株式市場の波乱が続いています。1月に8.0%も下落した日経平均株価ですが、2月に入っても下げが続き、2/10(水)にはついに、1/21(木)の安値16,017円を下回ってしまいました。さらに2/12(金)には、終値で1万5千円台を割り込む激しい展開になっています。
日経平均株価の今後の動きについては、2/9(火)に掲載された「225の『ココがPOINT!』」や、2/10(水)・2/12(金)の「マーケット・フラッシュ」などでも、基本的な考え方をご説明していますので、別途ご参考頂ければと思います。ここで強調しておきたいことは、2/12(金)に日経平均株価が1万5千円割れ水準まで下げたことで、アベノミクス相場下での下値メドになりやすい「予想PER13.5倍」のラインを割り込んできたことです。日経平均株価は「下げ過ぎ」の領域に到達してきたと考えることができます。
全般的な株価下落が加速する中で、世界経済に関する様々なリスクが織り込まれる一方、将来の株価に追い風となり得るいくつかの要因は軽視された形になっています。
(1)マイナス金利が浸透し、銀行の企業や家計に対する融資姿勢が一層緩和され、市場に資金が流入してくる可能性。
(2)マイナス金利で、長期金利と比較した配当利回りの魅力が一層向上し、株式投資の魅力が向上する可能性。
(3)企業にとり、M&Aや自社株買いが一層実施しやすくなり、市場が活性化する可能性。
(4)日経平均株価の予想EPSは低下の過程で、東芝の巨額損失や商社、石油・石炭等の減損処理など、一時的な業績悪化要因を反映しており、その分は来期に反動増となる可能性。
中国経済の減速による影響を受ける企業はあるものの、日本の企業すべてがその影響を受ける訳ではなく、むしろ内需は底堅く、日本経済自体に問題が多い訳ではありません。株価波乱の要因のほとんどは、海外株や商品市況等の外生的要因によるものです。それを考えると、多くの企業では株式投資に値する業績の拡大を期待でき、株価下落で割安感も強まっていると考えられます。
今回の「日本株投資戦略」では、主力銘柄の中から、好業績で、株価下落一巡後の市場で「主役」も務められそうな銘柄を抽出し、ご紹介してみたいと思います。
逆張り投資で狙いたい銘柄はコレ!? |
「日本株投資戦略」では、主力銘柄の中から、業績好調で、株価下落一巡後の市場で「主役」を務めることができそうな銘柄を抽出してみました。
銘柄選択に際し、基本的には業績が好調であることを前提条件とし、(A)株価が大きく下落し割安感が強まった銘柄、(B)予想配当利回りが高い銘柄、(C)純資産を考慮すると割安な銘柄、(D)来期も業績拡大が期待できる銘柄、(E)波乱相場でも流動性に不安の少ない大型主力銘柄、といった銘柄選択基準で、どういう銘柄があるのか、各々をまず抽出してみました。
そして、各々のジャンルから定量・定性面を考慮し、2銘柄ずつピックアップし、計10銘柄を一覧表にしたものが下の表1となっています。なお、(A)〜(E)では、各銘柄選択基準のポイントや、その対象銘柄をご紹介しています。
表1:株価下落一巡後の市場で「主役」も務められそうな主力銘柄
取引 | チャート | コード | 銘柄名 | 株価 (2/10) |
株価騰落率 (昨年末比) |
市場予想 PER |
PBR |
---|---|---|---|---|---|---|---|
3116 | トヨタ紡織 | 1,715 | -30.1% | 11.4 | 1.25 | ||
4005 | 住友化学 | 492 | -29.8% | 9.7 | 0.75 | ||
8002 | 丸紅 | 528.0 | -15.5% | 5.2 | 0.57 | ||
8035 | 東京エレクトロン | 6,263.0 | -14.5% | 14.3 | 1.66 | ||
5444 | 大和工業 | 2,373 | -23.5% | 10.7 | 0.53 | ||
4188 | 三菱ケミカルホールディングス | 599.9 | -22.5% | 14.7 | 0.59 | ||
4528 | 小野薬品工業 | 18,520 | -14.6% | 119.0 | 4.83 | ||
9507 | 四国電力 | 1,595 | -16.1% | 25.2 | 1.24 | ||
9432 | 日本電信電話 | 4,888 | 1.1% | 16.0 | 0.97 | ||
9022 | 東海旅客鉄道 | 20,610 | -4.6% | 13.4 | 2.17 |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
様々な角度から有望銘柄を選別 |
(A)業績好調も、株価が大きく下落し割安感が強まった銘柄
まず、業績が好調なものの、株価が大きく下げ、予想PER等でみて割安感が強まってきた銘柄について考えたいと思います。下の「共通条件」は、今回の「好業績」とは何を指しているのかを示しており、(B)〜(E)でも共通して使っている条件です。最終的には、表2の銘柄から下落率(2/10時点)の大きい上位2銘柄を表1の一覧表に採用しています。
表2:業績は好調も、株価が大きく下げ、バリュエーション的にも割安感が強い銘柄
☆スクリーニング条件
◎共通条件
(1)東証一部上場で時価総額1千億円以上(金融を除く)の3月決算企業
(2)2015年10〜12月期の営業利益が、市場コンセンサスを上回っていること
(3)2016/1/20以降、今期予想営業利益(市場コンセンサス)が増加していること
◎個別条件
(4)2015/12/30から2016/2/10までの下落率が、同期間の日経平均下落率(17.4%超)を下回っていること
(5)今期予想PERが市場予想平均を下回る14倍未満であること
(6)来期、アナリストが営業増益を予想していること
以上の全条件を満たす銘柄を株価下落率が大きい順に5銘柄掲載。予想PERや来期予想営業利益は、Bloombergが集計した市場コンセンサス(2016/2/10時点)
(B)業績好調で、予想配当利回りが高い銘柄
業績が好調で、予想配当利回りも高い銘柄です。丸紅は、商社の業績予想下方修正が続く中で、今期の業績予想を維持していた点が目立ちました。ただ、沖電気については中国ビジネスでの不透明感が織り込み切れたとは言いにくいため、表1の銘柄としては、ひとつ下の東京エレクトロンを採用しました。半導体製造装置業界は、苦戦が目立つ電気機器業界の中で相対的な好調さが目立ちました。
表3:業績好調で、予想配当利回りが高い銘柄
☆スクリーニング条件
(1)「スクリーニング1」の「共通条件」をすべて満たしていること。
(2)上記の結果抽出された銘柄を今期予想配当利回りの高い順に5銘柄選び出した結果が表3となっています。予想配当利回りは、Bloomberg集計の予想一株利益に対して計算した数値です。
(C)業績好調で、純資産を考慮すると割安な銘柄
業績が好調で、時価総額と純資産を比較した時に割安感が目立つ銘柄です。すなわち、PBRが低い銘柄です。大和工業は、鋼材市況の悪化が逆風ですが、原燃料価格の下落が追い風です。中東事業に一抹の不安は残りますが、相対的には業績が堅調です。なお、第2位の丸紅は(B)と重複するため、三菱ケミカルHDとしました。
表4:業績好調で、純資産を考慮すると割安な銘柄
取引 | チャート | コード | 銘柄名 | 株価 (2/10) |
騰落率 (昨年末比) |
予想PER (倍) |
PBR (倍) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
5444 | 大和工業 | 2,373.0 | -23.5% | 10.2 | 0.53 | ||
8002 | 丸紅 | 528.0 | -15.5% | 5.2 | 0.57 | ||
4188 | 三菱ケミカルホールディングス | 599.9 | -22.5% | 14.7 | 0.59 | ||
4182 | 三菱瓦斯化学 | 563.0 | -9.5% | 9.6 | 0.65 | ||
3941 | レンゴー | 559.0 | 7.9% | 19.9 | 0.70 |
☆スクリーニング条件
(1)「スクリーニング1」の「共通条件」をすべて満たしていること。
(2)上記の結果抽出された銘柄をPBRの低い順に5銘柄選び出した結果が表4となっています。PBRに使われる「純資産」はBloombergデータを用いています。
(D)業績好調で、来期も業績拡大が期待できる銘柄
今回「業績が好調」の条件にしたのは、2015年10〜12月期の営業利益が、市場コンセンサスを上回っていること、2016/1/20以降、今期予想営業利益(市場コンセンサス)が増加していることの2点でした。すなわち、今期の業績については、下方修正リスクが小さいものとしています。ここでは、さらにアナリストが来期も大幅増益を見込んでいる銘柄としました。
表5:業績好調で、来期も大幅営業増益が予想される銘柄
☆スクリーニング条件
(1)「スクリーニング1」の「共通条件」をすべて満たしていること。
(2)上記の結果抽出された銘柄を来期予想増益率の高い順に5銘柄並べたのが表5になります。
(E)業績好調で、波乱相場でも流動性に不安の少ない大型主力銘柄
好業績の超大型株を選び出すためのスクリーニングです。流動性に優れているため、予想外に市場が混乱した場合も、換金が容易と考えられます。なお、NTTドコモとNTT(日本電信電話)について、今回は固定通信の回復を評価する意味で後者を表1に採用しました。
表6:業績好調で、波乱相場でも流動性に不安の少ない大型主力銘柄
☆スクリーニング条件
(1)「スクリーニング1」の「共通条件」をすべて満たしていること。
(2)上記の結果選択された銘柄を時価総額の大きい順に5銘柄並べたのが表6になります。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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