「お盆休み」をはさみ、東京株式市場はまさに「大波乱」となりました。8/11(火)に20,946円93銭の高値を付けていた日経平均株価は、8/26(水)には一時17,714円30銭の安値を付け、下落率は15.4%に達しました。従来から警戒されていた中国経済への不透明感が株価の下落を招き、また人民元の切り下げ等により、さらに深刻視されたことが大きな要因です。世界市場では一気に「リスクオフ」の空気が強まり、主要国や新興国の株価および原油などの商品市況が下落し、東京株式市場もそれに巻き込まれる格好となりました。
こうした中、8/25(火)に、中国人民銀行が追加金融緩和を発表したことを受け、8/26(水)から8/28(金)までの東京市場では、日経平均株価が連騰するなど、とりあえず落ち着きを取り戻す兆しを見せています。ただ、中国経済への不透明感が晴れた訳ではないことや、米政策金利引き上げ観測の後退で円安・ドル高が進みにくくなったこと等の問題は残りそうです。このため、日経平均株価が底値を確認し、本格的な反発局面に入るまでは時間を要する可能性もあります。
もっとも、中長期的な投資スタンスを取っている投資家には、今回のような株価下落局面は「投資チャンス」に映るかもしれません。日銀による量的緩和と企業業績の拡大が続く限り、世界株市場の中での日本株の優位性は崩れないとの見方も根強いようです。特に、9月末に配当や株主優待の権利を確保したいと思っていた投資家にとっては、「配当取り」や「権利取り」の人気が過熱し、株価が高騰している局面で買うより、安い株価で買える好タイミングと言えるかもしれません。
今回の「日本株投資戦略」では、こうした考え方のもと、好配当利回り(年間)が期待でき、9月末にも中間配当が予定されている銘柄や株主優待の権利確定が予定されている銘柄で、直近の株価下落もあり、割安感が強まっている銘柄にスポットを当てて、ご紹介することにします。さらに、好配当銘柄、株主優待銘柄は9月に「値上がり益」の面でも好パフォーマンスを獲得する可能性もあります。その意味では、多くの投資家に注目していただければ、幸甚と考えています。
好配当が期待され、株価の割安感が強まっている銘柄はコレ! |
最初に、予想配当利回り(年間)が高く、9月末にも中間配当を実施する予想の銘柄について調べました。スクリーニング条件は以下の通りで、全ての条件を満たす銘柄を予想配当利回り順に並べました。
(1)東証上場の3月決算銘柄(証券は除く)。
(2)最低売買金額が20万円未満。
(3)時価総額が1千億円以上。
(4)予想配当利回り(年間)が3%以上で、9月末に中間配当を実施予想の銘柄。
(5)今期経常増益見通しで、第1四半期(実績)に経常増益を確保した銘柄。
(6)予想PER20倍未満
(7)年初来高値からの下落率が10%以上。
(8)業種が重複した場合は、最も予想配当利回りの高い銘柄を掲載。
9月末に配当や株主優待の権利を確定できる銘柄としては「9月決算」銘柄もありますが、結果的に該当銘柄がありませんでした。株式市場全般にボラティリティ(価格変動の度合い)が高まっていますので、時価総額が一定水準以上の主力銘柄を対象に、PERに上限を設けて割高感の強い銘柄を除きました。また、減配リスクをなるべく避けるため、業績面での配慮も加えました。
表1:好配当利回りが予想され、割安感も強い主力銘柄
取引 | チャート | コード | 銘柄名 | 株価 (8/27) |
予想配当利回り(年間) | 予想PER (倍) |
一株配当金 (予想・年間) |
一株配当金 (予想・中間) |
年初来高値からの下落率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
8053 | 住友商事 | 1,238.0 | 4.04% | 6.7 | 50.00 | 25.0 | -18.2% | ||
7201 | 日産自動車 | 1,064.5 | 3.95% | 9.2 | 42.00 | 21.0 | -21.1% | ||
5020 | JXホールディングス | 443.5 | 3.61% | 6.9 | 16.00 | 8.0 | -21.9% | ||
6967 | 新光電気工業 | 736.0 | 3.40% | 12.7 | 25.00 | 12.5 | -31.3% | ||
8411 | みずほフィナンシャルグループ | 242.1 | 3.10% | 9.6 | 7.50 | 3.75 | -13.7% | ||
6113 | アマダホールディングス | 1,040.0 | 3.08% | 16.7 | 32.00 | 16.0 | -23.6% |
- ※当社スクリーニングツールを用いて、SBI証券が作成。データは2015/8/27現在。予想配当利回りは、一株配当金(予想・年間)を株価で割って計算したもので、中間配当と期末配当をともに受け取った場合の利回りになります。なお、予想配当利回りは、株価や配当政策によって変化しますので、ご注意ください。なお、配当は日経予想を参考にしました。
長期的には、企業業績の拡大や物価の上昇を背景に株価が上昇すると考えた場合、短期的な株価下落は投資チャンスと考えることができます。特に、配当や株主優待など、値上がり益以外の「利益」も確保して、銘柄を中長期的に保有しようとしている投資家にとっては、配当利回りアップのチャンスと捉えられます。
図1は本年の東証一部・平均予想配当利回りの推移をみたものです。株価急落前までは概ね1.5%をはさんだ水準で推移してきましたが、8/26(水)には1.7%台まで上昇しました。表2は、上記の表1で掲載した「好配当銘柄」の予想配当利回りを日経平均急落直前の8/10と株価下落後の8/27で比較したものです。予想配当利回りは0.3%〜0.6%も上昇しています。
配当利回りは、一株当たり配当金額と株価によって決まります。このうち、一株当たり配当をいくらにするかの計画は、企業が定めるものですが、一般的にそう頻繁に変わるものではありません。しかし、株価は毎営業日変わるのが普通です。予想配当利回りは、株価によって毎日変わるといっても差し支えありません。従って、より高い配当利回りを目指すには、より安い株価で買うことが必要で、その意味では、今回のような株価下落も重要な投資チャンスと考えられます。
図1:株価下落で急上昇した東証一部・平均予想配当利回り
- ※報道等をもとにSBI証券が作成。2015/8/27現在。
表2:株価下落で好配当銘柄の配当利回りも上昇
コード | 銘柄名 | 8月10日 | 8月27日 |
---|---|---|---|
8053 | 住友商事 | 3.5% | 4.0% |
7201 | 日産自動車 | 3.5% | 3.9% |
5020 | JXホールディングス | 3.1% | 3.6% |
6967 | 新光電気工業 | 2.8% | 3.4% |
8411 | みずほフィナンシャルグループ | 2.8% | 3.1% |
6113 | アマダホールディングス | 2.6% | 3.1% |
- ※各社の株価、配当データをもとにSBI証券が作成。表1で掲載した好配当銘柄の予想配当利回りを8/10と8/27で比較。
投資家に人気の「株主優待」銘柄で、割安な銘柄を探る |
株主優待は、企業が株主に対し、様々な商品やサービスを提供してくれる制度です。最近はテレビや雑誌などでも盛んに紹介されているので、多くの投資家に馴染み深い制度となりました。うまく活用することによって、値上がり益や配当だけを得ることに比べ、株主ライフをより豊かなものにしてくれる制度と考えられます。
株主優待の権利が確定する月別にその実施企業数を調べると、3月683社、9月370社、12月127社、2月126社(2015/8/27現在)と続いています。本決算を3月に締める企業が多く、その中間決算に相当する9月も多くなっています。今回は、9月末に権利確定となる銘柄の一部をご紹介したいと思います。
「9月優待」銘柄について、投資家は主にどんな銘柄に関心を持っているのでしょうか。当社WEBサイトでは、株主優待の権利確定月ごとに実施企業を一覧でき、それを「閲覧回数順」で並び替えることができます。8/27現在では、ミサワホーム(1722)、山加電業(1789)、ヤマダ電機(9831)という順番で上位を形成しています。
表3の銘柄は、以下の条件でスクリーニングし、全条件を満たした銘柄を当社閲覧回数順で並べたものです。
(1)9月末に株主優待権利が確定する銘柄のうち、当社Webサイトで閲覧回数の多い50銘柄が母集団。
(2)最低売買金額が20万円未満。
(3)予想配当利回り(年間)が2%以上。(中間配当があるとは限りません)
(4)今期経常増益見通し(会社予想)。
(5)予想PERが市場平均14.75倍(8/27現在)未満。
(6)年初来高値から10%超株価が下落。
表3:株価面で割安感が強い「9月優待」銘柄
取引 | チャート | コード | 銘柄 | 株価 | 騰落率 | 年間予想 配当利回り |
最低売買単位での 株主優待内容 |
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1722 | ミサワホーム | 837 | -29.2% | 2.4% | クオカード1,000円分、利用優待券等 | ||
8591 | オリックス | 1,604 | -22.2% | 2.7% | 各種特典が付く株主カード | ||
3153 | 八洲電機 | 638 | -11.1% | 2.0% | 商品券1,000円分 | ||
2764 | ひらまつ | 660 | -30.4% | 2.5% | 飲食代、ワイン購入10%割引他 | ||
6848 | 東亜ディーケーケー | 506 | -27.2% | 2.2% | クオカード500円分 | ||
7502 | プラザクリエイト | 278 | -42.6% | 2.5% | 500円相当の株主優待券 |
- ※当社スクリーニングツール及び各社株価データを用いて、SBI証券が作成。データは2015/8/27現在。予想配当利回りは、一株配当金(日経予想・年間)を株価で割って計算したもので、中間配当と期末配当をともに受け取った場合の利回りになります。なお、予想配当利回りは、株価や配当政策によって変化しますので、ご注意ください。なお、株主優待内容は、最低売買単位での優待内容についてそのポイントを記載したもので、全優待内容を網羅しているとは限りません。
株主優待を実施する企業の多くは、会社の知名度や商品の内容をより多くの投資家に知ってもらうことを目的にしていますので、大型株よりも中小型銘柄が主体になりやすいという特徴があります。また、優待の内容としては自社商品を割引で購入できる優待券や、クオカードを中心とする金券が中心的存在になっています。金券は、原則的に何を買うのに使っても良いため、投資家にとっては利便性が高い優待と言えますが、反面、会社の商品やサービスの内容を知ってもらうには、必ずしも適しているとは言い切れない面があります。
なお、用途が限られ、投資家によってはメリットのないケースがあるものの、使い方によっては、実質的な利益が相当高い株主優待もあります。その代表例はミサワホームで、「工業化住宅の建物本体価格1〜3%割引」は、住宅建設のニーズがある投資家にとってはメリットが大きいと考えられます。またオリックスでは「レンタカー利用料30%割引」「ホテル宿泊料割引」「有料老人ホーム入居時費用割引」など、フルに活用すれば、相当のメリットを享受できる優待もあります。表3に示した銘柄は、まさに「一例」であり、関心のある投資家は当社Webページ等で、研究することをお勧めします。
出遅れの「好配当」・「優待」銘柄、「厳選6銘柄」を詳細解説 |
最後に、好配当銘柄から3銘柄、株主優待銘柄から3銘柄を「厳選6銘柄」としてチョイスし、投資ポイントをご紹介したいと思います。冒頭に述べた通り、株式市場はまだ安定したとは言い切れず、今回ご紹介した銘柄からも再度下落に転じる銘柄が出てくる可能性もあります。その意味では、ファンダメンタルズ面を加味し、比較的中長期で保有しやすい銘柄を選んでおく必要があると思われます。ぜひ、ご参考にしてください。
銘柄コード | 8053 | 銘柄名 | |
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日足チャート
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銘柄コード | 7201 | 銘柄名 | |
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日足チャート
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銘柄コード | 8411 | 銘柄名 | |
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日足チャート
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銘柄コード | 1722 | 銘柄名 | |
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日足チャート
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銘柄コード | 8591 | 銘柄名 | |
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日足チャート
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銘柄コード | 2764 | 銘柄名 | |
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日足チャート
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- ※株主優待の内容は変更される場合がありますので、必ず当該企業のホームページ等をご確認ください。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
- ※信用取引において必要となるその他諸費用の詳細は信用取引のサービス概要をご確認ください。