10月の日経平均株価は一進一退の展開になっています。米中通商摩擦について、決め手となる情報が少ない中、楽観的な報道と悲観的な報道が交互に繰り返され、そのたびに株価が乱高下する展開になっています。10/10(木)〜10/11(金)は米中閣僚級通商協議が開催される日程ですが、それが終わると何らかの方向性が定まってくるかもしれません。
そうした中、東京株式市場では決算発表シーズンとなりつつあります。足元では2月・8月決算銘柄等の発表が佳境を迎えていますが、10/10(木)にはホギメディカル(3593)が中間決算の発表を終え、いよいよ3月決算企業の発表も始まりました。企業ごとに業績の良し悪しが明確になり、株価の明暗が分かれやすい季節になります。
そこで、「日本株投資戦略」では、3月決算銘柄を対象に、「好決算」が予想され、株価上昇が期待できる銘柄をスクリーニングにより抽出を試みることにしました。業績の急変等で株価が動きやすく難しい季節ですが、個別企業の業績の好不調をあらかじめ頭にいれておくことで、投資チャンスに変えることも可能かもしれません。
今回の「日本株投資戦略」では、3月決算銘柄を対象に、「好決算」が予想され、株価上昇が期待できる銘柄をスクリーニングにより抽出を試みることにしました。スクリーニング条件は以下の通りです。
(1)東証上場銘柄であること。
(2)時価総額が1千億円以上の銘柄であること。
(3)3月決算銘柄であること。
(4)中間決算の発表予定が11/1(金)以前の銘柄であること。
(5)広義の金融や、投資法人等を除く業種の銘柄であること。
(6)業績予想を公表しているアナリストが2名以上いる銘柄であること。
(7)市場コンセンサスで今期・来期とも営業損益が黒字で増益が予想される銘柄であること。
(8)市場コンセンサスで最終損益の黒字が予想される銘柄であること。
(9)第1四半期(2019年4〜6月期)の営業利益が前年同期比で10%超の増益の銘柄であること。
(10)第1四半期(2019年4〜6月期)の営業増益率(前年同期比)が通期の会社予想および市場予想営業増益率を上回っていること。
上記のすべての条件を満たした銘柄について、第1四半期の営業増益率が高い順に並べたものが表1になります。「日本株投資戦略」では、これらの銘柄を「好決算」が予想され、株価上昇を期待できる銘柄と考えています。
一般的に上場企業の決算発表では、企業が発表した売上・利益等の決算数字(実績・予想)が、事前の会社予想や市場予想(市場コンセンサス)を上回ると、市場にとって「ポジティブ・サプライズ」となり、株価上昇につながることが多いと考えられます。ただ、企業から直接情報を入手できるアナリストや機関投資家と異なり、一般の個人投資家が上場企業の業績の良し悪しを予想することは「至難の業」と言えるでしょう。
ただ、四半期決算等で年間の業績の一部が明らかになれば「ヒント」が生じることになります。年度単位の業績や業績予想は「四季報」等もあり、チェックがしやすいのですが、四半期単位の業績は比較的チェックしにくく、多くの投資家は意外に「頭の中に入っていない」のが現実だと思います。3月決算企業の場合、7月下旬から8月中旬にかけ、すでに第1四半期の決算発表が行われ、好調なスタートを切った企業もありますが、「すでに昔の話」になっているように思われます。
通常、第1四半期を大幅増益でスタートできた銘柄は、通期の業績について、期初の会社予想等を上回って着地できる可能性が大きいと考えられます。例えば、表1のアマノ(6436)は、2020年3月期(通期)に営業利益165億円(前期比8.8%増)の予想(会社計画)ですが、第1四半期の営業利益は23億円弱で、前年同期比65.2%増であり、通期の予想増益率8.8%増を上回るペースで第1四半期を通過したと考える訳です。
無論、第2四半期に業績の方向感が急変している可能性もあり、正確な業績は「不明」というのが、素直な所です。これはどんな企業にも同じことが言える訳です。ただ、第1四半期を好業績で通過したことで、不調な銘柄に比べると、業績が会社予想や市場予想を上回る可能性は相対的に高いと考えることができます。
表1 株価上昇期待の「好決算」予想銘柄はコチラ!?
取引 | チャート | ポート フォリオ |
コード | 銘柄 | 株価 (10/11) |
決算発表 予定日 |
営業増益率(前年比) | |
四半期 | 通期予想 | |||||||
6460 | 6460 | 6460 | 6460 | セガサミーホールディングス | 1,547 | 10/31(木) | 264.6% | 106.4% |
6436 | 6436 | 6436 | 6436 | アマノ | 3,170 | 10/28(月) | 65.3% | 8.8% |
4739 | 4739 | 4739 | 4739 | 伊藤忠テクノソリューションズ | 2,924 | 10/31(木) | 54.6% | 8.6% |
9697 | 9697 | 9697 | 9697 | カプコン | 2,795 | 10/29(火) | 50.9% | 10.2% |
7518 | 7518 | 7518 | 7518 | ネットワンシステムズ | 2,905 | 10/24(木) | 39.4% | 15.3% |
3626 | 3626 | 3626 | 3626 | TIS | 6,560 | 11/1(金) | 38.4% | 5.1% |
6845 | 6845 | 6845 | 6845 | アズビル | 2,905 | 11/1(金) | 29.0% | -0.7% |
2317 | 2317 | 2317 | 2317 | システナ | 1,556 | 10/24(木) | 27.0% | 14.0% |
9090 | 9090 | 9090 | 9090 | 丸和運輸機関 | 2,763 | 10/31(木) | 26.8% | 23.3% |
2331 | 2331 | 2331 | 2331 | 綜合警備保障 | 5,570 | 10/31(木) | 21.0% | 7.2% |
4063 | 4063 | 4063 | 4063 | 信越化学工業 | 11,700 | 10/25(金) | 12.7% | 0.3% |
- ※Bloomberg、会社公表データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。四半期増益率は第1四半期(2019年4〜6月期)営業増益率。なお、表1は10/10(木)までの情報をもとに作成されており、その後に報道や業績修正があった場合、反映できない場合がありますので、注意が必要です。なお、決算発表予定日については当社Webサイトの各銘柄の業績ページで確認できる日程を参考にしています。決算発表予定日は、予告なく変更される場合もありますのでご注意ください。
実は前回の「日本株投資戦略」でも、銘柄抽出の基本的な考え方は同じでした。ただ、銘柄抽出の対象が2月・8月決算の銘柄というだけでした。そのうちウエルシアホールディングス(3141)(図1)は「成功例」と言えるかもしれません。同社株は10/9(水)決算発表後に、株価が保ち合い放れとなり、急騰する展開になりました。
同社は2月決算発表銘柄であり、8月中間期の営業利益は6ヵ月分の利益が合計で発表されることになります。第1四半期の多くの利益を上げた銘柄が、6ヵ月の利益が膨らみやすいのは、ある意味自然なことと言えそうです。
もっとも、決算発表後の株価推移が順調な銘柄ばかりという訳ではありません。やはり、前回の「日本株投資戦略」でご説明した乃村工藝社(9716)は発表後、利益確定売りが優勢になりました。中間期の業績について事前に上方修正があり、いったん織り込み済みになったと考えられます。やはり、今度は通期予想の上方修正があるか否かがポイントになりそうです。
このように、決算発表シーズンには、企業による公式の決算発表以外に、業績修正発表や、メディアによる業績観測記事等が増える傾向にあります。それらを通じ、事前に業績等の株価への織り込みが進む場合も少なくないため、注意が必要です。
好業績が期待される銘柄の場合、決算発表前に市場での期待が高まり、株価が上昇してしまうケースも少なくありません。それらの銘柄は、仮に決算発表で良いニュースを発表しても、そこが株価のピークになってしまうケースも少なくないようです。
なお、ネットワンシステムズ(7518)(図2)は第1四半期の営業利益が前年同期比39.4%増となり、通期の予想増益率15.3%と比べて高いペースになりました。同社はネットワーク・インテグレーターであり、同じ表1にある伊藤忠テクノソリューションズ(4739)とほぼ同業種と捉えられます。これらの会社は、5G投資本格化の流れが追い風になり、米中通商摩擦の荒波をある程度吸収できそうで、投資テーマ的にも注目が集まりそうです。
なお、ネットワンシステム(7518)はSBI証券企業調査部のレポート発行銘柄になっています。
同様に、信越化学工業(4063)(図3)もSBI証券企業調査部のレポート発行銘柄です。10/9(水)には群馬事業所見学会の報告書が出ており、投資判断「買い」、目標株価は12,700円という現状になっています。
業績予想についても、2020年3月期の会社予想営業利益4,050億円に対し、SBI証券の予想は4,200億円(前期比4%増)となっています。同社の第1四半期営業利益は前年同期比12.7%増の1,075億円であり、SBI証券予想に対する進捗率は25.6%になっています。様々な角度から、業績は順調に推移していると推測されます。
株価は図3にもあるように、足元は反発基調にあるようです。好業績に対する織り込みが進んでいるとすれば、留意が必要です。
図1 ウエルシアホールディングス(3141)・日足
図2 ネットワンシステムズ(7518)・日足
図3 信越化学工業(4063)・日足
- ※図1〜図3は当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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