9月に入り、株式市場が反発に転じました。米中通商協議での妥協成立に向け期待が高まっていることもありますが、株安がある意味で行き過ぎとなり、それに対する反動高が表面化した側面もありそうです。
折しも、日米の株式市場では「バリュー(割安)銘柄」の復活が話題になっています。世界的な金融緩和局面が長期化するとの前提に立てば、バリュー銘柄の優位は今後も続く可能性が大きそうです。
今回の「日本株投資戦略」では、長く低迷が続いてきたものの最近復活傾向を強めている「バリュー(割安)銘柄」について考察し、複数の角度からみて割安感の強い銘柄を抽出すべく、スクリーニングを実施してみました。
「バリュー(割安)銘柄」の復活が話題になっています。金融緩和局面が長期化するとの前提に立てば、バリュー銘柄の優位は今後も続く可能性が大きそうです。今回の「日本株投資戦略」では、低迷が長く続いてきたものの最近復活傾向を強めている「バリュー(割安)銘柄」について考察し、複数の角度からみて割安感の強い銘柄を例示すべく、スクリーニングを実施してみました。スクリーニング条件は以下の通りです。
(1)東証1部上場銘柄であること。
(2)時価総額1千億円以上の銘柄であること。・・・・(1)と合わせ、市場から一定以上の信認を得ている銘柄に絞りました。
(3)業績予想を公表しているアナリストが3名以上いる銘柄であること。
(4)予想PER(市場予想ベース)が9倍未満の銘柄であること。・・・・日経平均株価の予想PERは12.53倍。
(5)PBRが0.9倍未満の銘柄であること。・・・・PBR1倍未満はいわゆる「解散価値」割れと考えられます。
(6)予想配当利回り(市場予想ベース)が3%以上の銘柄であること。・・・日経平均採用銘柄の平均は2.16%。
(7)過去4週間で予想EPSの市場コンセンサスが3%超下がった銘柄でないこと。・・・業績下方修正リスクを下げるための条件です。
(8)最低売買単位(100株)での投資金額が20万円未満の銘柄であること。・・・・分散投資を容易にするスクリーニング条件です。
上記の全条件(9/19現在)を満たす銘柄について、(6)の予想配当利回りが高い順に並べ、業種の重複を避けたものが表1となります。これらの銘柄は、本来の妥当な評価と比べて割安感が強く、予想通り「バリュー(割安)銘柄」の復活が続いた場合、投資対象として有望視されると考えられます。なお、ここで予想配当利回りの順にしたのは便宜的理由によるもので、予想PERやPBRの順に替えても問題はないと思います。ただ、脚注にも示したように、中間配当の権利取りが佳境に入っているとみられる銘柄も多く、予想配当利回りの順番にする理由はあるとみられます。
なお、業種の重複を避けた理由は、特定業種への偏りを回避するためです。(1)から(8)のすべての条件を満たしており、予想配当利回り次第では以下の銘柄に替わって表1に入っていて不思議ではない銘柄も複数あげられます。
・三菱ケミカルホールディングス(化学)・・・住友化学(4005)、東ソー(4042)
・住友商事(卸売)・・・・双日(2768)、丸紅(8002)、三井物産(8031)
・みずほフィナンシャルグループ(銀行)・・・りそなホールディングス(8308)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)、群馬銀行(8334)
・関西電力(電気・ガス業)・・・中部電力(9502)
・オリックス(その他金融業)・・・クレディセゾン(8253)
ちなみに、このスクリーニングでは市場や時価総額を条件にして、市場から一定以上の信認を得ている銘柄に絞りました。新興市場や時価総額の小さい企業の中には、財務リスクが大きかったり、業績が変動しやすい、そもそも業績や財務の公表数値に対する信頼性が乏しい等の理由で、PERやPBRが低かったり、予想配当利回りが高い銘柄もあるためです。無論、表1の銘柄でさえ、割安に放置される理由はあると考えられますが、市場環境によって割安に放置されている場合は、株価の回復が十分回復であると考えられます。
表1 20万円未満で買える値上がり期待のバリュー銘柄
取引 | チャート | ポート フォリオ |
コード | 銘柄 | 株価 (9/19) |
予想PER (今期市場) |
PBR (前期) |
予想配当 利回り |
予想1株 配当金 |
8053 | 8053 | 8053 | 8053 | 住友商事 | 1,755.5 | 6.55 | 0.79 | 5.0% | 88.00 |
4188 | 4188 | 4188 | 4188 | 三菱ケミカルホールディングス | 809.1 | 7.66 | 0.83 | 4.9% | 40.00 |
8591 | 8591 | 8591 | 8591 | オリックス | 1,733.0 | 6.61 | 0.77 | 4.6% | 79.93 |
8411 | 8411 | 8411 | 8411 | みずほフィナンシャルグループ | 168.5 | 8.91 | 0.47 | 4.5% | 7.50 |
8750 | 8750 | 8750 | 8750 | 第一生命ホールディングス | 1,628 | 8.19 | 0.50 | 3.8% | 61.18 |
9503 | 9503 | 9503 | 9503 | 関西電力 | 1,389.0 | 8.25 | 0.82 | 3.6% | 50.00 |
6995 | 6995 | 6995 | 6995 | 東海理化電機製作所 | 1,892.0 | 8.19 | 0.75 | 3.5% | 66.00 |
3291 | 3291 | 3291 | 3291 | 飯田グループホールディングス | 1,825 | 8.29 | 0.69 | 3.4% | 62.00 |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。予想PERや予想配当利回りのベースになる予想EPSおよび予想DPS(1株配当金)はBloomberg集計の市場コンセンサス。PBRのベースになるBPS(1株純資産)は前期末基準。なお、偶然にも表1の銘柄はすべてが3月決算銘柄。このうち、第一生命ホールディングスを除く全銘柄が9月末に中間配当を予定しており、9/26(木)の権利付最終日に保有していないと、今年度の中間配当を受け取ることができませんので注意が必要です。
株式の銘柄は、グロース銘柄とバリュー銘柄に大別されると考えられます。成長への期待が大きい銘柄はPERやPBRでみて高めに買われる傾向が多く、グロース銘柄と言われ、成長への期待は小さいものの、PERやPBRでみて割安に買われやすい銘柄はバリュー銘柄と言われることが多いようです。日本語で表現すれば、前者は成長株、後者は割安株と言い直せるかもしれません。
さらに、株式市場には、グロース銘柄が優位な局面とバリュー銘柄が優位な局面があるようです。図1は2019年の東京株式市場を、グロース銘柄とバリュー銘柄のどちらが相対的にパフォーマンスが良かったのかという観点からグラフ化したものです。2019年は長く、グロース銘柄が相対的に優位でしたが、ここにきてバリュー銘柄に復活の兆しが見えてきました。株式市場ではにわかに、バリュー銘柄の復活はどこまで続くのか、その賞味期限をめぐる論議がホットになっています。
ちなみに、バリュー銘柄のパフォーマンスが相対的に良くなる投資環境とは、どのような状態でしょうか。今、米10年国債利回りから同政策金利を引いた数字を米長短金利差とした場合、長短金利差が拡大する局面でバリュー銘柄が買われやすいようです。ちなみに、長短金利差はマイナス局面をボトムとして上昇に転じる傾向があり、図2を見る限り現在は、底入れからの反発局面に転じようかとしている場面とみられます。
すなわち、米長期金利は9/3(火)に一時1.429%まで下げましたが、やや下げ過ぎた感が強く、9/13(金)には1.9%台まで回復しています。今後も、米景気の堅調さを反映し安定して推移する可能性がありそうです。一方、米政策金利はFOMCのたびに0.25%ずつ引き下げられるとの見通しが大勢を占めていましたが、足元はもう少し緩やかなペースでの利下げが見込まれるようになってきました。このように、米長短金利差はこれまでの下落基調から、落ち着きを取り戻しても良い状態に変わりつつあるようです。バリュー銘柄の回復は2020年にかけ、続く可能性が出てきているように見受けられます。
図1 バリュー銘柄の相対株価(日足)(2019年)
図2 バリュー銘柄の相対株価と米長短金利差(週足)
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。「バリュー銘柄の相対株価」は、ラッセル野村バリュー株インデックスを同グロース株インデックスで割った数字。長短金利差は米長期金利から同政策金利を引いたもの。
図3 米10年国債利回り、政策金利と長短金利差(週足)
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。米10年国債利回り(長期金利)と政策金利の推移、および前者から後者を引いた数字を長短金利差としてそれを時系列推移(週足)の中でみたもの。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
- ※NISA口座で上場株式等の配当金を非課税で受け取るためには、配当金の受領方法を「株式数比例配分方式」に事前にご登録いただく必要があります。
- ※信用取引において必要となるその他諸費用の詳細は信用取引のサービス概要をご確認ください。