東京株式市場では、日経平均株価が3/29(火)から4/6(水)まで7営業日続落となりました。続落日数の長さとしては「アベノミクス相場」開始以来最長となっています。この間に、日経平均株価は1,419円(8.3%)下げ、昨年末からの下落率も17.4%に達しました。円高・ドル安の進行に加え、それを一因とする企業業績への不透明感が株価下落の要因と考えられています。
4/8(金)には反発に転じましたが、混乱した局面から抜け出せたとは言い難いのが現実です。
しかし、大幅な株価下落は投資チャンスと考えることができます。株価が大幅に下げたということは、想定される悪材料が相当織り込まれたと考えられるためです。また、市場参加者が必要以上に悲観的となり、実際には好業績が期待できるにもかかわらず売り込まれているとすれば、悲観が解消された時はその分、株価の反発力も大きくなるので、投資妙味は大きいと考えられます。
そこで今回の「日本株投資戦略」では、株価が大幅に下げ「大混乱」と言える今こそ投資チャンスと考えたい「好業績期待銘柄」を抽出してみました。
好業績が予想されているにもかかわらず、株価が大きく下げている銘柄はコレ! |
それではさっそく、好業績が予想されているにもかかわらず、株価が大きく下げている銘柄を抽出してみたいと思います。抽出条件は以下の通りです。
★銘柄抽出条件
(1)時価総額500億円以上の上場銘柄。
(2)昨年末終値に対し、株価(4/6終値)が10%超下落している銘柄。
(3)今期予想営業利益が黒字予想となっている銘柄。
(4)今期の予想配当利回りが2.5%超の銘柄。
(5)来期営業利益が5%超増益見込みの銘柄。
(6)今期予想EPSが過去4週間で低下していない銘柄。
(1)にあるように時価総額を500億円以上とすることで、信用リスクをある程度抑えた銘柄に絞ることができます。また、株式市場全体の動きを示す日経平均株価が昨年末以降17.4%下げていることを考慮し、抽出銘柄もせめて10%超下落していることを条件としました。
ここでの「今期」とは、通期の決算発表が終わっていないもっとも近い将来の決算期を示すこととします。3月決算企業であれば2016/3期、12月決算企業であれば2016/12期になります。したがって来期とは、前者の場合は2017/3期、後者は2017/12期になります。すなわち、今期予想配当については、3月決算銘柄の場合はすでに権利落ちになっていますので注意が必要です。ただ、予想通り好業績となれば、来期の配当はさらに増えることが期待できます。
表1:好業績予想にもかかわらず、株価が大幅に下げている銘柄
取引 | チャート | コード | 銘柄名 | 株価 (4/6) |
下落率 (昨年末比) |
来期予想 営業増益率(%) |
今期予想 配当利回り(%) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
7272 | ヤマハ発動機 | 1,657 | -39.6% | 13.9% | 4.3% | ||
5105 | 東洋ゴム工業 | 1,513 | -37.1% | 5.3% | 3.4% | ||
4980 | デクセリアルズ | 951 | -26.7% | 10.1% | 6.0% | ||
7220 | 武蔵精密工業 | 1,980 | -20.2% | 6.8% | 2.5% | ||
5393 | ニチアス | 658 | -17.6% | 9.7% | 3.0% | ||
5463 | 丸一鋼管 | 2,985 | -16.9% | 10.4% | 2.5% | ||
8570 | イオンフィナンシャルサービス | 2,396 | -12.1% | 15.8% | 2.8% |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。
株価が下げ止まる条件は? |
日経平均株価は一目均衡表分析において「3役逆転」が成立してしまいました。当面は波乱相場が続きやすい形になっていると考えられます。それでは、今後も下落相場が続くのでしょうか。
少なくとも短期的には、いつ反発に転じても不思議ではないタイミングになってきていると考えられます。
(1)日経平均の(4/7)のRSIが「下げ過ぎ」を示唆する30%を下回り、25%まで低下してきたため。
(2)日経平均の25日移動平均(4/7は15,396円)から8%マイナス乖離した水準が15,396円と接近しているため。
(3)アベノミクス相場の起点となる2012/11/14の予想PER13.6倍に、現在の予想EPS(1,116円)を掛けると15,180円で、その水準に接近してきたため。
(4)2/12の安値14,865円が意識される水準になってきたため。
図1:日経平均株価・日足(一目均衡表)
なお、足元の株式市場は明らかに円高・ドル安の影響を受けていますので、その勢いが止まることが、株価の底入れにも必要であると考えられます。
足元で円高・ドル安が進んでいるのは、米国の政策金利引き上げペースが当初想定したよりも緩やかになると考えられるようになってきたためです。また、日銀のマイナス金利導入が必ずしもうまくいっているとはいえず、今後の追加緩和(円安を促す要因)が難しくなってきたことも指摘されます。
前者については、消費の減速等を背景に米経済見通しを引き下げる動きがあり、その影響で米長期金利が低下し、円高・ドル安につながっています。ただ、長期金利はすでにゼロ金利時代の最低水準に接近しており、債券は買われ過ぎている可能性があります。ドル高の一巡で製造業の業績に底入れ感が広がってくれば、再び利上げ観測が強まってくる可能性があります。また後者については、マイナス金利導入の副作用面ばかりが指摘されおり、そのプラス面での効果が浸透してくるまでは時間を要するとみられます。現在はそれまでの過渡期と言えそうです。
ドル・円相場(図2)は、2014/2/3の1ドル100円74銭から2015/6/1の125円85銭まで円安・ドル高となりました。それに対する3分の2押しを想定した場合109円11銭ですので、すでにそこに届いています。また、おおむね4年に相当する200週の移動平均は105円前後とみられます。仮にドル・円相場がそこを目指すと仮定した場合でも、さらなる円高・ドル安の余地はそれ程大きくないとみられます。
図2:ドル・円相場(週足)
「大きく下げた好業績期待銘柄」の投資ポイント |
表2は昨年末水準と比較し、現在の株価水準が高い銘柄を、時価総額500億円以上の銘柄について調べ、株価下落率の大きい順に並べたものです。マイナス金利導入で悪影響が懸念される地銀、円高デメリットやスマホ需要への不透明感が逆風の電機や機械などの下げが大きくなっています。仮に株価が全般的に反発局面に入った場合、リターン・リバーサルの観点からは、これらの銘柄の反発力が大きくなりそうです。
冒頭の表1「好業績予想にもかかわらず、株価が大幅に下げている銘柄」では上位2銘柄が12月決算です。「今期」は2016/12期であり、「来期」は2017/12期ですので、「来期」で評価するのは少々早い可能性はあります。ちなみに、上位2社ともに今期の営業利益は微増益予想です。
もっとも、株価は今期の微増益予想をいったん織り込んでいるとみられ、その分株価パフォーマンスも冴えないのかもしれません。言い換えれば、株価が下げた理由がある程度明確に想定できる分、投資しやすいと言えます。
デクセリアルズ(4980)は足元、スマホ市場の低迷や円高が逆風で、第3四半期の収益が計画比未達だったことが嫌気されています。ただし、高シェア製品が多いことや、車載向けにも注力しているため、中長期的な成長は維持できそうです。
武蔵精密(7220)はホンダ向けが8割の自動車部品で、海外展開もしているため円高が逆風です。しかし、PBRはすでに0.9倍を割り込んでいるので、見直される場面もありそうです。
ニチアス(5393)は石油・石化プラント、自動車部品に展開し、やはり円高が逆風になりやすいとみられます。しかし、減損計上を発表済みで、リスクは低下しています。
イオンフィナンシャルサービス(8570)は、マイナス金利による利ザヤの縮小が懸念されました。しかし住宅ローン等の拡大が期待でき、クイック集計のコンセンサスでも来期純利益が10%以上伸びるとみられています。
表2:昨年末と比較し株価下落率が大きい銘柄銘柄
コード |
銘柄 |
株価 |
昨年末比 |
---|---|---|---|
8202 |
ラオックス |
112 |
-52.1% |
6770 |
アルプス電気 |
1,709 |
-48.4% |
8379 |
広島銀行 |
368 |
-46.9% |
8377 |
ほくほくフィナンシャルグループ |
133 |
-46.4% |
6432 |
竹内製作所 |
1,344 |
-45.8% |
8341 |
七十七銀行 |
364 |
-44.4% |
8385 |
伊予銀行 |
658 |
-44.4% |
8354 |
ふくおかフィナンシャルグループ |
338 |
-44.1% |
2038 |
NEXT NOTES日経・TOCOM原油ダフ |
717 |
-43.8% |
4553 |
東和薬品 |
4,330 |
-42.7% |
8327 |
西日本シティ銀行 |
185 |
-42.4% |
6474 |
不二越 |
323 |
-42.1% |
8369 |
京都銀行 |
656 |
-41.9% |
6740 |
ジャパンディスプレイ |
204 |
-41.9% |
2193 |
クックパッド |
1,515 |
-41.6% |
4043 |
トクヤマ |
154 |
-41.4% |
5726 |
大阪チタニウムテクノロジーズ |
1,475 |
-41.1% |
8050 |
セイコーホールディングス |
406 |
-40.9% |
7240 |
NOK |
1,690 |
-40.9% |
5715 |
古河機械金属 |
148 |
-40.8% |
- ※Bloombergデータをもとに、時価総額500億円超の銘柄についてSBI証券が作成。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
- ※NISA口座で上場株式等の配当金を非課税で受け取るためには、配当金の受領方法を「株式数比例配分方式」に事前にご登録いただく必要があります。
- ※信用取引において必要となるその他諸費用の詳細は信用取引のサービス概要をご確認ください。