今回の「日本株投資戦略」では、好配当利回りを期待できる銘柄を特集したいと思います。多くの上場企業が決算期末である「3月末」を控えて、権利・配当取りが本格化するタイミングもありますが、今回、理由はそれだけにとどまりません。
ご存じの通り、1/29(金)に日本銀行は「マイナス金利」の導入を決定しました。これを受けて、長期国債の利回りさえもマイナスに転落するなど、長短金利の低下が顕著になっています。こうした中、株式の配当利回りの魅力は相対的に高まりそうです。
株価が高値から大きく下げた後だけに、低水準の株価で投資しやすいことも理由です。銘柄選択にもよりますが、値上がり益もしっかりと期待できそうです。
20万円で買える「好配当メジャー銘柄」はコレ!? |
ご存知の通り、日本銀行は1/29(金)に「マイナス金利」の導入を決定しました。金融機関が日銀に預ける当座預金に対し、今後は一部にマイナスの金利が付くことになります。狙いは、金融機関が資金を当座預金に滞留させることなく、投資や融資という形で民間に還流させるようにすることです。こうした決定を受け、市中金利は再び低下傾向となり、国債利回りも相次ぎマイナス金利に突入しています。
こうした中「日本株投資戦略」では、好配当利回りが期待できそうな「メジャー銘柄」を抽出してみました。「マイナス金利」の導入により、株式の配当利回りが再評価されると考えたためです。日経平均で見ると株価は昨年来高値から2割超下がっており、値頃感も強まっています。タイミング的にもこれから3月期末を迎え、短期投資中心の投資家も値上がり益追求が可能だと思われます。
★銘柄抽出条件
(1)時価総額1千億円以上の上場銘柄(証券除く)。
(2)3月決算銘柄。
(3)予想配当利回り(年間)が3%超。
(4)最低投資金額が20万円未満。
(5)同一業種銘柄の重複は避けました。
以上の全条件を満たす銘柄の中から、定性分析も加味して5銘柄を抽出したものが表1となります。
時価総額1千億円以上の銘柄に絞ったため、株式投資に馴染みの薄い投資家の方でも、社名を知っている銘柄が多く掲載されたと考えられます。なお、不動産投資信託を1銘柄含んでいます。
株式相場の下落で投資タイミング的にも妙味? |
表1:20万円で買える「好配当(予想)メジャー5銘柄」
取引 | チャート | コード | 銘柄名 | 株価 (2/25) |
売買単位 (株) |
予想一株 配当(円) |
予想配当 利回り(%) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
8031 | 三井物産 | 1,337.5 | 100 | 64.0 | 4.79% | ||
8411 | みずほフィナンシャルグループ | 170.6 | 100 | 7.5 | 4.40% | ||
7201 | 日産自動車 | 968.7 | 100 | 42.0 | 4.34% | ||
8986 | 日本賃貸住宅投資法人 投資証券 | 89,400 | 1 | 3,447 | 3.86% | ||
6301 | 小松製作所 | 1,747.5 | 100 | 58.0 | 3.32% |
- ※当社スクリーニングツールを使いSBI証券が作成。
予想配当利回りは2015/9までの上半期実績と2016/3までの下半期予想の一株配当を合計して株価で割った数値。予想は会社計画ベース。REITについては、前期実績と今期予想の分配金を合計した「予想分配金利回り」。
三井物産(8031)は総合商社の中でもっとも予想配当利回りが高くなっています。商社の多くが資源・エネルギー価格の大幅下落を反映して業績が悪化し、株価も下げていますが、この会社も例外ではありません。2016/3期は銅鉱山の減損等を計上する見込みです。一時1バレル140ドル台あった原油価格が30ドル台まで下がったので「減損」の余地は以前に比べ小さくなっています。業績悪にもかかわらず、商社株の下げは相対的に限定的となってきており、逆に原油価格反発時には大きな上昇も期待できそうです。
みずほフィナンシャルグループ(8411)はメガバンクの一角です。銀行株は「マイナス金利で逆風」の銘柄と指摘されることが多く、ここで紹介することに違和感を感じる投資家の方も多いでしょう。たしかに、将来の融資や投資を考えた時、マイナス金利は逆風となるでしょう。こうした考えを背景に株価はすでに大きく下げています。しかしその反面、過去に投資した国債の価格が上昇するという面もあります。予想配当利回りも高いため、マイナス金利の別の側面をご紹介する意味でもメガバンクを入れてみました。
日産自働車(7201)は、中国に強いというイメージが強く、中国経済への不透明感が逆風となることや、自動車株として足元の円高が響いている面があり、昨年末からの株価下落率は28%にも達しています。しかし今後、株価が反発する際は、同時に円高修正も進行してくると予想され、上昇率が大きくなる可能性もあります。また利益面では、景気が底堅い米国のウェイトが高いのも特徴です。
コマツ(6301)は建機・鉱山機械大手であり「代表的な中国関連株」というイメージもあるので、現在は物色の圏外になることが多いようです。しかし営業利益は上半期(2015/4〜9)が前年同期比21%減、第3四半期(2015/10〜12期)が同1%減と、改善の兆しを強めており、第3四半期が営業赤字になった日立建機(6305)との業績格差も鮮明なように思われます。また、中国比率もすでに大きく下がっているので、リスクとしても限定的になっていると思われます。
「マイナス金利」で「配当利回り」の魅力が向上 |
図1:「予想配当利回り(東証1部)-10年国債利回り」は急上昇
- ※日経公表データを用いてSBI証券が作成。東証一部(全銘柄)予想配当利回りから10年国債利回りを差し引いた数値(%)の推移を示した。2016/2/25現在。
企業による株主還元強化の動きや株価下落等を背景に、東証一部上場企業の予想配当利回りは2015/8/25の1.71%から、足元では2016/2/25の1.89%まで上昇しています。これに対し、10年国債利回りは同期間に年率0.38%から-0.06%まで下がっており、その差は拡大傾向(図1)となっています。配当利回りの相対的な魅力は向上していると言えそうです。
高い配当利回りは、インカムゲインを取りながら長期投資を検討している投資家にとり魅力的です。しかし、企業にとっては資本コストが向上するという面もあります。このため、「マイナス金利」時代となり、銀行の口座預金維持にコストがかかるようになるならば、自社株買いによって発行済み株数を減らしておくのも選択肢となります。
いずれにせよ「マイナス金利」は、株式投資にとり、追い風になることが多いと考えられます。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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