5/26(木)〜5/27(金)に日本が議長国を務める主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)が開催されます。我が国は議長国として構造問題に切り込み、長期停滞論を退け、経済成長を図っていくことを内外に広くアピールする必要がありそうです。
こうした中、政府の「産業競争力会議」では5/19(木)に成長戦略の素案をまとめました。現在500兆円の名目GDPを第4次産業革命の推進(IoT、AI、自動走行などの活用)や、健康立国、環境立国などの実現により「名目GDP(国内総生産)600兆円」を達成することを目標とします。
「600兆円」を実現する手段としては4/19(火)に「産業競争力会議」が提示した「官民戦略プロジェクト10」がたたき台になっているようです。そこで今回の「日本株投資戦略」では、そのプロジェクトの中で最も短期的な成果が期待されている「第4次産業革命」関連分野および「サービス産業の生産性向上」に寄与する分野から関連銘柄をチョイスし、業績面や株価の変動等を考慮して銘柄を選別し、ご紹介いたします。ぜひ、ご参考にしていただければと思います。
成長戦略をけん引する「第4次産業革命」の「特選銘柄」はコレ!? |
「第4次産業革命」は、IoT(モノとモノをつなぐインターネット)、ビッグデータ、AI(人工知能)など先進技術を産業化し、製造業やサービス業のさらなる発展を目指すことになります。それにより、2020年に付加価値30兆円の創出を目指します。
株式市場では数多くの銘柄が関連銘柄として挙げられています。
「日本株投資戦略」ではそうした数多くの関連銘柄の中から
(1)今期の予想営業利益(会社公表値)が10%以上の増益見通し
(2)前期および今期予想の営業利益が黒字
(3)過去1ヵ月の株価上昇率が20%未満
(4)予想PERが50倍未満
という条件を満たす銘柄を「特選銘柄」として表1に並べています。過去1ヵ月に20%超も株価が上昇したデータセクション(3905)やイー・ガーディアン(6050)、ロゼッタ(6182)、予想PERが50倍を超えるネットイヤーグループ(3622)、フリービット(3843)なども、表1からは除外したものの、活躍余地は残っていると思われます。高い株価上昇率や高い予想PERは高い評価の裏返しであることも多いためです。
なお、「IoT分野」ではコマツ(6301)が顧客の建機を遠隔監視し、生産性向上や部品交換時期の通知等を行う等の取り組みを実現しています。また通信技術が不可欠なことから関連部品を手掛ける村田製作所(6981)などがコア的な存在ですし、家電・AV、車載用と幅広くマイコンを供給するルネサスエレクトロニクス(6723)もコア的な存在になると思われます。いずれも今期は営業減益予想のため表1から除外しましたが、業績の踊り場形成が織り込まれれば、主力銘柄の一角を占めていることもあり、注目される可能性がありそうです。
表1:成長戦略をけん引する「第4次産業革命」の「特選銘柄」はコレ!?
取引 | チャート | コード | 銘柄名 | 株価 (5/19) |
1ヵ月 騰落 |
今期予想 営業増益率 |
予想PER (倍) |
テーマ (注目理由) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
3669 | モバイルクリエイト | 416 | -7.8% | 44.2% | 19.6 | IoT。介護分野も | ||
3655 | ブレインパッド | 859 | 10.0% | 40.6% | 44.5 | ビッグデータ | ||
4736 | 日本ラッド | 492 | 10.6% | 31.2% | 11.1 | サービス業効率化 | ||
3676 | ハーツユナイテッドグループ | 2,674 | 16.6% | 27.3% | 20.8 | ビッグデータ | ||
4812 | 電通国際情報サービス | 1,962 | -11.2% | 27.3% | 16.5 | AIマーケティング | ||
2678 | アスクル | 4,080 | -10.9% | 24.1% | 45.1 | サービス業効率化 | ||
3774 | インターネットイニシアティブ | 2,382 | 4.4% | 18.9% | 22.3 | AIセキュリティ | ||
6070 | キャリアリンク | 1,749 | -11.7% | 16.7% | 15.2 | サービス業効率化 | ||
3724 | ベリサーブ | 4,380 | -1.4% | 12.3% | 25.7 | ビッグデータ(自動走行) |
- ※Bloomberg、会社公表データ、各種報道等をもとにSBI証券が作成。
抽出した「特選銘柄」の投資ポイント |
モバイルクリエイト(3669)はタクシーやトラック向けの業務用IP無線システムを手掛けています。また、ネット環境さえあれば配車を確認できる「モバロケ」も展開しています。石井工研を買収し、産業用大型ドローンへの展開を狙っているようです。ただ、第3四半期までで営業利益が前年同期比83%減で通期計画達成に注意は必要かもしれません。2016/5期の業績を確認してから後が投資タイミングになる可能性があります。
ブレインパッド(3655)は、ビッグデータを用いて販促活動を支援する等のサービスを提供しています。ここにきて今期予想営業利益を上方修正するなど目先は業績面での不安は少ないといえます。もっとも株価の方は急動意をみせていますので、買いタイミングが難しくなってきました。また、日本ラッド(4736)もビッグデータを活用するシステムインテグレーターと言えます。
図1:ブレインパッド(日足)〜株価が急動意
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。2016/5/20取引時間中に作成。
なお、IoTや車の自動走行などは、自動車の電装化・コンピュータ化を急速に進める要因になります。このため、開発された組み込みソフト等の不具合をチェックするビジネスが活況を呈しているようです。ベリサーブ(3724)はそうした業界の老舗的な存在ですが、その営業利益は2008/3以来の高水準で、今期もさらに増益を見込んでいます。ハーツユナイテッドグループ(3676)もゲームやスマホなどソフトの不具合を顧客に報告する事業に展開し、やはり業績好調です。
図2:ベリサーブ(3724)の単独営業利益推移(億円)〜8年ぶり高水準
- ※会社公表データを用いてSBI証券が作成。横軸は年度。2016年度は会社予想。
「IoT、AI(人工知能)、自動走行」で加速を狙う?成長戦略 |
5/26(木)〜5/27(金)に日本が議長国を務める主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)が開催されます。新興国を含めたG20が創設され、先進国だけの会合の意義は低下したと考える向きが増えていますが、多くの新興国で経済が停滞期に入っており、先進国にとっては存在感を示すチャンスになりそうです。
そうした中、議長国である日本の責任は重大です。特に経済面では、金融市場の不安定化という困難な局面を長期停滞論もくすぶる中でどう克服していくか、先進国のコンセンサスを得ることが重要です。安倍首相は5月初旬に精力的な欧州外交を展開しましたが、そこでの「事前交渉」がサミットでどう活かされるのか注目が集まる所です。
各国の事情も配慮して、共同声明そのものはマイルドな内容になりやすく、そこに過度の期待をかけるべきではないと思います。しかし、各国が金融、財政の面から政策を総動員し、構造問題に積極的に取り組んでいく姿勢を示し、それを意識として共有しておくことは重要です。我が国も議長国としてこうした取り組みに積極的に取り組んでいく姿勢が問われます。
図3では我が国の名目GDP(国内総生産)の長期推移を示したグラフの上に、政府の成長戦略により上乗せが期待されている金額をグラフ化しています。今回の「日本株投資戦略」でご説明した「IoT、AI(人工知能)、自動走行」など「第4次産業」は2020年まで30兆円を期待されていますが、金額も大きいうえに目標到達年度が短期に到来するので、成長戦略全体の成否を占う意味でも重要な分野となっています。もっとも金額の大きい分野は「サービス業の生産性向上」で、2014年度343兆円の付加価値額を2020年に410兆円(グラフではこの増加分67兆円を上乗せ)と増やす見込みですが、「IoT、AI(人工知能)、自動走行」の成否はここにも深くかかわってくると考えられます。
図3:我が国の名目GDPと「成長戦略」による上乗せ見込額
- ※内閣府データ、各種報道等をもとにSBI証券が作成。「GDP」は名目値で、2015年度が約500兆円であり、「予想」はそれを単純に将来へも延長したものです。他の項目は、政府の成長戦略の中で増加が期待される付加価値額を示しています。なお、増加が見込まれる付加価値を合計すると、政府が目標とする名目GDP(600兆円)を上回りますが、項目間の重複や、少子高齢化等による減少分も見込まれ、それを織り込んでいないためと考えられます。なお、各分野の成長は必ずしも関連企業の業績向上・株価上昇につながるとは限りません。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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