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2024-12-15 01:10:43

マーケット > レポート > 日本株投資戦略 >  高まるインフレ懸念で"買いチャンス"の銘柄とは。

高まるインフレ懸念で"買いチャンス"の銘柄とは。

2021/5/14
投資情報部 鈴木英之

5月第2週(5/10〜5/14)は波乱の展開となりました。
日経平均株価は5/14(金)こそ反発したものの、5/11〜5/13の3日間の下げ幅は2,000円以上となりました。

主因は米国で新型コロナウイルス向けワクチンの接種が進み、行動制限が緩和されたことで、景気回復期待の高まりなどから良好な経済指標の発表が相次いだことがあげられます。結果、インフレ率や金利の上昇を懸念し、これまで相場をけん引してきたグロース銘柄を中心に下げが加速したとされます。
では、今後はどう考えるべきでしょうか。
インフレ率や金利の上昇が続く環境に強い銘柄はないのでしょうか。

当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください。
日本株投資戦略新しいウィンドウで開きます。※YouTubeに遷移します。

執筆者のプロフィール
SBI証券 投資情報部長 鈴木 英之
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん

1≪株価急落≫今後のシナリオ

東京株式市場では、日経平均株価が5/11(火)に909円安、5/12(水)に461円安、5/13(木)に699円安と、3日間で2,000円以上を下げる“波乱の展開”になりました。

理由は以下の3点であると考えられます。
(1)米国で、景気回復期待から再びインフレ率・米長期金利の上昇が懸念され、グロース株等を中心に下げたため。
(2)半導体株と連動しやすい台湾加権指数が、台湾での新型コロナウイルス感染拡大懸念から大きく下落したため。
(3)決算発表が佳境に入り、買いポジションを取りにくい環境となっているため。

5/12(水)の米国市場では、同日発表された消費者物価指数が変動の大きい食品やエネルギー価格を除いたコア指数で、前年同期比で3.0%上昇(市場コンセンサスは同2.3%上昇)となり、1995年7月以来の高い伸びとなりました。
なお、景気回復期待の高まりから、米10年国債利回りは4/22(木)の1.543%から5/12(水)は1.698%と、再上昇する傾向を強めています。
こうした景気の過熱やインフレ率上昇の加速を防ぐべく、米国時間6/15(火)〜6/16(水)開催予定のFOMC(米連邦公開市場委員会)ではFRB(米連邦準備制度理事会)がテーパリング(金融緩和の縮小)への方向転換を示唆するとの見方が強まっています。
ただし、短期的な見方では、昨年4〜6月の米国物価指数の低迷が顕著であったことから、今回はその反動という側面もありそうです。

中長期的には、米バイデン政権の経済対策の要となる現金給付が続き、その効果は次第に強まってくると見られます。現在の金融緩和政策に大きな変化がなければ、インフレ率の上昇が続く可能性もあります。
そうした中、投資家としてはどのような銘柄を投資対象とすべきでしょうか。

そこで今回は、米国で“消費者物価や長期金利が上昇”し、“国際商品市況も好調”が続くと仮定し、上昇しやすい業種をチェックしました。
上記の3つの要因は重なって生じることが多く、図表1でご紹介した“株高になりやすい業種”も重複する傾向にあります。業種名の左側に印が付けられた銘柄は、2つ以上の要因が重なっている銘柄で、鉄鋼、鉱業、卸売業、保険業が該当します。

5/14(金)の日本経済新聞でも報道されているように、米国でも、素材・エネルギーといった「川上産業」がインフレ率上昇への耐性を期待されて底固く推移し、仕入れ価格の上昇を販売価格に転嫁しにくい小売業などの「川下産業」の下げが目立っているようです。

図表1 米消費者物価上昇、CRB商品指数上昇、米長期金利上昇に強い日本企業の業種は?

(1)米消費者物価上昇時に株高になりやすい業種

上位5業種 相関係数 下位5業種 相関係数
海運業 0.036 医薬品 -0.195
◎鉄鋼 0.010 サービス業 -0.187
空運業 -0.063 陸運業 -0.182
※鉱業 -0.069 電気・ガス業 -0.165
△保険業 -0.081 小売業 -0.156

(2)CRB商品指数が上昇時に株高になりやすい業種

上位5業種 相関係数 下位5業種 相関係数
※鉱業 0.571 電気・ガス業 -0.099
〇卸売業 0.470 水産・農林業 0.067
非鉄金属 0.444 食料品 0.068
石油・石炭製品 0.429 小売業 0.126
◎鉄鋼 0.383 陸運業 0.134

(3)米10年国債利回りが上昇時に株高になりやすい業種

上位5業種 相関係数 下位5業種 相関係数
◎鉄鋼 0.586 医薬品 0.071
※鉱業 0.576 食料品 0.109
△保険業 0.576 電気・ガス業 0.186
〇卸売業 0.555 陸運業 0.219
銀行業 0.553 パルプ・紙 0.270
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
  • ※相関係数とは、2つの変動する数字の連動しやすさを表しています。-1から+1の間の数字を取り、+1は同じ動きをしやすいことを、-1の場合は真逆の動きをしやすいことを示します。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。 計測期間:2011/5〜2021/4(10年間)

2高まるインフレ懸念で逆に買えそうな銘柄は?

この項では、図表1で掲載した業種に属している具体的な銘柄の抽出を行いました。

抽出条件は以下です。
(1)東証1部上場銘柄で、時価総額500億円超の銘柄であること。
(2)図表1の複数の項目で上位に入っている鉄鋼、卸売業、鉱業、保険業に属す銘柄であること。
(3)市場予想PER15倍未満、PBR1倍未満、市場予想配当利回り2%超の銘柄であること。
(4)今期市場予想純利益が10%超の増益または黒字転換が予想されている銘柄であること。

図表2 インフレ率上昇・米金利上昇・国際商品市況上昇に耐性が強いと評価される銘柄

取引 チャート ポート
フォリオ
コード 銘柄(決算月) 株価
(5/13)
前期PBR 今期市場予想
PER 配当利回り
5406 5406 5406 5406 神戸製鋼所 783 0.37 10.21 2.16%
9810 9810 9810 9810 日鉄物産 4,400 0.51 7.40 4.09%
5411 5411 5411 5411 ジェイ エフ イー ホールディングス 1,589 0.58 7.29 3.84%
2768 2768 2768 2768 双日 327 0.66 8.31 3.94%
5444 5444 5444 5444 大和工業 3,470 0.72 13.36 2.52%
5471 5471 5471 5471 大同特殊鋼 5,700 0.73 12.86 2.16%
8053 8053 8053 8053 住友商事 1,483.5 0.73 8.18 4.58%
8154 8154 8154 8154 加賀電子 2,515 0.76 9.82 2.88%
5401 5401 5401 5401 日本製鉄 2,214 0.76 8.83 2.98%
8058 8058 8058 8058 三菱商事 2,881 0.76 9.31 4.68%
8020 8020 8020 8020 兼松 1,402 0.82 7.63 4.28%
1605 1605 1605 1605 INPEX 780 0.82 8.89 4.05%
8031 8031 8031 8031 三井物産 2,388.5 0.88 8.63 3.74%
  • ※Bloomberg、会社公表データをもとにSBI証券が作成。PBRは時価総額(Bloombergが計算)を前期実績ベースの純資産(親会社所有者帰属分)で割った数値。 ※「今期市場予想」はBloombergが集計した市場コンセンサス。 ※PBRの低い順に掲載。

グロース銘柄を「高PER・高PBR銘柄」、バリュー銘柄を「低PER・低PBR銘柄」と考え、これまでの歴史的低金利局面でグロース銘柄が買われた現実を考えた時、金利上昇局面ではバリュー銘柄が優位と考えられます。

図表2の銘柄は低PER・低PBRに加え、予想配当利回りも高い典型的なバリュー銘柄が多くなっています。

商社は歴史的にも、資源・エネルギーや非鉄金属等に相当額を投資しており、国際商品市況やインフレ率の上昇は追い風になりやすいと考えられます。

ただ、商品市況の変動に依存すると業績が不安定となるため、脱資源を目指す流れが強まっています。最近は世界的に著名な投資家であるウォーレン・バフェット氏による商社への投資が注目されましたが、同氏は今のような変化を先読みしていたのでしょうか。

鉄鋼株もバリュー銘柄であり、今期に業績の大幅回復が見込まれています。新型コロナウイルスの世界的な拡大に伴う需要の減少もあり前期までは業績悪化に苦しみました。そうした中、世界の高炉が休止等により生産量を落としたところに、自動車や中国市場向けの需要が回復し、今期はその恩恵を受けることになりそうです。

なお、個別銘柄の紹介に保険を掲載しなかった理由は、決算発表が終わっていない銘柄が多いためで、発表数値をふまえ、あらためて投資判断をしたいところです。

■三菱商事(8058)

■神戸製鋼(5406)

  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。期間1年(週足)で表示。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
  • ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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