン部門が収益源です。売上の63%が二輪車で、21%がマリン部門となっています。ただ、2015年1月〜3月期でみると、二輪車の利益率が4%なのに対し、マリン部門の利益率は25%に達し、利益面ではマリン部門がけん引役です。 |
銘柄コード |
4631 |
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銘柄名 |
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ポイント |
印刷用インキで世界シェア30%を誇るトップ企業です。1986年に同分野で全米随一のサンケミカル社の関連部門を買収し、世界的な企業へと飛躍しました。液晶デバイスやパソコンの基盤等、電子関連部門へも進出しています。 |
銘柄コード |
6770 |
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銘柄名 |
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ポイント |
電子部品大手です。2015年3月期は、営業利益が前期に87%の大幅営業増益となりましたが、今期は1%の営業増益に減速する会社見通しを出したことで、市場では同社に対する見方で強弱感が分かれました。 |
銘柄コード |
6136 |
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銘柄名 |
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ポイント |
世界的な切削工具の大手企業です。タップやエンドミル、ドリルなどでは、世界トップシェアを誇っています。 |
銘柄コード |
2181 |
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銘柄名 |
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ポイント |
人材派遣の大手企業です。景気回復を背景に労働市場が好調なため、業績は順調に推移しています。M&Aに積極的で、5月12日には販売支援会社のTOBを発表しています。 |
- ※株価日足チャートは2015年5月20日時点。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。