あけましておめでとうございます。「日本株投資戦略」は当面の株式市場について分析し、具体的な投資テーマや物色対象についての考えをご紹介する投資情報です。2017年もより有用な情報をご提供したいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。
さて、安倍晋三氏が首相の座に返り咲き、日本経済の再生を目指す「アベノミクス」がスタートしてから4年が経ちました。インフレ率の面でみると生鮮食品を除いたコア指数の部分で2015/8以降マイナス傾向が続いており、アベノミクスで日本経済がデフレから脱却したとは言い難いものがあります。
しかし、ここにきて日本経済はようやく、デフレから脱却するチャンスを迎えています。「脱デフレ」(リフレ)は2017年の重要な投資テーマのひとつになりそうです。そこで今回の「日本株投資戦略」では、「脱デフレ」の動きの中で買われやすい銘柄について検討してみました。
「脱デフレ」になると何が起こるのか? |
日本経済はようやく、デフレから脱却するチャンスを迎えていると、「日本株投資戦略」では考えています。外為市場で円高が一巡して円安傾向となってきたことや、原油価格が一時に比べて上昇し、商品相場もしっかりしてきたことがインフレ率を高める要因になると考えられるためです。
また、安倍政権による企業への賃金引き上げの要請や労働力人口の減少、「働き方改革」の推進などは労働コストを押し上げる要因になると考えられます。労働コストの上昇はインフレ率の上昇につながると考えられます。
図1はデフレ社会とインフレ社会では、企業のバランスシートがどう変化しやすいのかを示しているイメージ図です。デフレ社会では資産が目減りしやすいので、「資産」から「負債」を引いて求められる「資本」(純資産)も目減りしやすくなります。このため、「資本」(純資産)をベースに求められるBPS(一株純資産)の信用度は低くなり、PBR(株価純資産)が1倍を割れて「解散価値割れ」になっても、株価水準が低い水準で放置されやすくなってしまいます。
しかし、インフレ社会では「資産」が増えやすくなります。少なくとも、「資産」が目減りするケースは少なくなると考えられます。このため、BPS(一株純資産)の信用度は高くなり、PBR(株価純資産)が1倍を割れて「解散価値割れ」になった企業について割安感が認識されやすくなり、株価が「解散価値割れ」状態の解消を目指して上昇しやすくなると考えられます。
図1:デフレ社会とインフレ社会におけるバランスシートのイメージ図
- ※企業が新たな投資や借入を行わなかったと仮定した場合の粗いイメージ図です。すべての企業について、こうしたイメージ通りにバランスシートが変動するとは限りません。事例を単純化するため、少数株主の存在は考慮していません。
「脱デフレ」で水準訂正が期待される低PBR銘柄 |
「日本株投資戦略」では、「脱デフレ」の動きが強まると、低PBR銘柄の株価が上昇しやすくなると考えています。表1は、そうした「低PBR銘柄」を若干のスクリーニングを加えてご紹介したものです。スクリーニング条件は以下の通りです。
(1)時価総額1千億円以上の東証上場銘柄
(2)今期の会社計画経常収支および最終損益が黒字の予想
(3)予想配当利回りが東証一部の平均(1/5現在)である1.64%以上
上記の全条件を満たす銘柄を、低PBR順に10銘柄ご紹介したものが下の表1になります。この表の最も大きな特徴は銀行株(特に地銀)が多いことです。経済がデフレ状態になると、融資先の資産が目減りやすくなり、貸倒れのリスクが増えると考えられます。長く続いたデフレを背景に、株価の低迷が続いたことが主因で「解散価値割れ」の銀行株が多いのだと考えられます。したがって、日本経済がデフレから脱却できれば、銀行株の水準訂正が進んでも不思議ではないと考えられます。
なお、2015/11に上場したゆうちょ銀行(7182)は、203兆円超の運用資産(2016/9末)に対し46%の93兆円が国内公社債(うち国債は76兆円超)になっています。したがって低金利、特にマイナス金利が経営に大きな打撃になったと考えられます。このため、日銀のマイナス金利政策が一巡し、世界的にも金利がボトムアウトの傾向を示していることは追い風とみられます。一般的に、銀行は多額の公社債を保有していると考えられますので、こうした事情は同じであると考えられます。
表1:「脱デフレ」で水準訂正が期待される低PBR銘柄
取引 | チャート | コード | 銘柄名 | 株価 (円) |
昨年来高値 比下落率 |
PBR (実績)(倍) |
予想配当 利回り |
---|---|---|---|---|---|---|---|
8386 | 百十四銀行 | 408 | -10.7% | 0.45 | 1.96% | ||
7182 | ゆうちょ銀行 | 1,446 | -17.7% | 0.46 | 3.46% | ||
8336 | 武蔵野銀行 | 3,500 | -20.5% | 0.51 | 2.29% | ||
9504 | 中国電力 | 1,397 | -16.2% | 0.78 | 3.58% | ||
9513 | 電源開発 | 2,803 | -35.3% | 0.78 | 2.50% | ||
8379 | 広島銀行 | 565 | -18.4% | 0.80 | 1.95% | ||
7279 | ハイレックスコーポレーション | 2,968 | -15.3% | 0.82 | 1.79% | ||
9507 | 四国電力 | 1,190 | -38.3% | 0.86 | 1.68% | ||
6201 | 豊田自動織機 | 5,700 | -12.2% | 0.90 | 2.11% | ||
8219 | 青山商事 | 4,150 | -15.7% | 0.97 | 3.98% |
- ※2017/1/5現在の株価・財務データ等を用いてSBI証券が作成。予想配当は会社計画ベースを優先し、当該数値がない場合は市場コンセンサスを採用。
「脱デフレ」が追い風になる業種の代表銘柄は? |
前項では、日本経済の「脱デフレ」が進むと「解散価値割れ」の銘柄が見直されるという考え方の下で銘柄を選びました。この項では、「脱デフレ」が進む局面で株価が上昇しやすい業種を調べ、その代表的な銘柄を選ぶことを目的にスクリーニングをし、銘柄を選んでみました。
業種別株価指数(月足)と消費者物価指数(生鮮食品を除く)の前年同月比を比較(2016年末までの過去10年)した時、相関関係の強かった業種を上位5業種上げると、鉱業、不動産業、化学、卸売業、非鉄金属となっています。また、業種別株価指数(週足)と原油先物相場(同)を比較した時に相関関係の強かった5業種は鉱業、石油・石炭、卸売業、鉄鋼、非鉄金属でした。今回のスクリーニングでは、ここであげた合計7業種(重複を考慮)を「インフレで株価が上昇しやすい業種」と考えることにしました。
今回のスクリーニング条件は以下の通りです
(1)時価総額1千億円以上の東証上場銘柄
(2)今期・会社計画の最終損益が黒字の予想
(3)PBRが1倍未満
(4)上記した「インフレで株価が上昇しやすい業種」に属していること
これらの条件をすべて満たす銘柄を、各業種で時価総額が最大の銘柄をひとつずつ、計7銘柄ご紹介したものが表2となっています。このうち、新日鉄住金(5401)は昨年11/9から本年1/4にかけ、株価が33.9%も上昇し、いわゆる「トランプ・ラリー」で主役の一角を占めました。このように、株価的にはすでに大きく動いている銘柄もありますが、原油を含む商品市況については堅調な見通しをもつ市場参加者が多いようで、資源・素材関連銘柄は引き続き追い風を受けそうです。このように、「脱デフレ」(リフレ)は日本にとどまらず、世界的な広がりをもつ投資テーマに育つ可能性もありそうです。
表2:「脱デフレ」が追い風になる業種の代表銘柄は?
取引 | チャート | コード | 銘柄名 | 株価 (円) |
東証 業種 |
予想純利益 (百万円) |
PBR (実績)(倍) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
3231 | 野村不動産ホールディングス | 1,985 | 不動産業 | 43,000 | 0.82 | ||
5713 | 住友金属鉱山 | 1,567 | 非鉄金属 | 19,000 | 0.94 | ||
5401 | 新日鐵住金 | 2,693 | 鉄鋼 | 60,000 | 0.90 | ||
5020 | JXホールディングス | 513 | 石油石炭製品 | 100,000 | 0.90 | ||
1605 | 国際石油開発帝石 | 1,168 | 鉱業 | 26,000 | 0.58 | ||
4004 | 昭和電工 | 1,736 | 化学 | 12,000 | 0.87 | ||
8058 | 三菱商事 | 2,548 | 卸売業 | 330,000 | 0.96 |
- ※2017/1/5現在の株価・財務データ等を用いてSBI証券が作成。予想純利益は会社計画ベース。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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