株式市場では、3/28(月)に3月決算企業の「権利付最終日」を迎えます。したがって3/29(火)からは「受渡ベース」で多くの企業が新年度を迎えます。そして、4/1(金)からは名実ともに「新年度相場」となります。
年金を含む多くの機関投資家にとっても、この年度替わりは重要な節目です。投資パフォーマンスの多くが年度単位で計測され、運用計画の多くも年度を単位としています。運用計画が変わってくれば、おのずと投資対象が変わってくる可能性もあります。我々投資家も心機一転、新年度の相場や物色対象について考えるべき時期であると言えましょう。
そこで今回の「日本株投資戦略」では、新年度に活躍しそうな銘柄は何か検討してみました。
日本株投資戦略「特選」大幅増益期待銘柄 |
それではさっそく、新年度に活躍が期待できそうな銘柄を抽出したいと思います。様々な切り口があるとは思いますが、新年度最初ですので、オーソドックスに「大幅増益」が期待できる銘柄を中心に考えてみました。
★銘柄抽出条件
(1)時価総額1,000億円以上の上場銘柄(銀行・証券・REITは除く)
(2)今期予想PER(市場コンセンサス)が14倍未満の銘柄
(3)今期予想営業利益について、市場コンセンサスが会社予想を上回っている銘柄
(4)来期の営業利益について、市場コンセンサスで増益が予想される銘柄
(5)前年度末から時価総額が減少している銘柄
(1)にあるように時価総額を1,000億円以上とすることで、投資対象を主力企業に絞ることができます。中小型株中心のスクリーニングについては別の機会に試みたいと思います。また、(2)の予想PERについては、東証一部の予想PERが14.8倍(3/23現在)ですのでそれを下回る条件を設定、(5)と併せると、抽出された銘柄は「出遅れ」でもあることがご理解頂けると思われます。なお(3)の条件を入れることで、今期業績予想の下方修正または計画未達による株価リスクを低減させることができると考えています。
全条件を満たした21銘柄を来期予想増益率の高い順に並べ、定性分析を加え、投資テーマ等も考慮した上で5銘柄に絞り込んだものが表1となります。銘柄掲載順は来期予想増益率が高い順になっています。
第1位はTDK(6762)でした。電子部品は特にスマホ向け部材も供給している場合、アップル関連と一括され、スマホ普及一巡を警戒されることが多く、バリュエーション的に割安になるケースも出てきます。当社の場合も、車載向け、電池向け等収益基盤は強く、連続増益が予想されている割には、予想PERが平均以下になっています。住友電工(5802)は自動車用ワイヤーハーネスの大手であり、今後は自動運転でも活躍が期待できそうです。また、公示地価の上昇とマイナス金利の浸透で全般的にも期待できる不動産株ですが、仮に「消費増税見送り」となれば、有望な物色対象としての「賞味期限」が伸びることになりそうです。野村不動産ホールディングス(3231)はそんなマンション販売の最大手級企業です。
表1:日本株投資戦略「特選」の大幅増益期待銘柄
取引 | チャート | コード | 銘柄名 | 株価 (3/23) |
今期予想PER | 今期予想 増益率(%) |
来期予想 増益率(%) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
6762 | TDK | 6,570 | 13.2倍 | 31.4% | 51.4% | ||
8133 | 伊藤忠エネクス | 932 | 12.9倍 | 29.8% | 17.6% | ||
4631 | DIC | 260 | 8.7倍 | 7.2% | 9.1% | ||
5802 | 住友電気工業 | 1,378 | 11.5倍 | 12.6% | 8.0% | ||
3231 | 野村不動産ホールディングス | 2,128 | 9.7倍 | 8.0% | 2.7% |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。
主力企業の来期業績予想を先取り! |
来期の企業業績について、円高や新興国経済の減速等を背景に厳しい見方も多いようですが、アナリストは実際にどうみているのでしょうか。東証上場時価総額上位20銘柄の動向を営業利益(本業のもうけ)でチェックしてみたいと思います(表2)。
時価総額上位20銘柄が東証上場銘柄数(1,948銘柄)に占める比率は1%に過ぎませんが、時価総額では24%を占めています。その業績動向は取引先企業にも影響するため、企業業績全体の方向をかなり示唆していると考えられます。
20社の今期営業利益は市場コンセンサスで12%程度の増益が予想され、総じて会社予想を上回るケースが多くなっています。構造改革効果が表れてきたソニー(6758)や、前期米国での訴訟和解費用計上のあった武田薬品(4502)等、失地回復してきた企業の増益が強く影響しそうです。また、通信キャリア3グループの利益も順調に拡大しています。なお、今期の企業業績(特に3月決算企業)については、相当株価への織り込みが済んでいると考えられます。
来期はどうでしょうか。市場コンセンサスで10%以上の営業増益が見込まれている会社については黄色で色分けしてみました。ソフトバンクグループ(9984)が11%の営業増益を予想されていますが、総じて通信キャリア3社の好調が目立っています。この事業は基本的に為替の影響を受けにくい(むしろスマホの輸入が多く「円高」はメリット?)ため、外為相場で円高懸念が強まった場合は逆に注目度が高まるケースもありそうです。
大手自動車では、トヨタ自動車(7203)と本田技研工業(7267)で見通しが割れているようです。円高・ドル安が1ドル1円進んだ場合、トヨタ自動車で300億円超、本田技研工業で100億円超の減益要因になると推測され、為替市場の見通しが大きく影響してくる業界です。ちなみに、2016/3期の期中平均ドル・円相場は3/24現在で1ドル120円です。2017/3期の為替前提をどう組むかで、業績見通しにも大きな差が出てきそうです。いずれにせよ、来期の為替前提が円高方向となり、慎重な業績見通しになりやすいため、自動車関連銘柄が物色の中心になる可能性は小さそうです。ただ、トヨタ系でありながらデンソー(6902)について、アナリストは強気で、取引先企業の拡大が背景と考えられます。
なお、前提為替レートについて、ソニー(6758)などは円高・ドル安の方がむしろ増益要因になるようです。同社を含めた「民生用電機」は海外生産を急ピッチで拡大してきたため「円安メリット」は生じにくくなっています。
表2:東証時価総額上位20社の営業利益推移
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。「市場予想」はBloomberg集計の市場コンセンサス。
数字欄の「-」は未公表などで数字が取れなかったデータ。黄色枠は来期市場予想営業利益で10%以上の増益が予想されている会社。同青色枠は減益が見込まれている会社。3月期決算以外の企業もあるため、3月決算企業だけの数字を集計し、分析したものと異なる点に注意が必要。
「特選」5銘柄の投資ポイント |
TDK(6762)
我が国を代表する電子部品メーカーのひとつです。海外生産・販売が8割を超える典型的なグローバル企業です。スマホや自動車などの様々な機能を実現する「受動部品」が売上高の50%、創業以来の磁性技術を活かした「磁気応用製品」が34%等となっています。
1/13に米通信向け半導体大手クアルコムと業務提携、合弁会社設立を発表し、IoTやドローン、ロボット、車載向け等の分野で新展開が期待されます。2016/3期は31%の営業増益が会社予想ですが、第3四半期まででは42%増益と順調に進捗しています。
図1:TDK(6762)・日足
伊藤忠エネクス(8133)
伊藤忠商事が52.17%の株式を保有し、グループのエネルギー事業の中核を担い、石油製品やLPガスの販売他を行っています。売上やLPガスの在庫評価等については、原油価格下落の影響に注意です。原油先物相場の平均レートは2016/3期の第4四半期も前年同期比3割程度下がっています。ただ、2015/12末1バレル37ドルに対し原油先物相場が上振れ始めていることや、利益面では顧客拡大など販売数量の効果が期待できることが下支え材料です。
原油価格が底入れの様相を呈しており、株価がそれに引っ張られるリスクは当面低下しています。電力自由化など成長分野への展開にスポットが当たる可能性もありそうです。
図2:伊藤忠エネクス(8133)・日足
DIC(4631)
長年「大日本インキ」として展開し、創業以来有機顔料、合成樹脂に関するコア技術を駆使し、事業展開しています。世界で174社のグループ企業を展開し、日本では31社、アジアで53社、欧州で53社、北米で14社、中南米で16社を展開するグローバル企業です。このため、世界経済の拡大を企業の成長に取り込むことが可能になっています。
2015/12は売上高-1%、営業利益+24%と減収・増益でした。2016/12は売上高+6%、営業利益+5%が当初の会社予想です。新中期計画では前年度250億円だった純利益を2018/12には400億円とする計画です。株式併合・単元株式の変更を計画しています。
図3:DIC (4631)・日足
住友電気工業(5802)
株式市場では、長く大手電線メーカーとして認知されてきました。しかし現在、売上高の6割超は自動車部品で、特にワイヤーハーネスは全社売上高の5割を占め、世界的にも矢崎総業に次ぐ世界第2位となっています。中期的にも、この分野で事業を拡大する方針で、新製品の拡大や日本メーカー以外への販路拡大に努めています。
2016/3/23現在の時価総額は1.1兆円弱で、純資産1.6兆円を大きく下回っており、株価の割安感が目立ってきました。2016/3期は11%の営業増益を目指していますが、第3四半期まででは16%増益と順調に進捗しています。アナリストの市場コンセンサスでは来期も業績拡大が続く見込みで、見直し余地は大きいと考えられます。
図4:住友電気工業(5802)・日足
野村不動産ホールディングス(3231)
1/29に日銀がマイナス金利の導入を決定したことを受け、各種金利の低下が続いています。そのうち、長期金利がマイナス金利に入ったことを受けて住宅ローン金利もさらなる低下が続いており、マンション需要は当面堅調に推移するとみられます。そうした中、当社の業績も順調に拡大し、2016/3期は5%の営業増益を見込む中、第3四半期までに31%の営業増益を達成しています。
こうした中、にわかに台頭してきたのが消費税率引き上げ見送り論議です。仮に「見送り」ならば、短期的な駆け込み需要を見込みにくくなりますが、高水準のマンション販売がより長期化する要因にもなりそうです。
テクニカル的には一目均衡表で、クモ上限突破の可能性が高まりつつあります。
図5:野村不動産ホールディングス(3231)・日足
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