2019年4〜6月期の決算発表が一部の企業を除き終了しました。日本経済新聞社の集計(8/16付)によると、3月期決算企業(金融を除く全産業)の同四半期(第1四半期)の経常利益は、前年同期比4.7%の減益、純利益は14.7%の減益でした。今年度(2020年3月期・通期)の経常利益は前期比1.8%の減益、純利益は2.6%の減益が予想されています。企業業績全般に厳しさが増していると考えられます。
こうした中、逆に業績が堅調な銘柄は希少価値が評価され、株価面で好パフォーマンスをあげる可能性もありそうです。そこで、日本株投資戦略では、好業績銘柄のスクリーニングを行い、その結果を掲載してみました。決算発表シーズン終了後の株式市場では、こうした銘柄が物色され、高値を更新するケースも出ているように思われます。
2019年4〜6月期の決算発表が一部の企業を除き終了しました。日本経済新聞社の集計(8/16付)によると、3月期決算企業(金融を除く全産業)の同四半期(第1四半期)の経常利益は、前年同期比4.7%の減益、純利益は14.7%の減益でした。今年度(2020年3月期・通期)の経常利益は前期比1.8%の減益、純利益は2.6%の減益が予想されています。
この四半期決算の大きな特徴は、製造業と非製造業で明暗が分かれたことです。2019年4〜6月期の経常利益は製造業13業種が前年同期比27.9%の経常減益、非製造業10業種が同26.0%の増益でした。ただ、今年度(2020年3月期・通期)の経常利益は製造業が前期比1.1%の経常減益、非製造業が同2.7%の経常減益の予想です。
化学、石油、鉄鋼、非鉄金属など素材産業の厳しさが目立ちました。米中覇権争いの激化を背景に、特に中国経済の先行き不透明感が強く、素材産業の収益を圧迫しました。グローバルな事業環境で不透明感が強まり、電気機器、機械などの加工産業も打撃を受けました。
決算発表が本格化する直前の7/16(火)時点では、日経平均株価の予想EPS(一株利益)は1,787円でした。それが8/15(木)には1,766円まで低下しました。最近の株価下落は、こうした企業業績のピークアウトから減速に向けた動きを織り込んだものと考えられます。ただ、3月期決算の企業にとり、4〜6月期は最初の四半期にとどまることから、通期の業績予想下方修正を思いとどまった企業も多いと推測されます。通期の減益幅は、現状で想定している水準よりも厳しくなる可能性が大きいと考えられます。
このように、企業業績全般に厳しさが増す中、逆に業績が堅調な銘柄は希少価値が評価され、株価面で好パフォーマンスをあげる可能性もありそうです。そこで、日本株投資戦略では、好業績銘柄のスクリーニングを行い、表1にその結果を掲載してみました。スクリーニング条件は以下の通りで、下記の全条件を満たす銘柄について、第1四半期経常利益が事前予想を上回った金額の大きい順に並べてみました。
(1)東証1部に上場する3月期決算銘柄で、時価総額が1,000億円以上あること
(2)2019年4〜6月期の営業利益・経常利益が事前の市場予想を上回った銘柄であること
(3)過去4週間、市場予想EPSが増加している銘柄であること
(4)営業利益の市場コンセンサスが来期(2021年3月期)、10%以上の増益予想であること
(5)業績予想を公表するアナリストが2名以上いる銘柄であること
(6)今期予想純利益(市場コンセンサス)が赤字予想でない銘柄であること
(7)今期予想営業利益(会社予想)が下方修正された銘柄でないこと
なお、(2)についてはBloombergデータをもとに、2019年4〜6月期営業利益が市場予想を上回った銘柄を抽出、それらについて当社WEBサイトを用い、経常利益についても市場予想を上回る銘柄として確認できた銘柄を抽出しました。
表1 市場の期待に応え、来期増益予想の銘柄はコチラ!?
取引 | チャート | ポート フォリオ |
コード | 銘柄 | 株価 (8/16) |
決算発表 月日 |
第1四半期 経常利益 |
事前市場 予想比 |
来期予想 増益率 |
6702 | 6702 | 6702 | 6702 | 富士通 | 8,587 | 7/25 | 6,263 | 17,103 | 18.7% |
6701 | 6701 | 6701 | 6701 | 日本電気 | 4,600 | 7/31 | 5,780 | 6,355 | 18.1% |
6857 | 6857 | 6857 | 6857 | アドバンテスト | 4,100 | 7/24 | 14,949 | 4,882 | 39.2% |
9107 | 9107 | 9107 | 9107 | 川崎汽船 | 1,067 | 7/31 | 2,713 | 238 | 187.4% |
4921 | 4921 | 4921 | 4921 | ファンケル | 2,458 | 7/30 | 4,382 | 182 | 17.1% |
2413 | 2413 | 2413 | 2413 | エムスリー | 2,189 | 7/25 | 8,917 | 150 | 16.6% |
4552 | 4552 | 4552 | 4552 | JCRファーマ | 7,560 | 7/25 | 467 | 149 | 25.5% |
- ※Bloomberg、当社WEBサイト、会社公表データ等をもとにSBI証券が作成。経常利益やその事前予想との比較については、単位が百万円。
そもそも、「好業績銘柄」というのはどのような銘柄でしょうか。売上や利益が実績ベースで増加したり、将来増加が予想される銘柄は一般的に好業績銘柄と言えるでしょう。
ただ、投資を検討した時点で、利益が実績ベースで増加していたり、増益予想であったりする銘柄に投資すれば、必ず値上がりを享受できるとは限りません。多くの場合、好業績銘柄であることはじきに株価に織り込まれてしまうからです。
決算発表ではよく、利益等が事前の市場予想と比べて高いか否かが意識されます。その銘柄の株価は、アナリスト等の業績予想の平均である市場コンセンサス等を重要な参考データとして形成されている可能性が大きいと考えられます。利益が市場コンセンサスを上回るということは、「その会社の利益が市場全般が想定していたよりも多い」ということであり、その分、株価も高くてよい可能性がでてきます。
今回のスクリーニングでは、2019年4〜6月期の営業利益・経常利益が市場予想よりも多い銘柄を中心に「好業績銘柄」を抽出してみました。
さらに、来期(2021年3月期)の営業利益が10%以上の増益となっているかも加味しました。アナリストの多くが、その会社の当面の利益の方向感について強気にみているか否かも、重要であると考えられるためです。
なお、SBI証券のWEBサイトでは、各企業の「業績」のページをクリックすると、経常利益の市場コンセンサスとのかい離を確認することができます。日本電気(6701)(図1)の場合、システム部門の好調や構造改革等の成果により、2019年4〜6月期の市場予想経常損益は575百万円の赤字予想でしたが、実績は5,780百万円の黒字でした。
なお、同業の富士通(6702)も2019年4〜6月期の市場予想経常損益は10,840百万円の赤字予想でしたが、実績は6,263百万円の黒字でした。両社は5G関連銘柄として、テーマ性もあり、市場での関心も強いようです。
ちなみに、今回の決算発表で、発表直後の値動きが強く、市場の関心を集めたのはアドバンテスト(6857)(図2)です。スマホ向け検査装置の引き合いが強く、5Gに対応した基地局の開発需要なども織り込んでおり、広い意味では5G関連銘柄として捉えることも可能なようです。
ただ、四半期利益の強さが株価上昇に直結しない例もあり、注意が必要です。川崎汽船(9107)は2019年4〜6月期の市場予想経常利益は2,475百万円でしたが、実績は2,713百万円でした。米中通商摩擦の影響が厳しくなることが懸念され、海運各社は通期の売上高見通しを引き下げており、株価も軟調です。この辺の銘柄は、もう少し業績推移をウォッチすべきなのかもしれません。
エムスリー(2413)は好業績が素直に市場の評価を受けているようです。2019年4〜6月期の市場予想経常利益は8,767百万円でしたが、実績は8,917百万円でした。これは前期比13.2%の経常増益です。通期ベースではこれまで長く2ケタの営業・経常増益が続いてきましたが、前期は1ケタの増益率に鈍化していました。しかし、これで再び2ケタ増益ペースに回帰してきた可能性もありそうです。株価は8/9(金)に年初来高値を更新しました。
JCRファーマ(4552)の2019年4〜6月期の市場予想経常利益は318百万円でしたが、実績は467百万円でした。主力製品が好調で会社予想も上回る着地になったようです。市場では、グローバル展開等新たな成長ステージが視野に入った可能性も指摘されています。
図1 日本電気(6701)・日足
図2 アドバンテスト(6857)・日足
図3 エムスリー(2413)・日足
- ※図1〜図3は当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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