株式市場に波乱の兆しが出てきました。
米国株式市場で、上昇のリード役を務めてきたグロース銘柄を中心に株価が急落する場面があったためです。そうした中、東京株式市場ではバリュー銘柄が見直される場面が増えています。世界的に有名な投資家であるウォーレン・バフェット氏が、日本の総合商社株を買ったことが明らかとなったためです。
今回の「日本株投資戦略」では、株式市場でバリュー株への見直しがさらに進んだ場合に注目されるであろう、“好業績・好配当”が期待され、株価的には割安感の強い銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行ってみました。それらの銘柄の中には、今後想定される景気回復局面で再評価され、配当と値上がりで好パフォーマンスが期待される銘柄も少なくないと「日本株投資戦略」では考えています。
9/3(木)の米国株式市場で、上昇のリード役を務めてきたグロース銘柄を中心に株価が急落し、NYダウが一時1千ドル超下落する場面があり、波乱の兆しが見える株式市場。
その後は少し落ち着きを取り戻したようですが、過熱感や割高感を伴って上昇してきたグロース銘柄への警戒感は解けていないとみられます。
そうした中、東京株式市場ではバリュー銘柄が見直される場面が増えてきました。世界的に有名な投資家で、米投資会社バークシャー・ハサウェイを率いるウォーレン・バフェット氏が、日本の総合商社株を買ったことが明らかとなり、それらの株が8/31(月)に急騰したためです。一般的に総合商社株は、典型的なバリュー銘柄の一角と理解されています。
そこで、今回の「日本株投資戦略」では、株式市場でバリュー株への見直しがさらに進んだ場合に注目され得るような、“好業績・好配当”が期待されながらも、株価的には割安感の強い銘柄を抽出すべくスクリーニングを行ってみました。スクリーニング条件は以下の通りです。
(1)東証1部上場銘柄であること。
(2)時価総額500億円以上の銘柄であること。
(3)予想配当利回り(今期市場予想ベース)が3%超あること。
(4)今期予想PER(市場予想ベース)が18倍未満(赤字は除く)であること。
(5)PBRが0.9倍未満であること。
(6)来期予想営業増益率(市場予想ベース)が10%超と予想されていること。
上記のすべての条件を満たす銘柄を、(3)の予想配当利回りが高い順に並べたものが表1となっています。これらの銘柄の中には、今後想定される景気回復局面で再評価され、配当と値上がりで好パフォーマンスが期待される銘柄も少なくないと「日本株投資戦略」では考えています。
ご参考までに日本経済新聞によると、9/10(木)現在、東証1部銘柄の予想配当利回りは1.75%、予想PERは23.95倍、PBRは1.21倍となっています。算出された銘柄は、(1)や(2)の条件を満たし、株式市場で一定の信認を得ているとみられるうえ、(6)から、来期に業績の拡大・回復が見込まれているにもかかわらず、(3)〜(5)により市場の平均よりも多くの投資指標で割安な評価となっていることがご理解いただけると思います。
なお、冒頭でご紹介した総合商社がスクーリングの結果としては残っていませんが、これらの会社では営業利益が予想の対象になっていないケースが多いためです。なお、報道等において商社株については、さまざまな見方がすでに紹介されているので、それらを参考にされてもよいかと思われます。
表1 割安感が強い好業績・好配当銘柄はコチラ!?
取引 | チャート | ポートフォリオ | コード | 銘柄 | 株価(9/10) | 市場予想配当利回り | PBR(倍) | 市場予想PER(倍) | 来期予想営業増益率 | |
今期 | 来期 | |||||||||
5021 | 5021 | 5021 | 5021 | コスモエネルギーホールディングス | 1,620 | 4.94% | 0.66 | 5.6 | 3.8 | 36.1% |
4208 | 4208 | 4208 | 4208 | 宇部興産 | 1,959 | 4.59% | 0.60 | 13.4 | 9.3 | 28.7% |
9502 | 9502 | 9502 | 9502 | 中部電力 | 1,322.5 | 3.78% | 0.53 | 8.6 | 10.8 | 20.9% |
3231 | 3231 | 3231 | 3231 | 野村不動産ホールディングス | 2,127 | 3.76% | 0.70 | 11.6 | 8.2 | 19.8% |
3865 | 3865 | 3865 | 3865 | 北越コーポレーション | 374 | 3.74% | 0.35 | 13.4 | 9.3 | 172.5% |
9508 | 9508 | 9508 | 9508 | 九州電力 | 953 | 3.67% | 0.87 | 9.8 | 7.4 | 22.2% |
1803 | 1803 | 1803 | 1803 | 清水建設 | 802 | 3.65% | 0.84 | 7.8 | 7.1 | 11.9% |
4631 | 4631 | 4631 | 4631 | DIC | 2,655 | 3.64% | 0.81 | 14.8 | 8.6 | 20.4% |
9303 | 9303 | 9303 | 9303 | 住友倉庫 | 1,342 | 3.58% | 0.66 | 16.5 | 14.0 | 19.2% |
3289 | 3289 | 3289 | 3289 | 東急不動産ホールディングス | 484 | 3.39% | 0.62 | 11.5 | 7.8 | 37.0% |
5232 | 5232 | 5232 | 5232 | 住友大阪セメント | 3,590 | 3.34% | 0.71 | 13.7 | 12.5 | 10.4% |
9025 | 9025 | 9025 | 9025 | 鴻池運輸 | 1,098 | 3.28% | 0.59 | 13.4 | 11.6 | 18.8% |
3401 | 3401 | 3401 | 3401 | 帝人 | 1,704 | 3.20% | 0.82 | 15.6 | 10.9 | 17.9% |
4401 | 4401 | 4401 | 4401 | ADEKA | 1,552 | 3.09% | 0.76 | 13.4 | 11.1 | 16.0% |
5801 | 5801 | 5801 | 5801 | 古河電気工業 | 2,566 | 3.09% | 0.75 | 15.6 | 11.0 | 107.2% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。市場予想はBloombergが集計した市場コンセンサス。来期予想営業増益率は、今期市場予想営業利益に対する来期予想営業利益の増加率として計算されています。PBRも、BloombergのBPSデータをもとに計算されています。配当利回りは、年間に予定されたすべての配当を受けとった時に予想される配当利回りです。
今回の「日本株投資戦略」では、好業績・好配当が期待されながらも、株価的には割安感の強い銘柄を抽出すべくスクリーニングを行ってみました。ウォーレン・バフェット氏が総合商社株を買ったことがきっかけとなり、日本株のバリュー銘柄が見直されるかもしれないと考えたためです。そこで改めて、ウォーレン・バフェット氏は今なぜ、総合商社株を買ったのか考えてみる必要があります。
ご存知の通り、三菱商事(8058)や住友商事(8053)など総合商社株の多くは予想配当利回りが高いのが魅力です。さらに、企業業績全般に不透明感の強いご時世ですが、大手総合商社の予想PERは全銘柄が10倍台となっており、PBR1倍割れの銘柄も多いことから、典型的なバリュー銘柄と言えそうです。このため、グロース銘柄からバリュー銘柄への乗り換えを検討する投資家にとって総合商社株は、買い付け候補になりうる銘柄です。バフェット氏もそんな投資家のひとりであったのかもしれません。
総合商社は資源やエネルギーに関する事業に投資していることが多く、デフレは逆風で、インフレが追い風になると言えそうです。2020年は金先物相場が過去最高値を更新したことが大きな話題ですが、金先物価格が高いとき、商社を代表格とする業種別指数「卸売」の相対株価は上昇しやすい傾向にあります。
さらに、世界の中で日本株は景気敏感株的な要素が強いとされ、世界を股にかけてビジネスを展開する総合商社はその象徴的な存在と考えられます。新型コロナウイルスが猛威を振るい、世界景気がボトム近辺を低迷する中、日本株や商社の相対的な位置付けが低いことは致し方のないところと言えそうですが、逆にこれらの株にとっては今がボトムに近く、買い場と考えられるかもしれません。
図1は表1に掲載されたコスモエネルギーホールディングス(5021)とWTI原油先物相場を比較し、グラフ化したものです。一般的に、石油石炭製品の業界に属する銘柄は、原油相場が上昇する時に株価が上昇しやすく、逆に原油相場が下落する時に株価が下落しやすい傾向があります。新型コロナウイルスの拡大は世界経済にとって強い逆風となり、原油先物相場の先行きに暗い影を投げかけてきたと考えられます。それゆえ、これまでコスモエネルギーホールディングスなど石油石炭製品の銘柄の株価が下落してきたのは致し方のないことであり、世界的な景況感が回復してくれば、逆風はその分弱くなり、これらの銘柄に上昇チャンスが広がってくると期待されます。
もっとも、原油の需給に強く影響するガソリンの需要は、世界的なエコカーの普及で長期的に逆風を受けると予想され、その分、この銘柄の割安感は残りそうです。
ちなみに、宇部興産(4208)は自動車関連素材の分野を中心に、新型コロナウイルスの影響が想定外に大きかった模様で、今年度第1四半期の業績は振るいませんでした。株価は中期的にも低迷が続き、2018年初頭には3,500円前後にあった株価も本年3月には1,431円まで下落してしまいました。業績の低迷等を背景に、先行き見通しが悪くなると、株価は割安に放置されやすくなります。
しかし、同社は今後市場拡大が期待される5G市場向け素材で高い競争力を持つ商品を有しており、業績は今年度第1四半期がボトムになる可能性が出てきています。業績の先行き見通しが変わってくれば、この銘柄に対する見方も変わり、割安感の解消につながるかもしれません。
図1 コスモエネルギーホールディングス(5021)とWTI原油先物相場
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。2015/10/1終値を1として指数化し、コスモエネルギーホールディングス株価とWTI原油先物相場を比較しました。なお、 本年4月にWTI先物が0以下の異常値を取る場面がありましたが、0以下をカットしているため、その部分は消えています。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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