日本時間9/21(水)昼前後に日銀金融政策決定会合(以下「日銀会合」)、同9/22(木)早朝にFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果が発表される予定です。前者については「総括的な検証」と追加緩和の有無が、後者については政策金利の再引き上げの有無がポイントと考えられます。これら重要な決定を控え、日米の株式市場は神経質な展開を続けています。
今回の「日本株投資戦略」では、これらの日米重要イベントについてどう考えるべきか改めて整理するとともに、それらを通過した後、株式市場ではどのようなセクターが注目されるのかについて検討してみたいと思います。
日銀会合、FOMCのポイントは? |
日本時間9/21(水)昼前後に日銀金融政策決定会合(以下「日銀会合」)の結果が発表されます。ここでは、「総括的な検証」と追加金融緩和の有無がポイントと考えられます。「総括的な検証」については、マイナス金利政策が「脱デフレ」にどの程度効果があったのか、副作用はどの程度あったのか等が検証されると考えられます。なお、金融政策については、
(1)さらなるマイナス金利の深堀り(利下げ)
(2)超長期金利など長めの金利については上昇を許容し、金融機関に運用の余地を残す
等が検討対象になっていると考えられます。
図1は業種別株価指数「銀行」(週足)の推移を過去15年間についてみたものです。低水準での推移が長く続いていますが、日銀の金融緩和を受けて金利全般が下がる中で、銀行の利益があがりにくくなっていることを市場が織り込んでいると考えられます。なお上記の(2)については、超長期国債の買い入れを増やさないこと、あるいは国債買い入れ額(現行は年80兆円)に幅(たとえば70〜90兆円)を持たせることで実現可能であると考えられています。
一方米国では、現地時間9/21(水)(日本時間9/22早朝)に、FOMCの結果が発表されます。米国の政策金利が年内に再び引き上げられ、その上限が0.75%となることについてはコンセンサスが形成されつつあります。問題は、利上げが9月会合に前倒しされるか否かであると考えられます。
図2は、次回FOMCにおける金融政策について、「現状維持」「利上げ」「利下げ」の確率がどの程度なのか、金利先物市場の動きから試算されたものです。8月下旬のジャクソンホール会合を受け、9月に利上げされる可能性は一時40%前後まで上昇していましたが、弱い米景気指標を織り込み、現状では20%前後まで低下しています。現在の市場は、FOMCでの現状維持を織り込みつつあるのかもしれません。
図1:依然低水準の銀行株
図2:次回FOMC(9月)での利上げの可能性は約2割
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。ともに2016/9/14現在。図2は金利先物市場からみた次回FOMCにおける政策金利の予想。
日銀会合、FOMCの後の株式市場で注目されるセクターは? |
日銀会合やFOMCの後、株式市場ではどのようなセクターが注目されるのでしょうか。その点でヒントになるのは、7/29(金)の日銀会合後の物色動向だと思います。この会合では、日銀によるETF買い入れ額が増額されたものの、マイナス金利の深堀りについては見送られました。
表1をみればご理解頂けるように、追加利下げ(マイナス金利の深堀り)が見送られたことでもっとも上昇したのが銀行株でした。その他、保険や証券・商品先物取引等も含め、広義の金融株は総じて好パフォーマンスとなりました。逆に、電気・ガス、鉄鋼他の業種のパフォーマンスは冴えませんでした。
図3では銀行株の相対的な強さを長期金利の推移とともに、グラフ化しています。金利低下の長期化が銀行株にとっても逆風になってきたことがわかります。
したがって、今度の日銀会合についても、マイナス金利の深堀りの有無や、その程度が銀行株に強い影響を与えると考えられます。ここにきて、一部メディアでは、マイナス金利の深堀りが実施される可能性について報じており、それを受けて「銀行株」は下げています。9/5(月)からの下落率は13%超に達しています。
ただ逆に考えれば、政策金利で0.1%程度の追加利下げであれば、銀行株はすでに織り込んでいるかもしれません。逆に、マイナス金利の深堀りが見送られれば、銀行株は上昇余地が大きいと考えられます。一般的に、現在のマイナス金利は、規模の小さい地銀ほど、収益への悪影響が大きいと想定されます。その場合は、地銀が注目される可能性があります。
表2は、前回会合で大きく上昇した銀行株および時価総額上位の銀行株を掲載しています。極端な利下げにならなければ、今回もこれらの銘柄が上昇に転じる可能性がありそうです。
ちなみに、長めの金利上昇を許容し、長短の金利差を拡大させる政策についても、銀行株には追い風になると考えられます。ただ、株式市場の反応をみる限り、この政策で上昇率が大きそうなのは、銀行株の他に保険等も想定しておいた方が良いと考えられます。
これらの追加緩和を経て、ドル・円相場が1ドル103円台から104円台へと「円安・ドル高」が明確になれば、輸出関連株に物色の手が広がりそうです。
なお、日銀による追加利下げが0.2%ないし0.3%に達し、その他の政策との組み合わせもなければ銀行株は下がりそうです。ただし、その場合は不動産、REITが買われ、全体的にも上昇する可能性があります。ただ、あまり一気に金利を下げると、金融政策に出尽くし感が強まる「副作用」も想定されるので、現実味は薄いかもしれません。
FOMCについては、9月の利上げは見送られる方向での織り込みが進んでいるうえ、9/22(木)の東京市場が休場であるため、波乱要因にはなりにくいと考えられます。
表1:業種別株価指数のベスト7、ワースト7
|
株価騰落率 |
|
---|---|---|
8/1→9/14 |
7/28→8/1 |
|
銀行業 |
-2.5% |
10.4% |
保険業 |
1.4% |
4.9% |
情報・通信業 |
-3.0% |
3.2% |
医薬品 |
-8.9% |
2.7% |
証券・商品先物取引 |
4.2% |
2.6% |
サービス業 |
-1.7% |
1.9% |
精密機器 |
-2.0% |
1.5% |
建設業 |
-5.9% |
-1.3% |
不動産業 |
-2.1% |
-1.3% |
卸売業 |
5.0% |
-1.3% |
海運業 |
5.8% |
-1.4% |
空運業 |
-1.6% |
-1.4% |
電気・ガス業 |
1.6% |
-1.6% |
鉄鋼 |
3.5% |
-1.6% |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
図3:金利低下が逆風だった銀行株
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。銀行株指数相対株価は、東証業種別株価指数「銀行」をTOPIXで割った数値の推移を示しています。
図4:東証業種別株価「銀行」(日足)
- ※東証データをもとにSBI証券が作成。
表2:「金利ボトムアウト」で上昇が期待される銀行株
【時価総額上位銘柄】
取引 | チャート | コード | 銘柄名 | 株価 (9/14・円) |
時価総額 (億円) |
株価騰落率 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
8/1→9/14 | 7/28→8/1 | ||||||
8306 | 三菱UFJフィナンシャル・グループ | 507.5 | 71,907 | -6.8% | 12.4% | ||
7182 | ゆうちょ銀行 | 1213 | 54,585 | -5.7% | 9.0% | ||
8316 | 三井住友フィナンシャルグループ | 3409 | 48,205 | -0.7% | 11.9% | ||
8411 | みずほフィナンシャルグループ | 173.3 | 43,994 | 1.3% | 8.2% | ||
8309 | 三井住友トラスト・ホールディングス | 336.3 | 13,127 | -6.9% | 6.1% |
【前回会合後の値上がり率上位銘柄】
取引 | チャート | コード | 銘柄名 | 株価 (9/14・円) |
時価総額 (億円) |
株価騰落率 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
8/1→9/14 | 7/28→8/1 | ||||||
7180 | 九州フィナンシャルグループ | 603 | 2,794 | 0.3% | 15.6% | ||
8308 | りそなホールディングス | 430.4 | 10,003 | -3.3% | 14.6% | ||
8324 | 第四銀行 | 389 | 1,347 | -5.8% | 14.4% | ||
8325 | 北越銀行 | 206 | 505 | -8.4% | 14.2% | ||
8382 | 中国銀行 | 1224 | 2,451 | 2.6% | 13.8% | ||
8550 | 栃木銀行 | 409 | 448 | -5.5% | 13.1% | ||
8355 | 静岡銀行 | 817 | 5,434 | 2.6% | 12.9% | ||
7186 | コンコルディア・フィナンシャルグループ | 478 | 6,217 | 2.7% | 12.7% | ||
8527 | 愛知銀行 | 4700 | 514 | -11.0% | 12.0% |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。なお、「三菱UFJフィナンシャル・グループ」は下表の値上がり率上位にもランクされていますが、重複していますので上表にだけ掲載しています。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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