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「日経平均2万円」で本格化する選別物色?けん引役を期待される特選5銘柄はコレ!?

2015/11/20
投資調査部 鈴木英之

日経平均株価の反発局面が続いています。8/11の20,946円を高値に、9/29には16,901円まで19%も下げていましたが、その後は反発局面に転じ、ここにきてようやく「2万円トライ」の水準まで戻ってきました。

中国経済や米金融政策に対する不透明感が後退したことが要因と考えられます。株式市場において「2015年最大のイベント」とされてきた「郵政上場」が成功裏に終わったことで、市場に厚みが増してきたと考えることもできそうです。

しかし、中国経済への不透明感が解消した訳ではありません。むしろ、商品市況の下落等を通じ、逆風を受けている銘柄もあります。さらに、仮に年内に米政策金利の引き上げが行われ、その後に素直に円安・ドル高が進むか否かも不透明です。ここからの銘柄選別は意外に難しいのが現実です。

そこで今回の「日本株投資戦略」では、11/13までに終わった上場企業の中間決算を総括しつつ、好業績銘柄の中から、今後の株式市場をリードしていけそうな銘柄をチョイスしてみました。

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けん引役を期待される特選5銘柄はコレ!?

3月決算企業の今年度上半期(2015年4〜9月期)決算発表が終わりました。日本経済新聞社によると、上場企業(金融・電力を除く)の経常利益は前年同期比で11%増となったようです。通期(2016年3月期)でも6.9%の増益を確保する見込みです。日本企業は最高益更新が続くと予想され、株価もそれを評価して上昇すると期待されます。

どんな業種がけん引して業績拡大(中間期実績)が続いているのでしょうか。「日本株投資戦略」が営業利益をベースに、別途集計したところでは、金額ベースでみると、電気・ガス、輸送用機器、情報・通信、化学、建設、陸運、医薬品の順になります。また、変化率の順でみると、ゴム製品、電気・ガス、小売、繊維、建設、医薬品、金属製品の順番です。

今回は、これらの業種の主力株の中から、来期にかけても業績拡大が期待でき、定性的にも明確な買い材料のある5銘柄を「特選」し、ご紹介いたします。

表1:今後の株式市場でリード役を期待される「特選5銘柄」

取引 チャート コード 銘柄名 株価
(11/19)
年初来
高値(円)
同日付
(月/日)
短評
現買信買 チャート 9432 日本電信電話 4,696 5,066 8/6 収益力回復に注目
現買信買 チャート 7201 日産自動車 1,310 1,350 6/3 北米に強い自動車株
現買信買 チャート 4005 住友化学 686 798 6/16 好業績化学株の出遅れ
現買信買 チャート 3402 東レ 1,126 1,146 11/17 炭素繊維本格化に期待
現買信買 チャート 4507 塩野義製薬 5,556 5,650 11/18 インフルエンザ薬に注目
  • Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。2015年4〜9月期の営業利益(業種合計)が前年同期比で大きく増加した業種(金額・比率おのおの7業種)からバリュエーション、業績、投資テーマ等を総合的に勘案して抽出しました。なお、計算の対象とした企業は、2015年9月末現在で時価総額が1千億円以上の東証一部上場企業(金融を除く)です。

日本電信電話(9432)は、中間決算で前年同期比24.1%の営業増益になりましたが、これは上半期としては5年ぶりの増益になります。それを牽引したのが固定電話の収益改善で、構造改革の効果が現れてきました。11/8の日経新聞でも「稼ぐ力が戻ってきた」と好意的な評価を受けています。郵政上場が成功したため、公益企業に投資資金が流れてきやすくなっている可能性もあります。

日産自動車(7201)は、予想PER10倍、予想配当利回り3.2%(11/19現在)等と、バリュエーションを加味した場合の出遅れ感は強いと考えられます。中国に注力しているイメージが強く、それが株価の頭を押さえてきたのかもしれません。しかし、北米の売上構成比(台数・前期)は約4割と、富士重工業(7270)に次ぐ高さです。米国経済の拡大が業績拡大につながりそうです。

住友化学(4005)は好業績の化学メーカーから出遅れ株としてチョイスしました。原油価格の下落が総合化学メーカーの追い風になることがようやく明らかになり、総合化学メーカー全般に業績は好調です。当社は「化学」全体の中でも時価総額が上から6番目ですが、予想営業増益率は21%と最も高いものの、予想PERは旭化成(杭打ち問題で株価下落)の11.6倍に次ぐ低さ(14.0倍)で、出遅れ感が強まっていると考えられます。

東レ(3402)は、中核商品である炭素繊維が航空機向けを中心に拡大しているのが魅力です。需要の拡大を見込み、米国での生産拡大も計画しています。「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング(9983)と5年間で1兆円の取引をすることも報道されています。ここにきて、業績拡大が本格化してきたようにみられます。

塩野義製薬(4507)は、営業利益が上半期で前年同期比48.4%増、通期予想で54.9%増と好調です。10月末に、インフルエンザが1日で治療できる世界初の新薬を2018年にも投入する計画であることが報道されています。その発表を受けて株価は急騰しましたが、その後もじり高が続いています。

2

今後は選別色が強まる可能性

主力企業の中間決算発表は11/13までで事実上終了しました。

10月下旬以降の決算発表シーズンでは、発表企業の業績の良し悪しに注目が集まることになりますが、そこでは利益実績がアナリストによる事前予想(それがない会社は会社予想)を上回ったのか、下回ったのかが主に問われることになります。また、通期利益予想を上方修正したのか、下方修正したのか等も注目されます。無論、決算数字がアナリスト予想あるいは会社予想を上回った企業や、利益予想が上方修正された企業の株価は、発表直後に上昇することが多くなっています。

ただ、決算発表シーズンでの株価の反応は、ほぼ決算「数字」に反応する短期的な反応となりやすいのが現実です。例えば、決算発表で利益がアナリスト予想を下回っても、その企業の成長シナリオにとり、大きな問題ではないというケースもあるはずです。それでも、単純に数字が予想を下回れば、株価が下落し、株価下落が企業の成長イメージを損なうというケースも少なくないように思われます。

そうした決算発表シーズンは終了し、アナリストの決算発表後調査(多くは訪問)が本格化すると、定性的な面までも含めた企業の評価が行われるようになります。決算発表直後に売られた銘柄でも、この時期は再評価される銘柄も出てくると考えられます。逆に、見かけ上の決算数字は良かったものの、成長余力が乏しいとアナリストから判断され、評価を下げられる銘柄も出てきます。この時期は、業績面からの銘柄の選別色が強まりやすい時期であると考えられます。

冒頭に述べたように、中国経済への不透明感が解消した訳ではありません。むしろ、商品市況の下落等を通じ、逆風を受けやすい業種や銘柄もあります。さらに、仮に年内に米政策金利の引き上げが行われ、その後に素直に円安・ドル高が進むか否かも不透明です。米政策金利引き上げ後は「材料出尽くし」から円高に振れるという見方も少なくないようです。銘柄選別にはそうした点も考慮にいれなければならないと考えられます。

3

注意すべき外部環境の変化は?

図1は、決算発表で営業利益が大幅に増加(金額)した10業種、図2は同じく大幅に増加(%)した10業種をご紹介しています。

日本経済新聞の報道では、2015年4〜9月期の経常利益は前年同期比11%増となったようです。ただ、ここで注意すべきは、この業績計算には「電力」が入っていないということです。図1および図2にあるように、「電気・ガス」の「電気」は「電力」を意味している訳ですが、電源が化石燃料に偏る中で、原油や天然ガスの値下がりがコストの低下につながり、利益の増加につながった形です。ただ、原油や天然ガスの値下がりは昨年10〜12月期から厳しくなったので、前年同期との比較でのメリットは今後減少していくとみられます。したがって「電気・ガス」から銘柄はチョイスしませんでした。

その意味では、原油・天然ガス値下がりの効果が大きい化学も注意ですが、こちらはこれまでのメリットが十分株価に反映されたとは言い切れないので、銘柄チョイスの対象にしています。

似たような意味では、為替相場についても、下期以降は円安・ドル高の恩恵が小さくなりやすい点に注意が必要です。期中平均レートは2014年4〜9月が103.08円、2015年4〜9月期121.74円でしたので、この上半期のドル・円相場は前年同期比18%の円安・ドル高効果を享受することができました。しかし、2015年10月〜2016年3月は仮に期中平均レートが123円になっても、前年同期の116.80円から6%の円安・ドル高になる計算ですので、輸出企業のメリットは小さくなりやすいと考えられます。
ただ、ガソリン価格の低下で米消費者の購買力が増していることから、米国向けに強い企業(例えば日産)は、円安一巡効果を吸収できる力があると考えました。

こうした中、11/4の「郵政上場」が成功したことを考えれば、公益セクターに再び光が当たる可能性については評価すべきであると考え、情報・通信から「日本電信電話」を選びました。これまで利益を十分稼ぐことができなかった「固定電話」の収益回復は、アナリストから高い評価を得やすい変化であるとも考えられます。

図1:中間決算で営業利益が大幅増(金額)した業種
図1:中間決算で営業利益が大幅増(金額)した業種
図2:中間決算で営業利益が大幅増(%)した業種
図2:中間決算で営業利益が大幅増(金額)した業種
  • Bloomberg、上場企業決算データをもとにSBI証券が作成。計算の対象とした企業は、2015年9月末現在で時価総額が1千億円以上の東証一部上場企業(金融を除く)です。会社またはアナリストの業績予想が存在する企業を計算対象としました。
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