株式市場がようやく落ち着きを取り戻そうとしています。日経平均株価は2/14(水)に一時20,950円15銭と約4ヵ月ぶりの安値水準を付けましたが、2/15(木)から2/16(金)にかけては反発に転じました。米国株の下げが一服したことに加え、日経平均株価の予想PERが12.8倍(2/14と2/15)まで低下するなど、値ごろ感が強まってきたことが背景とみられます。
ただ、外為市場では2/16に1ドル105円台半ばまで円高・ドル安が進むなど、「円高」圧力が強い状態が続いています。今後も「円高」により、日経平均株価自体は頭を押さえ付けられる懸念が残ります。反面、もともと「円高」に強い銘柄であれば、選別的に物色され、好パフォーマンスをあげることができるかもしれません。
そこで今回の「日本株投資戦略」では、相対的に「円高」に強く、業績面でも不安の少ない銘柄をスクリーニングにより、抽出してみることにしました。
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「円高に強い銘柄」を探る
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株式市場はようやく落ち着きを取り戻し始めました。しかし、本来であれば株価上昇とともに円安・ドル高方向に動くことが多い外為市場では逆に、円高・ドル安の動きが続いています。
米国では長期金利(10年国債利回り)が昨年末の2.41%から2.91(2/15)まで急上昇しました。一般的に米長期金利の上昇は日米金利差の拡大につながり、円安・ドル高要因になると考えられます。しかし、長期金利が上昇するということは、ドル資産としての米国債が売られることを意味しており、その面では円高・ドル安要因と考えることが可能です。米長期金利が節目とみられた2.5〜2.6%を超えて急上昇したことで、後者の要因がより強く影響した可能性がありそうです。
少なくとも、「米景気・企業業績の拡大は続くものの、FRB(米連邦準備制度理事会)による金融引き締め強化を懸念するほど、インフレが加速する懸念は不要」と考える「適温相場」は、その継続が不透明なものになったのかもしれません。さらに、そうした変化の中で、円高・ドル安が加速したことを考えるならば、投資家としては今後も円高・ドル安への備えはしておいた方が良いように思われます。
表1は、株価について「円安・ドル高」との相関係数が低い業種で、表2は「円安・ドル高」との相関係数が高い業種です。相関係数は-1以上1以下の値をとり、1に近いほど、比較する2つの変数の関係性が強く、-1に近い程その逆の動きとなる傾向が強くなります。表1の業種は、表2の業種に比べて数字が低いので、「円安・ドル高」の時は相対的に上昇しにくく、「円高・ドル安」時は相対的に上昇しやすいと考えられます。
ここで「相対的に」としたのは、表1の業種でさえ、「円安・ドル高」での相関係数がプラスの値を取っているため、「円高・ドル安」の時はやはり、下がる傾向があるということです。ただし、表2の業種に比べれば、株価が下がりにくいと考えられます。すなわち、より正確に表現するならば、表1の業種は「円高・ドル安」に耐性のある業種と表現できるかもしれません。同様に表3の銘柄は、「円高・ドル安」に耐性のある業種と表現することができそうです。
TOPIX(東証株価指数)の「円安・ドル高」との相関係数(過去2年)は0.628でした。すなわち、日本株全体としては「円安・ドル高」局面で上昇しやすく、逆に「円高・ドル安」局面では下がりやすいことを意味しています。したがって、表1の業種や表3の銘柄は、「円高・ドル安」局面で株価の耐性は強いとみられるものの、そうした時には株式市場全体が下げていることが多く、その分、足を引っ張られることがあると考えられます。
表1:株価について「円安・ドル高」との相関係数が低い業種
業種 |
相関係数 |
水産・農林業 |
0.326 |
空運業 |
0.366 |
パルプ・紙 |
0.370 |
石油・石炭製品 |
0.408 |
鉱業 |
0.421 |
食料品 |
0.424 |
電気・ガス業 |
0.442 |
海運業 |
0.459 |
医薬品 |
0.463 |
サービス業 |
0.491 |
表2:株価について「円安・ドル高」との相関係数が高い業種
業種 |
相関係数 |
輸送用機器 |
0.645 |
保険業 |
0.609 |
銀行業 |
0.608 |
精密機器 |
0.590 |
証券・商品先物取引 |
0.590 |
倉庫・運輸関連 |
0.575 |
化学 |
0.572 |
電気機器 |
0.562 |
ゴム製品 |
0.557 |
その他金融業 |
0.554 |
表3:「円安・ドル高」との相関係数が低い銘柄(TOPIX組入れ上位100銘柄)
取引 |
チャート |
コード |
銘柄名 |
業種 |
株価 (2/16) |
相関係数 |
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9843 |
ニトリホールディングス |
小売業 |
18,010 |
0.183 |
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4911 |
資生堂 |
化学 |
6,388 |
0.220 |
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6594 |
日本電産 |
電気機器 |
15,935 |
0.261 |
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4507 |
塩野義製薬 |
医薬品 |
5,583 |
0.267 |
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6098 |
リクルートホールディングス |
サービス業 |
2,574.5 |
0.274 |
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1801 |
大成建設 |
建設業 |
5,330 |
0.279 |
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4661 |
オリエンタルランド |
サービス業 |
10,465 |
0.298 |
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8113 |
ユニ・チャーム |
化学 |
2,949.5 |
0.301 |
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5713 |
住友金属鉱山 |
非鉄金属 |
5,117 |
0.308 |
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4528 |
小野薬品工業 |
医薬品 |
2,964.0 |
0.309 |
- ※表1〜表3はBloombergデータを用いてSBI証券が作成。相関係数は2018/2/9まで過去5年間の週足データから計算されています。表3はTOPIX構成銘柄で組入比率の高い上位100銘柄について、「円安・ドル高」との相関係数が低い上位10銘柄を並べたものです。
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好業績が期待でき、円高にも強そうな銘柄は?
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最後に、3月決算企業を対象に、「好業績が期待でき、円高にも強そうな銘柄」をスクリーニングにより抽出してみたいと思います。2/15(木)までに3月決算企業の第3四半期決算発表はほぼ終了したとみられます。今後は、そうした3月決算銘柄に対する選別が本格化すると予想されますが、そこに「円高・ドル安への耐性」を加味したものが表4の銘柄となります。
スクリーニング条件は以下の通りです。
(1)時価総額1千億円以上の東証上場銘柄であること
(2)3月決算銘柄であること
(3)業績予想を公表しているアナリストが2人以上いる銘柄であること
(4)過去4週間、市場予想(Bloombergコンセンサス)EPS(一株利益)が下がっていない銘柄であること
(5)2019年3月期の市場予想営業利益が10%以上の増益予想の銘柄であること
(6)2018年3月期の予想営業利益について、市場予想が会社予想を上回っていること
(7)2018年3月期の会社予想営業利益について、今回の決算発表で下方修正がなかったこと
(8)2017年4月〜12月期(第3四半期累計)の営業利益について、実績が市場予想を上回っていること
上記の全条件を満たす銘柄の株価について、「円安・ドル高」との相関係数を調べ、その数字が低い順に10銘柄を並べたものが表4となります。「日本株投資戦略では」では、これらの銘柄を「好業績が期待でき、円高にも強そうな銘柄」であると考えています。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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