東京株式市場が不安定な動きになっています。日経平均株価は11/9(木)に一時、1992/1/10以来となる23,000円台を回復しましたが、11/16(木)の取引開始直後には一時22,000円を割り込むなど反落。その後は反発に転じ、11/17(金)には一時22,757円台まで値を戻しましたが、その後は伸び悩む展開になっています。
こうした中、11/17(金)には保険大手3社の決算発表が終了し、3月決算銘柄の「中間決算」は発表シーズンが終了しました。これまでは、発表された利益等が市場や会社の予想を上回るか否かが重要でしたが、ここからは、企業が発表した業績見通しに対する吟味や、投資指標等を用いた銘柄間の比較等が本格化し、銘柄間でパフォーマンスの差が厳しくなってくる可能性もありそうです。
そこで今回の「日本株投資戦略」では、当面高い利益成長と最高益更新が見込める上、資本効率も良いと考えられる企業を抽出してみました。こうした銘柄は、今後選別色が強まるとみられる株式市場で「主役」的存在になっても不思議ではないと考えられます。
今後は選別色が強まる可能性。「最高益」「高ROE」で選別した銘柄が主役に? |
それではさっそく、当面高い利益成長や最高益更新が見込める上、資本効率も良いと考えられる企業をスクリーニングにより抽出してみたいと思います。条件は以下の通りです。
(1)東証1部に上場する3月決算銘柄(金融以外)であること
(2)3人以上のアナリストが業績予想を公表している銘柄であること
(3)中間期(2017年4〜9月期)の営業利益が事前の市場コンセンサスを上回っている銘柄であること
(4)今期(2018年3月期)予想営業利益について、市場コンセンサスが会社予想を上回っていること
(5)今期・来期ともに10%超の営業増益率(市場コンセンサス)が見込まれる銘柄であること
(6)今期営業利益が過去10年間で最高益予想で、純利益でも過去最高益(市場コンセンサス)が見込まれる銘柄であること
(7)今期予想EPS(Bloombergコンセンサス)が黒字で、過去4週間に増加している銘柄であること
(8)今期予想ROE(市場コンセンサス)が10%超の銘柄であること
(9)今期予想PER(市場コンセンサス)が30倍未満の銘柄であること
上記したすべての条件を満たす銘柄を、来期(2019年3月期)の予想営業増益率(市場コンセンサス)が高い順に並べたものが表1となっています。
スクリーニング条件が多く一見複雑にみえますが、その多くが今期業績予想について会社側から下方修正が発表されるというリスクを回避するために設定された条件になっています。その上で、利益成長や資本効率の面でも高い評価を受けることが可能な銘柄が抽出されるようになっています。そうした中、「最高益」や「高ROE」は銘柄を選別する時の重要なキーワードになると「日本株投資戦略」は予想しています。ただ、そうした銘柄はすでに高評価を得て、割高な水準まで買われている可能性がありますので、予想PERを使って一定の絞り込みを行っています。
表1:増益率が高く最高益が見込め、資本効率を示す「ROE」も高いとみられる東証1部銘柄
取引 | チャート | コード | 銘柄 | 株価 (11/16) |
今期予想 PER(倍) |
今期予想 ROE |
予想営業増益率 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
今期 | 来期 | |||||||
7717 | ブイ・テクノロジー | 21,290 | 20.0 | 35.8% | +96.4% | +37.9% | ||
6622 | ダイヘン | 1,042 | 17.7 | 10.8% | +30.1% | +17.4% | ||
3635 | コーエーテクモホールディングス | 2,287 | 19.8 | 11.4% | +41.2% | +15.7% | ||
2475 | WDBホールディングス | 2,931 | 18.9 | 21.2% | +23.2% | +15.0% | ||
3844 | コムチュア | 2,321 | 29.6 | 29.7% | +15.3% | +14.5% | ||
4674 | クレスコ | 5,040 | 25.8 | 15.4% | +16.7% | +13.8% | ||
6770 | アルプス電気 | 3,635 | 14.5 | 18.0% | +54.4% | +12.5% | ||
6923 | スタンレー電気 | 4,250 | 21.0 | 11.0% | +19.4% | +11.4% | ||
6315 | TOWA | 2,271 | 16.8 | 11.8% | +28.3% | +11.3% | ||
9039 | サカイ引越センター | 5,700 | 18.0 | 13.7% | +51.1% | +11.1% | ||
6146 | ディスコ | 27,030 | 26.8 | 19.2% | +56.7% | +11.1% | ||
6367 | ダイキン工業 | 12,875 | 21.9 | 14.6% | +11.7% | +10.6% | ||
7701 | 島津製作所 | 2,636 | 27.2 | 11.5% | +10.0% | +10.1% | ||
1959 | 九電工 | 4,985 | 14.2 | 16.4% | +18.3% | +10.1% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。予想PER、予想ROE、今期・来期の予想営業増益率は市場コンセンサス。
スクリーニングの注意点は?〜特に「ROE」の使い方には注意も |
上記したように、11/17(金)までに3月決算企業の「中間決算」発表は事実上終了しました。上場企業の「中間期」の経常利益は前年同期比24%程度増えた模様です。また、2018年3月期は通期で11%強の経常増益が見込まれそうです。日経平均株価の予想EPSは9月末には1,414円でしたが、11/16(木)には1,532円まで増加し、過去最高を更新しました。
なお、個別銘柄レベルでは上場企業の4社に1社が「最高益」更新の見込みになっています。上場企業が最高益を更新するためには、景気拡大の追い風を受けるだけでは不十分であり、ライバルと比較して強い競争力を維持し、高い市場シェアを持ち続けることが必要であると考えられます。
また、限られた資本を有効活用できる「資本効率の高さ」が求められることになります。その意味でROE(株主資本利益率)の高い企業は株式市場で高い評価を受けることが多いようです。図2は日経平均株価採用銘柄について、そのROEの推移を示したものです。グラフからも、ROEは8%前後で推移しており、ここがひとつの目安になると考えられます。
ただ、ROEは高ければ必ずしも良いとは限りません。純利益を株主資本で割って求められるため、株主資本が少なければ高く出でしまうためです。このため、財務体質の悪い企業や、その会社の事業の特質上負債が多くなりやすい企業が上位になりやすいので要注意です。また、ROEが増える方向なのか、減る方向なのかといった「方向感」が重視されることもあります。最近はROEが8%以下であっても、自社株買い等によりROEを高める努力を行う企業を評価する動きもあります。
図1:日経平均株価と予想PER
図2:日経平均株価採用銘柄のROE
- 日経平均株価データをもとにSBI証券が作成
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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