日経平均株価は6/24に20,952円71銭という18年半ぶりの高値を付けた後は、波乱の動きとなりました。ギリシャ支援問題の混乱に加え、中国株の下落が続いたことが要因です。7/5に実施されたギリシャの国民投票で、ユーロ圏から要求されていた財政改革案に反対する意見が多数となり、ギリシャのユーロ圏離脱懸念が強まったうえ、中国株の下落も続き、7/9には日経平均株価が一時19,115円20銭の安値を付けました。しかし、当局の相次ぐ株価対策を受けて7/9の途中から中国株が切り返したため、同じ日には日経平均株価も反発に転じました。さらに、7/13にユーロ圏がギリシャを支援する方向で合意したため、日経平均株価の反発基調は続き、7/16には、10営業日ぶりに20,600円台を回復しています。
今後の東京株式市場はどう推移するでしょうか。ギリシャ問題や中国株安への不安などの問題は、最終的な解決をみた訳ではないですが、とりあえず市場の懸念材料としては後退した状態になっているとみられます。そうした中、市場参加者の注目材料としては、2015年4〜6月期の四半期決算発表が中心になってくると考えられます。
そこで、今回の「日本株投資戦略」では、市場参加者の注目が集まってくるとみられる2015年4〜6月期・四半期決算に注目し、そこで大幅増益が期待される銘柄をピックアップすることとしました。無論、単純に増益率が大きくなりそうだという点にとどまらず、最終的には業績見通しの上方修正も期待できそうな銘柄をピックアップすべく、スクリーニングをしてみました。ぜひ、ご参考にしていただければと思います。
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2015年4〜6月期・四半期決算で大幅営業増益が見込まれ、株価上昇期待の大きい銘柄をご紹介
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最初に、表1をご覧ください。3月決算の上場銘柄の中から、第1四半期(2015年4〜6月期)の決算発表で、本業の利益を示す営業利益の大幅増益が見込まれ、先行きで業績予想の上方修正が期待できる銘柄をピックアップしました。具体的な銘柄抽出条件は以下の通りです。
(1)全上場企業のうち、時価総額1千億円以上の3月決算銘柄を母集団としました。銀行、証券、保険を除きます。
(2)2社以上のアナリストが業績予想を公表している銘柄に限定しました。
(3)アナリストの予想EPS(コンセンサス)が過去4週間で2%超上昇している銘柄に限定しました。
(4)2016年3月期(通期)の予想営業利益について、市場コンセンサスが会社予想を上回っている銘柄としました。
⇒アナリストは総じて、その会社の通期予想営業利益は上方修正されるか、会社予想を上回ると予想しています。
(5)2016年3月期(通期)の予想営業増益率(市場コンセンサス)よりも、第1四半期の予想営業増益率(市場コンセンサス)が大きい銘柄としました。
⇒四半期の予想増益率の方が通期予想増益率よりも大きい会社の方が、もし、実際の四半期業績が事前予想以上の数字になった場合、通期予想上方修正の可能性が大きくなると考えられます。
上記の全条件を満たす銘柄を、第1四半期予想営業増益率の大きい順に並べたものが表1となります。第1四半期の業績は、1年(12ヵ月)のうち、最初の3ヵ月の業績数字に過ぎないため、仮に大幅増益になっても、会社側が通期の予想を上方修正しない可能性はあります。しかし、そうした場合でも、株式市場は、その銘柄を先行き上方修正が期待できる銘柄として評価し、株価上昇につながる可能性は大きいと考えられます。また、好業績を期待される銘柄は、日本経済新聞等により事前の観測報道で紹介され、株価が上昇するケースも増えてくるとみられます。
表1:第1四半期に大幅営業増益が予想される主力企業
取引 |
チャート |
コード |
会社名 |
株価 (7/16) |
Q1・市場予想 営業利益 |
今期市場予想 営業利益 |
百万円 |
前年比 |
百万円 |
前年比 |
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9202 |
ANAホールディングス |
364.2 |
7,370 |
2023.8% |
123,558 |
35.0% |
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1801 |
大成建設 |
732 |
6,250 |
293.6% |
71,885 |
2.1% |
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3626 |
ITホールディングス |
2,901 |
1,848 |
148.0% |
23,861 |
13.0% |
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1802 |
大林組 |
939 |
10,500 |
71.7% |
54,114 |
11.8% |
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1803 |
清水建設 |
1,068 |
13,250 |
71.6% |
66,692 |
33.3% |
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4005 |
住友化学 |
731 |
29,050 |
52.3% |
150,253 |
18.0% |
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|
4507 |
塩野義製薬 |
5,070 |
12,033 |
49.5% |
73,018 |
45.0% |
|
|
3099 |
三越伊勢丹ホールディングス |
2,289 |
9,400 |
48.3% |
37,560 |
13.5% |
|
|
2801 |
キッコーマン |
4,085 |
8,030 |
41.3% |
29,366 |
15.8% |
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4553 |
東和薬品 |
8,550 |
2,896 |
38.0% |
12,034 |
8.4% |
- ※Bloombergデータ及び会社公表データをもとにSBI証券が作成。
- ※「Q1・市場予想営業利益」は、2015年4〜6月期・予想営業利益(金額・前年同期比)の市場コンセンサス。
- ※「今期市場予想営業利益」は、2016年3月期(通期)の予想営業利益(金額・前年同期比)の市場コンセンサス。
- ※データは2015/7/16現在のものであり、その後変動していることもあります。 本レポート掲載前に、業績予想が修正されたり、メディアでその可能性等が報道された場合、その内容を反映していない場合があります。
スクリーニング条件の(3)として、過去4週間の予想EPS(市場コンセンサス)が上昇していることを入れていますが、今回のように外部環境が激しく変動した時には、ことさら重要なスクリーニング条件になると考えられます。
「ギリシャ問題」や「中国株安」といった外部環境の変動があった期間に、アナリストが総じて予想を引き上げている意義は大きいと考えられるためです。これらの問題が、個別企業の業績にどのような影響を与えるのかを吟味し、投資判断することは非常に大切だとは思いますが、個人投資家にはハードルが高すぎると思われます。そこで、その会社を担当しているアナリストの評価を平均的にでも知っておくことは、非常に有意義であると考えられます。
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決算発表直前の時期、どうした投資姿勢で臨むべきか
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一般的に、企業の好業績を受け、株価が上昇するタイミングには、いくつか代表的な局面があると考えられます。即ち、
(1)決算発表前に、新聞などのメディアで好業績を伝えられ、直後にその銘柄が人気化し、株価が上昇する局面。
(2)決算発表で、好業績が確認され、直後にその銘柄が人気化し、株価が上昇する局面。
(3)決算発表後は、好業績への評価が乏しかったものの、会社説明会等の情報が浸透し、次第に人気化する局面。
ここで、早い段階の時期に株価が反応する程、遅い段階での反応は鈍くなるか、逆に下落するケースが出てきますので注意が必要です。例えば、決算発表前に好業績を報道された銘柄が、実際に決算発表した後は、利益確定売りで下げてしまう場合も多くなります。従って、好業績を予想し、投資を検討した銘柄については、仮に事前の報道等で好業績を伝えられ、株価が上昇した場合は、そこで利益を確定し、決算発表後に株価が下落したならば、改めてもう一度押し目を拾うという投資手法もあるとみられます。
図1は、3月決算企業の第1四半期(2015年4〜6月期)決算が発表される7/20から8/14までの、月日別発表社数を示したものです。発表が予定されている社数ベースでは、8/7がピークですが、7/31までには時価総額上位銘柄の多くで決算発表が実施されます。すでに多くの銘柄で、決算発表直前の時期に入っていると言えますので、これから新規投資を検討する銘柄については、決算発表予定日をチェックし、業績動向にも十分注意しておく必要がありそうです。
なお、企業業績全般については、図2にもありますように、日経平均の予想EPS(一株利益)が上昇傾向を続けています。それを裏付けるように、日銀短観(6月調査)でも、多くの業種で業況の改善が確認されています。くわえて、輸出企業の過半は今年度の前提為替レートを1ドル115円としていますが、2015年4〜6月は期中平均121円で推移し、想定よりも円安・ドル高になっていますので、利益はその分、上振れしやすくなっています。「日本株投資戦略」では、多くの企業で、2015年4〜6月の営業利益は増益になると予想しています。
図1: 月日別の決算発表予定社数
- ※SBI証券WebサイトのデータをもとにSBI証券の投資調査部が作成。
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2015年4〜6月期・四半期決算で特に大幅増益が予想される銘柄を詳細解説
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最後に、第1四半期に好業績が期待されるとして表1にご紹介した銘柄について、同四半期の予想増益率が特に大きい5銘柄について、投資ポイントを解説しました。ただ、大手ゼネコンのように複数の会社がランクインしている場合は、もっとも予想増益率の高い1社(銘柄)をご紹介し、5銘柄すべてが異なる業種になるようにしています。ぜひ、ご参考いただければと思います。
銘柄コード |
9202 |
銘柄名 |
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ポイント |
航空大手。13年4月に持株会社制に移行し、社名を全日本空輸(全日空)からANAホールディングスへと変更しました。航空機事業への「選択と集中」を柱とした経営戦略を推進。特にアジアを中心とする国際線事業(売上構成比27%)をグループの中核事業とし、成長の柱としていく方針です。国際線事業が、訪日外国人増加の恩恵を受ける上、燃料原価の8割を占める原油輸入価格の下落で、利益は上振れの期待が膨らんでいます。
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日足チャート
- ※当社のチャートツールを用いて作成(2015/7/16現在)
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銘柄コード |
1801 |
銘柄名 |
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ポイント |
ゼネコンの一角。超高層ビルをはじめ、道路、橋、トンネル、ダム、地下鉄など建築・土木工事を得意とし、事業領域は幅広くなっています。北米、欧州、中東、アジアなど海外市場での実績も豊富です。2010年4月には旧有楽土地を完全子会社化しています。 16年3月期の連結業績予想(会社)で、営業利益は680億円(前期比3.4%減)。人件費負担などが利益圧迫要因とみていますが、低採算案件が減り、工事の収益性が改善する方向にあるため、市場では「利益予想は保守的」との見方が少なくないようです。当社を除く大手ゼネコン3社(鹿島建、清水建、大林組)の連結予想PERは平均で22.4倍(2015/7/16現在)であり、当社(20.1倍)の割安感が強くなっています。新国立競技場施工に、竹中工務店などと関わっていますので、建設コスト問題には一応の注意が必要です。
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日足チャート
- ※当社のチャートツールを用いて作成(2015/7/16現在)
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銘柄コード |
3626 |
銘柄名 |
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ポイント |
情報サービス大手の一角を占めています。TIS、インテックなど45の連結子会社、11の持分法対象会社を有する持株会社の形を取っています。受注先の業種としては、サービス業が最大ですが、カード、組立系製造等、幅広く展開しています。前期末の受注残高は「産業IT」を中止に、前期比20.8%と大幅に増加しています。クレジットカード業界の好調も追い風になっているようです。 |
日足チャート
- ※当社のチャートツールを用いて作成(2015/7/16現在)
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銘柄コード |
4005 |
銘柄名 |
|
ポイント |
住友グループの大手総合化学メーカーで、国内では、三菱ケミカルホールディングスに次ぐ第2位の売上高を誇ります。事業セグメントは基礎化学、石油化学、情報電子化学、健康・農業関連事業、医薬品、その他です。石油化学事業で、原料価格の下落に伴う市況下落の影響や、定期修理による出荷量の減少などで減収となる見込みです。一方、情報電子化学事業での、偏光フィルムやタッチセンサーパネルの出荷増加や、健康・農業関連事業での除草剤や農薬の出荷増が見込まれ、円安も利益押し上げに寄与することが見込まれます。課題であった有利子負債削減、財務改善にメドをつけました。 |
日足チャート
- ※当社のチャートツールを用いて作成(2015/7/16現在)
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銘柄コード |
4507 |
銘柄名 |
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ポイント |
当社グループは、当社(単体)、連結子会社37社及び関連会社6社により構成され、医療用医薬品の研究開発、仕入、製造、販売並びにこれらの付随業務を事業内容としています。16年3月期業績は、増収・大幅な増益を計画しています。ロイヤルティー収入は高コレステロール血症治療薬「クレストール」などの寄与が期待され増加が見込まれます。食道がんペプチドワクチン「S‐588410」やアレルギー性鼻炎治療剤「S‐555739」が第3相臨床段階にあり、新薬申請へ進むことが期待されています。 |
日足チャート
- ※当社のチャートツールを用いて作成(2015/7/16現在)
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- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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