株式相場の波乱が続いています。日経平均株価は8月に前月比8.2%下落したのに続き、9月も同8.0%下落しました。中国など新興国経済や米国の金融政策に対する不透明感が背景とみられます。ドイツの大手自動車メーカーであるフォルクスワーゲンの排ガス規制対応に関連した不正問題も相場の波乱を助長しました。
しかし、こうした波乱続きの株式相場にも反発の芽が出ているように思われます。日経平均株価が予想PERでみた重要な下値支持ラインまで下げたため、値ごろ感が強まりやすいと考えられます。予想PERの高低が市場心理の強弱を表すと考えるならば、前の政権末期の閉塞感に覆われた時期の水準(「アベノミクス相場」開始直前水準である13.6倍)以下まで下げるのはやはり「行き過ぎ」ではないかと考えられます。2014/5に日経平均株価が、その予想PER13.46倍まで下げた直後に反発に転じたように、今回も、予想PER13.37倍(2015/9/29)まで下げた日経平均が反発に転じても不思議ではないと思います。
もっとも油断は大敵です。過去を振り返ると、10月相場も波乱となるケースが少なくないためです。しかし、8月および9月の株価下落で、好業績株に投資妙味が出てきたことも事実だと思います。折しも、10月は下旬から3月決算企業の「中間決算」発表が本格化するため「企業業績」にスポットが当たりやすくなると考えられます。そこで今回の「日本株投資戦略」では、今期好業績が見込まれ、業績予想の上方修正も期待できるような銘柄をピックアップしてみました。波乱相場は、それらの銘柄で乗り切れると期待したいところです。
株式相場が反発に転じる材料が揃ってきた!? |
冒頭でご説明したように、8月から9月にかけて株式相場は波乱の動きになりました。過去を振り返ると、10月相場も過去10年間の日経平均株価・月間騰落率が平均で2.0%の下落とパフォーマンスが良くない月になっているため、引き続き注意が必要です。
しかし、株価の反発につながり得る材料は出てきています。ひとつはやはり冒頭で触れたように、日経平均株価が予想PERでみた重要な下値支持ラインまで下げたため、値ごろ感が強まりやすいことです。予想PERの高低が市場心理の強弱を表すと考えるならば、前の政権末期の閉塞感に覆われた時期の水準(「アベノミクス相場」開始直前水準である13.6倍)以下まで下げるのはやはり「行き過ぎ」ではないかと考えられます。2014/5に日経平均株価が、その予想PER13.46倍まで下げた直後に反発に転じたように、今回も、予想PER13.37倍(2015/9/29)まで下げた日経平均が反発に転じても不思議ではないと思います。9/30と10/1の株価上昇は、反発相場の「序章」となっているのかもしれません。
ちなみに、その大幅安によって日本株下落のキッカケを作った中国株ですが、冷静に見ると落ち着きを取り戻す兆しをみせています。上海総合指数の月間騰落率は6月-7.3%、7月-14.3%、8月-11.8%と大きな下落が続きましたが、9月は-4.8%と下落率は小さくなっています。水準的にも、バブル的上昇局面の起点となった3,000ポイント台に戻ってきていますので、下値不安は後退しつつあるようです。株式市場は、中国経済の減速リスクをいったんは消化しつつあるように思われます。
あとは、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策について、その方向感が明確になることが、日本株のみならず広く世界の株式市場の本格的反発につながる要因となるかもしれません。最近の米国株式市場では、ようやく強い経済指標に対し素直に株価上昇で反応するケースが増えているように見受けられます。従って、FRBによる政策金利の引き上げは逆に、市場で「アク抜け」と理解され、株価上昇につながる可能性が膨らんできたと考えられます。
図1:予想PERがアベノミクス相場の「最低ライン」に届いた日経平均株価
- ※日経平均株価データを用いてSBI証券が作成。
どうなる企業業績?その中で再評価が見込まれるのはどんな銘柄か。 |
株式市場の一部では、新興国経済の減速を背景に、上場企業の業績予想は下方修正される可能性が大きく、予想PERは「下がっても当然」との指摘があります。確かに、企業業績で下方修正が増えてくると、予想PERを使って株価の割安・割高を論ずる意義が低下してしまうので、その使い方には注意が必要になります。
ただ、図2からご理解いただける通り、上場企業の業績の方向感を示唆する日経平均株価の予想EPSは10/1現在1,265円となり、再び上昇の兆しをみせています。会社予想業績をベースとする日経平均予想EPSはもともと保守的な数字とみられていただけに、海外経済の不透明感が強まってはいても、下方修正には及ばないのかもしれません。また、10/1に発表された日銀短観からもわかるように、確かに製造業には逆風が強まっているイメージですが、非製造業は予想以上に好調で、「全産業」ベースでは、ほぼ予想通りの景況感になっています。
従って、上記の図1で示した予想EPSの低下を素直に「割安感の強まり」と評価していいように思われます。こうした中、10月下旬からはいよいよ3月決算企業の「中間決算」発表が本格化するため「企業業績」にスポットが当たりやすくなるとみられます。そこで今回は、今期好業績が見込まれ、業績予想上方修正も期待できるような銘柄をピックアップしてみました。
スクリーニング条件は以下の通りで、下の全条件を満たす銘柄を(2)の数字が大きい順に並べました(表1)。
(1)時価総額1千億円以上で、今期予想EPSが2社以上のアナリストから公表されている主力上場銘柄。
(2)今期のアナリスト予想営業利益が、会社予想営業利益を5%超上回っている銘柄。
(3)来期のアナリスト予想営業利益が、今期(アナリスト予想)に対し、10%以上の増益見通しであること。
(4)今期予想EPSが過去4週間で2%超上方修正されていること。
図2:再び上昇の兆しを見せ始めた日経平均の予想EPS(一株利益)
- ※日経平均株価データを用いてSBI証券が作成。
表1:中間決算で再評価が見込まれる銘柄(スクリーニング)
コード | 銘柄名 | 株価 (10/1) (円) |
予想 PER(倍) |
会社予想 営業利益 (百万円) |
前年同期 比増減 (%) |
市場予想 営業利益 (百万円) |
市場予想 ÷ 会社予想 |
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1861 | 熊谷組 | 376 | 12.2 | 11,900 | -26.1% | 16,750 | 40.8% |
1942 | 関電工 | 768 | 20.3 | 10,100 | 7.6% | 12,438 | 23.1% |
4922 | コーセー | 11,200 | 33.5 | 28,000 | 23.6% | 33,194 | 18.5% |
1893 | 五洋建設 | 547 | 20.4 | 14,500 | 18.0% | 16,300 | 12.4% |
7269 | スズキ | 3,759 | 16.7 | 190,000 | 5.9% | 211,341 | 11.2% |
9107 | 川崎汽船 | 270 | 10.6 | 39,000 | -18.7% | 43,281 | 11.0% |
4095 | 日本パーカライジング | 991 | 10.5 | 16,500 | 11.1% | 17,770 | 7.7% |
4681 | リゾートトラスト | 3,125 | 22.4 | 19,500 | 21.6% | 20,892 | 7.1% |
2802 | 味の素 | 2,536 | 23.9 | 82,000 | 10.0% | 86,880 | 6.0% |
- Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。「市場予想」はBloombergが集計したアナリスト・コンセンサス。予想PERについても、市場予想EPSをベースに計算。データは2015/10/1現在。
「中間決算」で再評価が期待される5銘柄を詳細解説 |
最後に、前項でのスクリーニング条件より抽出した「厳選5銘柄」を詳細解説します。市場予想営業利益が会社予想を大きく上回っている銘柄から順に5銘柄選びました。ただし、業種の重複を避けるため五洋建設を、新興国経済減速や市況低迷懸念を勘案して川崎汽船を除いた上位5銘柄をコメントしています。
銘柄コード | 1861 | 銘柄名 | |
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日足チャート
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銘柄コード | 1942 | 銘柄名 | |
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日足チャート
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銘柄コード | 4922 | 銘柄名 | |
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日足チャート
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銘柄コード | 7269 | 銘柄名 | |
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日足チャート
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銘柄コード | 4095 | 銘柄名 | |
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日足チャート
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