上半期末(9月末)の日経平均株価は前下半期末(3月)に比べ2.6%上昇しました。ただ、TOPIX(東証株価指数)は同じ期間0.2%の下落であり、市場全体としては強弱対立した内容でした。米中通商摩擦が長期化の兆しをみせ、景気・企業業績が踊り場を迎えたものの、世界的に金融緩和基調となり、それが下支え要因になりました。
そうした中、東京株式市場は年度後半に突入しました。日本経済にとって重大なイベントとなる消費税引き上げが実施され、その影響が注目されるところです。10月下旬以降は3月決算を中心に、上場企業の決算発表が本格化してくるため、当面投資家にとっては企業業績の見極めが重要な課題になると考えられます。
そこで「日本株投資戦略」では、決算発表本格化を控え、好決算が期待される銘柄をご紹介したいと思います。折しも、3月決算企業等に先立ち、2月決算企業の中間決算、8月決算企業の本決算等について、発表が本格化しつつあります。今回はこれらの企業を対象に「好決算」が期待される銘柄を、スクリーニングにより、抽出したいと思います。
冒頭でも触れましたように、3月決算企業等に先立ち、2月決算企業の中間決算、8月決算企業の本決算等について、発表が本格化しつつあります。ある意味で、決算発表シーズンはすでに始まっていると考えることもできそうです。
10/4(金)は37社の上場企業が決算発表をする予定になっています。そのうちの1社であるオンワードホールディングス(8016)は、正式発表を前に業績予想の下方修正を発表し、株価が乱高下する展開になっています。投資家にとっては油断のならない季節と言えそうです。なお、発表予定社数でみると、10/9(水)42社、10/10(木)61社、10/11(金)119社、10/15(火)56社となっており、この頃が2月決算企業の中間決算、8月決算企業の本決算について、発表が佳境になると言えそうです。その後は徐々に、発表の主役が3月決算企業に移っていきます。
今回の分析では、これまでの四半期決算ですでに利益が大きく伸びているため、中間決算や本決算でも大幅増益が見込める銘柄を、「好決算」期待銘柄と考えました。これらの銘柄は、利益が会社予想を上回ったり、決算発表する時点、またはその直前に、業績予想の上方修正を発表し、株価上昇の可能性が高まることが期待されます。
スクリーニング条件は以下の通りです。
(1)東証上場銘柄であること。
(2)時価総額が1千億円以上の銘柄であること。
(3)2月決算、または8月決算の銘柄であること。
(4)中間決算または本決算の発表予定が10/7(月)以降の銘柄であること。
(5)直近(前回)の四半期決算(累計)の営業利益が前年同期比で10%超の増益となっている銘柄であること。
(6)直近(前回)四半期決算(累計)の営業増益率(前年同期比)が通期の会社予想営業増益率を上回っていること。
上記のすべての条件を満たした銘柄について、四半期の営業増益率が高い順に並べたものが表1になります。「日本株投資戦略」では、これらの銘柄を「好決算」期待銘柄と考えています。なお、3月決算企業等については次回、ご紹介したいと思います。
なお、5月決算銘柄や11月決算銘柄についても、四半期決算の発表が同時期であり、分析の対象にすることは可能です。ただ、今回のスクリーニングは四半期決算の実績を参考数値にしているため、第1四半期が発表時期の5月決算銘柄は今回、対象外としました。また、11月決算銘柄は決算発表終了や四半期決算の不調が多く、「好決算」銘柄として抽出されませんでした。
表1「好決算」期待銘柄はコチラ!?(2月・8月決算銘柄編)
取引 | チャート | ポート フォリオ |
コード | 銘柄 | 株価 (10/4) |
決算発表 予定日 |
営業増益率(前年比) | |
四半期 | 通期予想 | |||||||
9716 | 9716 | 9716 | 9716 | 乃村工藝社 | 1,411 | 10/10(木) | 375.2% | 1.6% |
2337 | 2337 | 2337 | 2337 | いちご | 429 | 10/10(木) | 42.5% | 0.8% |
2157 | 2157 | 2157 | 2157 | コシダカホールディングス(8) | 1,735 | 10/10(木) | 37.3% | 24.8% |
3141 | 3141 | 3141 | 3141 | ウエルシアホールディングス | 5,420 | 10/9(水) | 31.3% | 13.6% |
9602 | 9602 | 9602 | 9602 | 東宝 | 4,680 | 10/11(金) | 25.4% | 0.0% |
3046 | 3046 | 3046 | 3046 | ジンズホールディングス(8) | 6,280 | 10/11(金) | 24.5% | 19.4% |
8194 | 8194 | 8194 | 8194 | ライフコーポレーション | 2,137 | 10/9(水) | 23.5% | 0.9% |
8905 | 8905 | 8905 | 8905 | イオンモール | 1,657 | 10/8(火) | 19.6% | 17.0% |
7730 | 7730 | 7730 | 7730 | マニー(8) | 2,798 | 10/10(木) | 17.5% | 12.8% |
3087 | 3087 | 3087 | 3087 | ドトール・日レスホールディングス | 2,114 | 10/15(火) | 13.9% | 5.7% |
2651 | 2651 | 2651 | 2651 | ローソン | 5,590 | 10/9(水) | 12.4% | 0.0% |
- ※Bloomberg、会社公表データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。銘柄名横に(8)とある銘柄は8月決算銘柄で、他は2月決算銘柄。営業増益率の通期予想は今期会社予想。四半期増益率は累計営業増益率。なお、表1は10/3(木)までの情報をもとに作成されており、その後に報道や業績修正があった場合、反映できない場合がありますので、注意が必要です。
四半期決算で大幅増益だった銘柄は、その後の中間・本決算でも好業績を残し、株式市場がそれを評価するケースも少なくありません。アダストリア(2685)はその一例です。
同社の第1四半期は営業利益が前年同期比308%増となりました。通期予想営業利益は前期比39%増であり、増益率はそれを上回る好調な数字でした。9/30(月)に発表された中間決算では、営業利益が前年同期比13.5倍となり、その後の同社株は一時18.6%急騰する場面(図1)もみられました。
パルコ(8251)も第1四半期が前年同期比24%弱の増益となり、好調でした。ただ、通期の予想営業増益率が前期比134%と高く、それに比べると低かったこともあり、10/4(金)では小幅ながら、下方修正となっています。また、第1四半期に前年同期比40.7%増益だった壱番屋(7630)は中間期、営業利益が30億円(前年同期比27.0%増)となり、会社予想(27.3%)をクリアしてきました。10/7(月)以降の動きはどうなるでしょうか。
また、第1四半期で営業利益が前年同期比375%増益となった乃村工藝社(9716)は9/30(月)に中間業績の上方修正を発表し、10/1(火)は終値で3.6%の上昇となりました。今後は通期業績予想の上方修正につながるか否かがポイントになりそうですが、通期予想営業利益の市場コンセンサスは103億円前後とみられ、そこを超える利益がみえてくるか否かもポイントになりそうです。
なお、同社のように、決算発表前に業績予想の修正が行われるケースもあります。好業績への期待は半ば株価に織り込まれている可能性があり、その点は注意が必要です。
いちご(2337)の第1四半期は営業利益が前年同期比42.5%増でした。通期では0.8%増の予想であり、やはり好調なスタートと言えそうです。足元では年初来高値を更新するなど、株価も上昇基調でしたが、Wトップ形成の様相を呈しており、目先は利益確定売り圧力が強まる可能性もありそうです。しかし、決算発表後に流れが再び大きく変わる可能性もありそうです。
コシダカホールディングス(2157)の第3四半期営業利益は、前年同期比37.3%増と好調でした。それを受けて会社側は7/10(水)に今期予想営業利益を93.5億円から98億円に上方修正しました。それでも前期比24.8%の増益予想であり、第3四半期の勢いを保つことができれば、再度の上振れも可能であると考えられます。
なお、同社は8月決算銘柄であり、10/10(木)に2019年8月期決算と、2020年8月期予想を出してくる予定です。後者について、市場コンセンサスの営業利益は109億円前後であり、そこを上回ってくれば、株価上昇が期待され、下回った場合は株価下落が警戒されることになります。
ウエルシアホールディングス(3141)も第1四半期は前年同期比10.1%増収、31.3%営業増益と好調なスタートでした。第2四半期も単純平均では10%前後の売り上げ成長を維持できたとみられ、好業績の持続が期待されます。株価はもみ合い局面となっており、放れた方に大きく動きやすくなっています。
図1 アダストリア(2685)・日足
図2 いちご(2337)・日足
図3 ウエルシアホールディングス(3141)・日足
- ※図1〜図3は当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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